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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:理想編
99/322

スズメちゃんの誕生日

それは、スズメとマッハがムーンリット・カノンのライブに行く数日前のことだ。

「最近、スズメちゃん元気ないわよね……」

「だからよー」

「何か――付けさせる。元気」

チーム・バーチャルスターの寮室、そのエレナ・ロン・サリナの部屋にある4人の姿があった。

「っていつの間に居たんですか!?」

サリナは突然割り込んだ、モード・ヘレネの声に驚く。

「私が呼んだのよ。サエズリ・スズメ研究会としてね」

「呼ばれた。イザナに」

「まだそんな事言ってるの……?」

「当たり前じゃない!」

「そんな事より、スズメちゃんさー」

イヴァの言葉に

「そうよね」

とサリナが呟いた。

「そういえば、今度の月曜――6月15日はスズメの誕生日だったわね」

「間違いない」

イザナの言葉にヘレネが頷く。

「なるほど! それじゃあ、あたし達でスズメちゃ」

「スズメちゃんの誕生パーリーするさー!!」

「…………」

と、言う事でスズメを元気づけるという事もかねて、お誕生日会計画が始動したのだった。

その計画は、速やかに関係各所へと伝えられた。


そして、6月15日月曜日の放課後。

「ねえ、なんか機甲科寮の前に変なのが置かれてるんだけど……」

「機甲装騎じゃなくて?」

「カバーがかかっててよく分からないけど……そうなのかな」

「――変なの?」

授業が終わり、寮に帰ろうとしていたスズメはすれ違った2人の会話を耳にして首をかしげる。

「スズメちゃん!」

不意に、そんなスズメを呼ぶ声が響いた。

「サリナちゃん」

「スズメちゃん、ちょっと良いかな?」

「――――?」

サリナと一緒に、機甲科寮まで戻ってきたスズメ。

「あ、変なの」

「?」

寮の前には確かに変なのが置かれていた。

装騎用のカバーがかけられており、何なのかは分からないが機甲装騎よりは少し小さく、5mは無いように見える。

「サリナちゃん、アレって何なんだろ?」

「あれ、本当ね。いつの間にあんなの置かれてたんだろう」

サリナも不思議そうに首を傾げる。

「誰かが洗騎でもするつもりなのかな……」

怪訝に思いながらも、スズメはサリナと一緒に寮の1階にある多目的広場前へと足を進めた。

普段は解放されている寮1階の多目的広場――だが、今日はその扉が閉め切られており、中が見えないようになっている。

「さ、スズメちゃん入って入って!」

「え?」

サリナにそう促されたスズメだが、スズメの野生の勘が働いた。

(まさか――――ドッキリ!?)

間違っては無かった。

(扉を開けた瞬間黒板消しとか――パイ投げつけられるとか――――この部屋がお化け屋敷になってるとか!!)

ドッキリの方向性がちょっと違ったが。

「いやいや、ここはサリナちゃんからどうぞ」

「何で!?」

「ほら――レディーファースト、的な?」

「スズメちゃんだってレディーじゃないの! ここはスズメちゃんから」

「これで何かあったら、一生サリナちゃん恨むからね!!」

「スズメちゃん何か勘違いしてない!?」

文字通り勘違いだった。

だが、根負けしたのか、スズメは多目的広場への引き戸に手をかける。

「本当に何もないですよね?」

「大丈夫だから! 何でそんなに警戒してるのよ!」

「軽いトラウマが……」

見かねたサリナが、スズメの手に自分の手を重ねた。

「スズメちゃん、良い?」

「――――うん」

そして、スズメとサリナはその扉を開いた。

「せーのっ」

「誕生日、おめでとう!!!!」

扉が開かれると同時に、部屋の中からそんな声が投げかけられる。

綺麗に飾り付けされ、いろんな食べ物やお菓子が置かれたその広場。

そこには、たくさんのステラソフィア生が集まっていた。

一同の眼差しがスズメに向けられる中、スズメが口を開いた。

「――――今日って誰かの誕生日なんですか?」

それを聞き、思わず全員がずっこける。

それこそ、そこまで一連の流れが織り込み済みかのように。

「スズメちゃんの誕生日に決まってるじゃない!」

「私の――――」

スズメはSIDパッドを取り出すと、その画面を確認した。

日付は6月15日――――

「あ、本当です! 私の誕生日です!!」

「それじゃあ、改めて」

「誕生日おめでとう!!」

「ありがとうございます――!」

料理もデザートもステラソフィアの精鋭が手掛けた逸品。

テレシコワ・チャイカ製の肉料理、ディアマン・ロズ製の我国風料理、モード・ヘレネ製の家庭料理。

そして、チーム・ドキドキ マンゴープリン、チーム・パフェコムラード製のお菓子たち。

その料理にスズメ達は舌鼓を打つ。

「スズメちゃん、誕生日おめでとう」

「ですわ」

チーム・ブローウィングのツバサとチャイカがスズメのそばに来る。

「ツバサ先輩! チャイカ先輩! ――――この誕生日会は」

「サリナとかヒラサカが計画したんだってさ」

「スズメちゃん最近元気が無いように見えましたからね。みんな心配して集まってくれたのですわ」

「そう――――ですか」

「後でお礼言っとけな」

「はい、もちろんです!」

話をしたり、料理、お菓子を食べてひと時。

「今日はスズメちゃんの為にみんなでプレゼントも用意したわよ」

「お金を出し合ってね――スズメに、喜んで欲しいから」

「ヘレネも、頑張った」

「今からプレゼントを持ってくるさー」

「プレゼントまでですか!? なんか、悪いです……」

「気にすることないさ! 寧ろ、受け取らないと失礼さー」

「その通り」

「ありがとうございます……!」

それから運ばれてきたのは、スズメの背の丈ほどもあるダンボール箱。

「さ、スズメちゃん開けて開けて」

サリナの言葉に促されるまま、そのダンボール箱を開ける――――すると、そこには。

「こ、これは――――刀匠ショウ・セツユキ作の短刀、セツレン!?」

それは、機甲装騎用の短刀だった。

超振動機能こそ付いていないが、生きた伝説と言われる刀匠セツユキが鍛えたその刃は、アズルを纏う事によって超振動武器どころか、アズル武器以上の切れ味を持つという。

「色々考えたんだけどね……スズメちゃんが今一番欲しがっているって聞いてね」

「本当に、本当に貰っていいんですか!?」

「当たり前よ。スズメの為にみんなで買ったんだから――」

それ以外にも、個人個人のプレゼントを持ってきている人もいた。

手作りのお菓子に、服やアクセ、そしてひのきの林10箱入りダンボールを持ってくる人まで……。

だが、もっとぶっ飛んだプレゼントを持ってきた人がいた。

それは――

「それでは、私からもプレゼントをあげますわ~」

テレシコワ・チャイカ――その人だった。

「スズメちゃん、ちょっと表まで出ましょうか」

「表――?」

チャイカの言葉を聞いたスズメは、何か引っかかるものを感じる。

チャイカの後にスズメやその他のメンバーが続き、機甲科寮前の広場へとついた。

「私からの誕生日プレゼントはコレですわ!」

チャイカが示したのは、そう、機甲科寮前に置いてある「変なの」――それだった!

「こ、これですか!?」

「これですわ! では、皆さんにご披露いたしますわ。我がテレシコワ家が総力を挙げてスズメちゃんの為に作りあげたプレゼント――――!」

チャイカがパチンと指を鳴らす。

すると、その「変なの」にかかっていたカバーがバサリと地面へと落ちた。

そして、カバーの下から現れたソレは――――

「巨大な――――私?」

装騎に並ぶかと言うくらい巨大なサエズリ・スズメの姿をした人形が現れたのだ。

「その通りですわ! 3/1スケールのサエズリ・スズメちゃん人形! 私がお父様に頼んで作ってもらったのですわ」

「3/1って3倍か……」

ツバサが声を震わせながら呟く。

その声が全員に聞こえるくらい、その場は騒然としていた。

「スズメちゃんの身長は152cmだとデータにありましたので、その3倍ならスズメちゃんが大好きな機甲装騎の5mに近くなるし良いと思ったのですけど――――」

「そ、そうなんですか……なんかすごいですね……」

正直、どんな顔をしていいのか分からないスズメ。

「この3/1スズメちゃん人形のすごい所は、登頂にあるスズメちゃんの特徴、くせ毛に、なんと風力発電機能が搭載されていることなのですわ! 中の蓄電池に電力を溜めることで、このスズメちゃんの目と口が光を放ち、更に家の予備電源として使うこともできる優れものなのですわ」

それに反してチャイカは、意気揚々と3/1スズメちゃん人形についての説明を始める。

「テレシコワ家のあらゆる力を使って作ったこの3/1スズメちゃん人形――――スズメちゃんにプレゼントしますわ。ハッピーバースデー、スズメちゃん!」 

「あ、ありがとうございます…………」

「どういたしましてですわ~」

とても嬉しそうに説明するチャイカの姿を見ていたら、受け取れないとは言えないスズメ。

「スズメちゃん……コレ、どうすんだ?」

「風力発電出来るんでしたら、実家に送って使ってもらいましょうかね……」

スズメの実家に送る手筈が整うまで、3/1スズメちゃん人形は機甲科寮前に置かれる事となり、スズメはしばらく寮へ帰る度に心を抉られる事となる。

ちなみに、事情を知らない他のステラソフィア生も、「まぁ、新歓で活躍したし」と言う理由で勝手に納得してしまった為、そこまで大きく話題にはならなかったとか。

その3/1スズメちゃん人形を実家に送った所為で、プラハの実家が観光地状態になってしまったのはまた別の話。

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