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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
みんなの休日
74/322

シーサイドランデブーの休日

ここはチーム・シーサイドランデブーの寮室。

ガンガンに響き渡るロック音楽の中でロッキングチェアに腰掛けるのはミカエラとの賭けに勝ち、ご満悦な様子のクイーン。

その隣で、抱き枕の上に寝そべりながら本を読んでいるジャンヌが口を開いた。

「せ、先輩……さっきの勝負は流石にズルくないですか……」

「恋と賭けでは手段を選ぶ必要は無いのよ」

「そ、そういうもの、なんですか」

「そうよ」

全く悪びれた様子もなくそういうクイーンにジャンヌは内心苦笑する。

「サツキ、おかわり」

「…………」

クイーンがそういうと、サツキが黙々と紅茶をクイーンが手にしたカップに注いだ。

「サツキ、足元気を付けろよォ?」

「――――」

テイラーの言葉にサツキが頷く。

テイラーがそう言ったのは、彼女が今やっている作業と関係していた。

それはこのシーサイドランデブーの寮室一杯を使って並べられてるドミノ。

テイラーは趣味のドミノ倒しに精一杯だった。

その時だ。

バダン!!

と開かれたその扉。

それと同時に1人の女子生徒が走りこんできた。

「ちょっと、騒がしいわよ」

「ゴメンねクイーン!」

部屋へと飛び込んできたのはチーム・リリィワーズ4年ナガトキヤ・ライユ。

ライユはそのまま部屋の中を横切ると、窓から身を乗り出すと一思いに飛び立った。

「何だったのかし――――」

「あ゛――――――――ッ!!!!????」

不意に部屋に響き渡る叫び声。

その声を上げたのは、テイラーだ。

クイーンが見てみると、そこにはパタパタと倒れ、崩れていくドミノの姿。

テイラーは思い切り立ち上がると、

「あんのアマ、ぶっ殺してやる――――ッ!!!!」

そう叫びながら窓枠に足をかけ、ライユを追いかけようとする。

「やめなさいテイラー。美しくないわ」

「んだとぁ!? でもリーダーァ!!」

「まぁまぁ、それよりたまには皆でゲームでもしましょう」

「ゲーム?」

「げ、ゲームですか……?」

「そう――例えば……ババ抜きとか」

そう言いながら、懐から取り出された1箱のトランプ。

だが、それを見て

「え、やだ」

「え、遠慮しておきます……」

とテイラーとジャンヌは言った。

「って何でよ!?」

「いやどうせ、またイカサマするんだろ? 信用できねー」

「まぁ、そうですけど」

「そ、そうなんですか……」

「それなら――――」

クイーンは、ロッキングチェアから立ち上がると、自室へと足を向ける。

そして、部屋から何かを手にして戻ってきた。

それは新品のトランプだ。

「ちゃんとセキュリティシールも貼られています。これを使いましょう」

「そ、それでババ抜きするんですか?」

「つーか、そんくらいじゃ安心出来ねーんだよ」

「分かりました、では――――大富豪にしましょう」

「大富豪――――ってことはモチロン」

「ええ、モチロン、ステラソフィアルールで! これなら、不利な手札でも状況を覆せる可能性は十分にあるでしょう?」

「す、ステラソフィアルール??」

「ルールは教えてあげます。フェアな方が良いですからね」

それから、クイーンがジャンヌにルールを説明した後、大富豪が始まった。

クイーン、サツキ、テイラー、ジャンヌの4人が円を作る。

「ではカードを配りましょう」

そう言いながら、シャッフルしたカードを配ろうとするクイーン。

だが不意に、それをテイラーが止めた。

「なんですか――?」

「ナチュラルにセカンドディールしてんじゃねーよ!」

「あら、バレてしまいましたか」

「だーもう、カードはジャンヌに配ってもらおうぜ。いいだろ?」

「わ、私ですか!?」

「仕方ありませんね……」

使用するのはジョーカー2枚を含めた54枚。

それら全てをプレイヤー全員(基本4人)で等分する。

それから3のカードを持っている人は、そのカードを場に出す。

「あら、ダイヤの3――――私から時計回りですわね」

順番は、クイーン、ジャンヌ、テイラー、サツキの順番だ。

「では、ハートの4」

「ス、スペードの6で――」

「スペードの9」

「――――」

サツキはクラブの10をそっと出す。

「パス」

「スペードの11……」

「イレブンバックか――ハートの5だぜ」

「――――」

「スペードの4ね――――パスよ」

「パスです」

「パス」

サツキまで1巡したことで、場が流れる。

それから、サツキがハートの9を出し、再び場が動き出した。

それから大富豪が続いていくのだが、テイラーは正直苦しかった。

(クソ……Q二枚、10、9、8、7三枚、4二枚か……だけど)

しかし、勝算が全くないわけでもなかった。

「スペードの5よ」

「スペードの10で」

「ハートの8――――エイトスラッシュだ!!」

「8切りね」

その場は流れ、テイラーの番になる。

「いっくぜー! ダイヤの4、そしてクラブの4のダブルアタックだぜ!!」

「――――」

それに対してハートの6とダイヤの6を出すサツキ。

「クラブとハートのジャックよ」

「ハ、ハートのエースにジョーカー! ジョーカーのペルソナ能力でダブルエースアタックです!」

「へっ――――させるかよ」

テイラーの手札には、エース2枚を止められるようなカードは無い。

しかし、テイラーは意気揚々と3枚のカードを場に出した。

「スペード、ダイヤ、ハート3枚の7で必殺技を発動するぜ!!!」

バッと三枚のカードを扇状に広げる。

「ハンマートゥフォール!!! あらゆるカードを問答無用で粉砕するぜ!!」

大富豪のステラソフィアルール。

その最大の特徴が“固有の必殺技”である。

発動条件は色々あるが、その条件を満たせば1ゲームに1回だけ強力な効果を発揮できる。

基本的には、同じ数字のカード3枚での発動が基本だが、1部それ以外の条件で発動する技もある。

テイラーの必殺技『ハンマートゥフォール』は同じ数字のカード3枚で発動できる。

テイラーの説明通り、場に出ているカードがどんな数字、どんな枚数だろうと粉砕することができるのだが、革命のような常駐効果は無効にすることができない。

「――――!」

「サツキはパスね――では、私も」

だがモチロン、必殺技を使えるのはテイラーだけではない。

「わ、わたしですね――――わたしは――――」

「お?」

「クラブの5、ダイヤの5、ジョーカーで……シアーハートアタックをは、発動しますっ」

「な、なんだとァ!?」

シアーハートアタック――発動条件は場に出ているカードよりも少ない数字のカード3枚で発動できる。

その効果は――――

「わ、わたしの一つ前に出されたカードを持ち主の手札に戻しますっ!」

テイラーの手札に、先ほど出したスペード、ダイヤ、ハートの7が戻ってくる。

「マジかよ……」

それから、テイラーもサツキもクイーンもパス。

ジャンヌのターンになった。

クイーンの手札は6枚、ジャンヌの手札は3枚、テイラーの手札は7枚、サツキの手札は7枚。

ジャンヌが圧倒的に有利なのは言うまでもない。

「そ、それじゃあ、ダイヤの8――八切りします」

8のカードで場を流そうとしたジャンヌを――サツキが制止した。

「サ、サツキ先輩――――?」

場に出されたのは、クラブのキング。

「こ、これは――?」

「これはサツキの必殺技――――ブレイクスルー!!」

クラブのキングでのみ発動出来る必殺技で一般にはゴルディオンスラッシュと呼ばれる。

その効果は、あらゆるルール、必殺技を断ち切ること。

この効果を上書きで破れる必殺技は存在せず、強制的にサツキのターンになる。

そして、その次にサツキが出したのは、スペードの2とダイヤの2。

「攻めてきましたね――――パスよ」

「パ、パスです」

「パスだぜ……」

「――――」

次はダイヤのジャック。

「イレブンバックね――クラブの6よ」

「パスです……」

「くっ、パス――――だッ」

「…………」

「あら、8切り」

そしてサツキが場に出すハートのクイーン。

「ダイヤのエース」

「ハートの2です……」

「パ、パス――――ッ!!!」

「――――」

「パス、よ」

「じゃ、じゃあ、スペードのキング――――上がりです」

「ナンだとォ!!??」

「お、お先に失礼します」

「ぐぅ――――パスだッ!!!」

「…………」

サツキもパスをし、クイーンの番になる。

「あらあら、ジャンヌちゃんに先に上がられてしまいました。クラブのエース」

「パスだァ」

「――――」

「これで最後ですね。クラブの7、8、9で必殺技を発動します」

ステラソフィアルールでは、2やジョーカーで上がるのは禁止されているが、必殺技で上がることは可能となる。

発動条件は、数字が並んだカード3枚。

その効果は――――

「え、クイーンの必殺技ってーと……」

「ナイト・カムス・ダウン――場を流して私が指定したプレイヤーのターンにするわ」

この指定プレイヤーには自身も含めることはできる。

しかし、この場合クイーンはもう上がっているため自分を指定することはできない。

「私が指定するのは――サツキです」

「で、ですよねー」

「うがぁぁああああああああああああああ」

ジャンヌが苦笑し、テイラーが呻く。

「――――」

サツキがハートのキングを出し、上がる。

結果、大貧民は7枚の手札を抱えたままのテイラーに決まった。

「クッソぉぉおおおおおおおおお、もう一回だ!」

「ええ、ですがジャンヌちゃんが大富豪、私が富豪、サツキが貧民、テイラーは大・貧・民からですよ」

「あったりめーだ!! 革命起こして成り上がってやるぜ!!!!!」

それから再び大富豪が繰り広げられる。

そんな感じでシーサイドランデブーの休日は過ぎ去って行った。

オマケ

大富豪・ステラソフィアルールまとめ

カードは全てプレイヤーで等分する。

最初に3のカードを持ってるプレイヤーはそのカードを場に出し、ダイヤの3を持ってるプレイヤーから時計回りにゲームを開始する。

採用するルールは、8切り(場のカードが8より上の場合でも有効)、11バック、2上がり禁止、革命。

階段や連番での革命は無し。

大貧民が大富豪より先に上がった場合のみ、都落ち扱いとし大富豪は大貧民確定となる。

2戦目以降、大貧民は大富豪に一番上のカード2枚を渡し、大富豪は任意のカード2枚を大貧民に渡す。

貧民は富豪に一番上のカードを1枚渡し、富豪は任意のカードを1枚貧民に渡す。

2とジョーカーではジョーカーの方が上と言う扱いになる。

そして、固有の必殺技を一つだけ持ち、ゲーム中に一回だけ使える。

原則として、場に出ているカードの数に合わせた数のカードを出さないといけないが、必殺技は必殺技のルールが最優先で適用されるためその限りではない。

必殺技はその名の通り必殺技なので、あがり確定の場面での使用も可能。

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