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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:始まり編
57/322

チームワーク実践演習

「ようこそ、チームワーク実践演習の授業へ! わたしが講師のニーベルング・レイニです!」

火曜の2校時に行われるチームワーク実践演習の授業。

その第1回が始まろうとしていた。

「チームワーク実践演習――――一体どんな授業なんでしょう?」

「シラバスだと、生徒間の交流を深めてチームワークの大切さをなんたらかんたらって書いてあったけど」

「うわぁ、サリナちゃんそういうのちゃんと読むんだ! 偉いね!」

「私も、読んだけど――――」

「イザナちゃんも偉いね!」

「――――――ふっ」

「なんかヒラサカさん嬉しそうさー」

「べ、別に――――」

集められた場所は、機甲科校舎1号館1階に存在する体操室。

体育館ほど広くはないが、すっきりとした軽い運動に適した空間で、その床に腰を下ろしレイニ先生の話を聞いている。

この授業は必修のようで、サエズリ・スズメと共に腰かけるエレナ・ロン・サリナ、ヒラサカ・イザナ、リサデル・コン・イヴァの他、ディーコン・ジャンヌやアルク・アン・トワイ等、機甲科1年32人の姿があった。

「シラバス読んだんだったら今日の予定とか書いてあった? 1回目だしオリエンテーションとかだと思うんだけど――――」

「スタンプラリーだった」

「スタンプラリー!? え、ほ、本当に――――?」

「イザナさんの言う通り、スタンプラリーって書いてあったわ……ほ、本当にやるのかしら」

「おお! ちゃんとシラバスを読んで来てくれた人がいるとは……先生嬉しい!」

「あの――――ってことは――――――――」

「チームワーク実践演習の授業初回は、校内スタンプラリーをしてもらいます!!」

当然ながら、その場が騒然とした。

「この機甲科校舎のどこかにスタンプを置いてきました! 今回は、4人1組のチームになって5つのスタンプを探してもらいます。と、言うことでとりあえずチームを組もう! テキトーに組もう!」

レイニ先生にそう促され、チームを組もうと動き出す面々。

「あたし達はこの4人で良いわよね」

サリナの言葉に頷くスズメとイヴァ、イザナの3人。

暫くして、4人8チームが出来上がり、レイニ先生が満足げに頷いた。

「それじゃあ、機甲科の校舎見取り図とスタンプシートを1チームに1枚配るね。この地図にはスタンプの隠し場所……そのヒントが書いてあるわ」

地図がそれぞれに行き渡ったことを確認すると、レイニ先生は口を開く。

「今は1115時……よし、そんじゃ1215時までの約1時間でスタンプを集めてもらいます!」

「せんせー、スタンプを早く集めたチームに景品とかあるんですかー?」

若干軽い口調でレイニ先生にそう尋ねる声が一つ。

リリィワーズ所属のアルク・アン・トワイだ。

「もちろん、早いチームにはご褒美がありますよ~」

「ご褒美ってなになにぃ?」

「それはひみつのあっこちゃん!」

「なんかこの先生若干ウザい」

レイニ先生とトワイのやりとりを見てイザナがぽつりと呟いた。

「そんじゃそんじゃ! 早速、スタンプラリーを始めようか! 機甲科1年の諸君、いってらっしゃーい!」

その言葉に押されるように、それぞれのチームが体操室から飛び出していった。

「まずはヒントから見てみましょう」

サリナの言葉に従い、校舎の見取り図の傍に添えられたスタンプが設置された場所のヒントに目を向ける。

「あれ? ヒントって1つしか書いてないね」

「もしかしたら、スタンプの置かれた場所に他のヒントが書いてあるかもしれないわ」

首をかしげるスズメに、イザナがそう言った。

そこに書かれたヒントは「神の住まいに最も近い3の館。水の流るる場所」という一文、

「ナニコノ若干中二こじらせたようなヒント文章!?」

「神の住まいに最も近い3の館、ねぇ――――」

イザナのつっこむ傍で、サリナが真剣な表情でその文の意味を考える。

「何のことか分からんさー」

「神の住まい――――神って言ったら、シャダイ様とかですかね?」

「なるほどね、神の住まい――つまり神都カナン。神都と同じ方角にある水の流れる場所なのかしら?」

「でも、私は3の館っていうのが気になるわ」

「3の館――――3号館?」

「スズメ、それは安直すぎない?」

「シンプルイズベストってこともあるさ!」

などと話し合いながら考える。

「水が流れる場所は何なのよ」

「パッと思い浮かぶのは手洗い場だよね」

「でも、ステラソフィアに手洗い場って言ったら――――トイレ、かしら?」

「それじゃあとりあえず! 神都に面している方向――ってことでこの1号館のトイレを探してみる?」

「この1階から4階までのトイレ全部を!? 全く、クソ面倒臭いわね――――それで見つからなかったらどうするのよ……」

そんな事を言いだすスズメにイザナがげんなりとした表情で言った。

「そうよね――トイレにしても、校舎内だけでこれだけ沢山あるんだからもっと場所が絞り込めるようにしているはず、よねぇ」

サリナが2人のやり取りを聞きながら考えを巡らせる。

そんな中、ふとイヴァが口を開いた。

「イヴァ的に色々考えてみたけど、多分だけど、考え方としては水が流れるからトイレ! みたいな簡単な考え方で良いと思うわけさ。だから、この3の館って言うのも3号館の事な気がするわけさ」

「ふむ、でも神が住まう場所って言ったら神都カナン以外に思い浮かぶものが無いけど――――」

「もっと適当てーげーに考えればいいさ!」

「てーげー?」

「そうさ! 神様はどこにいる? 神様は天の上にいるばーよ!」

「――――!! なるほど、3の館の神に近い場所――――3号館4階のトイレ!」

ハッとしたサリナが地図を広げ、3号館の4階へと目を向ける。

見取り図によると、3号館4階のトイレは一番端にある一つしか見当たらない。

「そこっぽいけど――――――遠っ!! ここからほぼ正反対じゃん!!!」

その傍で地図を見ながらイザナが叫ぶ。

1号館1階の中ほどにある体操室からは、3号館4階はあまりにも遠い。

「場所が分かったなら、さっさと行くわよ!」

サリナがそう声をかけ、先を行く。

その後をスズメとイザナ、イヴァが追いかけた。

「あった! スタンプだ!!」

スズメが3号館4階のトイレに設置されたスタンプへと駆け寄る。

スタンプシートにスタンプを押し、次のヒントを探す。

それは、スタンプの上に貼り紙として書いてあった。

「次のヒントは――――」

第2のヒントは「穢れは天から堕ちる」という1文のみ。

「やはり中二――――」

「漆黒の堕天使ですね――!」

「†《ダガー》とか付いてそうさ……」

「穢れは天から堕ちる――――穢れ、天、堕ちる――――?」

「天って言うのは――――このトイレの事、なのかな?」

「神の住まいにもっとも近い場所、だから天では無いんじゃないの?」

「そこは細かいこと考えたらダメさ! イヴァも天って言うのはここの事だと思うさ!」

「穢れ――――ねぇ……もしかして、次の場所って、ここかしらね?」

サリナが地図の一室を静かに指さす。

3号館の1階――――今いるトイレの丁度真下に、その部屋はあった。

「またもやトイレじゃないですかー!!!」

そう、トイレだ。

「……とりあえず、行ってみましょう」

はぁ、とため息をつきながらイザナが言った。


それからも、2号館2階のトイレ、1号館3階のトイレ、2号館4階のトイレと、どういう訳かトイレばっかりに行かされた。

「な、なんでトイレばっかりなのよ……」

制限時間もじわじわと迫ってきている事から、急ぎ足になりながら校舎を駆け巡りながらイザナがそう悪態をついた。

「私達、最近トイレばっかり行ってる気がします……」

「昨日の今日だしね」

ハハハと笑みを浮かべるスズメに頷くイザナ。

そんな2人に事情の知らないサリナとイヴァが首を傾げた。

このスタンプラリー最後のヒントは「不思議の在処。人々が囁く」の1文。

「これは――――まぁ、あそこ、でしょうね」

イザナが静かに呟いた。

それにスズメも頷く。

「なになに、心当たりがあるのー?」

「う、うん――――心当たりはある、けど――――」

「まぁ、別に良いんじゃない。アイツも友達増えて喜ぶでしょ」

「何の話なの……」

「行けば分かりますよぉー!」

そんな会話をしながら、恐らく最後のスタンプの場所であろう3号館3階――トイレのユウレイさんが出るトイレへと足を向けた。

「そういえば、他のチームと遭遇しないねー」

スズメがふとそんなことを口にする。

「確かにね…………」

サリナがそう呟いた所で、正面から服が汚れた4人組が歩いて来るのが見えた。

「あれ? あれはジャンヌちゃん達だ!! ナイスタイミング!!」

チーム・シーサイドランデブーのディーコン・ジャンヌと、チーム・リリィワーズのアルク・アン・トワイ。

そしてチーム・ドキドキ マンゴープリンのバオム・クーヒェンとチーム・マンチャドーレスのアスル・シエロの4人で組まれたチームだった。

「ジャンヌちゃーん! 今、スタンプどれくらい集まったの?」

「あ、スズメちゃん……わ、私達は4個、かな…………スズメちゃんたちは?」

「私達も4個だよ、今から5個目を獲りに行くんです! ――ってジャンヌちゃん達、服がすっごい汚れてるけど」

「あー、うん、なんかね、ほとんど使われてないすっごい埃被ってる準備室とか行かされたんだよねあはははは……」

「準備室って…………それじゃあやっぱり、チームによってヒントも違うのかしら?」

「そうみたいだよー!」

サリナの言葉にトワイが陽気に返した。

「さっきねー、アーメンガアドちゃん達のチームともすれ違ったんだけど、その時確認したら違うみたいだったよぉ! それだけの数のスタンプを設置するなんてレイニ先生ヒマなのかなぁ?」

「そろそろ――――行こ」

不意に、物静かな声がその場を切り裂いた。

まるでお人形のような金髪碧眼の少女――アスル・シエロだ。

「あ、シエロちゃん、だっけ――――ごめんね、邪魔しちゃった、よね――――」

「邪魔、じゃない――――でも、時間も、無いわ」

無表情なシエロ。

表情から、その本心は読み取れない。

シエロはそれだけ言うと、先に歩いて行ってしまう。

「サエズリ・スズメちゃんだよね。別に気にすることはないよ」

その姿を見つめるスズメに対して、バオム・クーヒェンが口を開いた。

「シエロはサエズリちゃん達の時間を取るのは失礼だと思ったからああ言っただけで、彼女が怒ってるとかそういう訳じゃないの。ちょっと不器用っていうか、言葉足らずなだけでね」

「そ、そうなんですか――?」

「そうなの!」

「うん――――そ、それじゃ――スズメちゃん、私達、行くね」

「うん、わかった。またねー」

ジャンヌたちと分かれ、最後のポイントを目指す。

「どうりで他のチームと中々遭遇しないと思ったわ……」

「それよりも、そろそろ時間が不味いわよ――――急いだ方が良いわ」

「そうですねー! 早く行っちゃいましょう!」

「トーイレっにりっかりっかー!!」

そのままユウレイさんのトイレに直行。

「そーいえば、ここってトイレのユウレイさんが出る場所さ」

「そうだよー」

「トイレのユウレイさんってあの本当に出るって噂のヤツじゃないの」

サリナの表情が若干翳る。

どうやら、少し怖がっているようだった。

「スタンプ、どこにもないわね」

イザナがトイレの中を見ながら呟く。

今までは、流しの横だったり、下だったり、トイレの個室に置かれていたりしたのだが、パッと探してみた所見つからない。

ただ一室、ユウヤミ・レイミが住むトイレだけはいつも通り鍵がかかっていて開けられなかった。

「やっぱり、ユウレイちゃんの部屋にある、んでしょうか……」

「あの先生が開け方知ってる、と?」

「いえ、上から入ったのかもしれませんし……とりあえず、呼んでみますね」

コンコンコン

スズメはその扉を3度ノック。

そして

「ユウレイさん、遊びましょ!」

そう声を張り上げた。

「え、あの、スズメちゃん? 何、してるば!?」

「え、ちょ、まってまってまって、本当に出たらどうするのよ!!??」

「え? 本当に出ますよ?」

「「!!??」」

不意に、ガチャン――――と、その個室の鍵が開いた。

そして、扉が開かれ――ユウヤミ・レイミ、ユウレイちゃんがその姿を現した。

「わぁ、スズメちゃんにイザナちゃん! それに知らない人達も!! あれ、でもまだ授業時間ですよね? サボりですか?」

「で、でたぁぁああぁああああああああああああああああ!!!???」

「女の子――――? 同じ制服さ!」

絶叫するサリナに、意外と平気そうなイヴァ。

「紹介しますね、このトイレに住んでる幽霊のユウヤミ・レイミちゃんです!」

「え、何、どういうことなの!? あたし事情がわからない!!!???」

「よく分からないけどよろしくさー」

「事情は後で話すわ――――とりあえずユウレイ、ここにスタンプあるかしら?」

「ありますよ~。今日の朝、変な人が上から降りてきて置いていったんですよ」

「やっぱりここにあったのね……」

「それじゃあ、スタンプを押しましょう!」

ユウレイからスタンプを受けとり、それをシートに押すスズメ。

「これって何なんですかぁ?」

「チームワーク実践演習って授業で、スタンプラリーをやってるのよ」

「スタンプラリーですかぁ! 面白そうでいいですね~」

「ごめんねユウレイちゃん、突然来ちゃって」

「いえいえスズメちゃん! わたしはいつでもヒマですから、バッチコーイですよぉ~。でも、全然会いに来てくれなかったら悪霊になっちゃうかも――――あ、これ幽霊ジョークです」

「わかってるって――――それじゃあ、今日の放課後また来るね」

「はいはい! 首を長くして待ってます! ろくろっくびみたいに!! あ、これ妖怪ジョ」

バダン!

イザナが扉を閉める。

「え、ちょっと、まだ最後まで言えてないのにぃ!!」

個室の中からユウレイちゃんの声だけが響いて来る。

「それじゃ、体操室戻るわよ」

「ついでに、事情も説明しといた方が良いよね――――」

それから、ユウレイと出会った経緯を話しながら4人は体操室へと戻っていった。

「どうやらみんな帰ってきたようだね!」

体操室で、全てのチームが時間内に戻ってきたことを確認すると、レイニ先生が満足そうにうなずいた。

「今回のスタンプラリー、1番早かったチームは――――イノメ・イクサ、オーガニア・ミドリ、アクアクリアス・ミヅハ、レスキュリア・ヴァージニアのチームだね。そのチームには、先生の大好きなショコラーデをあげちゃう!」

「うあー、わたしもほしかったよー」

レイニ先生の言葉を聞いてアルク・アン・トワイがそんな声を上げる。

「まぁ、みんな頑張ってくれたしね。皆にもショコラーデをプレゼントしようではないですか!」

「本当!? やったったー!!」

レイニ先生が、それぞれの生徒にショコラーデ――――つまりまぁ、チョコレートを配り始める。

一番早かったイノメ・イクサ以下のチームには板チョコが一つ。

それ以外の生徒には、袋に入った一口サイズのチョコが配られた。

「わぁ、美味しそうチョコレート!」

「あたし、このメーカーのチョコよく食べるわね……」

「たしかに、ここのチョコレートは美味しいさ」

「ふむ……美味い」

「それじゃあ、今日の授業はここまで! 最後に授業の感想を書いて提出したら終わりよ~」

こんな感じで、この演習授業は終わりを告げた。

オマケ

ステラソフィア・キャラクター名鑑

挿絵(By みてみん)

元ステラソフィア生:チーム・ドキドキ出身

ステラソフィア女学園機甲科講師

名前:Nibelunge 伶於

読み:ニーベルング・レイニ

生年月日:聖歴138年5月22日

年齢:29歳(4月1日現在)

出身地:マルクト国神都カナン

身長:165

体重:63kg

使用装騎:PS-R4S:Wagner(ベース騎PS-R4:Raphael)

好みの武器:14mmヒートピストル・ベドロフング

ポジション:コマンドー

ステラソフィア高等部機甲科の第十一期生で、本職は騎使育成塾の講師だがステラソフィアに呼ばれ非常勤講師をしている。

独特の愛嬌があり、人を引っ張る能力が高いが、その性格は人によっては受け付けない場合も。

ソーラとイクリと言う今年5歳になる双子の娘がおり、その二人の話になると止まらなくなる親バカ。

趣味は新たなチョコレートの境地を開拓すること。

個人的な声のイメージは小松未可子さん。

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