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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
みんなの休日
72/322

ブローウィングの休日

5月17日日曜日。

チーム・ブローウィングの4人は神都カナンへと足を延ばしていた。

きっかけはカスアリウス・マッハの放った、

「劇場版執行美少女ラジカル☆レイミ、ブルーレイのゲーメディア・カナン店限定版が欲しいんですよ

ォ!!!!」

という1言だった。

「そうだな――アタシもそろそろ欲しい本があったし――いっそ、みんなでカナンまで行くか!」

チームリーダーであるワシミヤ・ツバサのその一声で、今日の休日はみんなで神都カナンへと向かうことになったのだ。

4人でカナンの電気街を歩きながら、ツバサがポツリと口を開いた。

「思えば、休暇ってことでカナンに皆で来たのって初めてだよなぁ」

「そうですわね。新歓の決勝戦以来ですし――」

「気付けば、あれから1か月が経ちそうなんですよね……早いような、遅いような」

「そうだな――なんかもうすっごく長い間スズメちゃんと付き合ってるような感じがするけど、まだ1か月経ったくらいなのか」

「ですわねぇ」

「早くラジカル☆レイミを買うんですよォ!!!」

他愛のない会話をする3人に、マッハが焦れたように声を上げた。

子どものようなその姿に、ツバサは苦笑しながら、

「わかったわかった、ゲーメディアだっけ?」

と問いかける。

「そうなんですよ! ここをまっすぐ行った4階建ての建物がそうでやがるんですよ!」

「あれ? 前と場所変わったんだ」

「移転してリニューアルなんですよ~。ここの1、2階がゲーメディアなんですよ!」

4人でゲーメディアの店内に入ると、マッハはブルーレイコーナーへとすっ飛んで行った。

それから暫くして、少し厚みのある箱のようなものが入っている白色の袋を抱えて戻ってくると満足そうな顔で

「先輩方とスズメちゃんは欲しいものは御座いませんの?」

と尋ねてきた。

「ヤバい、マッハちゃんが満足感に包まれすぎてキャラ崩壊してる……」

「しょ、正直、キモいのですわ」

「マジ引きます……」

聖人モードと化したマッハに、ドン引きの3人。

そんな3人の様子にも気付かない様子で、浮かれるマッハ。

その周囲にはまるで光が溢れ、花が咲き誇り、この世すべての幸福を纏っているような気さえした。

まぁ、気のせいだけど。

そのままの流れでツバサが買いたいという本を探してスズメたち4人はこの電気街近くの大型書店スザク書店へと向かう。

「ツバサ先輩が欲しい本って何なんですか?」

その道中、ふと、スズメがツバサへそんなことを尋ねた。

「ああ、なんか保育関係の本欲しくてさ」

「――――保育?」

「そ、アタシさ、これでも将来の夢は保育士なんだ」

「え、えぇぇぇええええ!? そ、そうだったんですか!?」

「そーなの。元々、教職科目当てでステラソフィアを受験したんだけどさ――まぁ、落ちちゃって」

「あれ? でも、だったら他の学校に行けばよかったのになんでステラソフィアに――?」

「機甲科ってさ、機甲装騎をメインに扱って実地戦に出たりする以外は結構自由な学科なんだよ。機甲科に入っても、保育士資格は取れるって言われて、もともと機甲装騎も好きだったし、ステラソフィアを卒業したてステータスがあったら十分じゃん」

「だから、機甲科に入ったんですねぇ……」

「そ、両親にも楽させてあげたいしね」

「うー、保育士ってクソガキの相手なんかして何が楽しいでやがるんですかねぇー」

マッハがそう口にした瞬間、一同に「お前の方がクソガキだけどな」と言う空気が流れたのはマッハは気付かなかった。

それから辿り着いたスザク書店の前――そこはちょっとした広場みたいになっているのだが、今日はそこにステージが設置されて、その前にはそこそこな数の親子連れの姿があった。

そして、そのステージ上にはどこか悪ぶった感じの着ぐるみの犬の姿。

「なんだ? 何かのイベントか?」

「あ、あれは怪人ドッグドク――――! ま、まさかこれは――――」

その姿に反応したのは――――スズメだった。

「うわー、大変や! 怪人ドッグドクが現れたで!」

「あら、あの方は――」

「ちょっ、ミカエラ何してんだよ」

そしてそのステージの横には、なぜかマイクを持って進行役を務めるチーム・ウィリアムバトラーのロバーツ・ミカエラの姿があった。

ツバサはその姿に笑いを隠せないらしく、肩を震わせながらうずくまってしまった。

その一方、怪人ドッグドクに目を奪われミカエラの姿には気付かないスズメ。

その体がうずうずと疼き出し、ソワソワしだす。

「スズメちゃん――――?」

その様子に気づいたツバサがスズメへと声を掛ける。

「ツバサ先輩――――」

「なんだ?」

「私、このショーを見てきてもいいですか!!??」

「え、ああ、いいけど……」

スズメの謎の勢いに圧されながらも、ツバサはそう答える。

「それでは、ツバサ先輩たちは用事を済ませてきてください!」

「お、おう――――」

そんな会話をしている間に、ステージでは物語が進んでいく。

「そんなら、みんなでニャンニャーを呼んでみるで!」

「先輩、それでは――――」

「お、おう」

「せーのっ」

「ニャンニャァァァアアアアアアアアアアア!!!!!!」

スズメは元気にニャンニャーの登場に盛り上がる子どもたちの中に、子どもたちと同じように声を上げながら飛び込んでいった。

「ニャオニャンニャーのショーか……」

「スズメちゃん、ニャンニャー好きですからねぇ」

「ヒーローショーは合体ロボ・ニャオニャンニャーが出てこないからあまり好きじゃないんですよー」

「知らねーよ」


「楽しかったですねー」

「ああ、話のネタもできたしなー」

「そうですわね」

「――――?」

「マハはさっさと帰ってブルーレイを見たいんですよォ」

用事をすべて済ませた4人は帰路につく。

辺りは若干、赤みがかかり、そろそろ日が沈もうとしているのがわかる。

「夕飯くらいはどこかで食べてこようぜー」

「えー、だったら激辛料理がいいんですよー」

「激辛料理…………私はちょっと……」

「途中でハバネロでも買っていきましょうか?」

こんな感じでブローウィングの日曜日は過ぎていくのであった。


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