生徒会同好会
「今度の選挙はぜひ、このわたし、ウェーナシア・サキュアに清き1票をお願いします!」
とある平日。
サエズリ・スズメとワシミヤ・ツバサの2人が売店へとお菓子を買いに行こうと校内を歩いていた時、そんな声が聞こえてきた。
「なんですか、あれ?」
「ああ、あれか。あれは生徒会の選挙活動だよ」
「生徒会――? この学校って生徒会なんてあったんですか!?」
ツバサの言葉にスズメは驚きの声を漏らす。
実際、スズメはこのステラソフィア女学園に入学してきて、生徒会というものの存在を聞いた事がなかった。
「入学式とか、そういう式でも出てこなかったですし」
「確かに、ウチの生徒会はほかの学校の生徒会とは違うからな」
「そうなんですか?」
「ああ、『生徒の個性を伸ばすために、学園の自治と変革を目指す有志の集まり』――正式名称は『生徒会同好会』」
「生徒会なのに同好会とは一体……」
「まぁ、生徒会のなかったウチの学園で、生徒の意思を上に伝えよう――そして自分たちでより良い学園生活を作ろう! ってヤツらが作った一種のクラブ活動だからな――――まぁ、ちょっと私設団体みたいな面がある以外は普通の生徒会と変わらんだろうが」
「そうよ!」
不意に、スズメとツバサの間に割り込まれた1言。
その言葉を発したのは――――
「あれ、クイーン?」
「クイーン先輩?」
機甲科4年チーム・シーサイドランデブー所属マーキュリアス・クイーンだった。
「と、いう訳でこれを――」
そう言いながら、クイーンが手渡したのは1枚のチラシ。
そこには、生徒会選挙の日時と場所――そして、クイーン自身によって書かれたと思しき彼女自身のマニフェストなどか記されていた。
「もしかしてクイーン先輩も――――」
「ええ、そうです。私も生徒会選挙に参加致します。是非とも私に清き1票を」
「やっぱり今年も出るのか」
「今年も?」
「ああ、クイーンは1年の頃から生徒会活動に参加してるからな」
「そうだったんですか!」
「私達4年生にとっては今回が最後の選挙になりますしね――それはともかく――――生徒会選挙の立候補者はまだ募集中なんです。参加は自由ですから現時点で生徒会に所属していない方でも立候補が出来ますの」
「え?」
クイーンが急にそんなことを言い出すので、スズメは首をかしげる。
「なるほど――――つまり、」
ツバサはクイーンの言葉で何かを察したようだ。
「サエズリ・スズメさん――――貴女、生徒会長に立候補してみる気は無いかしら?」
「って私がですか!?」
クイーンの突然の提案に、スズメは思わずそんな声を上げてしまう。
「ええ、新歓の件で支持率も申し分ないですし、私の目から見ても貴女には素質がある――そう思うのよ」
「いや、でも、そんな――――それにクイーン先輩も選挙に出るんですよね」
「貴女が立候補すれば私は確実に当選する事は不可能でしょう。しかし、私はもう4年生――――本当ならばもう下級生に任せても良い学年です。そして、それがスズメさん、貴女なら本望だと思っていますから」
「う、うう――――私は別にそんな事言われるような人間じゃない、ですし――」
「ふふ――まぁ、無理にとは言いませんし。今年は無理でもまた機会があれば是非」
「は、はい――――」
「では、失礼」
丁寧に頭を下げると、クイーン先輩は去っていった。
「この学校って変なクラブがあるんですね……」
「そうだよ……」




