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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
新入生歓迎大会
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新入生歓迎大会

それから日にちは経ち、ついに新歓の日がやってきた。

「うわぁ、たくさん居ますねぇ……!」

「この学園の一大イベントだからな」

「ワクワクしてくるんですよ!」

「そうですねぇ」

朝9時。

寮の広大なエントランスホールに、スズメたちブローウィングの4人の姿はあった。

エントランスホールに設置された電光掲示板――その前にできている人だかり。

おそらく、機甲科に所属する全生徒が集まっているのだろう。

その掲示板に表示されているのは、新入生歓迎大会の対戦トーナメント表だった。

チーム数は全部で32チーム。

1チーム4人なので、この学園の機甲科には128人の生徒が所属している事になる。

1学年32人しか入れない狭き門戸……それが機甲科を持つ教育施設の中でもトップレベルと言われる国立女学園ステラソフィアだ。

それはともかくとして。

「よう、チーム・ブローウィング」

「ソレイユ――!」

不意にかけられた声、それはディアマン・ソレイユのものだった。

ソレイユに続くよう、ズラリと並んだその姿はチーム・バーチャルスターの面々だ。

「トーナメント表は見てきたのか?」

「いんや、まだだよ。こうも人が多いと嫌んなっちゃうね」

「あっはっは、違いねー」

ツバサとそんな会話をするソレイユ。

その様子から2人の仲の良さが見て取れる。

「一応言っておくと、順調に行けばオレ達と当たるのは決勝戦になるぜ。それまで負けないように頑張れよ」

「ソレイユ、それって負けフラグだぞ……いいのか?」

「なーに、オレ達は負けないって」

「ま、そうだね」

ソレイユのその言葉を最後にバーチャルスターはエントランスホールから去って行く。

その去り際、カスアリウス・マッハがツミカワ・ミズナに向かって親指を下に向けて立てると、ミズナも中指を立て返した。

「全く、相変わらずだな……」

「痛っ!?」

ツバサがため息をつきながら、静かにマッハの脳天へ手刀を打った。

「お、もう掲示板見れそうだね」

気付けば人の数も減り、掲示板前は結構空いてきていた。

トーナメント表に目を通し、ブローウィングの名を探す。

「チーム・バーチャルスターはAブロックの一番初めだな……って事はアタシ達はBブロックか?」

「はい、あ、ありました! 私たちはBブロックの下から5番目です」

新歓のトーナメントはAブロック16チーム、Bブロック16チームに分かれており、それぞれのブロックの優勝者が決勝戦を行う。

ブロックが違うと、自然と決勝戦で当たる事になる。

「おい、スズメ後輩! 最初の相手を教えるんですよ!!」

「あ、はい、えっと最初の相手は……チーム・ウィリアムバトラー、です」

「ウィリアムバトラーって言うと、あの変わり者が多いチームか?」

「それはアンタらやろ!!」

突然投げ掛けられたそんなつっこみに、ブローウィングの面々は声のした方へと顔を向けた。

そこには、どういう訳か全員が腕を組みながら、揃ったポーズで構える4人組の姿があった。

「チーム・ウィリアムバトラー!!」

同じポーズで待ち構えていた4人組。

そう、彼女こそがチーム・ブローウィングの1回戦の相手、チーム・ウィリアムバトラーだった。

「アンタらが1回戦の相手や分かってお約束通りのタイミングで声かけられるようスタンバってたんやけど、あまり悠長にしてるから待ちくたびれたで!」

「訛り凄いですね……」

「だまらんかい!」

「ひぃ、ご、ごめんなさい……」

「ジブン1年か?」

「は、はい……ブローウィング所属機甲科1年サエズリ・スズメ、です……」

「おいおい、ミカエラ。うちの1年をあまりビビらせないでくれよ」

チーム・ウィリアムバトラーのリーダーで、機甲科4年ロバーツ・ミカエラ。

マルクト神国に吸収されて長いながらも、その特有の訛りが色濃く残るマルクト第2の都市シナイの出身だと言う。

「そうはゆーても、最初に口出ししたんはソコの1年やろ!」

「ご、ごめんなさい……」

「まぁ、そう怒んなよ」

「おい、へっぽこ。おい、リーダー」

「誰がへっぽこや!?」

ミカエラに向かって、その背後からかけられたけだるそうな声。

腕を組んだ格好のまま、ジト目の女子が変なオーラを出しながらミカエラを睨みつけていた。

「疲れた、そろそろ。ていうか、お前ウザい」

機甲科2年モード・ヘレネ。

どんなことにも物怖じしない冷静さを持つ、アッシュブロンドの女子だ。

比較的最近に吸収された地域の出身な為少し言葉が片言なのが特徴的だ。

「な、なんやて――」

「まぁまぁリーダー。ヘレネちゃんも先輩に向かってそんなこと言わんとよ」

若干険悪なムードになりかけたミカエラとヘレネの間に割って入った何処か猫を思わせる女子。

機甲科3年エール・カトレーン。

彼女も南西側の地方出身で、微妙な訛りがある。

「どうせなら、わたしに言ってほしいとよ!!!!」

不意にそう叫び声を上げながら、ヘレネへと抱き付こうとする。

「くたばれ」

「ぐふぅっ!!!」

ヘレネの拳がカトレーンのみぞおち目がけて容赦なく叩きつけられる。

痛みに悶絶するカトレーンの姿は心なしか嬉しそうに見えた。

「な、変わり者ばっかだろ?」

「そ、そうですね……」

ツバサの言葉に、スズメは同意するしかなかった。

「そういえば、そっちの1年は?」

「せや、イヴァちゃん挨拶しとき」

ミカエラの言葉に促され、1番後ろで隠れるようにしていた女子が姿を現した。

機甲科1年。リサデル・コン・イヴァ。

「イヴァって言います。よ、よろしくさー」

マルクト南部の有名観光地を出身地とするイヴァ。

チーム・ウィリアムバトラーは、どういう訳か地方出身者が多く集められているチームだった。

「イヴァちゃんはちょっと人見知りやから堪忍したってな」

そんな話をしている間に、その時間は10時を回っていた。

「あっと、そろそろ新歓の始まる時間じゃないか?」

「そろそろゆーても、あと30分はあるから大丈夫やて」

「でも、30分前行動って大事だろ?」

「うちは15分前派やけどな!」

などとよく分からない事を言いながらも、自然と8人は寮のエントランスを後にして観衆席を兼ねているグラウンドへと向かっていた。

挿絵(By みてみん)

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