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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
二度目の実地戦
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因縁の予感

「ステラソフィア女学園部隊の装填を確認――――マスドライヴァー・イシュマエル、起動します!」

「諒解! マスドライヴァー・イシュマエル起動!」

「シャダイコンピュータからの飛行ルートをインプット! 目標、4918・1905地点!」

「クーゲル発射準備完了――――クーゲル、射出します!」

飛び交うオペレーターの声に、所定の手続きを踏みマスドライヴァー・イシュマエルが動き出す。

莫大な魔電霊子が供給され、マスドライヴァー・イシュマエルがその銃口を空へと向けた。

刹那、霊子の迸りと共に、スズメたちを乗せたクーゲルが解き放たれた。


マジャリナ王国領西部マルクト神国国境前ジリナ近郊。

山岳地を拠点にしてマジャリナ王国の機甲装騎が配備されていた。

その山の麓にある工業地を占拠しようとするマルクト国軍だったが、山地に拠点を敷いたマジャリナ王国軍の遠距離攻撃の雨に晒され思うように進んでいなかった。

火力も性能もマルクト神国の装騎には及ばず、たとえその攻撃が直撃しようとマルクト装騎へのダメージは殆ど無いようなものだがそれでも数を揃え、精神を削るように継続的に行われる砲撃は学生たちの気力を奪っていく。

加えて、国軍の学生兵、そのほとんどが経験のない山地での戦闘ということもあり、マルクト国軍は攻めあぐねていた。

ガガガガガガッ!!

「きゃ!?」

「ナオ、大丈夫――っ?」

「だ、大丈夫……! 今の銃撃、他の装騎と弾の重さが全然違った……」

「アレが噂のP-3500ってヤツですわね。でも、ナオの様子を見る限り――敵では無さそうですわぁ」

「カヲリ様――油断、大敵」

「スミレは慎重過ぎなのよ」

そんな状態の中、山岳地に3騎のミカエルタイプとそれらを率いるようにして動く1騎のミーカールタイプ――計4騎の機甲装騎の姿があった。

ミーカールタイプはミカエルタイプの魔術適正者仕様――そのことから、そのミーカールを駆るカヲリは魔術使であることがわかる。

彼女らはマジャリナ山岳地の敵部隊に対する威力偵察として派遣された国立リラフィリア機甲学校の生徒たちだった。

リラフィリア機甲学校は、ステラソフィア女学園よりも1ランク下の国立機甲科高等学校で、それぞれの学年から1人ずつでチームを組むステラソフィアと違い、同じ学年同士でチームを構築するため全員同級生だ。

時たま攻撃を加えながら、相手の出方や配置、そして勢力を見ながら移動する4騎。

ある程度の偵察を終え、4人は周囲に敵の気配がない山道で小休止を取ることにした。

「カヲリーダー」

「ミカコ! ちゃんと、カヲリリーダーと呼びなさいって言いましたわよね!?」

「えー、面倒だしカヲリーダーで良いじゃないですか……」

「……ていうか、それならリーダーで良いんじゃあ」

ナオのつっこみにミカコはぷいと顔をそむける。

「ヤダ、カヲリーダーをリーダーって呼ぶのなんか癪」

「なんですって!?」

「じゃなくて、カヲリーダー進展だよ進展!」

「――進展?」

「そうそう進展! これから、ステラソフィアのチームがマスドライヴァーで直接敵軍を襲撃するから、その機に乗じてアタシたちも攻撃だってさ」

「ステラソフィア――――」

「ステラソフィアってあの!?」

ステラソフィアという言葉を聞いて、どこか険しい表情になるカヲリをよそに、ナオが瞳を輝かせた。

「そう、あのステラソフィア! しかも、新歓優勝チームのブローウィング!!」

「ブ・ロ・オ・ウ・ィ・ン・グ・で・す・っ・て・ぇ!!??」

「うおっ!? なんだよカヲリーダー! ビックリするじゃん!」

「チーム・ブローウィングって言ったら――――サエズ――あ」

何かを察したようなに口元に手を当てるナオ。

そして訪れる一瞬の静寂。

そんな中、

「やっちまったな」

スミレの呟きが響き渡った。

「え、なに!? アタシなんかした!!??」

「いや、あの、えっとね……チーム・ブローウィングの1年生、いるでしょ?」

ナオは通信をカヲリに聞こえないように切り替えた後、口を開いた。

「えっと、サエズリ! サエズリ・スズメだっけ?」

「そうそう、それでそのスズメって子とカヲリ様って同じ中学校の出身なんだけど……」

「カヲリーダーってサエズリ・スズメと同じ中学だったの!? スッゴーい!!!」

「それで、あんまり良い思い出無いみたいだから……その名前は禁句なんだよぉ」

「なるほど――ていうかなんでナオそんな詳しいの?」

「カヲリ様の愚痴よく聞いてるから……

「ナオも大変なんだなぁ……」

「カヲリ様、マヂ、ウザい」

「そんなこと言ったらダメだよスミレちゃんー!」

そんな話をする彼女たちの頭上を、1個の巨大な弾丸が通り過ぎていく。

「お、今のは!」

「クーゲル――」

「そうだよね! ということは、作戦開始!? カヲリ様!」

「うふ」

「?」

「うふふふ」

「カ、カヲリ様――?」

「うふふふふふふふふふ! 良いでしょう。今ここでぶっ倒してあげますわ!! サ・エ・ズ・リ・ス・ズ・メ・ェ!!!!!」

カヲリはそう叫ぶや否や、クーゲルを追いかけるようにして山の急斜面に手をかける。

「待ってなさぁぁああああああああああああああああい!!!!!!!!!!」

「カヲリ様落ち着いてぇ!!」

斜面をよじ登るカヲリの乗るミーカールの後を追うように、3騎のミカエルが斜面へと手をかけた。


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