それゆけプリティーキュート
「シーサイドランデブーなんかに負けんなァー!!」
「いっけ! こわせ! たおせ! すすめぇ~!!!」
「なんだか遠足みたいで楽しいわね~」
「何処がですか!?」
シーサイドランデブーが開けた道を、4騎の装騎がついて行っていた。
チーム・プリティーキュートだ。
先陣を切るのはフィゴウル・ミーシアの装騎カンプファ。
ベース騎は大筒と呼ばれる巨大なソロブースターが特徴的なPS-B2ベツレヘム。
「打ち砕くゼイ!!」
ゴォと激しく火を噴くソロブースターの圧倒的な加速力により、グッと敵サーカニィに接近する装騎カンプファ。
その手に握られたのはモルゲンシュテルン。
球状の打撃部が装騎サーカニィの騎体に叩きつけられる。
刹那、その球状の打撃部が激しく回転を始めた。
ギギギイィイエイイリリイリリリリイイイイイイリリイ
激しく火花を散らしながら、削り取るようにサーカニィの騎体を歪めていく。
しばらくして、コクピットを完全に潰されたサーカニィはその機能を停止した。
「やったゼーイ!」
装騎カンプファに続くようにエスポワール・マインの装騎カプリスが姿を現す。
ベース騎はローラーによる高速移動と胸部に備えられた拡散霊子砲が特徴的なPS-Sh3シャムシエル。
だが、シャムシエルをベースにしている装騎カプリスだが、本来のシャムシエル型の姿とはかけ離れていた。
シャムシエル型装騎は本来、丸みを帯びた装甲にモノアイカメラが特徴的な中量装騎なのだが、マインの装騎カプリスは、全体的に角ばり、重みのある重装甲が備え付けられていた。
「撃つよー! ガンガン撃つよー!!」
その手に構えるのは18mm徹甲弾を装填可能な長砲身の対装騎砲。
そのマガジンが、バックパックに備え付けられた弾倉につながっている。
ガンッ!
激しい音をたてながら、装騎カプリスの手にした18mm長砲身から徹甲弾が放たれる。
その1撃は、的確に装騎サーカニィを撃ちぬき、1撃で機能を停止させた。
装騎カプリスの武装はそれだけではない。
左肩に装備された小型のロケットガトリング、右肩に装備された5mm機銃。
そして、追加装甲の各所が開くと、その下から姿を見せたのはロケット砲。
「撃つよー! まだまだ撃つよー!! せーのっ、ファイアフライ・フェノメノン!!!」
マインの言葉に続くように、その全ての武器――そしてシャムシエル型固定の胸部霊子砲が斉射され――――爆炎が上がった。
これが動く弾薬庫と称される装騎カプリスの装備する追加装甲ファイアフライだ。
「マインちゃん、それくらいで!」
燃え上がる炎に、混乱する敵部隊。
その混乱に乗じて、ツンベルギア・マイの装騎パフュームが爆炎の中へと突っ込んでいく。
体の各所に霊子ブースターを装備した装騎PS-S3シェムハザをベースにした装騎パフューム。
武装は両手に持った大型の超振動鉈イフリータ。
体中に装備されたブースターによる変則機動を生かし、爆炎に紛れて次々とサーカニィを切り払う。
不意に、そんな3騎の上空で何かが弾けた。
「1つ――!」
投石器によって投げ出された岩石が空中で破壊されたのだ。
それは、ハンフリィ・アイデンティの駆る装騎ダンプティの射撃によるもの。
ベース騎はPS-Ra3ラグエルで、周囲の状況把握や情報収集、そして帰還能力を高めた装騎だ。
装備兵装は小型の成形炸薬ロケットを滑走させ、発射する長砲身ロケットカノン・アイ。
対象に突き刺さったロケットは、内部へと爆風を流し込み対象を撃破する。
「これは――岩石ですか――?」
アイデンティに撃破され、パラパラと降り注ぐ石片を見てマイが呟く。
「そうみたい。きっと、投石器が設置されてるのね」
「とーせききー! そんなの関係ないですよ! ね、ミーシャ先輩!」
「そうそう! このミーシャちゃん先輩にかかれば一網打尽さァ!」
「うわー、さすがミーシャ先輩! カッコイイ!!」
「だろう? よっしゃーもう1騎ぶっ壊すぞー!!」
「わーい、マインもマインも!!」
勇みながら、再び敵騎に向かって突撃するミーシアの装騎カンプファ。
「うわわわわわ、ちょっ、まってまってタンマ!!!」
その背後からマインの装騎カプリスが斉射する。
「あれ、どうしたんですかミーシャ先輩?」
「どーしたもこーしたも無いよ! 後ろからオレを撃ってどーすんだよぉ!」
「だって、だってミーシャ先輩の、力に――ひぐっ、なりたくて!」
「マイン……かーっ、優しい子だよマインは! ごめんな、こんなこと言っちゃって……」
「ううん、良いんですミーシャ先輩!」
「…………アイデンティ先輩、どうします?」
「そうね……」
ピピピ
不意に電子音が響き、サブディスプレイにディーコン・ジャンヌの姿が映された。
「あ、あのっ――こちら、シーサイドランデブーです!」
「ジャンヌちゃん、どうかしたの?」
「今、投石器が使われているのはご存知です、よね」
「うん、ご存知よ~」
「それで、その投石器を破壊しよう――ということになったので、プリティーキュートにも助力をお願いしたいんです」
「マイちゃん――」
「そうですね、行きましょう。作戦は?」
「はい、クイーン先輩が立てた作戦データをそちらに送ります」
クイーンが立てた作戦はこうだった。
今現在、投石器による牽制で味方の進軍が満足にできない状況にある。
そこで、味方の精鋭を一点に集中させ、敵装騎の部隊を突破。
そこから速やかに投石器を発見――撃破する事で、態勢を立て直した他の味方と、敵中に飛び込んだ部隊とで敵部隊を挟撃するというのが基本的な方針だ。
「問題は、敵地に突入した少数部隊が逆に包囲されないようにすることですね」
「包囲されても、サーカニィ程度の火力ならヘーキヘーキ」
マイのつぶやきに、ミーシアがそう軽く笑い飛ばす。
「そうじゃなくても、トラップとか仕掛けられてる可能性だってありますし――さすがに地雷とか踏んだら」
「地雷を背にして戦うかフツー?」
「そもそも、サーカニィ程度じゃ戦力的にマルクト装騎に敵わないんですから、こんな必死に防衛線張ってる方が――」
「かーっ、マイ先輩は細かいことグダグダ考え過ぎなんすよ!」
「なんだっけなんだっけ、この前ミーシャ先輩に教えてもらった言葉! 補欠に入らば捕手がナンタラって」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず――か。仕方ないですね。やりましょうアイデンティ先輩」
「そうね、チーム・プリティーキュートはチーム・シーサイドランデブーの作戦の支援につきましょう!」
「「「諒解!!」」」
オマケ
ステラソフィア・キャラクター名鑑38
チーム・プリティーキュート
4年
名前:Humphrey Identy
読み:ハンフリィ・アイデンティ
生年月日:聖歴149年11月11日
年齢:18歳(4月1日現在)
出身地:マルクト国神都カナン
身長:160cm
体重:60kg
使用装騎:PS-Ra3S:Dumpty(ベース騎PS-Ra3:Ragel)
好みの武器:ロケットカノンEI
ポジション:リーダー・ガンナー
私立アリス学園中学出身。
的確な砲撃能力により推薦入学を果たす。
常識がありそうだが、実はこの中でも常識が無い方。
趣味は精密射撃。
個人的な声のイメージは佐久間レイさん。
3年
名前:Thunbergia My
読み:ツンベルギア・マイ
生年月日:聖歴150年10月26日
年齢:17歳(4月1日現在)
出身地:マルクト国ミュンヘン市
身長:163cm
体重:58kg
使用装騎:PS-S3S:Perfume(ベース騎PS-S3:Shemhaza)
好みの武器:超振動鉈イフリータ
ポジション:アタッカー
公立バイエルン中学出身。
実技試験でステラソフィア女学園への入学を決めた。
優秀なアタッカーだが、姿勢がやや遠慮がちなのが玉に瑕。
趣味は甘いものを食べること。
個人的な声のイメージは佐倉綾音さん。
2年
名前:Figour Mesia
読み:フィゴウル・ミーシア
生年月日:聖歴152年3月4日
年齢:16歳(4月1日現在)
出身地:マルクト国神都カナン
身長:158cm
体重:50kg
使用装騎:PS-B2S:Kanpfa(ベース騎PS-B2:Bayt Lahm)
好みの武器:星球回転型モルゲンシュテルン
ポジション:アタッカー
公立ドイル中学出身。
受験が面倒くさくてステラソフィアに自己推薦を出したらなぜか合格した。
明るい性格というか、実際はただのバカで無茶なこともやらかすがやることの割には良識はある。
趣味は装騎を飛ばして遠出すること。
個人的な声のイメージは内田真礼さん。
1年
名前:Espoir Mine
読み:エスポワール・マイン
生年月日:聖歴152年8月14日
年齢:15歳(4月1日現在)
出身地:マルクト国神都カナン
身長:150cm
体重:47kg
使用装騎:PS-Sh3S:Caprice(ベース騎PS-Sh3:Shamsiel)
好みの武器:追加装甲ファイアフライ
ポジション:ガンナー
公立ドイル中学出身。
先輩のミーシアの後を追っかけてステラソフィアに自己推薦を出し合格。
小学時代からミーシアの後を追いかけていて、いろいろとミーシアから影響を受けている。
趣味は道行く人の数を数えること。
個人的な声のイメージは内田彩さん。




