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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
シーサイドランデブーとプリティーキュートの実地戦
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傭兵少女アルジュビェタ

「へぇ――これがP-3500ベロボーグかぁ」

待機していた40騎のP-3500ベロボーグ。

その内の一騎――黒く染まったベロボーグの操縦席にその少女の姿はあった。

歳は16――しかし、その年齢の割には大人びた彼女の名はピシュテツ・チェルノフラヴィー・アルジュビェタ。

彼女はマジャリナ王国の軍人でなければ、ルシリアーナ帝国の所属でもない。

彼女はフリーの傭兵だった。

「マルクト神国の装騎落とせばたんまりとお金が貰える――――いいね、やりがいのある仕事だわ」

「傭兵アルジュ――我々は君がどうなろうが知ったことは無いが、くれぐれもマジャリナ国軍への被害だけは出さないようにしてくれたまえ」

「ハイハイ、でも代わりにワタシだって我が身が可愛いからね。ダメだと思ったらすぐにトンズラさせてもらいますよーっと」

「勝手にしたまえ――」

「うっす、諒解! ――――やれやれ、ザンネンな騎使しかいなくて、傭兵まで駆り出すような国のお偉いさんがどの口を利くのかねぇ」

そう小言を言いながらも、P-3500ベロボーグのシステムチェックを慣れた手つきで済ませる。

「前金としてP-3500――さらに撃破報酬と成功報酬でがっぽがっぽ! ――まぁ、相手がマルクト神国じゃなければ楽な仕事なんだけどなぁ……」

P-3500は、性能こそマルクト神国装騎を除いた現行装騎だとトップクラス――その反面、動作不良が多く、起動出来ないような不良品も多いとか。

実際、アルジュが通信に耳を傾けていると、配備した40騎のベロボーグだが、その幾つかから正常に動作しないという旨の通信が送られてきているのが分かる。

「これじゃあ、良くて20騎くらいしかあてにならないかな……」

だが、その報告はアルジュにとっては不満となるものではなかった。

寧ろアルジュは喜んでいた。

何故なら、多くのベロボーグが起動出来なければ出来ないほど、アルジュの獲物が増えるからだ。

「よし、ワタシのベロボーグは完璧! あ、黒いから白神ベロボーグじゃなくて差し詰め黒神チェルノボーグって所かな」

事前に動作をチェックし、加えて自分自身で手を加えていたのが功を奏した。

装騎の修理、改造を自分で出来なくては傭兵なんて勤まらないのだ。

「ワタシの装騎から一番近い敵は――――ふふっ、ガトリングを持ったヤツね」

そう呟きながら定めた目標――――それはマーキュリアス・クイーンが駆る装騎ラプソディ。

撃破目標を定めたアルジュは静かに深呼吸をすると、その右足を軽くトントンと二回地面に付ける。

「アルジュビェタ、チェルノボーグ――――以後参戦!!」

アルジュの言葉に従い装騎P-3500ベロボーグ――改めチェルノボーグが――――駆け出した。


「1騎のベロボーグが――高速でコッチに向かってくる!?」

高速で装騎ラプソディへと接近する騎影――アルジュの駆る装騎チェルノボーグの姿にクイーンは驚きの声を上げた。

いくらP-3500ベロボーグがかなりの性能を有するとはいえ、たった1騎でマルクト装騎へと戦いを挑むなど無謀なのは今までの戦闘結果から分かり切っている。

「よっぽど自信があるのか――或は、よっぽど愚かなのか――――」

レーダーが接近するチェルノボーグの姿を捉え、ディスプレイへと表示をする。

「黒いベロボーグ――――武装はもって無いようだけど、素手で私とやろうというのかしら――」

「ふっ、見つけた――ワタシの獲物だ!」

「蜂の巣にしてあげるわ――!!」

装騎ラプソディが左手に構えた14mmキラークイーン・ガトリングの銃口を装騎チェルノボーグへと向けた。

「撃て――!」

キュルルルルルルルルルル

徐に回転を始めたガトリングは、やがて高速回転を始め、それと同時に銃口から弾丸を吐き出した。

ガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!

狙う必要は無い。

ただ、敵を追いかけ、圧倒的な弾数で敵を抑えつければいい。

煉瓦で舗装された道路に、弾痕が刻まれ、煉瓦が弾け飛ぶ。

「なるほど、激しい銃撃ご苦労様です! だけど――――」

装騎チェルノボーグは腰の後ろに手を伸ばした。

「武器――――!? 何を使う気かしら――――――」

「さぁ、行くよ!」

装騎チェルノボーグが握ったのは“く”の字型に曲がった投擲棍棒――――ブーメランだ。

そして、装騎チェルノボーグは勢いよくブーメランを装騎ラプソディの足元に投げ込んだ。

勢いよく回転し、装騎ラプソディに向かって飛翔するブーメラン。

だが、そのブーメランは装騎ラプソディを直接狙っているようではない。

ラプソディの足元を旋回しながら過ぎ去ったブーメランは、その行先を投擲したその主、チェルノボーグへと向けた。

「っ!! しまった――――!」

何かに気付いたクイーン。

それに呼応して、装騎ラプソディが右手をブーメランへと伸ばした。

グッと何かを掴むその右手。

それはブーメランを――ではない。

ブーメランの後に尾を引く細い何か――――そう、それはワイヤーだった。

「捕まえたわ――!」

装騎ラプソディがワイヤーを掴んだ事で、その先に繫がったブーメランも動きを止めて地面へと落ちる。

「よく気付いたね――でも!!」

装騎ラプソディの動きが止まった一瞬を見計らって、アルジュは装騎チェルノボーグを装騎ラプソディの懐へと飛び込ませた。

装騎チェルノボーグは装騎ラプソディの右手側に向かって走る。

そうすると、ワイヤーが装騎ラプソディを取り巻くような形になる。

「理解したわ」

だが、クイーンも為すがままにはされるはずがない。

クイーンはワイヤーを掴む右腕に力を込め――その手に備わったアズル放出機から微量のアズルを放出した。

一瞬蒼白い輝きが手のひらの中で輝いたかと思うと――ワイヤーはアズルの熱量によって焼き切れる。

だが、その隙に装騎チェルノボーグは装騎ラプソディの側面へと回り込んでいた。

「1撃――――!」

装騎チェルノボーグは装騎ラプソディの右腕へとワイヤーを巻き付ける。

そして、そのワイヤーにエネルギーを通す――すると、ワイヤーが振動を始めた。

「やはり、超振動ワイヤー――――!!」

振動するワイヤーは、ジリジリと装騎ラプソディの右腕を削り取り――切断する。

「図体がデカい装騎は懐に入ればチョロいものよ!」

「この騎使――やり手ね」

右腕を切断された装騎ラプソディ。

だが、まだ左手が残っている。

装騎ラプソディは勢いよくブーストを吹かすと、左腕のガトリングを装騎チェルノボーグへと叩き付ける。

「キっくぅ~!!」

「ジャイロロケット砲――発射よ!!」

それと同時に肩に備えられたジャイロロケット砲を装騎チェルノボーグへと向け、発射した。

ゴゥゥォオオオオオオン

放たれたジャイロロケットが激しい爆発を起こす。

至近距離での射撃に、装騎ラプソディも爆風を受けるがその強固な装甲はこの程度物ともしない。

一方、装騎チェルノボーグは――――

「危ない危ない――――」

健在だった。

アルジュはガトリング砲による打撃を受けながらも、ジャイロロケット砲の発射を素早く感知し、そのロケットの内1発にワイヤーを絡め切断――爆破。

その爆炎と、その爆炎によって誘爆した後続のロケットが吹き散らした炎を掻い潜り、装騎ラプソディの左手側を通過したのだ。

そして――

「クッ、キラークイーン・ガトリングが――」

その時、ちゃっかり14mmキラークイーン・ガトリングの銃身を切断して行っていた。

「そしてこのまま――――左腕もいただくよ!」

「させないわ――っ!」

そして、側面に回り込んだまま、右腕と同じようにラプソディの左腕を持っていこうとした装騎チェルノボーグ。

だがクイーンも同じ手を何度も食う訳にはいかない。

素早く左腕で腰を差したチェーンブレードを伸ばすと、巻きつけられようとしたワイヤーをチェーンブレードの刃に絡ませた。

振動するワイヤーと、高速回転するチェーンブレードの刃が激しく火花を散らし合う。

クイーンが思い切りチェーンブレードを引き抜くと、細いワイヤーは切断された。

「へぇ――やるねえ!」

クイーンはその勢いのまま、チェーンブレードを振り下ろす。

それを、アルジュは先ほどよりも太めのワイヤーで受け止めた。

「一体何本持ってるのよ――――!」

「色々持ってて損は無いからねー」

戦いは膠着状態に陥るか――クイーンがそう思った時だった。

「へっ、まさかクイーン先輩が手間取ってるなんてなァ」

「テイラー――!」

そこに、ナイト・テイラーの装騎スウィートレディが現れた。


オマケ

ステラソフィア・キャラクター名鑑39

フリーの傭兵

挿絵(By みてみん)

名前:Pistec Cernohlavy Alzbeta

読み:ピシュテツ・チェルノフラヴィー・アルジュビェタ

生年月日:聖歴151年11月16日

年齢:16歳(4月1日現在)

出身地:マルクト神国オストラヴァ

身長:163cm

体重:55kg

使用装騎:P-3500Alz:Chernobog(ベース騎P-3500:Belobog)

好みの武器:超振動ワイヤー

ポジション:レイダー

マジャリナ王国からルシリアーナ帝国辺りを主な活動地とするフリーの傭兵。

マルクト神国によるオストラヴァ侵攻によってマジャリナ王国へと逃れたが、両親が死んだため生きる方法として傭兵をしている。

自分がする細かいことは気にしないが、人がすることに細かく突っ込んでくるタイプ。

趣味は木の本数を数えること。

個人的な声のイメージは山北早紀さん。

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