ステラソフィア☆マラー:こんな女子高生は嫌だ ほか
【こんな女子高生は嫌だ】
「わぁ、これ可愛いね!」
「だからよねー、個人的にはこっちも可愛いと思うさー」
「えー、それよりはコッチの上下一揃いのやつがいいなー」
雑誌を見ながら楽しそうに談笑するスズメとイヴァ。
その様子を見て、サリナが尋ねた。
「何の話してるの? ファッション?」
「え? 何言ってるの?」
「装騎のパーツに決まってるさー」
「服を買う為に使うお金なんて無いよねー」
「だからよー」
「そうよね……アナタ達にそんなこと聞いたのが間違いだったわ」
この二人がファッションに興味が薄そうだとは思ってはいたものの、今の反応でサリナは確信した。
この二人はファッションには興味がない、と。
「この雑誌の懸賞応募しようかなー」
「何にするの? 20mm榴弾砲とか?」
「んー、このツインブレード・トンボギリとかカッコイイかなーって」
「なるほどー」
そしてそんな様子の二人を見てサリナは思った。
(ダメだ、この二人はこのままだとダメだ)
「ねえ、二人とも服とかはどうしてるの?」
「どうしてるって? ちゃんと洗ってるよ??」
「だからよー、柔軟剤もつかってるばーよ。アイロンまではしないけど」
「いやそういう事じゃなくて……自分で服を買ったりしないのかなってことよ」
「ああ、私はお母さんに任せてるかなぁ」
「イヴァもさー」
二人の回答は案の定。
「サリナちゃんは自分で買ってるの?」
「当たり前じゃない。うちの親が買ってくる服――――ダサいし」
「確かに親が買ってくる服はダサいわよね」
その話に反応したのは――――
「ヒラサカさん!?」
「何よその顔……」
「まさかヒラサカさんが反応するとは――全く思っても無かったわ」
「心外ね」
「ヒラサカさんの親ってどんな服買ってくるの?」
「んー、まぁ、大体着物ね」
「着物!?」
イザナの言葉に、サリナだけではなくスズメやイヴァも驚きを口にする。
「もしかしてイザナちゃんって家だと着物だったり――――」
「着ないわよあんなの。面倒くさいし」
スズメの問いに真顔で「無いわ」と首を横に振るイザナ。
「着物を着たくないから自分で服を買うんだしね」
「へぇ、ヒラサカさんって私服はどんなのなの?」
「どんなのって――」
言いよどむイザナに、スズメが口を開いた。
「私、見たことあるよ~」
「どんなのだった?」
「うーん……すごく…………」
「すごく?」
「パンクでした」
「着物が嫌でパンクってどういう方向なのよ……」
放課後は四人で服を見に行くことになりました。
【楽しくショッピング】
「うわぁ! これ可愛いー!!!」
「だからよー!! ここのラインが超キュートさー!」
「……二人とも早くいくわよ! 今日は服を見るんだからね!」
「これも服じゃないですかー!!!」
「だからさ! ちゃんとレディースだし!!」
そういう二人が見ていたのは、装騎搭乗用の戦闘服。
「いい加減装騎から離れなさいよ!」
「えー」
「ぶぅー」
不満たらたらなスズメとイヴァに、無言でついてくるイザナと言うサリナ率いる四人はステラソフィア中央街に来ていた。
「スズメちゃんとイヴァちゃんって普段はどんな服着てるの?」
「私はなんかアレですよ。安いメーカーの安い服ですよ」
「イヴァはなんかアレさ。安いメーカーの安い服さー」
「全く分からんわ……」
その時、通りかかった店を見てスズメとイヴァが口をそろえて言った。
「あ、丁度あんな感じのヤツです!」
「お、丁度あんな感じのヤツさー!」
そこは安さと手軽さが売りのファッションセンター。
その店頭に飾られているマネキンを指さしてスズメとイヴァがそう言ったのだった。
マネキンが着ていたのは、「GIVE ME WORK」と書かれた浅葱色のTシャツ。
その上から、七分袖くらいの長さがある薄手でフード付きの橙色のジャケット。
ズボンも七分でカーキ色をしている。
「ああ、なるほどね……」
「今度私服で集まってみたいわね」
そんな二人の様子を見て、敢えてイザナがそんなことを口にする。
「あの二人、同じような服着てきそうね……」
暫く歩き着いたのは、ステラソフィア都市内だとサリナがよく通うというお店Varhany。
「「うわぁ……」」
店に入ってのスズメとイヴァの第一声。
「うわぁって何ようわぁって」
店内は至ってシンプルな装飾ながら、ガーリーなファッションがズラリと揃えられており、なんともオシャレ。
「なんか、いい匂いがする……」
「アカン、これはアカンさー」
「ロバーツ先輩の口癖移ってる」
ミカエラが「口癖ちゃうわ」とか言ってる気はするがそれはまぁ置いといて。
「アカンって何がアカンのよ……」
「女子力が、女子力が強すぎて――」
「これは、うわぁ、これは強すぎますッ。イヴァちゃん!」
「うん、スズメちゃん!」
「待て」
二人揃って店から出ようとしたスズメとイヴァの肩をサリナが掴み引き止めた。
【女子力とは何か、女子とは何なのか】
「スズメちゃんこの服どう?」
「女子力高すぎて吐きそうです……」
「イヴァちゃんそっちの服は?」
「女子力高すぎてなんか体が痒くなるさ……」
「どうしろって言うのよ……」
服選びに入り、サリナが幾つか服をスズメとイヴァに着せてみるが、結果は芳しくない。
「仕方ないわ。ここの女子力は純度が高すぎる……高濃度で純度の高すぎる女子力は逆に毒になってしまうの」
「女子力って何なの!?」
「やっぱり最初は低濃度の女子力で少しずつ慣らしていくべきだったわね……このままだと、女子力に中てられて死んでしまうわ」
「死にはしないでしょう……」
だが、二人の様子があまり思わしくないのも事実ではあった。
「……分かったわよ。もうちょっと女子力低いとこ行きましょう」
次に着いた店はLIMETKAと言う、どちらかと言うとシンプルな服が多い店。
「このお店はどう?」
「あ、ここならまだ入れそうです」
「イヴァも大丈夫そうさー」
この店はシンプルな服のほかにも、学校の制服をオシャレにアレンジしたような服も多く置いてあるのが特徴的。
「コッチのシャツとかどうかな?」
「うーん、あまり似合わないです……」
「イヴァちゃんは?」
「イヴァもさぁ……」
この店でもいくつか試着してみるものの、スズメとイヴァに似合いそうな服は見つからない。
「スズメ、これ着てみて」
「分かった。ちょっと待っててね」
そんな中、イザナが持ってきた服をスズメが着ようと試着室に入っていく。
それから暫く――
「どうですか?」
出てきたスズメが着ていたのは、ワンピースタイプの制服をモデルにした服だ。
色はグレーで若干地味な雰囲気だが。
「おお、あとコレも」
「?」
スズメはイザナに言われるがまま、渡されたものを頭に被った。
「――――完璧ね」
それは黄色い帽子。
そのスズメの姿はまるで――――
「って小学生みたいじゃないですかぁー!!!」
「似合ってるわよ」
「嬉しくないです!」
「スズメの誕生日っていつ?」
「6月15日ですけど」
「わかった」
「ってこの服買う気ですよね!?」
「まさか」
スズメの言葉に真顔で返したイザナだが、もうすでにその左手にSIDパッドが握られているのがスズメには見えた。
見えたからと言って結局何もできないのだが。
それからも服を見たり、他にもお店を何件か回ったりしたのだが、結局収穫はかった。




