表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
プロローグ:ブローウィングの風
3/322

チーム内対抗戦

スズメは自らの装騎に乗り込み、服を着込むように、手足を機械の中に潜らせた。

機甲装騎は騎使自らの小さな動きを増幅し真似することによって人間のように動くことが可能となる所謂セミ・マスター・スレイブ方式を採用している。

この操縦方式をマルクトではオーバー・シンクロナイズ――OSとも俗称する。

その他にもゲーム感覚で装騎の操縦が可能となるセミ・オート・アクションシステムも搭載しているが、こちらは動作がワンパターンになるため小学生など子どもが装騎に慣れるためや、長距離移動時の負担軽減のために使うのが主だ。

装騎の正面メインモニターにパスワードの入力を求める1文が表示された。

入学手続き時に設定したパスワードを入力することで起動者がサエズリ・スズメ本人である事を確認する。

瞬間、スズメの体に悪寒や痺れにも似た感覚が走った。

しかし、その悪寒は正常に装騎が起動した証でもある。

「騎使認証クリア、霊子伝達接続――正常、バッテリー残量――問題なし、霊子抽出開始――アズルリアクター稼働――魔電霊子アズルの生成開始――――アズル出力安定」

そして装騎のコンピュータがスーパーコンピュータ・シャダイへと接続を始めた。

マルクト国の全ての機甲装騎は、シャダイコンピュータとリアルタイムでリンクする事により、あらゆる情報の共有や保存、更新が可能となる。

「各項目、チェック――――オールグリーン!」

ざっと設定項目に目を通し、問題ないことを確認する。

「やっぱり、獣脚だと関節の曲がり方に違和感あるなぁ……」

軽く足踏みをし、新しい装騎の感覚に体を慣らす。

「どうだスズメちゃん。いけそうか?」

右側のサブモニター、その一角にツバサの姿が映る。

ツバサからの映像通信を受信したのだ。

「はい、行けます!」

スズメがそう告げると、ツバサは頷き、

「スズメちゃんの装騎データも確認した。なるほど、可愛い名前だな」

「えっ、ちょっ、可愛いとか言わないでくださいよ!」

全ての装騎のデータはシャダイに保存されている。

そのため、レーダー圏内に居る装騎のデータは自動的に照会され、表示されるのだ。

「さぁ、さっさと始めるんですよ!」

「スズメちゃん装騎……どんなものか楽しみですわね」

ツバサの姿の下に続き、マッハ、チャイカの姿が表示される。

「2人ともきっと度胆を抜くぞ」

「それは楽しみなんですよ!」

盛り上がる3人に、スズメは苦笑する。

「試合開始申請も承認! 防護フィールド起動――――さてと、それじゃあ、アタシが合図したらチーム内対抗戦始めようか。準備は良いか?」

「もちろんでやがりますよー!」

「はい、大丈夫ですわ」

「が、がんばります!」

それぞれがそれぞれの言葉を口にし、それにツバサは頷く。

「オッケー、じゃ、チーム内対抗戦――」

スズメはゆっくりと深呼吸をし、心を落ち着かせる。

静かにメインディスプレイを見つめ、軽く体を動した。

その動きに呼応するように、装騎もその身を震わせる。

「開始!!」

ツバサの言葉と同時に、マッハとチャイカの映像通信が遮断され、装騎が戦闘モードに移行した。

スズメはツバサの駆る装騎スーパーセルに頷いて見せると、スーパーセルはグっと親指を突き出しGOサインを送る。

「サエズリ・スズメ、スパロー。行きます!!」

そう勢いを込めて口にし、右足を踏み込んだ。

地面を踏みしめる脚部がしなりながら、軽快なリズムを刻んでいく。

装騎スパローは逆脚だと言う事もあり、操縦に若干の心配があった。

しかし装騎自体の姿勢制御機能の存在もあり、普通の装騎を操るのと大差ない感覚にスズメは内心安堵する。

ビービービー!!

不意に鳴り響く警告音。

正面から近付いてくる1騎の機甲装騎の姿をスズメは見た。

青をベースカラーとして、烏の翼のような艶のある黒い装甲を纏った細身の装騎。

その顎部にある赤いラインが特徴的だ。

「ひゃっはぁー! 敵機ハケーンですよ!!」

敵機のデータが照会され、サブディスプレイに表示される。

カスアリウス・マッハの装騎チリペッパーだ。

「ナイフだけで出てくるなんて迂闊なんですよ!」

「正面から突っ込んでくる!?」

その装騎は、装騎の中でも最軽量と言われるPS-H2ヘルメシエルをベースにした装騎。

最軽量と言う事は、それだけ脆いと言う事なのだが。

「あんな装騎で突っ込んでくるなんて――!」

マッハ操るチリペッパー、その両腕に構えるのは16mmファイティングショットガン。

スズメは咄嗟にその自らの装騎を跳躍させる。

バダン!!

先ほどまで装騎スパローの居た場所に複数の弾痕が刻まれた。

「避けられやがったですか!?」

チリペッパーの遥か頭上を舞ったスパローはそのあまりの跳躍力から空中でクルリと一回転をする。

「ひぇあ!?」

想像以上のその力に乗っているスズメ自身思わず変な声を出してしまう。

ズシン!!

スパローは地面を揺らしチリペッパーの背後に着地する。

一瞬、気が動転していたスズメだったが、すぐさま気を取り直し、振りむき様に右手のナイフを一閃。

「うわっと、危ないんですよコノヤロー!」

スズメの反応が一瞬鈍ったそのお蔭でチリペッパーはナイフの鋭い閃きから逃れる。

チリペッパーはそのまま反転すると、

「オラオラですよォ!!!」

と両手の16mmファイティングショットガンを連続でぶっ放す。

「んぁっ――!? くぅ――ひぁっ、激しいっ!?」

警告音が鳴り響く中、銃弾の雨の中から抜け出そうと装騎を跳躍させる。

しかし、小型で小回りの利くチリペッパーを相手に逃げ回るのは困難だった。

その時、チリペッパーの背後からスーパーセルがブースト機動で滑走してくる。

「はっはっは、面白いだろマッハちゃんは」

「面白いっていうか滅茶苦茶ですよぉ!」

ババババとスーパーセルの12mmバーストライフルが火を噴き、チリペッパーを襲った。

「うにぁ!? しまったファッキンですよ!!」

突然の衝撃にチリペッパーの動きが一瞬止まる。

その隙を今度こそスズメは見逃さなかった。

「これで――一騎!」

グッと身を屈め、ナイフを右手にスパローをチリペッパーへと突っ込ませる。

ナイフの一閃がチリペッパーを捉えようとした――その時だった。

注)セミ・マスター・スレイブシステム

富士見ファンタジア文庫より刊行される賀東招二原作のライトノベル「フルメタル・パニック!」において人型兵器アーム・スレイブに用いられる操縦技術。

実際に存在するマスタースレーブと言う操作技術を応用したもの。

マスター・スレーブとは、操縦者の体の動きを機械などが読み取り、再現する技術だが、それを狭いロボットのコクピット内で可能にしたのがセミ・マスター・スレイブシステムである。

搭乗者の小さな動きを、設定された角度だけ増幅する事で、人の動きを再現することができる。

本作では、フルメタル・パニック!に敬意を表し、機甲装騎の基本的な操縦方法として引用させてもらった


オマケ

ステラソフィア・キャラクター名鑑

挿絵(By みてみん)

2年:チーム・ブローウィング所属

名前:Casuarius Mach

読み:カスアリウス・マッハ

生年月日:聖歴152年2月14日

年齢:16歳(4月1日現在)

出身地:マルクト国テューリンゲン市

身長:148cm

体重:45kg

使用装騎:PS-H2S:Chili Pepper(ベース騎PS-H2:Hermesiel)

好みの武器:膝部キックブレード

ポジション:ブースター

公立エリーゼ女子中学出身。

装騎レースでの驚異的な成績を認められステラソフィアに推薦入学。

趣味は風になること。

個人的な声のイメージは徳井青空さん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ