チェンシュトハウへの侵攻
現在、マルクト神国は東の隣国であるマジャリナ王国に対し、ブレスラウ、ブルーノ、マギアの3都市を拠点とし侵攻作戦を繰り広げていることは周知の事実だと思われる。
今回は、その内のブレスラウを拠点にする部隊の1つ。
チェンシュトハウ侵攻部隊が物語の主軸となる。
「と、言うことで今回はチェンシュトハウの防衛隊の撃破と都市の占領が目的となりますぅ。占領は国軍がやるのでぇ貴女達は何時も通りに戦ってくれればいいですぅ」
ブリーフィングルームでそう説明するのは、若干癖のある桃色のセミロングに、翠色の瞳をしたどこか間の抜けたような女性。
彼女はステラソフィア女学園実地戦担当教諭の1人、その名をチャレンジャー・キャロラインと言った。
「なー先公よ。街に被害が出ちゃったりするのってやっぱマズかったりしますかねー?」
ブリーフィングルームに備え付けられたテーブルの上に足を乗せながらそう尋ねるのは、チーム・シーサイドランデブー2年ナイト・テイラー。
そう、今回の実地戦はチーム・シーサイドランデブー――――と……
「被害は無いに越したことはないですけどぉ、どうしても仕方がないときは仕方ないですねぇ」
「では、都市への被害は最小限に食い留めることにするか。クイーン先輩、くれぐれも」
「やれやれ、気を付けはしておきましょう」
クイーンに釘を刺したのは、薄紫色の髪に赤縁眼鏡が特徴的などこか微妙な厳しさを感じさせる女性。
彼女はチーム・プリティーキュート3年ツンベルギア・マイ。
今回の実地戦は、チーム・シーサイドランデブーとチーム・プリティーキュートの合同出撃となっていた。
「ベッツにオレ等がそんなこと気にする必要なんてないのになァー」
お気楽にそんなことを言うのは、オレンジ色の髪に黒いメッシュが入った活発そうな生徒。
チーム・プリティーキュート2年フィゴウル・ミーシア。
「ねー、そうですよねー、気にしないで壊しちゃいましょーよー」
元気な笑みを浮かべながらそういのは、左右に巻かれた赤毛が特徴的な生徒。
同じくプリティーキュート1年エスポワール・マイン。
「マイちゃんは真面目だからね。そこがマイちゃんのいいところよ」
そう朗らかに笑みを浮かべるアッシュブロンドの長髪の優しそうな生徒。
同じく4年ハンフリィ・アイデンティー。
この4人がチーム・プリティーキュートだ。
「あらあら、貴女達の仲間も壊す気満々みたいわよ。ツンベルギアちゃん、くれぐれも」
「――――ぐぐぐ」
このメンバーにマイは沢山の不安を抱えながらも、シーサイドランデブーとプリティーキュートの出撃の時は来た。
ブレスラウ市のマスドライヴァー・エリシャを用いて降り立ったのはチェンシュトハウ南西部。
緑豊かなその地では、チェンシュトハウを防衛するマジャリナ王国軍と、マルクト神国の侵攻軍が戦闘を繰り広げていた。
空中から降下する9騎の機甲装騎。
「ひゃっほぉぉおおおお、いっくぜぇえええええええ!!」
テイラーの叫び声を掻き消すように、降下中の9騎に向かってマジャリナ王国軍の装騎サーカニィが銃撃を放ってくる。
「いたたたたたたたた!」
カンカンカンカンと盛んに装騎をたたく銃撃音に思わずそんなことを口走ってしまうマイン。
「装騎は痛いかもしれないけど、マインちゃんは痛くないので落ち着いて!」
同じようにサーカニィの銃撃を受けながらも、マイが冷静にそういった。
「10mmの電動式連弩砲――――みんな砲撃仕様なんですねぇ」
空中からその場に居る装騎の姿を解析しながらアイデンティーがポツりと呟く。
「10mm程度の連弩砲で私達の装騎にキズを付けようなんて滑稽ですこと」
クイーンの嘲笑と共に地面に九騎は地面へと降り立った。
「ではぁ、作戦開始ですぅ。わたくしは軽い援護しかしませんがぁ、まぁ大丈夫ですよねぇ」
「ええ、それでは――行かせてもらいます。シーサイドランデブー――――やっておしまい」
「「諒解!!」」
「…………!!!」
クイーンの号令と共に、クイーンの装騎ラプソディ、サツキの装騎サーティーナイン、テイラーの装騎スウィートレディ、ジャンヌの装騎ベストフレンドは前面の味方を押しのけるように前線へと突っ込んでいった。
「全く――なんてチームだシーサイドランデブーは……」
「マイちゃん、わたし達も行きましょう」
「はいっ、プリティーキュートも行くぞ!」
「「「諒解!」」」
マイの号令に続けて、アイデンティーの装騎ダンプティ、マイの装騎パフューム、ミーシアの装騎カンプファ、マインの装騎カプリスもそのシーサイドランデブーの後に続くように駆けていった。
「がんばってくださいね~」
そんな8騎をキャロラインの装騎ビッカーズが見送った。




