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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:理想編
98/322

装騎アイドル☆カノンちゃん

「スズメ後輩!!」

「――何ですか、マッハ先輩」

「アイドルに会いに行くんですよぉ!!!」

「――――――パスで」

「行きやがるんですよ!!!!」

「え、ちょ、マッハ先輩!?」

6月13日土曜日。

最近、どこか調子の悪そうなスズメを見かねて、マッハがスズメを連れ出した。

新歓の時からあまりかっこいい所が見せられていないので、先輩として面目躍如。

スズメの気分を紛らわせようと考えたのだった。

場所は神都カナンの隣接都市ギーセン。

そこで今流行りの装騎アイドル、ムーンリット・カノンのパフォーマンスライブがあるという。

「チケットが2枚当たりやがったですからねー。タイミングよかったんですよ!」

「そ、そうなんですか……?」

機関車に揺られながらギーセンを目指す2人。

「ギーセンに着くまでに、このマハ様先輩がカノンちゃんの素晴らしさを教えてやるんですよ!!」

アイドルなどにはあまり詳しくないスズメだが、それでも装騎アイドルカノンの名は聞いたことがあった。

何人かいる装騎アイドルの中でもガチ勢と噂の、騎使たちの中でも人気の高いアイドル。

それ故に、スズメのような装騎バトル一辺倒の人間にも認知度は高い。

マッハの持ってきた音楽プレイヤーでムーンリット・カノンの曲を聴きながら、マッハから色々な話を聞いてる内に、機関車はギーセンへと到着した。

「へぇ、ここが会場――――屋外、しかも装騎バトル用の防護フィールド発生装置あるじゃないですか……」

「カノンちゃんは装騎でのパフォーマンスを必ずやるんですよ! だから、安全の為に防護フィールドが大事なんですよー」

「パフォーマンスですかぁ。ちょっと楽しみですね」

少し元気が出てきてるようなスズメの姿に、内心マッハはガッツポーズをする。

「マハはグッズを買いに並んでくるんですよ~。スズメ後輩は迷子にならないようにするんですよ!」

「大丈夫ですよ!」

タタタタターとグッズ販売所へと駆けていくマッハを見送ったスズメ。

「――今のうちにトイレ行っとこ」

トイレで用を足し、元の場所に戻ろうとしたスズメだったが。

「あれ、ここ何処ですか……!?」

スズメは、(そう言えば)方向オンチであった。

「ちょっとアナタ、ここで何をしているの?」

不意に声をかけられ、スズメは肩を震わせる。

そこに立っていたのは、肩にかかる長さの茶髪でスーツを着た女性。

「あ、いえ、ちょっと道に迷ってしまって……」

「本当に――? カノンちゃんのファンとかじゃなくて? 最近、そういうファン多いのよ。迷ったとか言ってカノンちゃんに近付こうとする不届きな輩がね! 全く、変な脅迫状とか来るし一体どうな――――――あっ」

慌てて自分の口を茶髪の女性。

しかし、その言葉をスズメはしっかりと耳にしていた。

「脅迫状――――?」

「ユヅさん、何をしているんですか?」

そんな声と共に、開かれた扉。

部屋の中から、ふんわりとした黒髪に、短めのポニーテールをした女性が出てきた。

「カノンちゃん――!」

そう、その女性こそ今人気の装騎アイドル、ムーンリット・カノンだった。

そして、2人の関係から見るにユヅと呼ばれた女性は、カノンのマネージャーか何かだろう。

「ユヅさん、その人は――――」

「あ、ああ、彼女は――――」

「ステラソフィア女学園のサエズリ・スズメちゃんですよね!」

「わ、私のこと知ってるんですか!?」

「はい! 新入生歓迎大会も拝見させて頂きました!」

カノンに握手を求められ、思わず応じてしまうスズメ。

「でも、なんでサエズリ・スズメちゃんが――――? もしかして……」

「そうよ。カノンちゃんのパフォーマンスの相手としても、警備員としても優秀だとアタシが見込んで手伝いを頼んだのよ!!」

「ええ――――っ!!??」

ユヅの言葉に驚きの声を上げたのは、当然のことだが、スズメ本人だ。

「ユヅさん、嘘ですよね」

「嘘じゃないわ。ねえ、サエズリ・スズメさん」

「だってサエズリ・スズメちゃんすごい驚いているじゃないですか!」

「嘘じゃないですよね――――?」

ユヅの謎のプレッシャーに押され、スズメは

「は、はい」

と思わず答えてしまった。

それから、通された控室でスズメは話を聞くことになった。

「これがその脅迫状よ」

ユヅが懐から取り出した1枚の手紙。

「ムーンリット・カノン、今日のライブを絶対に失敗させてやる――――ってこれだけですか」

「そうなんです。今朝、この会場に届けられていて……誰が送ったのか全く分からないんです」

「アタシはライブを中止するべきって言ってるのよ。でも、彼女が」

「私は、今日集まってきてくれた人たちの為にちゃんとライブをしたいんです。だから……」

「分かりました――――全力でやりましょう! カノンさんは、私が全力で守ります!!」


「全く……スズメ後輩どこに行きやがったんですかァー!」

マッハのSIDパッドにはスズメから「先輩はカノンさんのライブを見ていてください」と一言だけメールが入っており、マッハが電話をかけても、メールを送っても音沙汰なし。

仕方ないので、会場に入ったマッハは急にいなくなったスズメに愚痴を言いながらも、ライブステージを眺めていた。

不意に、ライブ会場に軽快な音楽が鳴り響く。

その音楽と共に、1騎の装騎がライブステージへと姿を見せた。

緑がかった青色に、浅黄色のワンポイントが入った装甲色。

腰部ストックに2丁の14mmサブマシンガン61Kを備えたPS-Asアサリア型の装騎――それがムーンリット・カノンの装騎ドルチェだ。

「うおー!! カノンちゃーん!!!!」

装騎ドルチェの登場に、マッハをはじめとして会場の人々が湧き上がる。

ファンの人たちに手を振る装騎ドルチェ。

その姿を目にしながら、もう一騎の装騎がライブ会場へと姿を現した。

薄いイエローボディにオレンジのラインが入ったPS-Aアブディエル型の装騎サニーサイド。

装騎サニーサイドは、静かに装騎ドルチェに歩み寄ると、その両手にウェーブナイフを構えた。

「ふふっ」

観客に手を振ってた装騎ドルチェは、その姿を見て、腰のストックからサブマシンガン61Kを取り出し、その銃口をサニーサイドへと向ける。

「GO!」

カノンの声に呼応するように、ライブ会場を防護フィールドが取り囲み、音楽が切り替わる。

――――と、同時に、装騎ドルチェが両手に持ったサブマシンガン61Kを装騎サニーサイドへ向けて発砲した。

閃くような輝きが、その銃口から放たれる。

キラキラと輝く多色のラインが、装騎ドルチェの射線を彩った。

「曳光弾――――」

装騎ドルチェの持つサブマシンガン61Kには、3発に1発程度曳光弾が混じっている。

その為、装騎ドルチェの銃撃には様々な色が付き、まるで虹の雨を降らせているような見映えする戦いをすることができるのだ。

装騎サニーサイドは、その銃撃をかいくぐりながら装騎ドルチェへと急接近。

そして、その手に持ったウェーブナイフを閃かせた。

そのナイフの一撃を、装騎ドルチェは紙一重でかわす――――攻撃をかわしながら、カノンは音楽に合わせて歌を歌いだした。

「夢と希望? どこにあるの? わかんないなーい、そんなマイ日♪」

装騎サニーサイドの腕の下から装騎ドルチェをくぐらせながら、弾切れになったサブマシンガン61Kのマガジンを捨て、大腿部に装着された予備マガジンを起立させるとリロード。

「甘くユルく、全部食べちゃお♪ それが乙女、でしょ?」

ガガガガガガ!!!!

装騎サニーサイドの右肩関節を的確に狙った銃撃を浴びせた。

装騎サニーサイドはその衝撃に逆らわず、銃弾に押されるままに右肩を射線から外すと、装騎ドルチェに向き直る。

「つまらない日常でさ……ふて腐れてさ……ふさぎ込んでさ――」

両手のナイフを同時に突き出し、装騎ドルチェのコックピットを狙う装騎サニーサイド。

装騎ドルチェはその一撃に――――退かない。

装騎サニーサイドの両腕を流しながら、装騎ドルチェは蹴りを放つ。

「溺れていたくないね、咲き誇りたいんだね……甘い甘い――」

軽快に舞うその間に、装騎サニーサイドが起き上がった。

「Sweetaste My――」

そこへ――――

「Dreamin' DOLCE♪」

装騎ドルチェは右手のサブマシンガン61Kを装騎サニーサイドに発砲。

「Bitterな自分ではダメダメなの♪」

弾光のラインを避けながら装騎ドルチェに駆け寄る装騎サニーサイド。

「SpiceとSugar、引き立ててShower♪ 甘く甘く」

弾切れになった右腕のサブマシンガン61Kをリロードしながら、

「So, Lovin' Sweetaste」

今度は左手に持ったサブマシンガン61Kを装騎サニーサイドに発砲。

「Betterな女の子じゃ足りないから♪」

だが、装騎サニーサイドはものともしない。

その手に持ったウェーブナイフを逆手に持ち直し、1度のフェイントを入れてから――斜め上から切り下す。

その1撃は――――的確に装騎ドルチェのボディを捉えていた。

だが――――

「SpiceとSugar♪」

突然沈み込んだ装騎ドルチェに、装騎サニーサイドの1撃は空を切った。

装騎ドルチェのベースとなったアサリア型は異常な関節可動範囲を誇る――それにより、地面に座るように開脚。

「美味しさのColor♪」

そのまま、開いた足で蹴りを放ち、装騎サニーサイドを転ばせ、

「それが私のBestaste♪」

倒れこむ装騎サニーサイドとすれ違うように素早く立ち上がった装騎ドルチェ。

装騎ドルチェは倒れこむ装騎サニーサイドの背中を踏み付けると、その背後のコックピットハッチに両手のサブマシンガン61Kの銃口を向けた。

それと同時に、曲が終わりを迎える。

人々の歓声とともに、防護フィールドが解除。

「みんなーありがとー!」

その歓声に装騎ドルチェの手を振って応えるカノン。

その時だった――――

ガガガガガガガ!!!!

「きゃぁっ!」

「本当に――!」

激しい銃撃が突如として放たれる。

咄嗟にその銃撃から身をかわす装騎ドルチェと装騎サニーサイド。

銃撃が来たその先――――それは、装騎入場口の上――――いつの間にか一騎の装騎が立っていた。

「あれは――!」

「アブディエル型――! 武装は……17mmの対装騎用機関銃G3……それに追加の大型マガジンパック!」

14mm程度の拳銃弾を使用する片手で扱える単砲身連射銃を短機関銃サブマシンガンと呼ぶのに対して、両手で支えて使用する大型連射銃を機関銃マシンガンと呼ぶ。

「ユヅさん!」

カノンの声に応えて防護フィールドが再展開された。

突然の出来事に、観客の一部に動揺が走るものの、一部は演出か何かと思っている人もいる。

「スズメちゃん!」

「はい!」

カノンの言葉に頷いたスズメは装騎サニーサイドを走らせる。

突如として現れたアブディエル型に、1本のナイフを投げ放った。

そのナイフは、アブディエル型の脚部に突き刺さると、突如として電撃が閃く。

体勢を崩してスタジアム内に落下するアブディエル。

「――! あの装騎……」

「大したこと無い!」

スズメとカノンは確信する。

立ち上がったアブディエル型は、17mm機関銃G3を装騎サニーサイドと装騎ドルチェに向かって連射。

「スズメちゃん、私が引き付けるよ!」

「諒解です!」

装騎ドルチェがサブマシンガン61Kをアブディエル型に撃ち放つ。

それに対して、アブディエル型が撃ち返した。

その間に装騎サニーサイドは、アブディエル型に急接近。

「行きます!」

装騎サニーサイドに気付いたアブディエル型は、その銃口を装騎サニーサイドに向ける。

だが、その銃撃は――――

「ムーンサルト――――」

当たらない。

「ストライク!!」

体を捻り、相手に背を見せた瞬間に跳躍。

綺麗な弧を描きながら、アブディエル型の背後に衝撃を殺すように柔らかく膝を付く。

そして、アブディエル型の両足を――――切り裂いた。

会場に歓声が沸く中――――1人の少女が舌打ちをする。

「――――雑魚が」


「犯人は30代の一般男性――動機は不明だけど、個人的な怨恨だと思われるわ」

「その人は――?」

「警察に引き渡したわ。詳しいことはこれからね」

盛況のままライブが終わった後のカノンの控室。

カノンとスズメとユヅは椅子に腰かけながら、乱入装騎について話をしていた。

「スズメちゃん、今日はありがとう」

「――いえ、大事にはならなくて良かったです」

観客の多くも、あの乱入はパフォーマンスの一環だと自己解決してる人も多かったらしく、とりあえずは穏便に済んだと言える。

「スズメちゃん、何かお礼がしたいんだけど――」

「お礼とか――別に――――」

ふと、ずっと待たせっぱなしのマッハの姿が頭に浮かぶ。

「それじゃあ、サインください。先輩を心配させちゃったと思いますから」

「ええ!」

カノンのサインが書かれた色紙が入った紙袋を持ったスズメ。

「それでは、失礼しますね」

「うん、スズメちゃん――今度、本気で装騎バトルしましょう」

「はい、機会があれば――!」

カノンの控室から出ようとしたスズメ――だが、スズメが扉に手をかけるより先にその扉が開かれた。

カノンの控室へ入ってきたのは一人の少女だった。

明るいゆるふわとした茶髪に、端正な顔立ちの少女。

「あら、失礼~」

スズメは静かに頭を下げると、その控室を後にする。

「カノンさん強かったなぁ……」

「スズメ後輩!!」

ライブ会場の裏から出てきたスズメの姿を見つけたマッハが駆け寄ってきた。

「あんな所で何してやがったんですかァ!!」

「あはは……済みませんマッハ先輩。心配させましたよね……」

「当たり前なんですよ!!」

「あの――これ、お詫びです……」

正直な話、色々と言いたいことがあったマッハだが、

「まぁ、仕方ないんですよ」

どこか明るい表情になってるスズメの姿と、自分の名前が入ったムーンリット・カノンのサインに怒りは抑える事にした。


ステラソフィアキャラ名鑑42

挿絵(By みてみん)

名前:Moonlit 花音

読み:ムーンリット・カノン

生年月日:聖歴148年2月14日

年齢:19歳(4月1日現在)

出身地:マルクト国・プシィーブラム

身長:160cm

体重:50kg

使用装騎:PS-As2S:DOLCE(ベース騎PS-As2:Asaria)

好みの武器:MP61K

アイドルファンだけではなく騎使にも人気のある装騎アイドル。

今、マルクトでは最高の人気を博しており、他国でも隠れファンは多い。

アイドルの中でも装騎ガチ勢と噂され、実際、その実力は確か。

趣味は風呂上りにチョコレートを食べる事。

個人的な声のイメージは澁谷梓希さん。


ノリで詞を考えてたらフルで出てきたので(要らないと思うけど)載せときますね

ムーンリット・カノンで「夢見てDOLCE」


夢と希望? どこにあるの? わかんないNight そんなMy日

甘くYou Look 全部食べちゃお それが乙女でしょ?

つまらない日常とか 投げ出してさ 駆け出してさ

溶け込みたいんだね 夢見ていたいんだね

甘い甘い Dreamin' DOLCE

Bitterな口溶けには 飽き飽きなの

たっぷりとSugar ふりかけてShower 甘く甘く

So, Lovin' Sweetaste

Betterな後味じゃ 足りないから

たっぷりのSugar 盛り付けてLover

それが私のBestaste


今は現実? どうでもいいの? おもんないNight とりまI槌

甘くYou Look 憧れたいの それが乙女でしょ?

つまらない自分とか 捨てっちゃってさ 変えちゃってさ

色づきたいんだね 羽ばたきたいんだね

甘い甘い Dreamin' DOLCE

Bitterな世の中は 懲り懲りなの

いっぱいのSugar そそがせてShower 甘く甘く

So, Lovin' Sweetaste

Betterなひと時じゃ 足りないから

いっぱいにSugar 積みあげてHour

それが私のBestaste


つまらない日常でさ ふて腐れてさ ふさぎ込んでさ

溺れていたくないね 咲き誇りたいんだね

甘い甘い Sweetaste My Dreamin' DOLCE

Bitterな自分では ダメダメなの

SpiceとSugar 引き立ててShower 甘く甘く

So, Lovin' Sweetaste

Betterな女の子じゃ 足りないから

SpiceとSugar 美味しさのColor

それが私のBestaste

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