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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
みんなの休日
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ウィリアムバトラーの休日

「あー、なんでウチがあんなヤツのためにカナンまで行かんといかんのや……」

グチグチとそう言いながら神都カナンを歩いているのは、チーム・ウィリアムバトラー4年ロバーツ・ミカエラ。

それ以外にも、3年エール・カトレーン、2年モード・ヘレネ、1年リサデル・コン・イヴァとチーム・ウィリアムバトラーの4人が集まっていた。

「仕様がないとよリーダー。勝負に負けたのはリーダーじゃし」

「残念無念、また来週」

「ら、来週もやるつもりなんですか?」

「もうやらんわ!」

なんで彼女らが4人そろってこの神都カナンへと足を運んでいるかと言うと、それは今朝起きたちょっとした事件がきっかけだった。

「ロバーツ・ミカエラ!!」

バダン!

と大きな音をたてて開かれた扉。

その扉を開いたのは、チーム・シーサイドランデブーの4年マーキュリアス・クイーンだった。

「何やクイーンか。何しに来たん?」

「私と賭けをしない――――?」

「賭け?」

それはこういう話だった。

今日発売のCDを買いにカナンまで行こうと思ったのだが、外出する気が起きないクイーン。

そこで彼女は考えた。

「そうだ、誰かを代わりに行かせればいいのよ」

と、言うことで手始めにチーム・ウィリアムバトラーの寮室に突入したのだった。

条件は、クイーンが勝利した場合はミカエラがカナンにCDを買いに行く。

ミカエラが勝利した場合はクイーンがミカエラの言うことを何でも聞く。

という条件。

「ふっふっふ。クイーン、アンタは言い出しっぺの法則を知らんの?」

「ふふん、つまりそれは私の賭けを受けるってことね――――」

それから、クイーンがあの手この手のイカサマを仕掛けた激しい戦いが始まるのだが――結果はもうすでに知れている通りだ。

他の3人は、たまたまヒマだったから着いてきただけで特に意味はない。

「ぐぬぬ……まさか、はい・いいえ・枕が全部はい・いえす・枕に変えられてるなんて思いもしないかったで……」

「何の話とよ――」

すぐに目当てのCDを購入し、それから暫くば4人で街をブラブラする。

そして、スザク書店の近くを通りかかった時だ。

たこ焼きを食べながら道を歩いていると、イヴァが1人の人物に気が付いた。

「あれ、あの人は――――」

それは1人の女性だった。

透き通ったような長髪のどこか優しげな女性。

しかし、その表情はどこか困っているようで……。

「イヴァちゃんの知り合いか?」

「イヴァがよくいくプラモ屋でたまにお話するさ」

「困ってるぽい――何かに」

「ちょっと話を聞いてみようね」

イヴァはそういうと、そのお姉さんの元へと走り寄っていく。

その後を残りの3人もついていった。

お姉さんの話を聞いたところ、どうやら今日行う予定だったニャオニャンニャーショー。

これは、このスザク書店一帯にあるお店の人達が何かイベントをしたいということで企画されたものだったのだが、色々あってショーの開催が困難な状況にあるというのだ。

「私も協力してあげたいんだけど、どうしても外せない用事があってプラハまで帰らないといけないし……困ったわ」

「これはしにヤバいさ――!」

お姉さんの言葉を聞いたイヴァがポツリとそんなことを呟いた。

「イヴァちゃん――――? どないしたん」

「ニャオニャンニャーショーだばーよ?」

「そ、そうやな――――」

イヴァの口調は極めて静か――――だが、そこに込められた奇妙な迫力をミカエラは感じ取った。

「ニャオニャンニャーさーニャオニャンニャー! 世界の平和を守り、子どもたち(ワラビンチャー)の希望ぬフシ! それがニャオニャンニャーなワケさ!? そのショーが行えるか行えないかの瀬戸際ってことさ!?」

「そ、そうね……」

「手伝うさ! わったーチーム・ウィリアムバトラーが!」

「え、ホンマ?」

「ホンマだばーよ!」

やけに気迫の籠ったイヴァの言葉にミカエラは暫く何かを考えていたが――――

「しゃーない、いっちょウチらウィリアムバトラーが一肌脱ぐか!」

ミカエラのその言葉に続くように、カトレーンとヘレネも頷いた。

それから、スザク書店近くに設置されたステージのそのステージ裏。

「こ、これは――――怪人ドッグドク!!」

「ドッグドクとね――――?」

「――ユニーク」

ニャオニャンニャーの戦闘状態であるニャンニャーの着ぐるみの横に置かれた、今回のショーで怪人役となる着ぐるみにイヴァは目を奪われる。

「何やこのヘンテコリンなイヌは」

「怪人ドッグドクさ! ニャンコ王ニャオニャンニャー第26話『恐怖のホットドッグ』に登場した怪人で、ホットドッグを使って人の心を掴んで、ホットドッグ信者による軍隊を作って世界征服をたくらんだ犬の怪人さ。必殺技は口から毒をドックドクと吐き出すポイズンボイスンだばーよ!」

「なるほど分からん」

「というか、そもそもニャオニャンニャーってどんなテレビとよ」

「おおお、よくぞ聞いてれたさー! ニャンコ王ニャオニャンニャーは日曜朝からやってるテレビアニメで、悪の組織にサイボーグにされたネコのニャオ・ニャンがニャンニャーに変身して世界の平和を守るため孤高に戦うアニメさ。ネコリクダー、ネコウミダー、ネコソラダーっていう陸海空の支援ユニットと、そのユニットと合体することで巨大ロボ・ニャオニャンニャーに――」

「だぁー、分かった分かった! カトレーンも余計なこと聞くんやない!!」

「うーい」

「てか、仕事。どーする」

「ああ、そうやった。ショーで何の仕事するか話し合わな」

「はっ! そうさ……すっかり忘れてたさ」

「基本的な仕事って何があると?」

「とりあえず、猫、犬、司会、裏方――――ってところか?」

「丁度4人……」

「丁度ってソレかなり苦しい気がするとよ」

「まぁ、しゃーないやろ! んで、どーやって決める?」

「それはリーダー、やっぱりジャンケンとか、くじ引きとか――」

「ナームーアーミーダークージー」

結局、あみだくじをすることになり、その結果はというと――――

「司会のお姉さんや……」

「ドッグドクとよー」

「ニャンニャー……」

「裏方さー!」

と言う役割でニャオニャンニャーショーに挑むことになった。


結果、ショーは大成功。

普段はクールな様子に反してキッレキレの動きを見せたヘレネのニャンニャーや、イヴァの効果的な音響テクニックによってその少数ぶりを思わせない仕上げにもっていった。

イベントは無事に終了し、謝礼替わりにケーキや商品券をもらったウィリアムバトラーの4人は揚々とステラソフィアへと帰るその途中。

「しっかし、スズメちゃんうるさかったなぁ……」

「あ゛?」

「すみません」

「スズメちゃん。可愛い。最高」

「でも、スズメちゃんが居たってことはほかのブローウィングもいたんかね~?」

「だからねー。イヴァは見てないけど、もしかしたら居たかもしれないさー」

「うわぁ……ツバサ辺りに見られてたら最悪やで…………」

その後日、ミカエラがツバサに弄りに弄られまくったのは言うまでもない。


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