一点突破
岩石が降り注ぐ中、チーム・シーサイドランデブーを中心とした突破部隊がサーカニィ部隊の一角へと攻撃を仕掛けた。
「付いてこれそうなのは――5チームって所ね……サツキちゃん――!」
「――――!!」
クイーンの言葉に、サツキの装騎サーティーナインがボムを取り出した。
そしてサツキがディスプレイにキーボードを表示すると、何やら操作を始める。
入力された信号を受け、サーティーナインが手に持ったボムから響くピピと言う微かな音。
「っ!」
両手に持ったそのボムを、サーティーナインは左右に投げ放つ。
すると――――
ゴゥォオオオオオ!!!!
爆発したボムから、巨大な炎の壁が噴き出した。
今サーティーナインが使ったのは十字型に凄まじい火炎を放出する十字火炎ボム。
しかし、放出された炎は十字ではなくI字型――――その炎は突破部隊の側面を守るように、道を作るように燃え盛る。
「ぐっ、なんだこの炎!?」
「近づけな――――うわぁぁああああ!!??」
「最高だぜー!」
「撃て撃て撃て撃てぇ~い♪」
突破部隊の側面を突こうとしていたサーカニィがその炎に足止めされる。
足止めされたサーカニィを、ミーシアの装騎カンプファとマインの装騎カプリスが撃破した。
「上出来よ」
「…………」
クイーンに褒められたサツキは、どこか嬉しそうだ。
「アイ、投石器の場所は分かるかしら――?」
「今高速スキャン中です。待っててくださいクイーンちゃん」
合流したプリティーキュート――そのアイデンティにクイーンが尋ねた。
アイデンティの乗る装騎ダンプティのベース騎はラグエル型。
こういう解析能力は他の装騎と比べて圧倒的に高く、効率が良い。
「ありました――データを送るわね」
装騎ダンプティのデータが、一斉同期されディスプレイに表示される。
この戦場に設置された投石器は5つ。
全て、チェンシュトハウ街中央付近の広場に設置されているようだった。
「市街地戦になりそうね――――とりあえずトラップには注意しなさい。通りやすい大通りとかは特によ」
「「「諒解!」」」
殆どの敵部隊はチェンシュトハウ郊外で他マルクト学生部隊と交戦していることもあり、チェンシュトハウ内を守備してる部隊は数少ない。
「これでもう1つ! 今の所、トラップとかは見えないですね」
マイの呟きに、テイラーが口を開いた。
「トラップが不安ならサツキに全部吹っ飛ばしてもらうかァ?」
「なるほど――そういう手もありますね」
「テイラー先輩! それにクイーン先輩も!! そんなこと言わないでくださいよ!」
テイラーとクイーンの言葉に反応したのは――マインだった。
「そうだ! さすがマインちゃんです。マインちゃんならきっとわかってくれると――」
「全部吹っ飛ばすんだったらマインの仕事でしょ!? 私が全部無に帰してあげるんだからぁ!!!」
「マインちゃんやめてください!!」
そんなやり取りをしながらも、着々と投石器が仕掛けられた広場へと近づいてきた。
その時だ。
ピーピーピー!!!
不意に、装騎が警告音を発する。
「何事かしら――」
クイーンが装騎のディスプレイへと目を移すと――
「これは――――」
「く、クイーン先輩! 敵です、敵の反応が――どんどん!」
ジャンヌの言葉通り、突如として街中に複数の装騎の反応が現れ始める。
「それにこの装騎――――P-3500――――!!」
「20――30――――――40!?」
チェンシュトハウ市街へと侵攻した5チーム――計20騎のマルクト装騎の数を超える反応。
その全てが、ルシリアーナ帝国が作り上げた最新型装騎P-3500の反応を示していた。
「こんな数のP-3500が!? いや、それよりなぜ今の今までレーダーに――――!?」
「魔力による探知波妨害――――いいえ、違いますね。きっと完全にリアクターをストップした状態で各所に配備されていたのでしょうね」
「リアクターをストップして――――探知波が装騎を装騎だと特定するのは形状データ以外だとリアクターから洩れるアズル反応を使用する――ですから」
アイデンティの言葉通り、突如として現れたP-3500ベロボーグは探知波妨害を使っていたわけではなかった。
ましてや、虚空から現れたわけではない。
レーダーは波の性質を利用した探知装置なのだが、空中などならいざ知らず、陸上であれば様々な障害物が存在するためレーダーというのは有効に機能しえない。
そのレーダーを地上で有効にするために、様々な魔術的技術の利用だったり、サポート用コンピュータの中継基地を各地に設置したりと言うことを行っている。
その内の1つが、マイの言うように装騎の動力源であるアズルリアクターから洩れるアズルの反応から対象を装騎として区別すると言う方法。
その性質を逆に利用し、予め配備した装騎に入念な偽装を施したうえで(データ上に登録されている装騎であればその形状、材質で探知されるため)、リアクターをストップした状態で待機させるということでレーダーの探知から逃れたのだった。
「どうするクイーンちゃん」
「そうね――――」
チラっとサブディスプレイに目をやるが、シャダイコンピュータからも、教員、正規兵からの応答は無い。
つまり、この程度ならばまだ学生に任せられる事態だと言っているのだ。
「ふっ、作戦続行! 優先破壊目標は依然投石器! ベロボーグと言っても、私達の装騎スペックの半分程度よ、念のため1人で複数を相手にしないようにと言う事だけ気を付けなさい!」
「!!」
「ふっ、そうこなくっちゃァ!!」
「お、応急処置は任せてください――!」
「異論は無いわ」
「みなさん、無理はしないように――」
「いくぞ小僧ッ!!」
「ふぉいあーッ!!!」
クイーンの言葉に続き、それぞれの装騎が投石器目指して走り出した。




