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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:学園ライフ編
64/322

サッカーやろうぜ!

「実は、貴女達2人を見込んで話があるの!」

5月8日金曜日。

サエズリ・スズメがヒラサカ・イザナと2人で昼食を取っていた時だ。

1人の女子生徒が、突然そんな事を2人に告げた。

「――誰?」

「わたしは機甲科3年チーム・オラシオン所属のセントニコラス・サアラ! サエズリ・スズメさん――――そしてヒラサカ・イザナさんですよね?」

イザナが真顔で発したその言葉に気を悪くした様子もなく、サアラと名乗った3年生はスズメとイザナにそう尋ねた。

「そうです、けど――――」

「わぁ、やっぱりそうですよね! 初対面でこんなことを言うのもどうかって思うんですけど、2人に頼み事があるんです」

「頼み事?」

「はい!」

首をかしげるスズメに、明るい笑みを浮かべながら肯定するサアラ。

「実はわたし、ステラソフィア女子サッカークラブに所属しているんですけど――」

「部活の勧誘ならお断りよ」

「いえ、勧誘じゃなくて――――その、助っ人を……お願い、したいんです」

「助っ人、ですか?」

「そう、助っ人です!」

スズメがサアラから話を聞いたところだと、こう言う事らしかった。

今週末、神都カナンにある高等教育機関のサッカークラブ同士の新人大会があると言う。

これは一種の交流や、新入生の大会参加への機会を設けると言う事を主眼においた大会なのだが、その大会に出るにあたってクラブ所属者の都合が中々合わず今のままでは参加を辞退せざるを得ないのだという。

「新人戦とは言え、新入生には大会の空気って言うのを感じさせてあげたいし、ここで出場しないのは損だと思うんですよ」

「それで私達が助っ人になって欲しい、と? ていうか、何で私達なのよ」

「それはですね、わたしがお2人の蹴りに一目惚れしちゃったから――です!!!」

「はぁ!?」

「へ?」

サアラの言葉に、首をかしげるイザナとスズメの2人。

「蹴り? 蹴りなんて披露したことあったっけ? 私とスズメの、二人で?」

「そうですよ! お二人は忘れたんですか!? あの、4月25日土曜日のお昼を!!」

「4月、25日――――ですか?」

「土曜の、昼って言ったら――――」

「「ああっ!!!」」

2人とも、何か思い当たる事があったのか、揃って大声を上げた。

「土曜日のお昼って言ったら――――アレですよね!」

「そうよ、弁当争奪戦争――――っ!」

「はい、そうです!!」

毎週土曜日、絶品弁当の購入を目指しステラソフィア生が繰り広げる一大イベント弁当争奪戦争。

スズメとイザナはその戦争に参加したことがあった。

その時、2人の前から転がってくるゴミ箱を、2人のコンビネーションキックで他の競争相手に蹴り飛ばしたことがあったのだ。

「まさか、あの時ゴミ箱をぶつけられた人の群れの中に――――」

「はい! わたしもいました!!」

「そ、それは――すごく申し訳無いです……」

「いえいえ、あんなことは些細な事! わたしは、あのお陰で今、スズメさんとイザナさんという最高の人材を見つけたんですから寧ろ嬉しいくらいです!」

「そ、そうですか――――」

「それで――――どうか、わたし達ステラソフィア女子サッカーチームの助っ人を……」

スズメとイザナは2人で向き合い、相談をはじめる。

「どうする、スズメ――――」

「ど、どうするって言われても……でも、私は力になれるんだったら…………力になりたい、かな」

「でも、サッカーしたことあるの?」

「う、イ、イザナちゃんは?」

「……………」

「どうか、しました?」

相談する2人の間から、覗き込むように顔を出すサアラ。

「私達、サッカーの経験まるでないんだけど」

「経験は問わないです! 最低限のルールがわかれば!」

「ルールも、そんな分からないんだけど……」

「それなら、初心者にも簡単なルールブック渡しときますよ!」

「その本さえ、あれば?」

「ルールは完璧ですよ! お2人ならば、ルールさえ分かれば後は自由に動けると思いますし」

「――――――分かったわ、助っ人受けてあげるわ。それでいいんでしょ? スズメ」

「はい!」

「ほ、本当ですか――――!!??」

「本当ですよ!」

「ありがとうございます! ありがとうございます!! それじゃあ、後でオラシオンの部屋まで来てください! ルールブック渡しますから!! わたしも教えてあげますし」

本当にうれしそうな様子ではしゃぐようにそう言うサアラ。

それから、週末――――つまり、明後日に向けての練習が始まった。

「サッカーってボールに手で触ったらダメなんですよね?」

「そうですよー。まぁ、キーパーはペナルティーエリア内なら手を使えますけど」

「それじゃあ、手を触れないで手でボールを操るのはOKなの? ガニメデプロトン的な」

「え、いや、ちょっとよく分からないです」

サアラ達ステラソフィアサッカーチームと共に、基礎練習から様々な練習をこなしていく。

案の定、スズメとイザナの2人はみるみる内にその技術を吸収していった。

そして、試合前日の練習日。

「へぇ、スズメちゃんはボールのキープ能力とコントロール能力が高い――――そして、イザナちゃんは瞬発力とキック力がなかなか――――動きを見てる限り、戦力としても十分だし――でもまさか、あの2人を助っ人に連れてくるなんて驚いたよ……」

「やっぱりわたしの目に狂いは無かったってことですよ! 」

助っ人二人の様子を見ながら、静かに分析をするのはチーム・アブダクション所属機甲科4年エイリアス・グラネだ。

彼女がこのステラソフィアサッカークラブのキャプテンだった。

「人数も足りたみたいだし、アタシ達4年はベンチで観戦って所かな」

「大船に乗ったつもりで任せてください~」

「一番大事なのは楽しむことよ。それを絶対に忘れないでね」

「はい!」

そして、その日がやってきた。


5月10日日曜日。

優しい風が肌を撫で、雲1つない青空が清々しい。

穏やかな陽気の中、ステラソフィアサッカーチームは神都カナンに存在する国立運動公園へと集まっていた。

以前の新入生歓迎大会で、決勝戦が行われた国立装騎中央公園に併設されたその公園。

丁寧に整備されたサッカーグラウンドで、その試合は行われる。

「今日は最高の天気ですねぇ。スズメさん、イザナさん、準備はバッチリですか!?」

健やかな笑みを浮かべながら、スズメとイザナに問いかけるサアラ。

しかし、当の2人は――――

「えっと、相手コートで、相手の2番目の後ろの選手よりゴールラインに近い時にパスを受け取ったらオフサイド――――」

「まぁ、つまり、目の前に敵が1人しかいない時にボールを受け取ったらオフサイド――――ってことでいいのかしら?」

何やらブツブツとつぶやきながら、2人で何かを確認しあっている。

「ゴールにキーパーが居ます。その前に私がいます。私より前に他に相手に選手が居ない時にパスされたら――――」

「オフサイド! 目の前に、相手が2人居たら――――」

「オフサイド、じゃあない!」

「お、お2人とも大丈夫ですか……?」

「オーケーです!」

「大丈夫よ、問題無いわ」

「そ、それならいいですけど……」

そうこうしながらも、新人大会の第1試合が幕を上げた。

第1試合の相手は、カナン公立シュヴァルツヴァルト女子学園。

「シュヴァルツヴァルト――――ここはなかなかの強豪校ですよ……」

「正直、ステラソフィアとはレベルがまるで違うからね」

サアラとベンチに構えた監督代わりのグラネがするそんなやり取りにスズメは不安感を覚える。

「あ、別に気負わなくていいですよ!」

「そうそう、負けたら解散とかないからね」

「は、はぁ……」

スズメの様子に気付いた2人がそう言ってくれたが、やはり緊張は振り払えなかった。


ポジション

カナン公立シュヴァルツヴァルト女子学園 

挿絵(By みてみん)

シュトゥルーム ティーガー パンター ヴェスペ

ポルシェ    ヤクト   イェガー ウィーゼル

        エレファ  フェルディ

            マウス


国立ステラソフィア女学園

 挿絵(By みてみん)

 スズノ・G・フーカ

サエズリ・スズメ ヒラサカ・イザナ フェアリア・タイニー・ツン オーガニア・ミドリ

   クラスワーズ・デシリィ              レイン・B・ルコ

               セントニコラス・サアラ


「サッカーって私はよく分からないんだけど――――このフォーメーションはどうなの?」

「ステラソフィアでは伝統的なフォーメーションなんです! 上から見たら星っぽく見えるんですよ?」

「成程――――」

そういえば、キーパーを除いた10人で五芒星を描くようになっているような気がしなくもない。

一種の願掛けか何かなのだろうか?

「うぅ……ついに試合ですね……き、緊張します」

「スズメなら大丈夫よ――――いつも通り――そう、装騎バトルの時と同じような感じでやればいいのよ」

「そうですよ! 楽しく、楽しくやりましょう!」

「は、はい――!」

試合はステラソフィアの先行でキックオフとなった。

フォワードの機甲科2年チーム・アブダクション所属スズノ・G・フーカが、ミッドフィールダーの進学科2年フェアリア・タイニー・ツンへとボールを蹴る。

それを合図に、ステラソフィアの面々が一気に上がっていく。

スズメとイザナもほかのメンバーに倣い、前へと走り出した。

それに対して、整然と並び、ステラソフィアを待ち構えるシュヴァルツヴァルト女子学園のサッカーチーム。

「さぁ、行きましょう――」

「おう!」

先行くツンとフーカの2人は、シュヴァルツヴァルトのフォワードを軽々と抜き去る。

そして、そのままパスを繋ぎながらミッドフィールダーも突破。

それに続く様に、他のメンバーもどんどん相手フィールドへと上がっていく。

「すごい! あんな簡単に――!」

ボールはフーカが持っており、その行く手を阻むのは2人のディフェンダーと、ゴールキーパーのみ。

どんどん攻め込むステラソフィアの動きにスズメは感嘆の声を上げる。

しかし、その様子とは裏腹に、サアラの表情は神妙だった。

「シュヴァルツヴァルト女子学園は、守りからの反撃が強いチーム――――ここからですね」

「いっくぜェ!!」

意気揚々とシュヴァルツヴァルトのディフェンダー2人に突っ込んで行こうとするフーカ。

だが、ここで片方のディフェンダーが動いた。

「何っ!?」

正面からぶつかるように、ボールを奪いに来た、やや大柄な相手のディフェンダー。

その相手に、フーカはボールを奪われてしまった。

「!! ――――みんな、戻って!!」

サアラが後方から大声を張り上げ、前に出た仲間を呼び戻す。

それに対するシュヴァルツヴァルトは一気にステラソフィアのゴール前へと駆け上がる。

「イェガー!」

フーカからボールを奪ったディフェンダーは、すごい力でボールを蹴り上げると、攻め込む仲間の1人へとパスを出した。

「ナイス、エレファ! ――――次、ヤクト!」

「任せて!」

的確なパス回しで、先ほどとは形成逆転。

どんどんステラソフィアコートへと攻め入る。

「止めます!!」

サアラががヤクトへと駆け寄り、ボールを奪おうとするが、ヤクトはするりとその脇をすり抜ける。

「次、パンター!!」

そしてヤクトがゴールの前へとボールを浮かせると、その後ろから物凄いスピードでステラソフィアのディフェンダーを抜き去り前に出てきたパンターと呼ばれた女子。

全速力で走るパンターが蹴り出したその足に、ヤクトの蹴ったボールが綺麗にマッチ。

「まずい――――ダーリヤ!」

「止める――――」

サアラの声に、どっしりと構えながらボールを見据えるゴールキーパーのダーリヤ。

ダーリヤはボールを止めようと斜めに跳躍。

だが――――

パンターの放った強烈なシュートはダーリヤが跳んだ方向とは逆の方向を滑り、ゴールへと突き刺さった。

「――――先制されちゃったね」

ベンチのグラネがポツリとつぶやく。

「まだ試合は始まったばかりです! 次行きましょう次!」

サアラの声に、ステラソフィアのメンバーはフォーメーションを組みなおす。

「凄いわね――――シュヴァルツヴァルト女子学園」

「うん――――なんか、燃えるね!」

「ふふ――そうね」

圧倒的な力を見せつけられ、やや意気消沈しているように見えるステラソフィアのメンバー。

そんな中でも、スズメとイザナは未知の敵に闘志を燃え上がらせていた。

「サアラ先輩――――」

「ん?」

「この試合――勝ちましょう!」

「――――勿論です!!」

前半が終了し、2-0でシュヴァルツヴァルト女子学園が優勢な状況で、後半戦がスタートした。

「後半戦、限界突破で行きましょう!」

「おー……」

イマイチ覇気のない、ステラソフィアサッカーチーム。

「士気がかーなーり下がってますね……」

「ここで何とか流れを変えたいわね」

シュヴァルツヴァルト側スタートで始まった後半戦。

ボールをディフェンダーまで戻し、フォワード陣が一気にステラソフィアゴールへと駆け上がって行く。

「これは――――1点目の時と同じ形―――――!!」

シュヴァルツヴァルトの高速、そして的確なパス繋ぎによりディフェンダーから一気にゴール前のフォワードまでボールを運ぶ速攻戦術!

だが、今度はこの二人が黙っていなかった。

「そろそろサッカーにも慣れてきましたし――――やりましょうか」

「ふふん、そうね――」

勿論、サエズリ・スズメとヒラサカ・イザナである。

「ウィーゼル!!」

ボールはウィーゼルと言うミッドフィールダーの元に。

それは奇しくも、スズメの方へと向かってきていた。

「行きます!!」

「来た――」

スズメがウィーゼルに向かって駆けだす。

スズメとウィーゼルの競り合い。

必死にボールを奪おうとするスズメに、そのボールを涼しい顔でキープするウィーゼル。

スズメのカバーに入ろうと、イザナが走ってくる。

その様子を確認したウィーゼルがボールを持ったまま、天高くジャンプした。

「しまった――前衛にボールを――――イザナちゃん!」

「ええっ」

ウィーゼルが中空でボールをゴール前に向かって蹴り上げる。

そのボールは空中で打ち上げる様な軌道で蹴られた為、普通にジャンプしては届きそうもない距離。

だが――――

「何だって!?」

「ふふ、いただき――――」

高く弧を描くそのボールを、ヒラサカ・イザナがトラップした。

ボールは高い位置を飛んでいたが、イザナはスズメの肩を使いその距離まで自らの跳躍を届かせていたのだ。

「スズメ!!」

間髪入れずに、そのボールをスズメへとパス。

スズメはそのまま相手フィールドへむかって駆け出した。

「みんな上がって上がって!!」

サアラの声がフィールドに響く。

「行かせるか!!」

ウィーゼルとはやや後方から進んできていたイェガーがスズメの前に立ちはだかる。

「――――さぁ、行きますよ!!」

スズメは、イェガーの姿に不敵な笑みを浮かべた。

「ヤナギカゼ――――!!」

そしてそのままスズメは、足でボールをキープしたまま、身を捻らせるように相手の脇をすり抜ける。

その動きは、滑らかな風のように――――柔らかく、そしてしなやかにイェガーの脇をすり抜けて行った。

「なっ――――」

あまりにも優しく吹き抜けていったその風――――。

イェガーは一瞬後まで自身が抜かれたことに気付くことが出来なかった。

「さすがねスズメ――!」

「『カマイタチ』をちょっと応用してみただけなんですけどね」

スズメの傍に並びながら、そう褒めるイザナに、スズメは照れながらそんなことを言う。

そのまま2人でゴール前まで上がっていく。

「行かせない!」

そんな2人の前に、ディフェンダーの2人、エレファとフェルディが立ちはだかる。

「アレをやるには――――ちょっと苦しそうですね」

「そうね……この2人を抜くしか…………」

「スズメさん! イザナさん!! アレをやるんですよね!!!」

そんな2人の背後から一気に駆け上がってくる人影が1つ。

「サアラ先輩!?」

恐らく、スズメとイザナの考えを知っていて、最初から飛ばしてきたのだろう。

それはセントニコラス・サアラの姿だった。

「何をする気だ――――!?」

3人の様子を訝しむエレファとフェルディ。

そんな2人の前で、スズメとイザナの2人がボールを真上に蹴り上げると、跳躍した。

「ガッシリ構えますから、ドーンと来てください!!」

そして、その2人の間でサアラが構え衝撃に備える。

「行きます!」

「行くわよ――――」

跳躍したスズメとイザナは、サアラの体を踏み台にし、更に高く跳ねる。

高く高く、ボールに追いつくくらい高く!

「「トップウ・ハ号!!!」」

そして、その空の上で2人の蹴りが一つのボールを撃ち抜いた。

風を巻き上げるように、エレファとフェルディの頭上を過ぎ去りゴールに向かって突き進む。

「なっ、イナズマ1号落とし!?」

「トップウ・ハ号ですよ!!!」

フェルディの驚愕の言葉にスズメが律儀につっこみを返しながらも、ゴール前へ駆け上がる。

「止めて――――見せる!」

ゴールキーパーのマウスがボールを睨み、そのボールを止めようとする。

――――が

「――――っ!!!」

ボールから感じる奇妙なプレッシャー。

その重圧がマウスの体を伝わる。

(これは――――止められ、ない!!)

ボールは、ガッチリと構えるマウスの脇を吹き抜け――ゴールに突き刺さっていた。

「や、やった――――!!」

「1点、1点返した!!!!」

スズメとイザナが叩き込んだゴールに、ステラソフィアの全員が活気づく。

「シュヴァルツヴァルトから――――1点取った!!」

それからは調子づいたステラソフィアと、スズメとイザナの連携技によっての反撃が始まった。

連携プレイによりステラソフィアはもう1点を返し、そしてロスタイム――――

「トップウ・ロ号――――!!!」

スズメの蹴りと、イザナのオーバーヘッドキックによる合体技が炸裂し、ステラソフィアは3点目を取得。

そしてそのままステラソフィアの勝利でゲームセットとなった。

「やった、勝った――――勝ちました!!!」

「ええ」

はしゃぐように喜ぶスズメに、その様子を嬉しそうに眺めるイザナ。

「すごい、すごいですよ! シュヴァルツヴァルトは今大会の優勝候補高の1つなんですよ!! それに勝てた、だなんて!!」

サアラも異様にテンションが上がっているらしく、頬を上気させながらスズメとイザナに駆け寄る。

「優勝候補!? だからあんなに強かったのね……」

「ステラソフィア――――!」

そう喜び合うスズメたちの中に、1つの見知らぬ声がかけられた。

「アナタは――――?」

「ティーガーさん……!」

サアラがその相手に目を輝かす。

その声をかけたのは、シュヴァルツヴァルト女子学園のエースと言われる3年ティーガーだった。

「君がステラソフィアのキャプテン、セントニコラス・サアラだな? いくら新人大会とは言え、私達のチームがここで敗退するとは思わなかった――――本当に、良い戦いだった。礼を言いたい」

「こ、此方こそ光栄です!」

普段の様子とは違って、やや緊張気味なサアラ。

「それと――――そこの2人」

「私達、ですか…………?」

「そうだ。君たちは――1年か? 去年は見なかったが」

「は、はい――――」

「そうか……良い動きだった。また、何かの大会で出会うことがあれば、手合せしたい」

「――――はい! また、試合やりましょう!!」

静かな笑顔を見せると、その場を立ち去るティーガーの後ろ姿を見ながら、スズメがポツリとつぶやく。

「なんかカッコイイ人ですねぇ……」

「そうでしょう!? わたしの大好きな選手なんですよぉ!!! 憧れてるんですよぉ!!!!」

「そ、そう……」

試合に勝利した余韻もあってか、やけにテンションの高いサアラに若干引き気味のイザナ。

「でも、あんなこと言って良かったの?」

「――――あんなこと?」

「また試合やりましょうって――――私達助っ人でしょ?」

「あ」

「もういっそ、本当にサッカークラブ入っちゃいますか!?」

「えー、と、とりあえず検討はしておきます……」


それからも幾つかの試合をこなし、ステラソフィアは順調に勝ち進んで行ったのだが、結果的に決勝戦で敗退し準優勝に甘んじることになった。

「結局優勝は出来なかったわね」

「でも、ウチのチームとしてはなかなかの快挙ですよ! これも、スズメさんとイザナさんがトンデモプレイでチームを盛り上げてくれたからですよ!」

「トンデモって本当に褒められてるのかしら……」

「褒めてますよ! で、どうでした今日のサッカー!」

「サッカー、楽しかったですね!」

「そうね――」

「いやぁ、サッカーの楽しさが知ってもらえたようでうれしいですよ!」

「今度は、普通に装騎に乗ってサッカーとかやってみたいですね!!!」

「え?」

「――――ぶっ」

「え、何ですか? 何なんですかこの空気??」

「装騎に乗って、サッカー……ですか! た、たしかに面白そうですね――――ふふふ」

「――――最高。良いわね、今度、やって、みましょうか?」

「何で2人ともそんな笑いをこらえてるような表情で言うんですか――――っ!!!???」

オマケ

ステラソフィア・キャラクター名鑑36

挿絵(By みてみん)

3年:チーム・オラシオン所属

名前:St Nicholas Sara

読み:セントニコラス・サアラ

生年月日:聖歴150年11月24日

年齢:17歳(4月1日現在)

出身地:マルクト国神都カナン

身長:160cm

体重:57kg

使用装騎:PS-G4S:Emily(ベース騎PS-G4:Gabriel)

好みの武器:霊子超振動ランスブレード・デルタエッジ

国立ステラソフィア女学園に中等部の頃から在籍している。

語学に堪能で、こう見えて周辺諸国の主要言語は全て使える。

趣味は人形蒐集。

個人的な声のイメージは川澄綾子さん。

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