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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:波乱編
80/322

震撃の戦車戦

「アンタ達、マリ○カートってやったことある?」

とある実技の授業――この科目の担任であるウィンターリア・サヤカが授業の始まりにそんなことを口走った。

「あのおヒゲがキュートなロメニア人のレースゲーム?」

「スーパーなビデオゲームのヤツのならやったこと――」

「64ビットのなら」

「鈍器のやったことあるよー」

「誰だよ鈍器って言ったやつ!」

その場にいる1年勢がそれぞれ思い思いのことを口にする。

「今回はアンタ達にマリ○カートをやってもらいます」

サヤカの言葉で一瞬変な間が出来た――――その後、

「んぅ!?」

全員の声が重なった。

「――――もとい、今日の授業は戦車戦をしてもらうわ」

機甲装騎誕生以前、各国の主力兵器であった霊子駆動型戦闘車両――通称、チャリオット。

今回は、装騎以外の兵器にも触れてみるという名目で、戦車によるバトルレースをしようということらしい。

「その為に、今日はこのステラソフィアで1番大きいグラウンドまで来てもらったの」

そう、その為に機甲科付属のグラウンドとは比べものにもならない広大なグラウンドに学生たちは呼ばれていた。

そして、そこにズラリと並ぶのはあらゆる種類の戦車戦車戦車。

「戦車戦なんてやったことないよぉー」

チーム・リリィワーズ所属のアルク・アン・シエルがいつものごとくそんな声を上げる。

「当たり前でしょ。だから動かし方は教えるし、アンタ等みんな条件はタイ。何の問題もないじゃない」

本当に何の問題もないのかといわれると、なくはない気もするのだが問題はないらしいので、学生たちはサヤカ先生に戦車の動かし方を教わった。

「戦車は基本、操縦士と戦闘士の2人1組で動かすわ。前に乗るのが操縦士。後ろに乗るのが戦闘士。戦闘士は武器を使って敵の戦車を攻撃する役割があるの」

「ってことは2人組を作って動かすんですか?」

「そうなるわね――そんじゃ、さっさと2人組作っちゃいなさい」

サヤカ先生の言葉を聞いて、いつもの4人――スズメ、イザナ、サリナ、イヴァのグループが自然と集まる。

「ねえ、スズメちゃ――――」

どう分かれようか? サリナがそう尋ねようとスズメの方に目を向ける。

だが、そこにはスズメを背後からガッチリホールドし、凄まじい剣幕で目を細めるイザナの姿が目に入った。

サリナは苦笑しながら、

「そ、それじゃ、わたしとイヴァちゃんでペア組もうか」

そう言った。

「チャリオットの種類にもいくつかあるわ。高機動軽装甲の軽戦車、低機動重装甲の重戦車、そしてその中間の中戦車ね。今回はバトルタイプのレースだから扱い方次第ではどの戦車でも1位を目指せるわ。好きな戦車を選ベばいい。詳しいデータはSIDパッドで照会しなさい」

サヤカ先生の言葉に、それぞれのペアが戦車の周りに集まり、それぞれの戦車を吟味している。

「スズメ、どうする?」

「もちろん軽戦車ですよ軽戦車! 高機動ですよ高機動!!」

心なしかテンションの上がっているスズメ。

「ふっ、そうね――――それならこの軽戦車を頂くわ」

そんなスズメに釣られてイザナもテンションが高くなっていた。

それぞれのペアが戦車を選び、サヤカの指示に従いそれぞれがスタート位置につく。

ズラリと並ぶ戦車の姿は壮観――しかし、それに乗り込む生徒たちの顔に不安の表情が浮かんでいるのは仕方ないことだろう。

「ルールはシンプル! このグラウンドを先に7周したペアの勝ちよ。そして――――」

サヤカがパチンと指を鳴らすと、コースの途中に何やら箱のようなものが投下された。

「あれってもしかして――――アイテムボックス!?」

「そうよ、あの箱の中には何かしらの武器が入っているの。だからソレを使って――――」

「敵の戦車をぐっちょんぐちょんにしちゃっていーんですねー!!!」

「そういうこと」

ちなみに、もし間違えて人に当たってしまっても、服の耐久度が減るだけで怪我なんて全くしないという安全仕様だ。

安全仕様なんだよ?

「アイテムボックスには色んな武器や妨害用の道具が入ってるわ。それを上手く使って1番を目指しなさい」

「それで、1位になって景品とかって」

「もちろん、用意しているわよ」

「やったー!」

「いい感じでやる気も出て来たみたいね」

一部の生徒は……だが。

「それでは……」

サヤカの声のトーンが半音下がる。

それに合わせで、生徒達の表情も固くなった。

いよいよレースが始まるのだ。

「レディ…………ゴー!!」

サヤカの号令一下、それぞれの戦車が唸りを上げて走り出した。最初に飛び出したのは、その殆どが軽戦車達だった。

「行くよ、イザナちゃん!」

「もちろんっ」

その中にはスズメとイザナのペアも居た。

操縦士はスズメ、戦闘士はイザナ。

搭乗戦車は、チェスク共和国製24年式(ヴゾル24)軽戦車。

軽快な機動力に対して、軽戦車の割には十分な装甲を持っていたため、当時の戦車戦では有用性の高い戦車として活躍した。先をいく軽戦車達の背後では、中戦車や重戦車が凌ぎを削っている。

そんな最中で中、重戦車にスタートダッシュを阻まれ揉まれる軽戦車もチラホラ。

「あの状況は悲惨ね……」

そんな軽戦車を見ながらイザナは呟いた。暫くは軽戦車組がレースの先頭争いを繰り広げる。

抜きつ抜かれつ……戦車の操縦に慣れていないことから、コースを外れてしまう者も多数だが、まだ普通のレースの様相。

そんな中、戦車達は最初のアイテムボックスゾーンへと差し掛かった。

「アイテムゲット!」

アイテムボックスの中からイザナが何やら袋のようなものを手に入れる。

「何が入ってるの?」

「ちょっと待ってて――」

スズメの言葉に、イザナは袋を開け、中身を確認する。

その中に入っているのは、黄色く細長いややカーブを描いた――――

「バナナ……」

「バナナ!?」

「これでどうしろっていうのよ!!」

イザナはそう叫びながら背後を振り返る。

そこにはスズメ・イザナペアを初めとしてトップ争いをしている面々。

そんな彼女らの手には、棒やら戦車用のロケット弾のようなものが握られており――

「コレ、ハズレじゃん!!」

イザナは茫然と手に持ったバナナを見つめるのだった。

「バナナと言ったら――――皮でスリップ、とかできるのかもしれませんよ!」

「なるほど――――できる――――の?」

「しょ、正直、できるとは思ってないけど……」

「だよねー」

そう言いながらも、物は試しとバナナの皮をむき始めるイザナ。

バナナの匂いを嗅ぎ、大丈夫なのか確かめるイザナ。

恐る恐るバナナを口に入れてみるイザナ。

そして、バナナを咀嚼しながら1言。

「いやこれ、本当にバナナだわ。結構美味しいし」

「マジですかぁー。私にも1本ちょうだい~」

とりあえず、バナナを食べ終わったイザナは、そのバナナの皮を後ろから追いかけてくる戦車に向かって投げつけた。

「なに……?」

「バナナの、皮ぁ――――?」

スズメ・イザナペアの後ろにくっつくように走っていたのは、ロメニア皇国製の重戦車ペサンテに乗る操縦士チーム・シーサイドランデブー所属ディーコン・ジャンヌ、戦闘士チーム・リリィワーズ所属アルク・アン・トワイのペア。

重戦車というものの、基本的には中戦車のような扱いをされるペサンテ。

それに加え、かつてその戦車を使用してた者の趣味なのか、その速度は思いのほか軽快。

そんな戦車の前に落とされた1枚のバナナの皮。

一瞬どうしようかという表情を浮かべたジャンヌだが、

「いーよいーよ、行っちゃおー!」

トワイの一言で、バナナの皮を無視して直進。

地面に落ちたバナナの皮を――――――踏み潰して普通に走り抜けた。

「やっぱり全く普通のバナナじゃん!!!!!」

ゲームみたいにバナナの皮でスリップなどということは起きなかった。

当たり前だが。

「よっしゃー、それじゃあお返ししちゃうぞ~」

そう言いながらトワイがロケット弾をペサンテの砲へと装填し、スズメ・イザナのヴゾル24にその砲口を向けた。

「うげっ、なんかヤバそうなの向けられてるわよ!」

「本当ですかァ!?」

「いっきまーす!!」

トワイの叫びとともに、ペサンテの砲口から――緑色のロケットが発射された。

それは真っ直ぐと前を走るスズメ・イザナの乗るヴゾル24に向かって飛翔する。

「スズメ!!」

「はいっ!!」

スズメはあわててハンドルを切り、ヴゾル24の車体を傾ける。

その傍を飛び去っていく緑色のロケット。

そのロケットは――――

「きゃぁ!?」

全く関係ないペアに直撃した。

「なるほど――あのロケットは直進しか出来ないっぽいわね」

発射されたロケットの軌道を見ながらイザナが冷静にそんなことをつぶやく。

「直進しかしないなら、避けるのは楽ですね!」

「ぐぐぐぅ」

一方、ロケットを外したことでトワイが悔しがるような声を上げた。

どうやらロケット弾は1発しかないらしい。

スズメとイザナの周囲でも、爆発が起きたり、戦車がコースを外れたりと荒れ模様。

気付けばスズメ・イザナペアを先頭にした形。

「イザナちゃん、私たち1番だよ!」

「まだ気は抜けないけどね――――」

不意に、後方から一発の赤いロケットが放たれた。

「スズメ、ロケットが来るわよ――――!」

「もうすぐコーナーですからそう慌てなくても――――」

スズメは難なくコーナーを曲がる――だが、

「っ! スズメ、危ないっ!!」

「えっ!?」

コーナーを曲がったことでロケットを振り切ったと油断していたスズメ。

だがそこで、ロケット弾が戦車に直撃した。

「いたたた……に、2発目!?」

「違うわ――――さっきのロケット、追尾機能を持ってた」

「追尾!? ってことは、ロケットじゃなくて――」

「ミサイル」

そう、緑色の弾はロケット弾で直進しか出来ない。

しかし、赤色の弾はミサイル――――対象者を追尾して攻撃するのだ。

衝撃でスピンしながら、コースの端に弾き飛ばされるヴゾル24。

そのスキに、ほかの戦車達がスズメ・イザナペアを抜き去っていく。

「しまった、せっかく1番だったのに!」

「まだチャンスはあるわ、行くわよスズメ!」

「うん、イザナちゃん!!」

それからも、抜きつ抜かれつのレースは続く。

新しく手に入れた武器に加えて、バナナの皮を相手の顔面に直接貼り付けるという秘技を会得したイザナ。

そしてスズメの操縦技術によって、今や完走前に3割が脱落したこのレースをなんとか走り抜いていた。

ドギャン!

「そんなぁぁぁあああ」

不意に響いた金属を重たい何かで殴打するような音と、女子生徒の悲鳴。

それは最初、レースを繰り広げる戦車達の最後方で響いた。

「今やられたのは……ジャンヌ・トワイペアね」

火を噴きコースを外れる重戦車ペサンテを目にしてイザナがつぶやく。

あの様子だとレースへの復帰は無理そうだ。

「ジャンヌちゃん達が!? いったい誰に」

叫ぶスズメ。

誰がジャンヌ・トワイペアを撃破したのか……それはすぐに分かることになる。

背後から、次第に、次第にスズメ・イザナペアが走る中盤の戦車組の元へと着実に近付いてくる殴打音と、撃破された戦車に乗ってる女子生徒達の悲鳴。

「イザナちゃん――――」

「あれは…………っ」背後から他の戦車を蹴散らしながら近付いてくるのは、一両の重戦車だった。

ブリタイキングダム製の重戦車で装甲と積載力に重点に置いた重厚なる戦車エリザベスⅣ。

それを操るのは、必死の形相で戦車を操縦する操縦士チーム・パフェコムラード所属パプリカ・セス。

頭についたカエルの飾り物がキュートだ。

そして――

「潰せっ! 潰せっ! 潰せっ! 潰せっ!」

意気揚々とそんな事を謳いながら巨大なハンマーを振り回す戦闘士。

チーム・プリティーキュート所属エスポワール・マインだ。

「ぶっつぶせー! ぶっころせー!!」

すごい笑顔でそんな物騒なことを口走るマイン。

「もっともーっと左に寄せてっ」

「は、はいっ」

マインの指示でセスはエリザベスⅣを左に寄せ、隣を走っていた戦車に近付ける。

「げっ……」

セス・マインペアの隣を走っていたの……

「サリナとイヴァ……っ」

「サリナちゃんとイヴァちゃん!?」

不運にも、殺る気満々なセス・マインペア(というかマイン)の隣に居たのはサリナ・イヴァペアだった。

操縦士はイヴァ、戦闘士はサリナ。

使用戦車はルシリアーナ製の中戦車T-5。

場所を選ばずに軽快な動作を誇り、装甲と武器積載能力も高いチャリオット時代の名機の一つ。

当時は、内装が劣化によって壊れやすい、不良品が多いというような難点もあったようだが。

「藻屑となれぇぇえええ」

そんな事を叫びながらT-5にハンマーを振り下ろすマイン。

「全く……物騒なんだから!」

その打撃をサリナは戦車を揺らして回避する。

「イヴァちゃん、何か武器は!?」

「……う、ロケット弾しかないさ」

「ロケット弾だけ……どうにか切り抜けないと…………」

ロケット弾は戦車が持つ電動式連弩に装填し、発射することで使用する。

しかし、その連弩砲は戦車前部にしか搭載されていないため横、及び後ろへの砲撃は不可能なのだ。

T-5のスピードを緩め、エリザベスⅣの背後に戦車を付けようとするサリナ。

「セスちゃん!」

そんな事、セス・マインペアもお見通し……の筈だが。

「わ、わかりました……!」

マインは敢えてエリザベスⅣのスピードは緩めないようセスに伝える。

エリザベスⅣの背後にT-5の車体が重なった、その時。

「イヴァちゃん!」

「あいあい!」

T-5の連弩砲にロケット弾を装填しようとするイヴァ。

その隙に……マインがハンマーを強く握りしめると、エリザベスⅣからT-5に向かって……跳ねた。

「藻屑となれぇーい」

ドゴゥッ!!

マインの振り下ろしたハンマーが、イヴァとサリナの乗ったT-5の車体に打ち付けられる。

「きゃぁああああああ!!!」

爆発炎上するT-5――マインはその車体から素早く、エリザベスⅣへと飛び戻った。

「これでまた一つぅ~!!」

エンジンをやられスリップしながらコースを外れるT-5。

だが、サリナはまだあきらめていなかった。

「ヒラサカさん――――っ!」

サリナは装填し損ねたロケット弾を振りかぶり、イザナとスズメが乗るヴゾル24へ向かって放り投げた。

弧を描き、宙を飛んだロケットは、イザナのその手にしっかりと握られた。

「スズメ――――!」

「分かってます――――やりますよ!!」

途中でリタイアした友から託されたロケットを持ち走るヴゾル24。

しかし、他の戦車と同じく、このヴゾル24も主砲は正面の一発。

「スピードを落としてあの重戦車に合わせるか――それとも――――」

「セスちゃん! アレは?」

「私のうしろ……!」

「あ、あった! ありがとーぅ」

そう言いながら、マインが手に取ったのは――――赤いミサイル。

「げ――――ミサイル!?」

「ミサイル!? 本当に!?」

「本当よ、リアルよ、マジよ」

そしてマインはミサイルをエリザベスⅣの主砲へと装填した。

狙いは間違いなく――スズメ・イザナペアが駆る軽戦車ヴゾル24。

「ああいうミサイルって普通どうやったら避けれます!?」

「知らないわよ! えっと――あ、ジャンプとか?」

「ジャンプ!?」

スズメはミサイルと聞くと、チーム・リリィワーズ1年アルク・アン・トワイが使っていた装騎レーゲンボーゲンを思い出す。

もしも、レーゲンボーゲンが装備していたカープミサイル並の追尾能力があった場合、ジャンプ程度では――――

「でも、やるしかないですね――――」

スズメは決意を固めると、ヴゾル24を加速させた。

「逃がさないよ! セスちゃんイケイケェ~!!」

エリザベスⅣもスピードを上げるとヴゾル24へと接近する。

エリザベスⅣは重厚な戦車で、初速も低いながら、このグラウンドのような整地で、なおかつスピードが乗っている状態であればかなりのスピードを出せるらしい。

それでも、スズメたちのヴゾル24に追いつくことは不可能だが、追い付く必要は無い。

装填されたミサイル――マインはその手を引き金に添え、ヴゾル24を打ち抜くタイミングを見計らう。

「いち、にーの、さん! ぶっとばせぇぇえええええええええ!!!!!!」

そして、ヴゾル24がコーナーに差し掛かった所で、マインはミサイルを発射した。

「スズメ、来たわ!」

「諒解です!!」

ミサイルがヴゾル24に直撃する――刹那、ヴゾル24が車体を曲げながら――飛び跳ねた。

「ええ――――!!??」

「と、跳んだ――」

跳ねたヴゾル24の車体下をミサイルが通り過ぎていく。

「イザナちゃん!」

「ええっ」

そして、ヴゾル24の正面が臨むのは背後を走るエリザベスⅣ。

車体をジャンプさせながら、ヴゾル24の正面を背後からくるエリザベスⅣへと向けさせ、ヴゾル24をバック走行させるという手順をスズメが一気にこなしたのだ。

そして、イザナがエリザベスⅣへ狙いを定め――ヴゾル24の主砲からロケットを撃ち放った。

「いやぁ!!!」

「きゃぁぁああああっ!!!」

ロケット弾はエリザベスⅣの車輪に直撃――車輪が撃破されたエリザベスⅣはスリップし、火花を散らしながらコース外に激突した。

「や、やった!」

「このまま行きますよ!」

スズメが、先ほどやったのと同じように、ヴゾル24をコースの正面へと向けさせようとした――その時。

「いぎっ!?」

「――――? スズメ?」

「う」

「う?」

「腕つったぁぁあああああああああ!!!!」

「はぁ!?」

車体コントロール用のレバーを動かそうとしたスズメが腕をつり、操作を失敗したヴゾル24はそのままコース外へと直進していった。

その後、何とかレースに復帰したスズメとイザナだったが、結局順位は5位となった。

「お疲れさん――なかなか面白かったわ」

「面白かったって……」

平然とそんなことを言うウィンターリア・サヤカに若干げんなりとした空気が漂う。

「16組中、完走出来たのは6組……脱落した10組の内、7組はパプリカ・セス、エスポワール・マインペアが倒してるわね……」

「最高記録だ、やった!」

「わ、私はあんまり嬉しくないんだけど……」

「それで1位は――アスル・シエロ、バオム・クーヒェンのペアね。おめでとう」

サヤカの言葉に続いて、1年勢の拍手が響く。

「やったねシエロ!」

「……うん」

「それでサヤカ先生、1位になったら商品あるんですよね?」

クーヒェンの問いにサヤカは頷くと、懐から何かの紙を取り出した。

「はい、1位おめでとう。商品はこれよ」

「これって――――ウィンターリア雑貨店の……」

「そ、割引チケット。ちゃんと買いに来なさいよ」

それはウィンターリア・サヤカが趣味で営んでいる雑貨屋の割引チケットだった。

珍しいものからどう見てもゴミにしか見えないものまで、いろんなものを取り扱っているという。

「あの店って変なのしか置いてないじゃないですか! こんなの貰っても」

「あ゛あ゛?」

「す、すみません……ってシエロ?」

クーヒェンがシエロへと目を向けると、心なしか嬉しそうな表情のシエロ。

「シエロ――?」

「サヤカ先生」

「ん?」

「いく」

「ありがと、それじゃあ待ってるわよ!」

「……うん」

色々波乱があった戦車戦の授業だったが、何だかんだで終わりを迎えた。


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