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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
スヴェトの脅威:最強最優の使徒
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第27話:Důkaz Skutečností, Jež Nevidíme

Důkaz Skutečností, Jež Nevidíme

 -見えない事実を確認すること-

『アモンの輝きは弧転す……!』

天使装騎アモンがまばゆい光の炎を立ち上げた。

その炎は、勢いよく駆け出したスズメ達ŠÁRKAの行く手を阻む。

「火消しさせてもらうわ!」

そこに突っ込んだのは装騎ピトフーイD。

霊子鎖剣ドラクを鞭のようにしならせ、一振り。

蛇の尾っぽ(ハヂー・オツァス)!」

アズルを解き放つように、衝撃波を走らせながら天使装騎アモンの炎輝を振り払った。

「スパロー!」

「フーシー……」

「行きます!」

「行くわよ」

その隙をついて、装騎スパローTAと装士フーシーが一気に駆ける。

『アモンの輝きは地よりも来たる!』

並んで走る二騎は天使装騎アモンの目の前で弾けるように二手に分かれた。

天使装騎アモンの炎柱は二騎の間を虚しく貫く。

「「カマイタチ!」」

再び装騎スパローTAと装士フーシーが合流した瞬間、絶妙なタイミングで二騎の斬撃が絡み合った。

「ふっ、どうよスズメと私の合体技よ」

「合体技だったらワタシとスズメだって一杯やってますぅー!」

『ぐぅ……』

怯んだ天使装騎アモン――その正面から駆けてきたのは、

『Gour!!!』

装牙リグルだ。

『はは……やるじゃあないかっ』

装牙リグルの一撃は、天使装騎アモンの持つ霊子杖ワセトによって後方へと受け流された。

「まだ終わりではないぞ」

『なに!?』

瞬間、激しい衝撃と砂埃が舞い上がる。

ゲルダの装騎クリエムヒルダが天から落ちてきたのだ。

「あ、いーなー! アンタ、リグルの上乗ってきたでしょ!」

「常日頃からフニャトに戦術を相談していた甲斐があったな」

「フニャちんとプラモで遊んでると思ったら、そんなことしてたんですね」

『まだ終わりでは、ありませんよぉ!』

「しぶといな」

『アモンの輝きは、明滅し、殲滅す……!』

天使装騎アモンの言葉により、目を焼きつくような激しい光の明滅が繰り返される。

その明滅は強烈な爆発力を秘めていた。

「うっわ、待ってこれ、マジヤバくね!?」

「よく見れば、かわせないことは無いですよ!」

「ただ、当たったら痛そうね」

「フラッシュが眩しいな……厄介な」

「フラッシュの点滅にご注意ください!」

「映像化されればステラソフィアショックは間違いなしだな」

「ねぇ、コイツらいつもこんな感じなの……?」

「サエズリ・スズメ、行きます!」

「スズメ!?」

強烈な輝きの弾丸の中を、装騎スパローTAは一気に駆け出す。

『さすがだ!』

どんどんと向かってくる装騎スパローTAの姿にアモンはどこか嬉しそうな声を上げた。

と同時に、明滅の弾速が上がる。

「レベル2ってか!?」

「順当だな」

装騎スパローTAの後を追いかける装騎ピトフーイDと装騎クリエムヒルダ、

「全く、厄介ったらありゃしないわね」

装士フーシーにも激しい高速の輝きが襲い来る。

「スズメ、大丈夫なの?」

「はい、問題ないです!」

スズメの意識が研ぎ澄まされて行く。

神経接続操縦により、装騎スパローTAとスズメの精神の同調率が上がって行く。

天使装騎アモンの放つ明滅弾が装騎スパローTAのすぐそばを撫でた。

一撃一撃に、スズメは過ぎ去る風の衝撃を、実際肌に感じているような気がして来る。

『これが、最速だ!』

「この程度で……止められません!!」

スズメの昂りが絶頂に達す瞬間。

"P.R.I.S.M. akt.X"

そんな表示がスズメの目の端に浮かび上がった。

「プ、リ、ズ、ム……?」

瞬間、装騎スパローTAが、アズルとはまた違った風のようなものを全身から吹き出す。

その風の流れは装騎スパローTAの追い風となり、さらなる加速を手助けした。

と、同時にその風の唸りが天使装騎アモンの明滅弾を巻き上げ、弾き飛ばし、受け流し、装騎スパローTAから遠ざける。

『なっ、す、すごいね……』

そこから一瞬。

装騎スパローTAは天使装騎アモンの目の前で、両使短剣サモロストを構えていた。

「取った――」

そう確信したスズメだったが……

「スズメ、アブナイっ!」

「チッ、誰よ邪魔するのは!」

突如放たれた激しい銃撃に阻まれる。

天使装騎アモンの部下である憲兵装騎の仕業か?

いや、違った。

スズメ達を攻撃したのは、この街の住人達が操っていると思しき民間装騎だったのだ。

「リーダー、民間騎が憲兵に加勢し始めている」

「はぁ、ナンデ!?」

「世間的には私たちは悪者ですからね……撤退しましょう!」

「ちっ……仕方ないわね。スズメの言うとおりにしましょう」


「あー、やっと天使装騎倒せそうだったのにー!!」

基地に帰還して早々、いつものようにビェトカが椅子へ倒れるようにもたれかかった。

「それよりも、あのプリズムとかいうの。アレなんですか? カレルさーん?」

『そう、俺だ!』

待ってましたと言わんばかりにモニターにカレルが現れる。

『やっと気づいてくれたようだな! 我がイェストジャーブ財閥が開発した新装備P.R.I.S.M.システムを!』

「やっぱりカレルさんの仕業ですか……」

『ああ。進歩的多様能力演出媒体……略してプリズム。本来は装騎バトルを盛り上げるための追加演出機器として開発していたのだが、なかなかに便利なヤツでな、今回、密かにスズメくん達全員の装騎に追加させてもらったのだ』

Pokrokový Různá Inscenace Schopnosti Medium。

本来は、個人の趣向や戦闘スタイル、精神的、魔術的な性質から固有の演出能力を発揮させるための機器だというプリズム。

簡単にいうと、装騎に人それぞれの特殊能力を追加させることができる装置だ。

「また雑な装置をつけたわねぇアンタ」

『そういうな。コレでも手軽に装騎の攻撃力と防御力を補強できる良い手段なんだ。危険時には強力な霊子フィールドを発生させることで騎使を守ることができる……激しさを増していく戦いで少しでも生還率を上げるための策だからな』

「実際、先ほどの戦いでは助かりました。ありがとうございますカレルさん」

『ふっ、当然だな!』

「待ちなさいよ! もしかして、アタシのヴラシュトフカにもソレつけたの!? 勝手に!?」

『ああ。ちょうどスズメ君がヒラサカ・イザナ達と合流した後、整備ついでにつけさせておいたからな』

カレルの態度と言動が気に入らないらしく、ツバメがディスプレイの下の方でひたすらローキックを入れるが当然ながらカレルは素知らぬ顔。

「いつまでもその話をしていても仕方あるまい。問題は次の戦いだな」

「そうね、先の戦いでは民間人にまで妨害されてしまったわ。これは何か手を打たないといけないわね」

ゲルダとイザナの言葉に一同は黙り込む。

「確かに今まではがむしゃらに戦ってきました……ですが、そう簡単にいかなくもなってるんですよね」

「敵の本拠地とかは分からないの? 確か、MaTySとかなんとかって組織が敵の調査をしているって聞いたけど」

「本拠地らしき施設はすでに襲撃、というか潜入済みなんだ。敵の目的は分かっても、そのための手段は不明……」

「よくもまぁ、そんな状態で戦って来れたわね」

「私はローラさんを信じています」

「だから、情報が出そろうまで待っているってこと?」

「ですけど、そろそろこちらからも何かしらの接触は必要でしょうね。今ある情報でできることと言ったら……」

「シュトゥットガルトのスヴェト教団施設――そこへの襲撃、か」

今まではただ単に指名手配ということで疑惑を晴らせる可能性があったため、積極的な敵施設への攻撃はためらわれた。

しかし、完全に悪者扱いされてしまい、さらには新たな情報が全く出てこない今の状況――スズメ達を縛るものはない。

「毒を食らわば皿までってやつね」

「そうなりますね。かなりのリスクも伴う作戦ですが――皆さん、ついてきてくれますか?」

スズメの言葉に、その場にいる全員が頷いた。

「よーっし、じゃあ、次の目的地はシュトゥットガルトね!! やったろージャン!」


シュトゥットガルト。

スヴェト教団施設。

「ŠÁRKA、行きます!」

「Do Boje!!」

マスドライヴァーによるŠÁRKAの強襲作戦が開始された。

広大な施設の中、15騎の装騎を5つのチームに振り分けての作戦。

スズメ隊、

「正面突破、行きますよ!」

『Gurrau!』

「スズ姉、アタシに任せて!」

装騎スパローTA、装牙リグル、装騎ヴラシュトフカ。

ビェトカ隊、

「コッチは真後ろよ。スズメ達と合流できるよーに前進!」

「諒解であります!」

「さぁ、ささっと片付けようか」

装騎ピトフーイD、装騎ブルースイング、装騎ネフェルタリ。

ゲルダ隊、

「純粋に側面を一撃……やるか」

「がんばります!」

「ポップは……私が守るわ」

装騎クリエムヒルダ、装騎ルシフェルⅦ型、装騎チェルノボーグ。

イザナ隊、

「私達は施設直上から敵の懐に飛び込むわ」

「敵の真正面ですね。やりますとも」

「防御はワタシの魔術である程度なんとかしてやる」

装士フーシー、装騎ボウヂッツァ、装騎シュラークz。

サヤカ隊、

「残りの側面はアタシ達よ、ガツンとかまそう!」

「Sweet Dream! いいねいいですねー!」

「も、目的もお忘れなくっ!」

装騎ファリア、装騎アントイネッタ、装騎エルジェ。

各5方面からの襲撃はほぼ同時に行われた。

「スズメ隊は派手に暴れて相手の気を引きます!」

「ビェトカ隊はスズメ達に乗じて挟撃ってね!」

「ゲルダ隊、目的は装騎格納庫だ。少しでも多くの装騎を出撃前に止めろ」

「イザナ隊は中央管制室の制圧よ」

「さぁ、サヤカ隊! 発電施設の破壊へGO」

「ツバメちゃん!」

「フラァァァァアアアアアア!!!」

激しく正面玄関の扉を打ち付けた装騎ヴラシュトフカのブーステッドハンマー・クシージェの一撃。

それが開戦の狼煙となった。

「おお、凄い振動でありますね!」

「わたし達はできるだけ静かに行動するとしようか」

「装騎の格納庫……あれ、ですかね?」

「情報通りならば。襲撃すれば判るわ」

「ヒラサカ、どうやら自動迎撃装置があるらしい」

「これは厄介ですが……管制室まで行けばなんとかなりますか」

「Sweet Dream! あれが発電施設ね!」

「そこがメインです。ですけど、他にも予備施設や予備電源もあるはず……調べてみます」

「よし、頼んだわ! アタシはここを、ぶっ壊す!」

サヤカの装騎ファリアは拳を固め、アズルを集中させる。

「ウィンターリア・ナッコォ!」

瞬間、アズルを纏った鋭い拳撃に発電施設はその機能を停止し、一瞬、施設全体の電力が落ちた。

スズメ隊の正面からの襲撃、そしてサヤカ隊による発電施設の破壊から起こった混乱に乗じて、ビェトカ隊、イザナ隊、ゲルダ隊も作戦の遂行に移る。

「ここの格納庫、マルクトの最新装騎ばかりだな」

格納庫を襲撃しながらゲルダが呟いた。

「装騎、詳しいんですね」

「仕事柄な。あそこの装騎――名前はローゲ。今度、NBトイズからプラモが出る」

「仕事柄ってそういうことなのね……」

呆れながらもアニールの装騎チェルノボーグは淡々と装騎を破壊していく。

「イザナ隊、今のうちに管制室に行くわよ」

「電力が復旧する前に急ぐぞ!」

「迅速な行動は得意ですとも」

それから暫く――おそらくは予備電源によるものだろう、施設全体に再び光が灯った。

「さーってと、このまま楽に制圧出来たらいいけどねー」

「どうやら、そうもいかないようだけどね」

ピピのいう通り、ビェトカ隊の目の前に1騎の装騎が姿を現す。

どこか犬を思わせるデザインながら、鋭い爪、背に生えた翼、凶悪な雰囲気を纏う怪物的な装騎だった。

見るからにまともな装騎ではない――となれば、

「アンタ、天使装騎? ……見た目的には天使ってーか、悪の怪人だけどサ。ニャオニャンニャーに出てた?」

『天使装騎グラーシャ・ラボラス。闇に潜む者』

「日陰者ってこと?」

ビェトカの挑発にも、全く反応を見せない天使装騎グラーシャ・ラボラス。

その態度もそうだが、恐れるべきは……

「あの装騎、全く気配を感じなかったでありますよ!?」

「そうだね。闇に潜む者――もしかしたらカレは諜報員のような役目を担っているのかもしれない」

『肯定。だが、否定。吾は闇に潜み、敵を知り、そして殺す』

「暗殺者ってワケね。ワタシと一緒ジャン」

「「…………」」

「ちょっとソコ、黙らない!」

『満足か? 行くぞ』

「わざわざ"行くぞ"なんて言ってくれるなんて優しい暗殺者ね!」

ビェトカの一言と共に、いつの間にか地面に垂らされた霊子鎖剣ドラクの刃が天使装騎グラーシャ・ラボラスへ食らいついた。

「その名も蛇剣、コウスノウト・ハディってね!」

「蛇剣というか、邪道な剣だよね?」

「問答無用の不意打ちでありますからね……」

「さてと、敵の様子は……」

ビェトカの一撃で倒れ伏した天使装騎グラーシャ・ラボラス――その傍に装騎ピトフーイDが近づいたその瞬間。

「ッ!!」

装騎ピトフーイDが急に身を翻し、その刃を装騎ブルースイングへと向けた。

「うわ、なんでありますか!?」

それと同時に、装騎ブルースイングの身体が傾き、地面に倒れる。

ギィイン!

霊子鎖剣ドラクの刃が甲高い金属音と同時に弾かれ、宙を舞った。

「ピピ!」

「アオノちゃんは下がって、さて、スナイパーカノンでどう格闘戦をするべきかな。そうだ、銃剣があったね」

装騎ネフェルタリはスナイパーカノン・メリエンムトの先に装着された銃剣にアズルを灯すと、一気に突き出す。

『中々。戦力値の低いものから、狙ったのだガ……』

「戦力値とやらが高すぎてゴメンネー!」

フェイクによる揺動と戦闘に不慣れな者への奇襲を狙ったんだろうけど、残念だったね」

『早計な』

天使装騎グラーシャ・ラボラスは血のような魔力を爪に垂らし、細く鋭いダガーを作り上げる。

それと同時に、揺らぐように姿が掻き消え――気づけば装騎ピトフーイDの背後に現れた。

「ちょ、厄介な……!」

装騎ピトフーイDと装騎ネフェルタリによる連携で、なんとか場を持たせてはいるものの、神出鬼没な天使装騎グラーシャ・ラボラスに致命的な一撃を与えられない。

「なんだろうあの動きは。透過? 高速移動? 空間跳躍?」

「空間跳躍と高速移動とは交戦済み!」

「ならば透過……いや、霧状化というのも?」

「確かに! 攻撃避ける時、ゆら〜ってなるもんね!」

「何かはわからないけど、なんにせよ搦め手を打つ必要があるね」

「あの、ビェトカ先輩、ピピさん。1つ試して見たい技があるのでありますが……」

恐縮しながらも声を上げたアオノ相手に、ビェトカは一も二もなく言う。

「それ採用!」

「あの、まだ何も説明してないのでありますが」

「ワタシの後輩の考えなんだから悪いことな筈ないっしょ! やりなさい、コッチはコッチで合わせるから!」

「全く、トカぽよはテキトーだ」

「その通りでありますよ。では、オオルリ・アオノ、ブルースイング。行くであります!!」

装騎ブルースイングは左腕にマウントされていた霊子衝浪盾アズライトを地面に敷くと、その上に飛び乗った。

「よっしゃぁぁあああ、行くのでありますよぉ!」

装騎ブルースイングが霊子衝浪盾アズライトに足を置いた瞬間、アオノは声を荒げる。

「えっと、彼女はあんな性格だったかい?」

「いや、あの子はボードに乗ったらハイになるのよねェ」

「愉快な仲間だね」

「スクリーム・ドリーム・ストリィィィイイイイイム!!!!」

アオノの叫びに応えるように、装騎ブルースイングがP.R.I.S.M.の煌きを放った。

装騎ブルースイングは天使装騎グラーシャ・ラボラスの周囲を青い波に乗り何回も、何回も円を描いた。

『なんダ……?』

その動きは、天使装騎グラーシャ・ラボラスの周りをひたすら周回するだけで、なんの威力も無い。

筈なのだが、天使装騎グラーシャ・ラボラスは奇妙な違和感を覚えていた。

「ビェトカ先輩!」

「おっしゃ、やるわよ!」

アオノに応えて装騎ピトフーイDは霊子鎖剣ドラクを構え、装騎ネフェルタリはスナイパーカノン・メリエンムトの銃口を天使装騎グラーシャ・ラボラスへと向ける。

甘き毒を(スラドキー・イェット)!!」

「フォーコ!」

装騎ピトフーイDの毒牙が閃き、装騎ネフェルタリのアズルブリットが走った。

両騎の同時攻撃に……天使装騎グラーシャ・ラボラスは回避も叶わず、地に膝をついた。

『策、を……封ジたカ』

「読み通りでありますよ!」

装騎ブルースイングのスクリーム・ドリーム・ストリームは、包囲した空間にアズルプレッシャーを与える事で天使装騎グラーシャ・ラボラスの能力を封じたのだ。

相手の魔力的な空間干渉をアズルで押さえ込み、吹き飛ばす。

それは、ある種の拘束力も発揮し、天使装騎グラーシャ・ラボラスは動けない。

「よっしゃ、コレで……トドメっ!」

ビェトカがそう意気込んだ瞬間。

ドッゴォォォオオオラ!!!

強烈な熱風が、ビェトカ隊も天使装騎グラーシャ・ラボラスも吹っ飛ばした。

「一世一代の大勝負! いいぞー、かっこいいぞー」

施設の壁に大穴を開け、現れたのは翼のような巨大な送風機(ファン)を背負った赤褐色の装騎。

ビェトカはその姿に見覚えがある。

「アンタは……雇われ悪魔タルウィ!!」

「わたしもいるわ」

そして、魔神装騎タルウィの背後からそっと出て来た黄褐色の魔神装騎ザリク。

「悪魔? 悪魔装騎、でありますか?」

「ノンノン。アタシ達は魔神装騎! そして、悪魔装騎みたいなニセモノとは違う、本物の、悪魔!」

「タルウィはドヤ顔でそう言った」

「イチイチ変な注釈つけないでよぉ!」

相変わらずの漫才を始めるタルウィ&ザリクに、ビェトカは呆れながらもこの状態をどう切り抜けるか考えていた。

魔神装騎タルウィ&ザリクが現れた事で3対3……あの2人はふざけてこそ見えるがその実力は確か。

(せめて、アオノだけでも逃せないかナァ)

「という事で、覚悟を決めやがれ!」

魔神装騎タルウィはグッと身を構えると……

「自称天使装騎!!」

ビェトカ達へその背を向けた。

「タルウィ……逃げたわ」

「え、嘘ぉ!?」

ザリクの言う通り、その場に天使装騎グラーシャ・ラボラスの姿はすでに無い。

いや、それよりも……

「えっと、アンタらスヴェト教団に雇われたんじゃ無いの?」

「断じて違う! てか聞いた? ナニ悪魔装騎って! ナニ天使装騎って! なんなん? 悪魔とか天使とかなんなん? 人間がそんなんなのってなんなん!?」

「ほんとう、スヴェトって、"ナン"なん……?」

「ナン? ナンなんなん?」

「ナンなん」

「やめい! アンタらナンの話しに来たのよ!?」

「ナンの話?」

「夕飯はカレーがいいわ……」

「じゃなくて! 結局、敵なの味方なの!?」

「敵の敵は味方っていうじゃん! アタシ達は、お前達人間に力を貸してあげてもいいって言ってんの!」

よく分からない会話の流れを冷静に分析していたピピが合点のいったように両手を合わせる。

「つまり、キミ達はスヴェト教団が気に入らない。だから、わたし達に手を貸す。そういうことだね」

「手を貸すじゃない! 貸してやっても良いってことよ」

「でも、断られたら土下座してでも仲間にしてもらつつもりだったんでしょう……?」

「常識的に考えて、悪魔なんて最強戦力仲間にしないなんてあり得ないし、土下座する必要無いよ!」

「常識的に考えたら、悪魔は仲間にはしないと思うのでありますが」

「確かにそう。さよならタルウィ」

「なんで"ザリクは人間です"みたいな顔してるの!?」

「だーもう、わかったわかった! とりあえず、この作戦終わるまではワタシ達と一緒に行動しなさい! その働きを見て考えるから!!」

「やったー! それじゃあ、壊しまくるとしますかァ!」

「敵も味方も土の下ね……」

「本ッ当やめろ!」

その数分後、ŠÁRKAの全チームは各々の作戦目的を果たし、基地へ帰還する運びとなった。

挿絵(By みてみん)

SSSSS-第十六回-

使徒ジュダ「イジョウ……今回ノ戦闘報告ダ」

使徒フェリパ「くぅッ、まさか悪魔が仲間になるなんて!(それよりもあの使徒誰だ……?)」

使徒ユーディ「悪魔と言えど、所詮零落した存在です!(あんな使徒居ましたか?)」

使徒シモーヌ「されど、悪魔と言う神秘の存在。舐めて見れるものではない(ふむ、あの者は誰だったか……)」

使徒パトラス「はん、どんな敵だってオレのバルバトスが打ち砕いてやるさ(アイツが誰かわからんけど戦ってみてーな)」

使徒ヨハンナ「使徒パトラス、舐めてかかると痛い目見ますわよ(新顔なのだわ? アタクシに挨拶もナシに)」

使徒長ジェレミィ「これは本格的に対策を打たなくてはなりませんね」

使徒マチア「では、あの作戦の、決行を?(あんな使徒いたんですねぇ。挨拶しとかなきゃ)」

使徒長ジェレミィ「ええ。司祭の方々にも伝えています」

使徒ナーサリィ「いよいよ……あの、作戦が(そういえばあの人絵には描いたことあったなぁ)」

使徒マシュ「リラックスしていきましょう、ナーサリィ!(ナーサリィの絵に描かれてた知らない人ってあの人だったんですね)」

使徒長ジェレミィ「ありがとうございます。では使徒ジュダ、下がってよろしいです」

使徒ジュダ「御意」

使徒長ジェレミィ「恐らく、次の作戦が最後の戦いとなるでしょうね……」


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