サリナの献身
それからスーパーセルは、セイクリッドとラピスラズリの2騎に対し、単騎での戦いを挑んだ。
負ける――と思うのは簡単だ。
だが、ツバサは「勝つ」とただそう信じることにした。
セイクリッドとラピスラズリ。
その2騎がそれぞれ、オリエンタルブレードとウェーブシャムシールを構え、襲い掛かってくる。
それぞれがタイミングを微妙にずらし、代わる代わるに激しい剣撃が加えられる。
だが、その剣撃を片手に持ったチェーンブレードで何とか凌いでいるスーパーセル。
「抜け――無い!?」
「ツバサはこういう状態こそ100%――――いや、120%以上の力を出してくるヤツだからな!」
「その通りよっ、追い詰められれば追い詰められるほど――――燃え上がる!」
セイクリッドが振り上げたオリエンタルブレードの刃。
それをスーパーセルは右手に持ったチェーンブレードで受け止める。
そこを狙って閃く、ラピスラズリのウェーブシャムシール。
セイクリッドのオリエンタルブレードを受け止めつつ、その右腕のワイヤーアンカーを木に突き刺し、その巻き取る力を利用してスーパーセルは回避した。
スーパーセルが不意に回避したお蔭で、オリエンタルブレードに力を込めていたセイクリッドの体勢が僅かに崩れる。
だが、そう来るのはソレイユだって知っている。
すぐさま、セイクリッドをスーパーセルへと向きなおす。
それと同時に、スーパーセルは、木を蹴り飛ばすように――――それと同時に、そのデュオブースターを全力噴射。
「いっけぇ! 突貫斬り!!」
「そう来ると思ったぜ!」
スーパーセルのチェーンブレードとセイクリッドのオリエンタルブレードが交差する瞬間。
「なん、てな!」
不意に右腕からワイヤーアンカーが放たれスーパーセルの姿がソレイユの視界から掻き消える。
「なっ!!??」
セイクリッドのオリエンタルブレードの閃きを回避したスーパーセルは、素早くワイヤーアンカーを引き抜き右手に戻すと、流れる様な動作で、右手に握ったチェーンブレードを12mmバーストライフルへと持ち替える。
そして、そのまま――――発砲。
「いっけぇぇええええ!!」
ダダダダダダと放たれた12mmバーストライフルの弾丸。
「ソレイユ先輩!」
それをラピスラズリの霊子シールド・アズライトのバリアフィールドが防ぐ。
だが、もうその次の瞬間には、スーパーセルはセイクリッドの背後へと回り込んできていた。
「え、嘘、早い!?」
「獲った!」
横薙ぎに払われるスーパーセルのチェーンブレード。
だが、ソレイユもそう簡単にやられるたまでは無い。
「それは、どうかな?」
不意にセイクリッドが右手に構えていたオリエンタルブレードをクルリと逆手に持ち直す。
逆手に持ったオリエンタルブレードの刃が、横薙ぎに払われたオリエンタルブレードを受け止めた。
「サリナ――頼むぜ」
「はい!」
「マジかよ!」
その瞬間を狙って閃くラピスラズリのウェーブシャムシール。
それを、ブースターを吹かせて回避したスーパーセル。
そのまま、高速でセイクリッドとラピスラズリの周囲を一回りした。
「不味いっ!」
なにかに気付いたソレイユが咄嗟に声を上げるが、もう既にスーパーセルは2騎の周囲を一周していた。
不意に、セイクリッドとラピスラズリの体が縛られたように絡み合う。
いや、縛られていたのだ。
スーパーセルがセイクリッドに切り掛かったその瞬間――ツバサは密かにセイクリッドの体にワイヤーアンカーを突き刺していた。
そして、そのまま、周囲を周回。
ラピスラズリごとセイクリッドを縛り上げたのだ。
「どんだけ剣技が凄かろうと、こう縛ってしまえば!」
「クッ――――やりやがったなツバサ――! こりゃ、今回ばかりは負けを認めてやるしかねーかな……」
「ソレイユ先輩、大丈夫です――――」
「サリナ――――?」
「私が――私が先輩の盾になります!」
「おい待て、何言ってんだよ!」
「待ちません! 大丈夫、コレはゲームです。死にはしませんし――――私よりも先輩の方が戦力になる、でしょ? 今だって私がいなければ先輩は1人で抜け出せる。だから――」
「っ――――」
「行っけぇ、スーパーセル――――チャージ――スラッシュ!!」
再びデュオブースターに力を集め、弾けるようにその刃をセイクリッドに突き立てんとするスーパーセル。
「さぁ、来なさい!」
グッと体勢を変えると、ラピスラズリがセイクリッドの盾になるように立ちはだかる。
「盾になるか!? ――――実戦なら2騎同時に貫ける、けど…………」
「例え実戦だったとしても、ソレイユ先輩はやらせないわよ!」
サリナはそう、自分に気合を入れるように叫ぶと、右手に持っていたウェーブシャムシールを逆手に持ち直す。
その刃がセイクリッドとラピスラズリを縛るワイヤーアンカーに引き裂かんと火花を散らす。
「切り裂け――――切り裂け――――――――」
サリナの意思の高まりをラピスラズリが感じ取ったように、ラピスラズリの右手から、どんどんアズルがウェーブシャムシールへと注ぎ込まれていく。
宙を駆けるスーパーセル。
必死でエネルギーを右手に集め、ワイヤーアンカーを引き裂こうとするラピスラズリ。
スーパーセルのチェーンブレードがラピスラズリを貫かんとした瞬間。
「斬り断てぇ!!!」
プチン
ワイヤーの頑丈さには似合わない軽快な音が響くと、その拘束が――――解けた。
「ソレイユせんぱぁぁああああい!!!」
「サンキュー、サリナ!!!」
ラピスラズリが思いっきり体全体を使ってセイクリッドを押し出す。
その一瞬後、ラピスラズリの体をスーパーセルのチェーンブレードが引き裂いた。
ラピスラズリは機能を停止――――だが、セイクリッドは健在。
加えて、スーパーセルは右腕のワイヤーアンカーが使用不可能となった。
「左腕に加えて――――ちょいキツい、かな……」
などと言いながらも、ツバサの口元に浮かぶのは笑み。
互い互いに剣を構え、相対するスーパーセルとセイクリッド。
「やっぱ強い――――だけど――――――アタシだって、負けないさ」
「今まで何度戦ったかなオレ達――――でも、今回は今までにも増して楽しいぜ――ツバサ!」
その2騎の刃が再び交差した。




