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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
絶対・王者・バーチャルスター
52/322

アージェントガスト・クロス

スパローが駆ける。

セイクリッドを目指し、駆ける。

「電撃ッ!」

不意に、そのスピードが更に加速する。

沈み込んだような体勢で、まるで跳ぶように駆けるスパロー。

「させるか!!」

セイクリッドは切り捨てたスーパーセルを蹴り飛ばし、足元のスペースを確保する。

そして、その左手をスパローへと向け――――

「光波!!」

クリティカル・ドライブの驚異的なエネルギー供給に任せ、その手の平から輝きを放った。

「稲妻ッ!!」

その輝きがスパローを捉えんとしたその瞬間――――スパローの姿が幻影のように掻き消えた。

ソレイユの目の前には、驚異的な機動により残像を残しながらジグザグに接近するスパローの姿。

その姿が消えたかと思ったその瞬間――――

スパローがセイクリッドの目の前に現れた。

「なっ、この技は――――まさか!?」

セイクリッドのオリエンタルブレードが閃く。

その1撃は今までにも増して速く、鋭く、重く、しなやかに。

この試合で最高の1撃――――だが、その一撃はスパローの残像を虚しく切り裂いただけ。

「熱風ッ!!!」

瞬間――――

ゴウッ!!!!!

強烈なプレッシャーがセイクリッドを――――そして、ソレイユを圧し付けた。

気付けば、セイクリッドの背後にはスパローの姿が。

それから一瞬遅れて――――地面がX字に抉れた。

「負け、た――――」

ピ――――――――

セイクリッドの機能が停止する。

戦いは終わったものの、何故か会場に騒然とした空気が渡る。

「はっ――――!! バ、バトルオーバー!!?? し、新入生歓迎大会の、優勝を掴み取ったのはァ――――――チーム・ブローウィングだぁ!!?? ていうか、えっ、ええっ!!??」

ふと、我に返ったように司会のミウラ・リタが声を上げた。

その瞬間――――会場を盛大な拍手と歓声が包み込んだ。

「優勝チームが決定した事ですし、最優秀騎使の発表に移させていただこうと思います。が、結果を出すまでも無いでしょう――――!」

スズメは、大勢の観客が自らの装騎スパローへとその目を向けている事を感じその体に緊張が走った。

「今回のステラソフィア女学園機甲科、新入生歓迎大会MVKは――――4年生顔負けの成績に、様々なサプライズを最後の最後まで披露してくれました! チーム・ブローウィング一年――ナイフダンサーの再来、サエズリ・スズメ!!!」

人々の歓声が最大まで達する。

「サエズリ・スズメ選手! チーム・ブローウィングの優勝と、ステラソフィア最優秀騎使賞の授与、おめでとうございます!」

「あ、ああ、ありがとうございます――――っ」

「決勝戦では最後の最後に幻のチャンピオン・ナイフダンサーの技、アージェントガスト・クロスを披露してくれましたが、あの技は――――」

「え、いや、そのあの時はあの技がベストかな――って思ったから使っただけで、そんな、え、えっと……」

アージェントガスト・クロス。

それは15年前のデュエルゲーム世界大会において、『ナイフダンサー』を名乗る当時14歳の少女が使用した必殺技だ。

彼女は、最年少での全国大会優勝を残し、更に優勝までの総試合時間最短記録を樹立しながらも、その短い戦闘の中に、様々なパフォーマンスを組み込んだ、いまだに人気の根強い『幻のチャンピオン』。

ナイフダンサーが『幻のチャンピオン』と呼ばれる所以は、それだけの強烈な印象を残しながらも彼女の参加した公式戦が、その彼女が優勝したデュエルゲーム世界大会に連なる一連の大会が最初で最後であり、それ以降の消息が全く不明であることからだ。

そんなナイフダンサーが、世界大会決勝戦で最後に見せた技が、その『アージェントガスト・クロス』だった。

「あの技は公式戦でも一度しか使われておらず、ナイフダンサー以外、誰も使える人のいない技なんですが、スズメ選手はどこで覚えたんですか――っ!?」

「えぁっ、そ、それは――ヒ、ヒミツになってます…………でも、こ、子どもの時から練習してた技――なんで」

「いやぁ、スズメ選手の才能の輝きを感じますねぇ」

「そんなこと無いですッ!?」

「またまた~。それでは、最後にお気持ちを1つ!」

「え、えっと――皆様のご声援のお陰でこのような名誉ある賞を受賞出来ました。ありがとうございますっ」

「アージェントガスト・クロスの秘密を教えてもらえないのは残念ですが、以上、MVKサエズリ・スズメ選手へのインタビューでした! それでは、これにてステラソフィア女学園新入生歓迎大会を閉幕させていただきまーす!!!」

人々の拍手に包まれて、その日、新入生歓迎大会の幕は下りた。

それからも、スズメを初めにチーム・ブローウィングは色々な人々やマスコミ関係者やらにもみくちゃにされ、何とか解放されたのはもうすっかり日が暮れた頃だった。

「うへぇ……すごく――――すごく、長い1日でした…………」

「ほとんどはアージェントガスト・クロスについて聞かれてばっかりだったな……」

「あの技って初心者向けの技って聞いてたのに……誰も使えないとか幻の技とか言われてイミフですよイミフ!」

「初心者向け!? そんなのどこで聞いたんだよ……」

「どこでって、だって、プラモ屋のお姉さんが……」

「…………あー、それなら仕方、ない? ていうか、もしかしてそのプラモ屋のお姉さんって」

「それはないですよー。最近17歳になったって言ってますし」

「17!? 若いな!!??」

「ねー! 私に装騎の乗り方教えてくれたのもお姉さんなんですよ!」

「!? それっていつの話だよ!?」

「えっと……私が――――5歳くらいの時、かな?」

「………………その時ってそのお姉さん幾つだったんだ?」

「えっと――――1、7? アレ?」

「……大体わかった」

「何がですか!? 何が分かったんですか!!??」

「いやまぁ、詮索したらダメっぽいから――――うん」

「何ですかァ!?」

そんな雑談をしながら、ブローウィングの寮室へと帰って行った。

挿絵(By みてみん)

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