新歓に向けて
「しっかし、すごい1年が来たもんだなぁ」
チーム内対抗戦も終わり、スズメ達はブローウィングの寮室へと戻ってきていた。
「もしかして、スズメちゃんって去年の四天王決定戦中等クラスに出場してた?」
マルクトではデュエルゲームと呼ばれる機甲装騎を用いた1対1の決闘試合が人気を呼んでいる。
そんな中で、各学校機関を対象に行われる一大大会である四天王決定戦。
東西南北でブロックを分け、それぞれのブロックを勝ち進んで行った学校が四天王という称号を与えられる。
その称号は非常に名誉な事であり、四天王の名を勝ち取った学校は一躍有名校として名を上げる。
そのメリットは計り知れない。
「は、はい……東部ブロックで、負けちゃいましたけど」
「やっぱりか! あのピョンピョン動く戦い方、どっかで見た事あるなぁとは思ってたけど……決勝で負けちゃったんだっけ」
「そう、ですね……」
ツバサの言葉に、少し苦い表情を浮かべるスズメ。
「あっ、スマン! ちょっと嫌なことを思い出させちゃったか……?」
「いえ、大丈夫、です」
実際に、嫌な事を思い出したのは確かだった。
しかしそれはツバサが思っているような理由ではないだろう。
中学の時、学内でスズメに敵う騎使は居なかった。
それだけ、飛び抜けた実力を持っていたスズメは、羨望の眼差しで見られるとともに、嫉妬も多く受けた。
そんな遺恨があの決勝での敗北に繋がったことは知られていない。
「そんなことより! 今は今度の新歓の話をしやがるんですよ!!」
空気を読んだのか、読んでいないのか、マッハがそんなことを口にした。
「新、歓?」
「新入生歓迎大会ですわ!」
チャイカの言葉に続いて、ツバサが説明を続けた。
「新入生歓迎大会。まぁ、簡単に言うと新入生を加えた4人のチーム同士でトーナメントをして、チームのトップを決めるって言う大会だな。4月17日――つまり今週の金曜日から3日かけて行われるんだ」
「トップ3に入ったチームには、色々特典もあるのですわ」
「つーまーり、これからビシバシ鍛えてやるんですよスズメ後輩!」
「は、はい!」
スズメの返事に、先輩達は頷くと
「それじゃあ今から特訓しに行くんですよ!」
「えっ、い、今からですか!?」
ついさっきチーム内対抗戦が終わったばかりだと言うのに、全く疲労の色を見せない先輩達。
「当たり前なんですよ! さぁ、装騎に乗ってグラウンド100周するんですよー!」
「それって意味あるんですかぁ!!??」
マッハに腕を掴まれ、スズメはグラウンドへと引きずり出されていった。
「やれやれ、マッハちゃんは特に気合入ってるな……」
「去年、カラスバ先輩と結構厳しく鍛えましたからねぇ」
「あー、あの時の2人は怖かったな…………」
「誰が怖かったんですの?」
「いや、なんでもない」
ツバサは笑みを浮かべるチャイカから目を逸らしながら呟いた。