表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
宿敵! ミステリオーソ!!
41/322

クリティカル・ドライブ

「アイロニィ――――クリティカル・ドライブ――――――!」

青白い輝きを纏った装騎アイロニィ。

アイロニィは限界駆動クリティカル・ドライブという状態へと入っていた。

人の意思力や魔力――霊力と電力を結合させ、アズルと言う特殊な力を生み出すことで、少量の電力で無限に近いエネルギーを取り出すことができるアズルリアクター。

しかし、機甲装騎は1度に蓄えられる、行使できるエネルギー量が少なく、使用した後に新たなエネルギーを作り出し、補給すると言う方式を取っている。

その為、魔電霊子砲等の1度に大幅なエネルギーを使用する武器を使った場合、数秒だがエネルギーを作り出す時間がかかり連射などが不可能。

だが、そんなアズルリアクターを限界ギリギリまで酷使し、使用したエネルギーをほぼ一瞬で回復することが可能となる事が稀にある。

それは、例えば騎使が死を間近にした時だったり、最高潮の精神の昂ぶりを見せた時だったり、異常な集中力を見せた時だったりに発動すると言われている。

その状態こそ――――限界駆動、クリティカル・ドライブである。

アズルリアクターによって生み出され続けるアズルの輝きが装騎の隙間から僅かに漏れ出し、その体中がアズルの仄かな青い輝きに包まれる。

「これは――――噂には聞いた事がある、けど――――――まさか、実際に目にする事になるなんて」

クリティカル・ドライブの噂は、何も実戦だけのことではない。

装騎バトルは当然、その他の分野に於いても、稀に起こる現象として、その噂を聞いた事はあった。

それは恐らく、『ゾーン』や『フロー』、『絶対領域』と呼ばれる類のものだろう。

瞬間――――アイロニィがスパローの目の前から消えた。

「しまっ――――」

不意にスパローに襲い来る衝撃。

スパローは、アイロニィの蹴りを受けて吹き飛んでいた。

そこに向かって突き立てられるアイロニィのナイフ・クサナギ。

それを辛うじて受け止めるスパローが右手に握ったナイフ。

「くぅ――――」

スパローは素早く、アイロニィに蹴りを入れようと足を突き出すが、紙一重でその蹴りを回避される。

だが、スパローの蹴りは意識を逸らす為の誘導――――スズメはそのままスパローの右腕にエネルギーを回す。

「スパロー――レイ・エッジ!!」

スパローは、手に持ったナイフでアイロニィのナイフを受け止めながら、右腕のブレードをアイロニィに向ける。

その瞬間、スパローの右腕から鋭い輝きが放たれた。

カッ――――!!

光が瞬く瞬間――――だが、アイロニィはその身をかわし、スパローから距離を取ると同時にレイ・エッジの輝きを回避していた。

スパローも、アイロニィが距離を空けたその瞬間を見計らい、その身を跳ね起こす。

「やっぱり――――強い!! でも、私は――――私は――――――――」

不意に、アイロニィがナイフ以外の全ての装備をパージした。

右手に握ったナイフ――――その1本でスパローを獲る気だ。

鋭く激しく襲い来るアイロニィ――――それに必死で抵抗するスパロー。

なんとか凌いでこそいるものの、やはりアイロニィの強さは圧倒的。

「ぐぅ――――勝て、ない」

「この程度の攻撃で音を上げるの? サエズリ・スズメ――――」

「っ――――!!」

「貴女の力はこの程度? 本当に? 本気を見せなさい……サエズリ・スズメェ!!」

「本気――私の、本気!? 私は――――私は…………」

「私はそんな諦めたような戦い方をしている貴女を――見たく、無かった。今も――――そして、あの時も!」

「――――――っ!!!!」

諦めている!? 私が、諦めている――――今も、そして――――

「あの時…………」

アイロニィに再び蹴り飛ばされ、スパローが地面に倒れ伏す。

そこに向かって閃くアイロニィのナイフ。

「私は――――」

そのナイフは的確にスパローの機能を停止させようと振り下ろされる。

「私は――――――諦めない!!」

瞬間――

ギィイイイイイイイイイイン!!!!!

アイロニィのナイフを受け止めたのはスパローの碗部のブレード。

「ふっ――――」

そこから僅かに漏れ出す、青白い光――――

「スパロー……クリティカル・ドライブ!!」

スパローの体を覆う青白い輝き――――そう、スパローも入ったのだ。

限界駆動クリティカル・ドライブの領域へと。

「はぁぁぁぁああああああ!!!」

鋭く――そして、素早く振り払われたスパローの碗部ブレード。

それと同時に、覇気のような物がアイロニィを――イザナを襲う。

「っ――この迫力は――――――」

ゴォオォオウ!!

まるで突風が吹き荒れたような錯覚。

その覇気に圧し飛ばされるように、アイロニィは後方へと跳んだ。

「面白いわね、サエズリ・スズメ……」

「私は勝ちます! ヒラサカ・イザナ――――アナタに、勝ってみせます!」

スパローとアイロニィが跳ねるように前へと駆けだす。

バヂィッ! バヂッ!

激しくぶつかるスパローのナイフとアイロニィのナイフ。

その度に、赤い火花と、蒼い輝きが弾け飛ぶ。

互いの装騎の動きが、蒼い残像を残し、揺らぎ、激しい叫びを上げる。

不意に、スパローは距離を空けるようにして飛び跳ね、右腕をアイロニィに向ける。

「レイ・エッジ――!!」

鋭く放たれるレイ・エッジの輝き、それを素早く避けるとスパローに肉薄するアイロニィ。

「甘いです!」

更にもう1撃――――スパローの右腕のブレードが光を発し、レイ・エッジを撃ち放った。

「なるほどね――クリティカル・ドライブ時は常にエネルギーが供給される――――だから」

レイ・エッジは一撃のエネルギー消費量が激しく、その消費量と回復量が割り合わない為、連射が不可能だ。

しかし、クリティカル・ドライブ時はその回復量すら最大まで引き上げられる。

故に、エネルギー消費が膨大なレイ・エッジと言えども、連射とまでは言わずとも、単発銃程度のペースでは射撃が可能となる。

もっとも、イザナがその可能性を考えていないはずは無く、アイロニィはスパローの2射目も回避した。

「流石です、イザナさん!」

「そろそろ決着をつけましょう――サエズリ・スズメ!」

「スパロー! レイ・エッジ――――」

瞬間、スパローの右腕に光が走る。

「――――っ!!! これは!?」

大きく振り上げたスパローの右腕――そこから放たれる輝き。

常に注ぎ込まれてくるエネルギーを、激しい力を持って放出する。

それはまさに巨大な光の剣――――莫大なエネルギーを一気に放出する事で作り出されたその刃は装騎の身の丈をも遥かに超える。

「――――――大、切、断!!!!」

スズメの叫びと共に、スパローの右腕が振り下ろされる。

光の巨剣は木々を引き裂き、地面を焼き付け、激しく、鋭く、切り裂いていく。

「っ――!!!」

慌てて回避行動をとるアイロニィ――――スパローのレイ・エッジ大切断はその左腕を肩ごと持っていった。

「何て技を使うの――サエズリ・スズメ…………」

「思ったよりも出力が出てビックリしちゃったですけど――――なるほど、大体わかりました!」

スズメはそう呟くと、エネルギーを調整し、その刃を短くする。

スパローの碗部ブレードに纏われるエネルギーの刃、レイ・エッジソード。

それを構えると、再び正面から突っ込んでくるアイロニィを迎え撃つ。

この1撃で――――勝負は決まる。

どういう訳か、2人ともそんな確信があった。

「私は――――勝ちます!」

そして――スズメにはその確信があった。

スパローのレイ・エッジソードがアイロニィの体を貫かんと閃く。

対するアイロニィのナイフがスパローを切り裂かんと閃く。

「――――っ!!」

その交差する一瞬、アイロニィの体がスパローから見て右へと沈み込んだ。

それはアイロニィが狙って行った事――――ではなかった。

「くぅ――どうやら、持たなかったみたいね……」

呟くイザナ。

それと同時にスズメは気付いた。

崩れ落ちるアイロニィの左足から飛び散る火花。

そう、先のスパローが放ったレイ・エッジ大切断――その時にアイロニィは左脚にもダメージを受けていた。

その為、アイロニィの動きに脚部の耐久力が追い付かず、結果、左足が壊れ倒れこんだのだ。

一瞬、スズメは止めを刺すことに躊躇する。

「イザナさん――――」

「サエズリ・スズメ、私は、諦めていないわよ」

通常、装騎にとって脚部というようは非常に大切な部位だ。

装騎全ての体重を支え、その動きの基礎を占める。

それが破壊された装騎の戦闘力は大幅に低下し、まともな戦闘など行えるはずが無い。

しかし、その言葉通り、ヒラサカ・イザナは諦めていなかった。

右腕で装騎を思いっきり押し出すと、その反動で残った右足をスパローに叩きつける。

「きゃっ!?」

蹴りを食らったスパローがよろめく。

その隙に、地面に手を突き、反動でアイロニィの体を起こす。

「いっけぇぇぇええええええ!!」

ギシィ

アイロニィは右足に力を込め、片足立ちする。

そして、その片足だけで、小刻みなジャンプを繰り返しながら、装騎の体を捻り、スパローを正面に捉える。

そして、スパローを正面に捉えた瞬間――――体の捻りを右腕に乗せ、ナイフを思いっきり振りかぶった。

一方スズメも、多少体勢を崩されただけで隙を見せる様な騎使では無い。

そんなアイロニィのがら空きになった胴体目がけて、右腕のレイ・エッジソードを振り払う。

スパローのレイ・エッジソードがアイロニィの右胸に食い込む。

アイロニィのナイフが一瞬遅れてスパローの左肩に食い込む。

スパローのレイ・エッジソードはアイロニィの胴体を――

アイロニィのナイフはスパローの胴体を――

互いに切り裂かんと――――――

「ダ、ダメです――――――!!!」

不意に飛び出してきたのは満身創痍の装騎ニューウェイ。

「なっ、あれは装騎ニューウェイ!?」

「っ!! トーコ!?」

飛び出してきたニューウェイは、アイロニィを切り裂かんと襲うスパローのレイ・エッジソードをその身で受け止め、押し返した。

そのまま、アイロニィのナイフは――――スパローの体を引き裂いていた。

スパローとニューウェイは機能を停止し、残ったのはスーパーセルとチリペッパー、そして片腕片脚を失ったアイロニィになった。

「――――――私達の、負けよ」

ヒラサカ・イザナは――最後にそう呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ