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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
スヴェトの脅威:最強最優の使徒
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第30話:Hospodin Požehnání Udílí – Život až Navěky!

Hospodin Požehnání Udílí – Život až Navěky!

     -祝福と、とこしえの命を-

エーテルリヒト王国軍港。

「助かったわリエラ……」

「いえ、イザナさん達の頼みですから」

無事にエーテルリヒト王国へ辿り着くことができたゴッド・セイヴ・ザ・クイーン号とŠÁRKAのメンバー達はひとときの休息を取っていた。

「うわぁ、ミリエライシュト姫でありますよ! ほ、本物であります……っ!」

船の受け入れをしてくれたエーテルリヒト・ミリエライシュトが迎える。

「この国にはそうそう手出しできないでしょうし、しばらくゆっくりしていってください」

「ええ、感謝するわ」

「いやぁ、すごいわねぇ。アンタって姫様とも交流んの?」

握手をするイザナとリエラに、ビェトカが感心する。

「何言ってるのよ。一応私はみかどよ。一国の主よ主」

「あー、そう言えばそうだっけ。ふっつーに忘れそうになるわソレ」

そう、一応イザナはユウ・ハと言う名前で華國(カノクニ)の女帝をしているのだ。

「これからどーする?」

「街に行くのであれば、私が案内しますよ」

「えっ、平気なの?」

ビェトカがそう言うのも尤も。

仮にもマルクト共和国に対する反逆行為で指名手配されている身。

中立の他国とは言え、街をうろついて目立たない訳が無い。

「大丈夫です。どうせでしたら、変装でもしましょう!」

「なんで楽しそうなの姫様」

「そういう人なのよ……」

という事で、変装をしたŠÁRKAのメンバーはリエラに案内され、街へと入った。

「アタシは今すぐにでもスズ姉を助けに行きたいんだけどっ!」

「ツバメさん、ここは抑えるでありますよ。しっかり休んで戦いに備えないと」

「そうは言うけどッ」

「なんたって、サエズリ・ツバメさんのお姉さんですよ。無事じゃ無い訳無いであります!」

「……それは、まぁ、そうね」

「ここですここ! ここのお店が美味しいんですよ!」

まるで一介の少女のようにはしゃぐリエラ。

彼女に連れられて、ŠÁRKA一行が足を入れたのは、大衆食堂フォルクスマソヴェン。

リエラおすすめの食堂だった。

「えらく庶民的なお店ねー」

「ここだけの話ですけど、私はよくお城を抜け出して遊んでいたので、こういうのには詳しいのです」

「聞かなくても薄々分かってた」

「なかなか良さそうな店だな」

「そうだね。パスタはないのかな?」

「ピピっちはいっつもパスタのことばかりだよねー。SweetDream(いいとおもうよ)!」

「一度、子ども達連れて来たいわねー」

「いいんじゃないか? 喜ぶとおもうぞ」

「でもカネがないのよねー」

流石に大人数なので、数人で一塊になり席に座る。

それぞれが思い思いに注文し、昼食を取り始めた。

「あらーリエラちゃん、今日は沢山連れて来たわねぇ」

「女将さん。ごめんなさい急にこんな人数で……」

「いいのいいの、色々訳ありみたいだしね」

「クラリカ、もっとたくさん食べないと大きくなれないですよ」

「ズィズィは食べすぎなんだよ……」

久々の開放的な時間に盛り上がる影で、1つの人影が店の隅で腰を下ろした。

ŠÁRKAの面々を観察するように、その人物はジッと見つめる。

「ん……?」

その人物に、最初に気づいたのはゲルダだった。

奇妙な視線、奇妙な人物、ゲルダがその事を伝えようと決心した時、その人物はおもむろに席を立つとこちらへ近づいて来た。

「アル――」

「あっれぇー、久しぶりィ! あたしだよあたし、覚えてる? 覚えてないかァー。かぁーっ、つらい!」

「アンタは……!」

その顔にビェトカは見覚えがあった。

「テナ!」

「お、覚えてんじゃないかぁ! 忘れられたかと思ったよォー」

「アルジュビェタ、知り合いか?」

「うん。名前は確か、イルムアテンだけど長いからテナ。昔の傭兵仲間」

「そっ! なっつかしぃなァ! テナとアルジュの大冒険! 伝説の杯探しに、海底遺跡の秘宝探し! 天空都市にも行ったっけ?」

「行ってないし。てかそれじゃトレジャーハンターじゃん」

「やってることは殆ど盗賊だっただろ? 変わらねー変わらねーって」

「んで、アンタはなんでこんなとこいんのよ。傭兵は?」

「戦争も終わっちったし廃業よ。今は自分探しの旅――ってとこかな」

顎に手を当て、片足を椅子に乗せ、イルムアテンは格好つける。

「反面、アルジュはすげーよな! マルクト相手に国家反逆罪? すげーよ、さすがだよ! さすがあたしの見込んだ女!」

「ふーん、ワタシらの事情は知ってるのね」

「何かしらでっかいことする気だろ? 何を奪う? 金? 地位? 国? まぁ、とにかく、なんならあたしを雇ってくれてもいいぜ」

「別にそういうのじゃないわ。両親を殺したヤツらへの復讐と、仲間への義理。ついでに世界を救っちゃおうってワケよ」

ビェトカの言葉に、イルムアテンは顔をしかめる。

「復讐! それは確かにお前にお似合いの言葉だ! ――がぁよ、義理とか世界を救うとからしくねぇな。自分勝手に生きるのが傭兵アルジュの生き方だろォ」

「ワタシはワタシの望むように生きてるわ。それ以上でもそれ以下でもないってーの」

「あっそ」

2人の間に奇妙な空気が流れる。

どこかピリピリとした感覚。

それは、他のŠÁRKAのメンバーにも伝わっていた。

「表に出なさい。やるならそれからってね」

「さすが、世界を救う"勇者様"だね。けどさ、"悪魔"のあたしがそんなこと配慮する必要はないよね」

イルムアテンの身体からにじみ出る魔力は、天使・悪魔装騎が放つソレそのもの。

「チッ、させないわよ!」

ビェトカは咄嗟に、普段から持ち歩いているワイヤーを抜き放ち、イルムアテンの腕へひかっける。

そして、食堂の外に向かって思いっきり投げ飛ばした。

「全員避難しろ! ここは戦場になるぞ!!」

いち早く声を上げたゲルダが、店の店主や客を誘導し始める。

瞬間――強烈な魔力が爆発し、1体の悪魔装騎が姿を現した。

スラリとした甲冑を連想させるその悪魔装騎は、手に身の丈を超える槍を握っている。

その槍を高く掲げ、

『悪魔装騎エリゴスだ、覚えておきなよォ!』

悪魔装騎エリゴスは名乗りを上げた。

「装騎は!?」

「すでに手配済みだ。今すぐにでも――――来たぞ!」

『Gurrrrr!!!』

「フニャねこ!」

装牙リグルが悪魔装騎エリゴスを弾き飛ばす。

『猫ぉ!? ハッ、面白いね!』

「待機していたフニャトが役に立つとはな」

「待機っていうか、スズメ以外にはそんな懐いてないしね!」

「早く装騎に乗り込んだ方がいいと思うよ」

「分かってる!」

装牙リグルが悪魔装騎エリゴスの相手をしている間に装騎に乗りこむ。

「アルジュビェタ、街の人やリエラ王女を護衛するチームと、悪魔装騎の相手をするチームに分けよう」

「ワタシはアイツをぶっ倒すわよ! あとフニャねこと、ツバメも来る?」

「ったり前じゃない! ストレス解消させてもらうわよ!」

「分かった。それじゃあ脳筋は悪魔装騎の相手を、頭脳派は人々の保護という方針でチームを分ける」

「脳筋扱いしないでよ!」

「ヒラサカ・イザナとサヤカ先生もアルジュビェタに加勢してほしい」

「……今の話の流れでそこに入れられるのは癪なんだけど」

「本当それ、これでもアタシは教師よ教師?」

「よし、作戦開始だ!」

「ちょっと、話を聞きなさい」

「だぁーもう、仕方ないわね! あの敵さっさとぶっ潰せばいいんでしょ!」

そそくさと人々の誘導を始めるゲルダの装騎クリエムヒルダに、言っても無駄だと観念したのかイザナの装士フーシーとサヤカの装騎ファリアもビェトカ達へと合流した。

『何騎でもかかって来いヨォ!』

「アタシから行かせてもらうからね!」

そう言い飛び出した装騎ファリアは、全身のブーステッドアーマーからアズルを吹き出し、付けた加速で悪魔装騎エリゴスへ殴りかかる。

『いいねいいねェ!』

その一撃を、槍の柄を使い受け流す。

「アタシだって、ぶん殴ってやるんだか――――なっ」

間髪入れずに装騎ヴラシュトフカがブーステッドハンマー・クシージェを大きく掲げた。

が、ブーステッドハンマー・クシージェの鉄槌は振り下ろされない。

何故なら――

「何かが、アタシのハンマーを絡めとって……ッ!!」

『驚きのギミックだろォ!? これがあたしの霊子旗槍ヴェノムの力さァ!』

悪魔装騎エリゴスの槍から、アズルの紐(エリゴス曰く旗らしいが)が伸び、装騎ヴラシュトフカのブーステッドハンマー・クシージェを絡みとり、固定していたからだ。

「つっても、ソレだと動きが止まるっしょ!」

『そういつまでも動きを止めるわけないし!』

装騎ピトフーイDの霊子鎖剣ドラクの刃は、悪魔装騎エリゴスの槍に受け止められる。

「まだよ、ツバメ!」

「待って、アズルが絡みついて……取れないッ、あーもうッ!!!」

「アタシがいるわ!」

『Gurrr!』

動けない装騎ヴラシュトフカにかわり、装騎ファリアと装牙リグルが同時に襲いかかった。

『おっと!』

「うわ、あぶなっ」

対し悪魔装騎エリゴスは霊子鎖剣ドラクと交わる霊子旗槍ヴェノムを支点とし、装騎ピトフーイDの背後へ跳躍。

その動きによって、装騎ピトフーイDが装騎ファリア、装牙リグルの同時攻撃の矢面に立たされるが、済んだのところで押し止まる。

だが、安堵する暇はない。

完全に背後を取られてしまった装騎ピトフーイDに、

『腕ェ、鈍ったんじゃぁねェか!?』

霊子旗アズルフラッグをなびかせた、霊子旗槍ヴェノムの一撃が叩き込まれた。

『距離が近すぎっと串刺しにできねェのが難点だなぁ……』

そう独り言ちながら、悪魔装騎エリゴスは距離を離す。

だが、それに対してビェトカ達はもがくしかできない。

何故なら、先程の一撃が命中したその時、装騎ピトフーイDを始めとする3騎は霊子旗によって拘束されていたからだ。

『意外と呆気ねェな! これで――トドメだ!』

「ふふん、アンタ馬鹿? こういう場面でそんなセリフ……勝ったわ!」

『はぁ? 馬鹿はお前だピシュテツ・チェルノフラヴィー・アルジュビェ――たぁッ!!??』

止めを刺そうと霊子旗槍ヴェノムを構えた悪魔装騎エリゴスの身体が、何かに押し潰されるように地面にうずくまった。

『あたしの力が……解けてたのかッ』

悪魔装騎エリゴスの目に映るのは、ブーステッドハンマー・クシージェを高く掲げた装騎ヴラシュトフカの姿。

そのハンマーは振り下ろされていない、筈なのだが悪魔装騎エリゴスを奇妙なアズルが押し潰す。

P.R.I.S.M(プリズム) akt.X……コレがアタシの力よ!」

そして動けない悪魔装騎エリゴスへ、駄目押しと言わんばかりにブーステッドハンマー・クシージェが振り下ろされた。

「良い? アタシはスズ姉の次に最強なんだから、覚えておきなさい!」

『はん……だが良い、あたしのやりたいことはやった、教団の目的も達した、いいかアルジュ――最強の使徒が来るぞ。お前達にとって、最強で、最悪の――』

「うっさい」

霊子鎖剣ドラクの一刺しで、悪魔装騎エリゴスの身体が消滅していく。

「ゲルダ、聞こえるでしょ? マーリカに伝えて頂戴、すぐにこの国を出るって」


「申し訳ありません、本当ならもっとゆっくりして頂くつもりでしたのに……」

「気にしないで、リエラ」

「そうそう、てか何アイツ! アンナ街中で仕掛けて来るなんて正気の沙汰でナイわ」

「食堂や、近くにいた人達は無事だったかしら?」

「はい、お陰様で。このご恩は――」

「イーからイーから! てか、厄介ごと持ち込んで来たのはワタシらだし? まぁ、戦いが終わったら今度はスズメも連れてのんびりしに来るわ」

「はい! スズメさんは……大丈夫、なのでしょうか……」

「ダイジョーブっしょ」

「あんた達、出航の準備ができたわよ!」

「姫様、マルクト憲兵団からピシュテツ・チェルノフラヴィー・アルジュビェタ以下の引き渡し要請が来ています!」

同時の知らせに、ビェトカとリエラは頷きあった。

「よし、行くわよ。マーリカ、頼んだわ!」

「メライア、彼女たちの確保に失敗したという報告を先方へ」

そして、ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン号は港から離れ海を進む。

背後から大砲の放たれる音が響いて来る。

「砲撃!?」

「ああ、あたしが頼んどいたのさ!」

ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン号を囲むように、鉛玉が水飛沫を巻き上げる中、マーリカが胸を張った。

「王国は意図的にあたし達を保護してたワケじゃないですよーってポーズになるからねぇ!」

「なるほどね…………にしても激しすぎない?」

「海って言うのはね、荒れてるのが一番なのさ!」

「ナニよソレ!」

見送りの合図にしては熱烈過ぎる砲撃を背に受けながら、目指すは次の目的地。

「って、目的地はどこよ」

「迎撃するんでしょ? だったら――あそこかねぇ」


挿絵(By みてみん)

SSSSS-第十九回-

使徒ユーディ「海賊達が逃げ込んだ島の情報は?」

使徒シモーヌ「無い。無人島らしい……とだけ」

使徒ユーディ「まぁ……罠でしょうね。仕返しでしょうか」

使徒シモーヌ「ふ、愉快だ」

使徒ユーディ「我々に賛同する国軍、憲兵の艦船を島に向かわせ包囲します。退路を断ち、包囲殲滅。それが一番でしょう」

使徒シモーヌ「では、我々は出ないか?」

使徒ユーディ「いえ、出ます。使徒長の仇討と、そして――――我々の新たな仲間を彼女たちに紹介してあげないといけませんからね」

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