エピローグ
4月17日、月曜日の朝。
私はゲームの世界の中にいた。
「うーん……」
もう着慣れてしまった無駄にセクシーなネグリジェで目を覚ます。
これでちょうど2週間だろうか――ゲームの世界に入ってから。
2週間経っても、私が現実の世界に戻れるような兆候はまったくなかった。やはり私はこのゲームの世界で生きることを強制されているのかもしれない。帰れるとしたら……まさかゲームの終わる2年後だろうか?
だが、私は気にしていない。
退屈な大学生活から離れ、大好きなゲームの世界にいる。
こんな幸せは他にないじゃないか。
私は起き上がり、制服に着替えて、寮を出る。
「あっ、リリーさん、おはようございます」
食堂で可愛い子ちゃんが笑顔で挨拶してくる。
「ええ、おはよう」
私はお姉さんぶった笑みを返す。
彼女は本来ならこのゲームの主人公だったはずの女の子。私のせいで多少運命を狂わせてしまっているかもしれないエリアだ。
「リリーさん。実は、私、迷ってるんです」
「今朝のメニュー?」
私たちは食堂でビュッフェの列に並んでいるところだった。
「昨日は冒険で疲れたでしょう? 疲労回復効果のある果物と豚肉料理なんかどうかしら」
「もー、違います! 今週のスケジュールですよ。どうしたらいいと思いますか?」
「そうね、冒険したばかりだから今日は丸一日休むべきだけど……学園に来てもう3週目なんだから、そろそろ自分でスケジュールを立ててみたらどうかしら」
「えっ! リリーさんが頼りだったのに……」
「基本は教えたからわかるはずよ。でも、明日は魔術の授業を取りなさい」
そうすればおそらく取りそびれた攻撃用のアクティブ・スキルが手に入るはずだ。
「リリーさんは今週どうするんですか?」
「私も魔術の授業は出るつもり。だけど、週末に『遠足』があるでしょう。どのステータスやスキルを伸ばすべきか迷っているのよね」
「遠足ですか」
「遠足の後には、王都に行けるわよ」
「王都! 行ってみたいです!」
「夏休み前には騎士トーナメントがある。私とあなたが戦うことになる」
「ふひゃっ!?」
そして、夏休みには大型ダンジョンに挑戦できるし、秋には学園上げての遠征がある。さらにビッグイベントの学園祭があり、来年には魔物の大規模襲撃というクライマックスが待っている。他にも、国王への謁見と会食だとか、王子との模擬戦とか、高レベルダンジョン解放とか、様々だ。
「どうなるかわかりませんが、楽しみですね」
「ええ、そうね」
彼女の言う通りだった。現実と化したこの世界の選択肢は無限大だ。私の前には楽しみが待っている。
私たちのゲームはこれからだ!
で終わらず、第2章のプロローグに続きます。