出会い
パチッパチッ
近くで何かが弾ける音がする。
硬い物の上に寝ている感触。
鼻腔をくすぐる草の匂い。
あれ?俺何で地面で寝てんだ?
今までのことを思い出す。
そういやトラックに轢かれて死んで、女神に会って転生させられたんだっけ?ならここは異世界か?
モゾモゾと、体を動かす。
目を開けると森の開けた場所だった。
ん?この毛布誰が掛けてくれたんだ?それに焚き火も誰が焚いたんだ?
さっきの弾ける音はこの焚き火の牧が弾けた音だった。
「目が覚めたか?」
焚き火の向かい側から、ハスキーな声が聞こえてくる。
声が聞こえてきた方を見ると銀色っぽい髪の白ローブの男が座っていた。
「あ、毛布掛けてくれてありがとうございます。失礼ですがあなたは誰ですか?」
白ローブに礼を言っておく。
もしかしたら別の人が掛けてくれた、何て事もあるかもしれないけれど、この場にはこの白ローブしかいないからな。
「俺はベガだ。初代龍神をやっている。お前が二代目を継いでくれるそうだな。」
俺は初代龍神と言う言葉を何処かで聞いた事がある気がした。
あ!そういやあの女神が、こっちで初めて会う人は初代龍神だ、って言ってた!それで聞いた事があるんだ。
「どうした?余り驚かないな。もしかして何か聞いてたのか?タジマソージよ。」
不思議そうな顔をしたベガさんが聞いてくる。
てか何で俺の名前知ってんの⁉︎
「……俺が何者なのか分かるんですか?」
冷静を装って聞いてみた。
「お前は異世界人で名前はタジマソージだろ?俺の姉上に聞いたぞ。」
やっぱり、この人俺のこと知ってるわ。
ん?姉上?もしかしてこの人の姉って…
「あの女神があなたの姉何ですか?」
「そうだ、俺の姉上はお前が会ったその女神だ。」
ぜ、全然似てねぇー。
このクールな感じの人があの女神の弟だった何て!
あれ?でも女神の弟なら女神がいた場所にいるもんじゃないの?
確か神界だっけ?
「お前の考えてる事は大体分かるぞ。なぜ俺が地上にいるか?だろ。」
「もしかして、あなたも人の心読めるんですか?」
「いや違う。ただの勘だ。」
勘で人の心言い当てるやつが、現れた!
何なんだ?女神といいベガさんといい、神って名前がつく人は人の頭が読めるのか?
「俺が地上にいる理由は、俺がまだ完全に神になってないからだ。」
「完全な神と言うと?」
「俺の様な龍神や他の場所にいる獣神やら鬼神と呼ばれる奴らは神では無く亜神だ。」
龍神の他にも獣神や鬼神何ているんだ。
「亜神が完全な神になるには千年以上生きた上で、自分の技の全てを次代の後継者に受け継がせなくてはならない。」
じゃあ何で俺なんだ?
「技を受け継がせるにしても適正が必要になってくる。俺の場合は適正者が居なさ過ぎて異世界からわざわざ呼ぶハメになったらしい。」
「そんなに適正を持つ人っていなかったんですか?」
「そうだ。世界中探してもいなかった。だからお前には俺の技の全てを継いでもらう。」
何で居ないかはその内わかるだろうがな。とベガさんは付け足した。
「継いだ後はどうすれば?」
これで、お前は龍神としてこの場所に留まれとか言われたら嫌だぞ?
「それはお前の自由だ。世界を見て回るもよし、ここに引きこもるもよし。全て自由だ。」
「因みにベガさんは何をしました?」
参考までに聞いてみる。
するとベガさんは遠い目をして喋り出す。
「そうだな、俺は国を創ったな。」
⁉︎
何て言ったこの人。
くに?くにってあの人が沢山住んでる国?
「って、国を創ったなら何でこんな山奥に住んでるんだよ!」
あ、素が出た。
失礼だったと思い言い直そうとすると、俺の言葉を遮るようにベガさんが喋り出す。
「国を創ったと言ってもかつての仲間達と一緒にだ。それに俺が王だった訳ではない。」
それならここに居ても問題無いのか?
いやでも、国を創った重要人物がこんな森に住んでていいのか?
「その国ってどの辺ですか?」
多分一番当たり障りの無い質問。
「この森がある大陸とは別の大陸だぞ?行くにしても海を渡らなければならない。」
海の向こうとか遠すぎだろ。
あ、もしかして追い出された?
それとも、意見の食い違いで出てきたのかな?
一人でうんうん唸ってるとベガさんは、
「もうこの話題は止そう。何で国を出たかの説明はまた暇のある時にしよう。」
と言って話を打ち切った。
「まぁ、お前も継いだ後は何をするかを考えておけ。俺のように国を創れなんて言わない。自分が何をしたいかを決めておけ。」
「そうですね、また考えておきます。」
俺がそう答えるとベガさんは、それでいいと頷いた。
「さて、明日の朝は早い。早く寝ろ。寝る場所は適当に決めろ。」
ベガさんはそう言って、座ったまま目を閉じた。
俺もそれに習って毛布にくるまって目を閉じた。
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