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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
スヴェトの脅威:最強最優の使徒
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第36話:s Hříchem Přišla Smrt

 s Hříchem Přišla Smrt

-罪によって死が入り込んだ-

「まさか、我々が撤退せざるを得なくなるとは……」

「予想以上に強固な守りでしたね」

悔しそうに拳を固める使徒ユーディに、スズメはあくまで冷静に肯定した。

「そもそも、あなたは本当に戦っていたのですか?」

苛立っているのだろう、使徒ユーディはキッとスズメを睨みつけて言った。

その視線を阻むように歩みでたのは使徒ジュダ。

「肯定。我ガ傍にいタ。全力、ダ」

「終わったことをとやかく言っても仕方ないですよ。あれだけの数で攻めておいて突破できなかった自分達の首も締めることになりますからね」

その話は無しだと言いながらも、しっかり自分達への不満をぶつけてくるスズメの態度はユーディには気に入らない。

しかし、返す言葉もなくユーディは黙るしかできなかった。

「諍いは少止、次手を早めに打たばなるまい。如何する」

「今夜、仕掛けましょう」

使徒シモーヌにスズメは、とっくの前から考えていたようにキッパリ、ハッキリ、言葉を紡ぐ。

「ほう、夜襲か。其れも良い」

使徒シモーヌの口元が笑みに歪む。

「寝込みを襲うって訳か! 簡単にぶっ潰しちゃうのは嫌だけどー、まぁ、アイツらなら面白い抵抗してくれるだろう! 賛成!」

「皆が行くと言うのなら仕方ないわ。戦力が欲しいのでしょ?」

「お願いします、パトラスさん、ヨハンナさん」

「正々堂々が信条だけど――これは立派な戦略だしね。いいよ、わたしも賛成さ」

使徒フェリパの言葉に使徒マチア、マシュ、ナーサリィらも頷き賛成の意を示した。

「…………分かりました。使徒長代理として、作戦を許可します」

「ありがとうございます」

深々と礼をするスズメの姿に、使徒ユーディは全くいい気持ちはしなかった。


深夜。

チャペクランド中央チャペク城。

ビェトカはベッドの上で目を覚ました。

暗闇に沈んだ部屋は、ただただ静寂。

何の異変も無い、ただ静かな夜だ。

「まだ……1時ジャン」

SIDパッドの時刻表示を見て独り言つ。

まだ、2時間も眠れていない。

「ここ最近はグッスリ快眠だったんだけどなァ」

ビェトカはこの感覚に覚えがあった。

特に理由もなく、真夜中に目が覚める。

そんな時はいつも決まって何かが起きるのだ。

「これは……来るかな」

ビェトカはベッドから身を起こし、着替えると装騎格納庫へと向かった。

ひんやりとした空気が肌を撫でる。

目の前には、夜闇に紛れるような黒い機甲装騎――ピトフーイ・ディクロウスが主人を待ち構えていた。

「行くわよ」

装騎ピトフーイDはステルスモードに入ると、チャペク城の物見櫓ものみやぐらへと這い上がる。

「ゲルダ、ナンか嫌予感っていうか、ジンクスってヤツ? だからさ、ちょっと皆んな起こしといて。ううん、相手に気取られたくないし、間違いだったらイヤっしょ? だから静かにお願い」

強い夜風を身に受けて、ビェトカはジッと暗闇へと目を凝らした。

周囲は闇、闇、そして闇。

ぽつりぽつりと灯りがついてこそいるが、どれだけ目を凝らしても闇の中は見通せない。

だが、わざわざ目で捉える必要はない。

今度は目を閉じて、耳を澄ませる。

静寂の中の無音の音に、さらに聞き耳を立て音を探す。

「……違和感」

それは、今までの人生で何度頼りにしてきただろうか。

傭兵として孤独に戦った中でどれだけ鍛えられただろうか。

聞こえて来るのは風の吹き抜ける音だけ。

だが、その中に、言葉では言い表せない確かな違和感を覚えた。

「迎撃態勢……」

瞬間――チャペクランドは完全な闇に閉ざされた。

「来たッ!!」

暗闇の中を、天使装騎部隊がチャペク城目指して駆け抜ける。

先頭を行くのは天使装騎バルバトス……そして、

『ふっ、イカすじゃねーか! ブラック・スパロー!』

「スパロー・オブシディアンです」

『なら俺はバルバトス・マイティだ!』

「何も変わってないじゃないですかー!」

『気分気分。気分の問題!』

「頼みますよ、パトラスさん」

装騎スパロー・オブシディアンと天使装騎バルバトスは二手に分かれた。

『私も……行かせてもらう』

その間を突っ切ってきたのは天使装騎ベリアル。

「お願いします、ユーディさん。狼煙を!」

『ッ……、ふん、蹂躙します』

天使装騎ベリアルの車輪に炎が灯る。

その炎は、どんどんと勢いを増し、それにつられて天使装騎ベリアルが加速していった。

我らが新世界の為にザ・ノヴェーホ・スヴェタ

瞬間、炎のわだちを地面に刻み、天使装騎ベリアルは最高の突破力を見せつけた。

「敵襲敵襲!!」

天使装騎ベリアルが巻き起こした炎と破壊にチャペク城の周囲が一気に明るくなる。

『行きましょう天使パイモン! わたし達の任務は外灯の破壊です』

『う、うん! ベバル、アバラム!』

天使装騎アスタロスとパイモンは手当たり次第に灯りと迎撃装置に攻撃を加える。

『天使マルコシアス……わたしが援護します。行きましょう』

、天使グレモリー……無茶はするな』

天使装騎グレモリーとマルコシアスは二人一組で走る。

『天使アモン、アズルフィールドの発生装置は天守にあるらしいです。攻撃を』

『りょーかい! 天使装騎アモンの輝きはあまねく全てを焼き尽くす!』

天使装騎アモンが霊子杖ワセトを天高く掲げると、チャペク城天守閣に巨大な火の玉が叩きつけられた。

『クリティカルヒットぉ!』

天使装騎アモンの口笛が鳴り響く。

『これで、先の戦いで苦しめられた防壁は発動しないはず……気を引き締めましょう。ザ・ノヴェーホ・スヴェタ!』

「全く……好き勝手やってくれてるね」

「本当にそうですね。狙って狙って……」

対するŠÁRKAで早速対応したのはピピの装騎ネフェルタリとカナールの装騎ニェムツォヴァーだった。

「狙撃騎だからね」

「わたしはちょっと違いますけど」

ピピとカナールの丁寧な狙撃は天使装騎部隊の脚を遅らせる。

「もっと明るくしてくれると嬉しいんだけど……」

「第壱異能……炎花」

ピピの呟きに答えるように、炎の輝きが天使装騎部隊へと放たれた。

「助かるよ、フラン先生」

「構わん。だが、遊園地に火をつけても良いのか?」

「最低限の被害は構わないらしいです。全力で行きましょう」

「それなら――」

ゲルダの言葉にフランの装騎シュラークzの周囲に魔力が集まる。

「やろう」

そして、炎が弾けた。

『あの魔術騎、厄介! 叩き潰すのだわ』

天使装騎ゼパールは、双尖剣ズルフィカールを両手に装騎シュラークzへと斬りかかる。

「血気盛んな天使だことでっ!」

その刃が装騎シュラークzを切り裂く直前、サヤカの装騎ファリアの拳が受け止めた。

「拳と剣のぶつかり合いと行きましょう!」

『ふっ、アタクシのラブファイアー、受けてごらんなさい!』

『さぁ、俺の相手は誰がする!?』

一撃ストジェット!!」

咄嗟に動きを止めた天使装騎バルバトスの正面に振り下ろされた巨大なハンマー。

装騎ヴラシュトフカのブーステッドハンマー・クシージェの一撃だ。

『お前が相手か? いいぜ、やり合おうぜ!!』

「アオノ!」

「合点承知の助であります!」

さらに、アズルの波に乗った装騎ブルースイングが天使装騎バルバトスを搦めとる。

「メイ! それとナンタラ!」

「レオシュだよ」

「So、ロックンロール!」

そこにメイの装騎サーティーナイン・リマスターがチェーンナイフを、レオシュの装騎オリオルスが霊子杖ムソウスイゲツを天使装騎バルバトスに突き立てた。

『甘い甘い!』

その一撃は、霊子猟銃シャーウッドで受け止められるが……

「キメはアタシに決まってるでしょ!」

天使装騎バルバトスが動かないと踏んだ装騎ヴラシュトフカがブーステッドハンマー・クシージェを振り上げる。

『わぁお!』

一撃が決まった!

そう確信するツバメだったが、突如騎体が激しく揺らされ、

「なっ、なんなのよッ!!」

地面に叩きつけられた。

「ツバメさん、危ないっす!!」

装騎ヴラシュトフカに閃く黒い刃を、装騎'39Rが身を呈してかばう。

「メイ!」

「うっわぁ、ガッツリ肩が抉られたっす」

突如現れた装騎スパロー・オブシディアンは天使装騎バルバトスを一瞥。

「油断しすぎですよ」

『いやぁ、可愛い子どもかと思ったら思いのほか強くて――――ってアレ、もういない?』

天使装騎バルバトスは闇夜に消えた黒い影を見送りながら、霊子猟銃シャーウッドを構え直す。

『さぁ、いくのだわいくのだわいくのだわ!!』

竜巻のように両手の双尖剣ズルフィカールを振り回す天使装騎ゼパール。

その一撃一撃を装騎ファリアが拳で打ち返す。

「加勢するかしら?」

「カラスバ先輩、やる気が……あるならねっ!」

「あるわよ」

『ふっ、3人がかり大いに結構だわ!』

そうは言いつつも、フラン、サヤカ、リンともにかなりの実力。

両手で装騎ファリアとコクヨクを凌ぐので精一杯だった。

「怒れ、我が弾丸……」

そこに放たれた装騎シュラークzの銃撃魔術(ブリットスペル)

その炎は、天使装騎ゼパールへ命中する直前に虚空で燃え上がる。

「何? 障壁??」

「違うわ。黒い盾のようなものがフランの魔術を阻んだのよ」

瞬間、装騎ファリアの右腕が両断された。

「ヨハンナさん。折角奇襲の機会を作ったのに正面突破は愚策ですよ」

『煩いですわ! 貴女のようにコソコソ卑怯に戦う性分ではなくてよ!』

「黒い装騎……まさかスパローか!?」

「黒い装騎で闇に隠れて奇襲ね。確かにスパローの機動力だと脅威以外の何物でも無いわ」

「つー、いったぁ! もう許さないんだから!」

「残念ね。もう離脱してるわ」

照明が落ち暗闇に覆われたチャペクアイランド内で、装騎スパロー・オブシディアンはまさに脅威だった。

障害物の多いチャペク城城下町では装騎スパローの性能を存分に発揮できる。

そして、闇夜に合わせ装騎もその武装も視認性の低い黒色で統一したことで目にも留まらぬ速さに拍車をかけていた。

「真っ黒いスパローか……ヤッバ、ガチなやつジャン」

各チームの報告を受けてビェトカは苦い表情を浮かべる。

「負けないように頑張りなさい。ステルスはビェトカの領分でしょ?」

「ハイハイ、そんじゃあ……行くとしますか!」

虚空を睨む装騎ピトフーイDは、不意に霊子鎖剣ドラクを振りかぶった。

「っ!!」

夜空に瞬いた火花。

その一瞬後……装騎スパロー・オブシディアンが地面を砕き膝をついた。

「今のは、ドラク。…………っ!!」

目の前の闇から、蛇の頭のように刃が装騎スパロー・オブシディアンに食らいついて来る。

それをチェルニー・ヌーシュで弾き飛ばした。

「ピトフーイのステルス機能ですか……なるほど、良い手です」

ステルス機能を用いた装騎ピトフーイDの夜戦能力は、黒く塗り替えた装騎スパローとは比較にならない。

「ですけど……ビェトカはちょっと愚直過ぎます。ハウリング・ムーン!!」

装騎スパロー・オブシディアンはアズルの波を思いっきり吐き出す。

「なっ!?」

その波は広がり、装騎ピトフーイDの全身を揺らした。

さらに、装騎スパロー・オブシディアンは漆黒のナイフを複数投擲し――装騎ピトフーイDの持つステルス用カメラを破壊した。

「チッ、ナンも見えない!」

ビェトカは吐き捨てながら装騎ピトフーイDのステルス機能を解除する。

「そこです……っ!」

「やらせないわ」

装騎スパロー・オブシディアンの刃を受け止めたのは装士フーシー。

互いに競り合う装騎スパロー・オブシディアンと装士フーシーに、

「悪いけど、やらせてもらうわ!」

装騎ピトフーイDが隙を見て斬りかかった。

「生憎ですが……奇襲が得意なのは私だけじゃないんです」

『然り』

閃いたのは天使装騎グラーシャ・ラボラスの爪。

霧散化し、装騎スパロー・オブシディアンについてきていたらしい。

「さらに今回は、特別ゲストも用意してますよ」

『仕方ないです。来なさい』

天使装騎ベリアルの言葉に続き、ズズズズと重たい地響きが鳴り響く。

そして――――アズルの輝きがチャペクアイランドを走った。

チャペクアイランドの建物や防衛設備を一気に薙ぎ払った閃光。

その向こうで仄かにアズルの輝きを漏らす巨大な影。

「ナニ、アレ……」

装騎を遥かに超える身の丈。

勝利の天使の名を持つ、マルクト"神国"製超重装騎。

「超重装騎ヴィクター……完成してたのね」

それは、カラスバ・リンを始め、マルクト神国の深い所にいた人間であれば誰もが名前を聞いたことある装騎だった。

一説には、この超重装騎の情報が漏れ出た為にルシリアーナ帝国は超重装騎ジェネラル・フロストを開発できたとも言う幻の装騎。

「呆気に取られてる場合じゃないですよ!」

超重装騎ヴィクターの衝撃も冷めやまぬ中、早速装騎スパロー・オブシディアンが装騎ピトフーイDへと襲いかかる。

『特別です。使徒スズメ、支援します』

更に天使装騎ベリアルも合流して装騎ピトフーイDと装士フーシーとの戦闘が再開された。


挿絵(By みてみん)

SSSSS-第二十五回-

ローラ「全く……やってくれたわね。想定の範囲内、ではあるんだけれど。貴女達!」

???「タマラだよ」

???「ナキリである!」

ローラ「演出! 演出気にして!?」

タマラ・ナキリ「?」

???「戦いが始まる――それなのに呑気よね」

ナキリ「そういうエルザ先輩はすごく震えてるであるよ!」

エルザ「やめなさいっ!」

タマラ「怖いなら……おうち、帰りましょ?」

エルザ「怖くないわよっ!」

ローラ「…………大丈夫なの? コレ」

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