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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
みんなの休日
77/322

バーチャルスターの休日

「うにゃぁぁああああああああ!!!!!!」

「ミズナ先輩!?」

チーム・バーチャルスターの寮室。

空に赤みが差してきた頃、ソファに寝転がった2年ツミカワ・ミズナが不意にうなり声をあげた。

「どうしたんですかミズナ先輩――急に変な声上げて」

そう言うのは、ダイニングテーブルでカフェオレを飲みながら読書をしていた1年エレナ・ロン・サリナ。

「せっかくの休みだというのに、何もしないまま日が暮れてしまうかと思うと――――やるせなくもなるのですよ……」

「そういえば、今日はゲーセンに行くとか言ってませんでしたっけ?」

「うむぅ、ソレイユちゃんと一緒に行こうと約束してたのですよぉ」

「ああ……」

4年ディアマン・ソレイユと3年ディアマン・ロズは朝から出ておりこの部屋にはいない。

何でも、急に家から呼び出しがかかったとかで実家に顔を出しているらしい。

「もう、夕方――――だったらそろそろお二方とも帰ってくるんじゃないです?」

「そうかもしれないのですねぇ……あー、ソレイユちゃん早く帰ってきてェ――――ッ」

「紅茶かコーヒーか淹れましょうか? ケーキでも食べて落ち着きましょう」

「うむ……それじゃあ、コーヒーを淹れて欲しいのですよ」

それから暫く、ミズナの前に出されたコーヒーとミルク。

ミズナはコーヒーにミルクを入れると、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ――――

「って入れすぎじゃないですか!?」

「甘いのがいいのですよ!」

それからも砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れ、砂糖を入れて飲んだ。

「ぐふっ――甘ッ!!!!!?????」

「当たり前じゃないですか……」

そんなことをしながら2人でケーキを食べていると、不意に扉の方から物音が聞こえた。

「おっ?」

「ただいまー」

扉が開かれると、ソレイユとロズの2人が姿を現した。

「お゛か゛え゛り゛な゛の゛て゛す゛よ゛ー」

「おかえりなさい!」

「ただいま、サリナちゃん、ミズナちゃん」

ロズはサリナとミズナの言葉ににこやかな笑みを浮かべながらそう返す。

「ソレイユちゃん、酷いのですよ~! 今日は1日ヒマ過ぎて死にそうだったのですよぉ!!!」

「ゴメンゴメン! まだ時間はあるしさ、これからでも良いか?」

「仕方ないのですよ! 行くのですよ~」

そう言いながら、今からゲームセンターに行く気マンマンの2人。

「あ、そうだ。サリナちゃんも一緒に行くか?」

「あたしも、ですか?」

「そ、ゲーセンで今はやりのゲームがあってさ!」

「あたしはゲームとかは、よくわからないんですけど……」

「ゲームっていうか、機甲装騎のシミュレーターみたいなヤツだからサリナちゃんならむしろ得意な部類だと思うぜ」

「シミュレーター……」

「SBOなのですよ!!」

サリナもその噂は聞いたことがあった。

SBO――サンクチュアリ・バトル・オンライン。

実際の機甲装騎のコクピットを使用した筐体きょうたいで、実際に存在するあらゆる機甲装騎を用いてオンラインでのデュエルゲームや、チーム戦を体験できるアーケードゲームだ。

ゲームをプレイし、その戦績などに応じてもらえるポイントを用い、自分だけの装騎を作り上げたり、国のデーターベースに記録された公式の実在する装騎を再現できたりすることからその人気は高い。

「確かに――1回くらいは触ってみたい、とは思ってましたし……いいですよ! あたしも行きます!」

「ロズはどうする?」

「私も買い物したいし、お姉ちゃんたちと一緒に行くわ。今からなら行くって言ってもセントラルでしょ?」

「そうだな。じゃあ、みんなで行くか!」

そして着いたのはステラソフィア学園都市中央街――セントラルだ。

「セントラルでゲームセンターって言ったら……ドラヒェパラストですか?」

「いや、そっちよりもオレ行きつけのゲーセンあるからそっちに行くぜ」

ステラソフィア学園都市にある娯楽施設ドラヒェパラスト。

そこは様々なアミューズメント施設が備えられる大型の娯楽施設なのだが、今回向かう先はそこではないらしかった。

人々で賑わう中央通りから少し脇道にそれ、若干閑散とした路地を通り抜けた先――――一軒のゲームセンターの姿があった。

「ここが?」

「そ、オレ行きつけのゲーセン。サリナちゃんはビッガービレッジって店知ってたっけ?」

「セントラルにある装騎専門店ですよね」

「そ、そこで働いてるムジクレスト・ジュンって人がいるんだけど、その人のお兄さんがやってるゲーセンなんだぜ」

「へぇ」

「何だ、今日はやけに連れが多いな」

「お、コートーこんちは!」

「年上には“さん”を付けろよ!!」

無精髭を生やし、がっしりした体つきの壮年の男性。

ここの店主ムジクレスト・コートーだ。

「相変わらず客少ねぇな~」

「うっせー、どうせ趣味でやってんだからどうでも良いだろ」

「そんなことより、早くゲームをするのですよぉ!」

「はは、そうだな」

痺れを切らしたミズナの叫びに、ソレイユは若干苦笑しながら頷く。

店のちょっと奥側。

そこに機甲装騎のコクピットブロックを模した巨大な筐体がいくつか備え付けられている。

「これが噂の――」

「そ、サンクチュアリ・バトル・オンライン!」

タラップを上り、上からハッチを開いて中に乗り込むという、実際の機甲装騎に近い搭乗方法。

もっとも、機甲装騎の場合は、装騎自身によじ登り乗り込む方が多いので、タラップを使うことは少ないのではあるが。

サリナは試しに、扉を開きその中をのぞいてみる。

「おお、すごいですね!」

「まぁ、国が装騎教育の一環として作ったゲームだし、本物の装騎のコクピットブロックをそのまま使ってるしな」

「本当に本物のコクピットを使ってるんですねぇ」

「ああ、シミュレーターだから、実際に動かすのとはちょっと違うけど」

「それで、これってどうやってプレイすれば良いんですか――――?」

「そうだな、サリナちゃんちょっとコッチ来てくれ」

サリナがソレイユに呼ばれたのは、SBO筐体の傍に設置された一個のターミナル前。

「SIDパットは持ってるよな」

「はい」

ソレイユに言われ、サリナはSIDパットを取り出す。

「まず、ここでアプリをダウンロードして、騎使登録をするんだ」

「なるほど」

サリナはソレイユに教えてもらいながら、SBO管理アプリをSIDパットに入れた。

そして、次にSIDパットで騎使名を入力。

サリナはRURI(ルリ)と言う名前を設定。

それだけの簡単な操作で、SBOへの登録は完了した。

「よし、登録完了だな――次はインポートを選んでみろ」

「インポート、ですね」

SIDパットでインポートを選択すると、シャダイコンピュータのネットワークからサリナの機甲装騎ラピスラズリのデータふぁ作成された。

「これは――――」

「凄いだろ? ステラソフィアの装騎なんかは、国のデータに保存されてるからそのデータをゲーム用に落とせるんだぜ」

「と、言うことはソレイユ先輩もゲームでセイクリッドを――――?」

「いや、オレはゲームだと別の装騎を使ってるな。ゲームはゲームで楽しみたいしさ」

「わたしもなのですよ!!」

「使うかどうかはサリナちゃんに任せるとして、それじゃあ早速――――――プレイすっか!」

それからSBO筐体に乗り込むソレイユとミズナ。

「ロズ先輩はやらないんですか――――?」

「そうね――――私も久々にやってみようかしら」

ロズはそう言うと、2人に続いてSBO筐体に乗り込んだ。

サリナも筐体に乗ると、ガイドに従ってSIDパットを筐体内にある設置場所へと置く。

筐体がSIDパットに登録された情報を読み取り、自動でクレジットからプレイ代を引き出すと、ゲームが始まった。

『サリナちゃん、無事に開始出来たみたいだな』

「ソレイユ先輩――――?」

不意に筐体内に響いた声。

どうやら、通信機能も再現されているらしい。

『初っ端だが、大人数戦行ってみっか!』

「大人数戦――――?」

『と、いうことはまずはチームを組むのですね!』

『そうだな。サリナちゃん、サブディスプレイにオレたちのプレイヤーネームが表示されてるはずだよな』

「この、CORONA、Blau、ROSEttaってヤツですか――?」

「そ。CORONAがオレで、Blauがミズナ。ROSEttaがロズだ。その名前を選択してチーム申請をしてみて」

サリナは頷き、申請ボタンを押す。

すると、RURI、CORONA、Blau、ROSEttaの四人が同じチームになったことを示す星マークが表示された。

そして、大人数戦と書かれた項目を選ぶと表示された装騎選択画面。

『選択画面が出たか?』

「はい」

『そこで好きな装騎を選ぶんだ。最初から選べるベーシック装騎か、さっきインポートしたデータを使いたいならマイ装騎を選べばいいよ』

「わかりました!」

全員の装騎が決定すると自動マッチングが行われ、戦いのフィールドが表示された。

場所は所々に廃墟が聳える荒野。

サブディスプレイには、同じ部隊に配属された仲間達のプレイヤーネームと使用装騎名が表示される。

その中にはもちろん、ソレイユ達のプレイヤーネームが表示されており、その表示の傍に同じチームを示す星が続いて記されている。

「16対16――――ですか」

『凄いだろ。全国のプレイヤーとリアルタイムで一緒のチームを組んで戦える――――そこがSBOの楽しい所なんだ』

それから暫く、ゲーム開始の表示と共に、戦闘が始まった。

『操作方法は装騎と全く同じなのですよ! いつも通りにやればいいのですよ~』

「わかりました――――行きます!」

今回の戦闘でサリナが使用している装騎は、PS-Z2ゼルエル。

ステラソフィアではチーム・シーサイドランデブー二年ナイト・テイラー操るスウィートレディなどが有名な、長腕が特徴的な機甲装騎。

その右手にはウェーブシャムシール。

そして左手には霊子シールド・アズライトが装備されている。

両方とも、インポートしたサリナの装騎ラピスラズリ仕様のものだ。

『ほう、ゼルエルタイプか――なかなか面白いチョイスだな』

「普段は使えない装騎を使ってみたいですからね」

ちなみに、ソレイユの装騎はロズの装騎ロゼルなどと同じPS-U3ウリエルで武装もハルバートと似通っている。

そしてロズの装騎もソレイユの装騎セイクリッドなどと同じPS-M5ミカエルでその武装は黒い刃が特徴的な超振動型黒刃剣で、本来二人が使っているのとは逆の装騎を使用している。

対してミズナの装騎は普段使っているミルキーウェイと同じPS-B2ベツレヘム。

『やっぱりこの装騎が一番なのですよ!』

ただし、その武装はブラウシュトゥルム砲ではなく先端が湾曲した超振動型フックソード。

それを両手に構えていた。

今回の戦いは、敵拠点の撃破か、敵の全滅が勝利条件らしい。

バトルが始まり、それぞれの装騎が思い思いに動き出す。

いきなり前へ突出する者や、逆にその場から全く動かない者、さすがに16人もいるとなると、その動きも様々だ。

「ねぇ、先輩」

『どうしたサリナちゃん?』

「ハンドガン装備なのに拠点近くでウロウロしてる人って何なんですか?」

『ああ、初心者かなんかなんだろう……多分』

『初心者ならいいのですが、まれによくいるのですよねー、ああいうキャンパー』

『稀によく居るって不思議な言葉ね……』

敵、味方共に、装騎もチラホラと撃破される者が出始める。

装騎バトルは慣れているとはいえ、実戦とはまた違った感覚のゲームに、サリナはいまだに一騎も撃破できていない。

その反面、さすがプレイしなれているだけあって、ソレイユとミズナは着実に敵を撃破していく。

戦いも中盤に差し掛かり、サリナ達は高層ビルの残骸で挟まれた装騎が1、2騎程度しか通れないような狭いところで戦闘を繰り広げていた。

「うー、味方の装騎に阻まれて攻撃が通らない……」

『マヂで邪魔なのですよねー。いっその事私が……』

『ミズナちゃんやめなさい……』

多少の障害物なら、乗り越えることも出来るのだが、それも難しそうなフィールド。

そこを重装甲の装騎2騎が立ちふさがりながら、敵の装騎に射撃を加えていた。

『邪魔になるだけならまだ良いんだけどなぁ……棒立ちで射撃しまくるだけってのは頂けないぜ』

『つまり、私が……』

『ミズナちゃんやめなさい……』

『そんなことする必要ないしなー』

「え?」

ソレイユの言葉通り、正面で戦っていた2騎の装騎は撃破されていった。

『よっしゃ――――そんじゃ早速反撃するか! チーム・バーチャルスターの底力――――見せてやるぜ!』

『『「諒解!!」』』

それから何とか巻き返すことができ、味方チームの勝利で終わった。


「結構楽しかったですねー。ゲームで動かしてる感じも本物そっくりでしたし」

「かなり忠実に作ってるからな! オレたちステラソフィア生なら、あんくらい軽い軽い」

「全く、骨が無いヤツばっかりなのですよ!」

あの後も何度かゲームをプレイし、日が沈みかけた頃、サリナ達四人は帰路についていた。

「今日のお夕飯、何にする?」

「んー、何でも良いや」

「私もなんでもいいのですよ~」

「なんでもって…………サリナちゃんは――――?」

「え、あ、えっと――――――――ビ、ビーフストロガノフ?」

「――――頑張ってみるわ」

それから、4人で一緒に夕飯の買い物に行った。


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