事前情報・バーチャルスター
「それじゃ、新歓最後のブリーフィングをするぞ」
「はいっ!」
ツバサのSIDパッドに、チーム・バーチャルスターのデータが表示される。
「決勝戦の相手――チーム・バーチャルスターはリーダーのディアマン・ソレイユを筆頭にそれぞれが驚異的な実力を誇るチームだ」
「ざっと見た感じですと、装騎の装備や機能自体は極めてシンプルですね」
「ああ、だが逆にそのシンプルさがこのバーチャルスターの強み――――と言えるかもしれない」
そう言いながら、SIDパッドを使ってまず映し出したのは、4年ディアマン・ソレイユの装騎セイクリッド。
マルクト国では非常にメジャーな、白兵戦を主体にした汎用機PS-M5ミカエルをベースにした装騎セイクリッド。
その装備は、オリエンタルブレードと呼ばれる片刃刀。
「それと、この技はあまり使わないから認知度は低いんけど、ソレイユは『光波』って言う霊子技も使うから射撃武器が無いからと言って油断はできないね」
「霊子技……? 霊子砲とかそう言うのではなくて、ですか?」
「ああ、装騎の手には武器に魔電霊子を送るための機能があるだろ? そこからアズルをわざと過剰放出させる事で霊子砲みたいにアズルを放出できるって技だ」
「下手したらアズルが一気に放出されて危険な技ですね……」
「ああ、だから使うヤツはほとんど居ないんだけどな――――霊子砲よりも更に効率悪いし。使うことは少ないから、警戒はしとけってレベルだな」
「分かりました!」
「それ以外にも、幾つ手を隠してるか分からないヤツだからなぁ……」
「ツバサ先輩はソレイユ先輩と付き合い長いんですよね……。それでも知ら無いことがあるんですか?」
「付き合い自体は中2の頃からだな――――ソレイユはすっごい真っ直ぐなヤツなんだけど、真っ直ぐだから逆に読めないって言うか……」
「どういうことですか?」
「典型的な主人公体質っていうかな。土壇場でとんでもないことやらかしたりするし、気合でなんでもひっくり返すようなヤツだからなぁ」
「そ、そういう人っているんですねぇ…………」
「っつっても、スズメちゃんも同じようなタイプって感じはするんだけど」
「ええ!? そんなことないですよぉ!!」
「まっ、アタシは今回の戦い、スズメちゃんに期待してるから――――よろしく頼むぞ!」
「うへぇ――――出来る限りは、がんばります」
「さてと、次はロズの装騎か」
3年ディアマン・ロズの装騎ロゼル。
今までも何度か矛を交えた、重装甲ながら四基搭載型ブースターの加速力が侮れない、PS-U3ウリエルをベースにした装騎。
その装備は、何処か薔薇を思わせる斧槍ロゼッタハルバートのみ。
「ロズの装騎はハルバートしか今まで使ったのを見た事無いな」
「ロズさんはハルバートを使った戦いにこだわりがあるみたいですし、恐らく他に隠し玉などは無いと思いますわ」
「あー、ロズって頑固だしなぁ……一昨年は武器がハルバートだけだからってなめてかかったら痛い目みたし」
「あの時のリーダーはかっこ悪かったのですわ~」
「チャイカ……ソレはミステリオーソ戦のお前にも言えることだぞ……」
「それは――――反省してますわ…………」
「正直、今回の新歓は新入生に持っていかれっぱなしな気がするしな――」
「全くですわ」
「な、なんですか!?」
「なんでもないよ」
「なんでもないですわ」
「話を戻すけど、ロズが侮れないのは当然だが、ソレイユとの連携も厄介なんだよな」
「あのお2人の意思疎通ぶりは姉妹ではなく最早夫婦なのですわ」
「私にはツバサ先輩とチャイカ先輩も夫婦みたいに見えますけど」
「それは喜ばしいですわね!」
「喜ばしいの!?」
「スズメちゃんとマッハちゃんは我が子のようですわよ」
「今度からお母さんって呼んだ方が良いですか!!??」
「これ何の話だよ!!! ――――あ゛ー、でまぁ、ロズはソレイユの妹だけあって侮れないから気を付けろよ……」
次に表示されたのは、2年ツミカワ・ミズナの装騎ミルキーウェイ。
「そしてツミ――」
「ツミカワ・ミズナのバカヤローなんですよ!」
大型のソロブースターを装備し、変則的な機動と、凄まじい加速力、直進力を持った装騎PS-B2ベツレヘムをベースにした装騎ミルキーウェイ。
その武装は25mm粘着榴弾砲ブラウシュトゥルム。
「ミルキーウェイがよく使っている25――」
「あのヤローの装備の25mm粘着榴弾砲ブラウシュトゥルムは口径こそフュンフトマティ砲とかと比べてクソみたいにデッケーでやがりますが、マルクトで粘着榴弾って呼ばれるものは装騎の表面で爆発する武器だから突き刺して爆発させる徹甲弾よりも威力が振るわないんですよ!!」
「それでも下手に食らったら危ないですけどね……ああいう発熱が大きい武器は、装騎以上に騎使の体力を削ってきますし…………」
「そんなの撃たれる前に撃てばいいんですよ!!」
「あ、あはは……」
「ミズナのヤローは他にも電磁超振動直刀フツノミタマと言う武器を使うんですよ!」
「ヒミコが使ってた電磁薙刀ライジンと同じようなタイプの武器だな。放電能力とかも共通してるし」
「そのとーりなんですよ! 粘着榴弾でドンドンドッカーン! ってした後に斬り込んで来たりするんですよ!」
「ま、まぁ、そうでしょうね」
「ミズナちゃんはレイダーだしな。素早い動きが厄介だよ」
「ミズナのヤローはバカだからソコを突ければいいんですよ!」
「アタシの見る限り、バカさじゃマッハとヒミコには勝てな――――」
「アンダスタンですかー?」
「い、イエス……」
「あー、でまぁ、1年のエレナ・ロン・サリナちゃんの装騎だな」
1年エレナ・ロン・サリナの装騎ラピスラズリ。
柔軟さと安定性が特徴的なPS-A4アブディエルをベースにした装騎だ。
「主な武装は10mmストライダーライフルとウェーブシャムシール――それと、霊子シールド・アズライトだ」
「サリナちゃんのポジションはリベロだって聞いた覚えがありますし、それでバランスを取った武装なでんですかね」
リベロとは、味方をサポートするポジションの1つで自由に味方の防御支援をするポジションだ。
防御支援寄りのオールラウンダーともされ、サポーターなどと違って前線に出て攻守の支援をする事も多く、そのカバー範囲は広い。
「味方に対する幅広い攻撃・防御支援能力が必要とされるポジションだしな。必要とされた時に必要とされたポジションにつく――――そういう機動能力も大事だから柔軟なアブディエルを使っているんだろうし」
「特徴が無いけど大事な役割ですよね……」
「サリナ自身の実力も悪くないみたいだしな。まだまだ成長途中な感じはあるけど――――彼女は今後間違いなく脅威になるだろうな。まぁ、新歓が終われば頼もしい仲間なんだけど」
「そうですね。差し詰めの脅威はやっぱりソレイユ先輩とロズ先輩――――ですか」
「無茶な事をやらかすミズナと、潜在能力が高そうなサリナももちろん要注意だけどな。ま、誰が相手でも気を抜かないで全力でいこう!」
「はいっ!!」
「それじゃ――――チーム・ブローウィング!! 絶対に――――」
「「「「勝つぞーっ!!!!」」」」




