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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
二度目の実地戦
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ステラソフィアの脅威

「ベーラ! クソ……ッ!! 遊びで戦争をしているような学生どもに――――っ!!!」

装騎チリペッパーの一撃によって撃破されたラドカーンの1騎。

その事実を確認し、後方に控えたP-3500ベロボーグに乗った一人の男が叫び声をあげた。

先の装騎スネグーラチカが放った1撃によって、先行していたサーカニィタイプが2騎撃破されているこの状況の中、この装騎部隊の隊長を務める彼――フォン・バログ・アールミンは焦りを感じていた。

「敵、ヘルメシエル型――――そ、そのまま突っ込んできます!?」

「このままだと分断されます!」

「なんだと!?」

ショットガンを両手に装備し、デタラメに撃ち放ちながら最奥に構える3騎のP-3500目掛けて突っ込んでくるのは、先ほど前方のラドカーンを撃破した装騎チリペッパーだ。

その勢いこそ凄まじいが、やはり山岳地では戦い慣れていないらしく、斜面や木々を利用され、思うように進行出来ていない。

しかしそれでも、着実にアールミンらを目指し向かってきている。

「我慢ならん――――俺がヤツの相手をする!!」

「ダメです隊長!」

「何故だ!?」

業を煮やして、先方の支援に行こうとするアールミン。

しかし、それをアールミンの傍に侍る部下であり右腕であるフェケーテ・リハールドが制止した。

「ダメです――、本来の作戦は遠距離砲撃での敵視界外から断続的な攻撃をすることによって相手を摩耗させる作戦――――あわよくば、敵を分断しての各個撃破も考えていました、が――――」

「逆にこっちが分断されているもの……ここは、退却?」

そう口を開いたのは、リハールドと同じくアールミンの部下であり、共にP-3500ベロボーグを駆る女性騎使フェヘール・ゲルトルード。

「ええ、本部と合流をして、態勢を立て直した方がいいと思います。その代わり、先行しているラドカーン3騎とサーカニィ6騎は見捨てることになりますが、ね」

リハールドはそう言うだけ言って、沈黙した。

作戦の最終決定権は隊長にある――リハールドは決断をアールミンに促しているのだ。

「わかった――――」

「では」

「1騎だけ突出しているあのヘルメシエルタイプを一気に撃破――――それから全騎離脱する!」

「何ですって!?」

アールミンの言葉にリハールドは驚愕の声を出す。

「ルシリアーナの行ったシミュレーションではこのベロボーグ3騎でマルクト装騎を1騎撃破できるという……不可能では無い」

「普段はシミュレーションなんてあてにならないーって言ってるのに」

ゲルトルードが口を尖らせる。

「けど……私は良いよ。隊長の考えに、従う」

「……全く、仕方ありませんね」

「そうと決まらば善は急げだ。俺がヘルメシエルタイプを引きつける……機を見てリハールド、ゲルトルードは超振動ブレードの最大出力で敵の背中を貫け! 各ラドカーンとサーカニィは後退しながら我々の支援だ!」

「諒解!」

アールミンの指示にマジャリナ軍人達は威勢良く答えると、アールミンは装騎ベロボーグを装騎チリペッパーに向けて走らせた。

「うおぅ、あれが噂のP-3500とか言うヤローですか! フヒヒー、マハが1番乗りなんですよォ!!」

「来たなヘルメシエルタイプ……!」

断続的に行われる、ラドカーンとサーカニィの攻撃を切り抜け、P-3500ベロボーグと正面からぶつかるチリペッパー。

「なんか面白い形をしてるんですよ!」

どこか、お椀を伏せたような丸っこい外見のP-3500ベロボーグ。

それは確かに、面白いと評されてもおかしくはない外見だった。

「イっくんですよォォオオオ」

気合い1発、チリペッパーがアールミンのベロボーグに蹴りかかる。

「そんな単調な攻撃などっ」

その1撃は鋭い1撃――――しかし、ベロボーグはものともせずにそれを回避をした。蹴りが空回りしたチリペッパー目掛けて、ラドカーンとサーカニィ、そしてアールミンの駆るベロボーグの銃撃が集中する。

「うがががが、チクチクチクチクうざいんですよッ!」

その銃撃は、豆鉄砲のようなものだが、断続的に放たれる銃弾とその被弾時の反動によって最軽量であるPS-Hヘルメシエルをベースにした装騎チリペッパーは満足に動けない。

遠距離攻撃用として、可能な限り大口径の銃器を選択してきたことも功を為し、装甲を貫通するには至らないもののなんとか足止めには成功していた。

「隊長、私が援護します!」

そう言いながらゲルトルードの駆るベロボーグが手にした電動式連弩砲をチリペッパーに向かって撃ち放つ。

「では、僕が止めを刺します……!」

その隙に急接近したのはリハールドの駆るベロボーグ。

右手に超振動ブレードを構えると、チリペッパーの背後など回り込み超振動ブレードを――

「敵騎、急速接近!!?? うわぁぁぁあああ!!!!!」

「何っ!?」

不意にサーカニィとラドカーンが1騎ずつ撃破される。

刹那、凄まじい速さで飛ぶように1騎の装騎が近付いてきた。

そう、スズメの駆る装騎スパローだった。

木々を蹴る反動を利用しながら、その合間を縫って跳んで来たのだ。

そしてそのまま、流れるようにリハールドの駆るベロボーグを撃破した。


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