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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
シーサイドランデブーとプリティーキュートの実地戦
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エネミー・オブ・エネミー

「仲間が来たみたいね――――」

新たに姿を見せたナイト・テイラーの装騎スウィートレディを見て、アルジュは呟く。

「長腕の装騎……確か、ゼルエルとか言ったっけか」

「よっしゃぁ、這い蹲れ――」

「って、テイラー危ないじゃない!?」

左腕のハンマートゥフォールの拳を固め、アルジュの装騎チェルノボーグへ殴りかかるスウィートレディ。

その一撃をクイーンの装騎ラプソディは回避する。

装騎チェルノボーグへと突っ込むように突き出されたスウィートレディの拳は――――

「そんな直線攻撃っ!」

あっさり装騎チェルノボーグに回避される――だけではなかった。

「なっ、左腕が――――!!??」

いつの間にか、左腕のハンマートゥフォールが切断されていたのだ。

「スウィートレディの拳にワイヤーを巻き付けて態勢を崩し、その後に超振動機能で左腕を切断したのね……」

「コイツ――強いぞ!?」

「だから苦戦してるんじゃないの!」

「甘い甘い!!」

そのまま、ワイヤーをブンと振り回し装騎スウィートレディの両足を切断。

「まさかッ!?」

「そして――止めっ!」

「テイラー!!!!」

「うおっ!?」

装騎スウィートレディの機能を完全に停止させようとする装騎チェルノボーグ。

だが――それを装騎ラプソディの体当たりが阻止した。

激しい衝撃を受けて吹き飛ばされる装騎チェルノボーグ。

「テイラー、大丈夫!?」

「あ、ああ……問題ないよ。死ぬかと思ったァ!!!!」

「さーって、手負いだらけだし――ちゃくっと倒して、報酬とパーツを頂――――っ!!」

不意に装騎チェルノボーグがその身をかわす。

クイーンも何かを察し、動けないスウィートレディの前に立った。

その瞬間――爆発が起こった。

「――――奇襲!? でも、この火力――マジャリナ王国の装騎じゃ……」

クイーンはサブディスプレイへと目を移す。

そこに表示されたのはコードD1。

「これが噂の――――ディープワンなのね」

「ディープワン!? あの!!?? チッ、よりによってこんな時にィ!!!!」

「アレは――ディープワン……まさか、この戦いに偽神教が――――」

戦いも忘れ、闖入者ディープワンに目を奪われる3人。

『rrrrrrrrrrrrrrrrr』

ディープワンは奇妙な、声のような震えを上げると餓えたケモノのように突っ込んできた。

「うわっ!?」

拳を振り上げるディープワン。

その一撃を装騎チェルノボーグはワイヤーを使い受け流す。

「偽神教は――ワタシがぶっ倒す!!!」

「あの機動力――――今のうちに何とかつぶさないと厄介だわ――」

ガン!

軽い音がしたかと思うと、装騎ラプソディの装甲にコードのようなものが突き刺さっていた。

「これは――――」

『そこの騎使、聞こえる?』

「貴女は――この黒いベロボーグの騎使?」

「チェルノボーグ、よ。それよりも、アンタ達はこの戦域から離脱しなさい!」

「は? 何を言ってるんですか――」

「良いから!!! 偽神教が介入した時点で、この戦場は正常じゃあないの。死にたくなかったらそこの動けない装騎の騎使も連れて逃げなさい」

「なんでそんな事を――――」

「ワタシが人を殺すのは良いけど、偽神教に人を殺されるのはムカツクのよ――――!」

「何それ――無茶苦茶じゃないの――――それで貴女はアイツを倒す気?」

「モチロン――――」

そういうと装騎チェルノボーグは単騎でディープワンへと向かっていく。

圧倒的な性能差がありながら、それを物ともせず、ディープワンの攻撃を凌ぐ装騎チェルノボーグ。

しかし、イマイチ決定打に欠けている感は否めない。

「分かったわ――――――テイラー!」

「何だよ――――!」

「スウィートレディの右腕をパージしなさい。そして西に走りなさい。ジャンヌちゃんがコッチに向かっているはずよ」

「は!? んじゃ、クイーン先輩は――――」

クイーンはパージされた装騎スウィートレディの右腕を掴みとり、自らの右肩に接続する。

「ディープワンとやり合おうってーのカ!?」

「ふっ、恋と戦いは命がけなのよ」

右腕にハンマートゥフォールを装備した装騎ラプソディは、ディープワンと交戦する装騎チェルノボーグへと加勢した。

「ステファニー、あの黒いベロボーグ――――チェルノボーグと通信出来る回線を探して」

『クイーン、本当にやるつもりの!?』

「当たり前じゃない――――!」

『はぁ――分かったわ』

クイーンは自身のサポートパートナーである技術科4年レディー・ステファニーへとそう告げると、左手に持ったチェーンブレードでディープワンへと切りかかった。

「なっ――――あのマルクト騎、逃げろって言ってやったのに!」

「ハロー、チェルノボーグの騎使。私はクイーン。マーキュリアス・クイーンよ。マルクト神国ステラソフィア女学園――――」

「何悠長に自己紹介してんのアンタ!」

「あら、共闘する相手に自己紹介をするのは礼儀でしょ?」

「此処は礼儀なんて無い戦場なのよ!? ――っ、これだからマルクトの騎使は――――!!!」

そんな会話をしながらも、ディープワンの猛攻を凌ぎ、攻撃を加える装騎ラプソディとチェルノボーグ。

「だーもう、分かったわよ。アンタがディープワンと戦いたいなら勝手にしなさい!」

「ええ、そのつもりです――――」

ディープワンの動きは、真っ直ぐで読みやすい。

だが、そうでありながら奇妙な鋭さと、装騎とは思えぬ機動によってクイーンとアルジュは翻弄される。

「貴女、口ぶりからしてディープワンと戦ったことがあるんでしょう? 何か攻略法とかは無いの?」

「あったら苦労しないよ。それにコイツら、戦う度に色々なことを覚えていってる。それに個体個体で個性があるのよ」

「個性――――」

「戦い方からして、このディープワンは近距離物理型――――まぁ、よくいるやつね。ただ――」

突然、ディープワンが両腕を突き出す。

すると、その両腕から突如、ブレードのようなものが生えた。

「何か――見たことあるわね……あれ」

そのブレードの周りを青黒い輝きが弾け始める。

「チェルノボーグの、避けなさい!」

「言われなくても!!」

飛び退いた装騎ラプソディと装騎チェルノボーグ。

その一瞬後、青黒い閃光が先ほどまで二騎が居た場所を焼いた。

「魔電霊子砲――――!」

「魔電霊子砲ですって!? そんなんマルクトくらいしか使って――――」

「まさか――――レイ・エッジ!?」

それはクイーンの言う通り、どことなくレイ・エッジに似ていた。

「全く、厄介な敵だわ」

「四の五の言ってる場合じゃないね――――アンタ、クイーンって言ったわね。ワタシがディープワンを縛って動きを止めるよ! だからアンタはディープワンの肩甲骨の間辺りを狙いなさい。そこがディープワンの弱点よ」

「分かったわ!」

アルジュはワイヤーを手にディープワンへと駆け出す。

「ディープワンの動きが単調なら――ワタシが捕えるのも容易い!」

ディープワンが拳を振り上げ、装騎チェルノボーグへと突き出す。

それを容易くかわすと、その腕にワイヤーを巻き付ける。

そのまま、流れるようにディープワンの周囲を迂回。

そうしながら、全身を縛り上げた。

ギィィィイイイイイイイ

ブブブブブブブブブブブ

超振動するワイヤーに対抗するかのように、ディープワンの体が震える。

「クイーン!!」

「ええっ」

その体に装騎ラプソディがチェーンブレードを突き刺した。

ギィィイイイイイイイイイイイイイイイイイ

激しい音と火花を散らし、突き刺さっていく。

『ggggggggggggggggg』

突き刺さるチェーンブレードに悲鳴を上げるようなディープワンの唸りが響く。

「くっ、チェーンブレードが――これ以上刺さらない」

だが、突き刺すチェーンブレードを押し返すように、ディープワンが激しく呻く。

「それなら――――、這い蹲れ」

クイーンは右腕に装備されたハンマートゥフォールを振り上げた。

「そして――――死ねっ!!!!」

ゴゥオオオオオン!!!

ハンマートゥーフォールの質量が、突き刺さったチェーンブレードを押し付ける。

火薬の爆発力も相俟って、チェーンブレードはディープワンの中枢を貫いた。


オマケ:四コマステラソフィアM

挿絵(By みてみん)

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