第26話:Vše Má Svou Chvíli
Vše Má Svou Chvíli
-何事にも時があり-
「前回までのあらすじ! 新たにŠÁRKAへと加わったヒラサカ・イザナちゃん。トカぽよはイザナちゃんとのチームワークを高めるためにシミュレーターをするものの相性が合わず決裂。結果、どちらがスズメちゃんのパートナーに相応しいのか決めることになったのだった!」
「と、いうことでパートナー選手権、エクストラステージはアルジュビェタ選手とイザナ選手の装騎バトルだ」
場所は地下演習場。
本来は、装騎の起動実験用に作られたグローリアの地下施設だ。
「今回の装騎バトル――普通に戦うだけでは面白くないのでちょっとした趣向を凝らしてみた」
「はーい、というわけで今回の装騎バトル、トカぽよ選手とイザナ選手にはスパローシリーズのどれかを使っていただきます!」
「リーダーが今まで使ったスパローを再現したからな、好きなスパローを選ぶといい。2R以外だが」
ゲルダの言う通り、そこには元祖装騎スパローを始めとして、スパロー1、5、スパロー・パッチワーク、スパロー3Aを3種類、スパロー4ceとスパロー勢ぞろいだ。
「さらに! バトルの勝敗だけではなく、戦いの美しさ、楽しさ、スズメちゃんらしさを審査員に評価してもらうという変則バトルになってまーす!」
「審査員は前回に引き続き、サエズリ・ツバメ、オオルリ・アオノ、カシーネ・アマレロ、チューリップ・フランデレン、フニャト4人と1匹だ」
「ふん、精々楽しませることね」
「おお、スパローがいっぱいで興奮するであります!」
「が、がんばってください!」
「公正な審査なら任せろ」
「にゃあ」
「では、装騎を決めたならバトル開始だ」
地下の割には広大な演習場。
そこで2騎の装騎スパローが対峙した。
「ワタシはワイヤー使いだし、やっぱり選ぶとなったらスパロー・パッチワークっしょ。
今のブローウィングのリーダーはワタシだしね!」
「はん、なら私は元祖スパローで行くわ。2R以降のスパローは獣脚に改修されてるけど、元祖スパローは逆関節、スパローの中で唯一よ」
「そういう小ネタはいいのではじめましょー。では、装騎バトル……フラート!!」
「アルジュビェタ、参戦!」
「さぁ、行きましょう」
開始早々、ビェトカのスパロー・パッチワークとイザナのスパローが同時に駆けだす。
「チェーンブレード!」
「ウェーブナイフ……っ」
ビェトカ=スパローPのチェーンブレードど、イザナ=スパローのウェーブナイフがぶつかり合い、火花を散らす。
「ふっ……私のスズメらしさを見せてあげる」
瞬間、イザナ=スパローは跳躍。
「これは……っ」
「ムーンサルト……ストライク!」
宙を舞ったイザナ=スパローは、ビェトカ=スパローPの背後へと降り立つ。
多少体勢は崩れたものの、素早くウェーブナイフをビェトカ=スパローPへと閃かせた。
「そうは問屋が卸さないってねェ!」
だが、その一撃を予見していたビェトカは地面に突き刺していた右腕のワイヤーアンカーを巻き取り、前方へと急加速する。
それと同時に、左腕から発射したワイヤーアンカーで、イザナ=スパローを絡め取った。
「捕まえた! いっけぇ、ムニェシーツ・ジェザチュカ!」
と言いつつ、放たれたただの斬撃は、再跳躍したイザナ=スパローには当たらない。
「でも、イニシアティブはまだまだコッチに!」
「それはどうかしら? スパロー・ブレードエッジ!」
イザナ=スパローの全身の刃が展開され、輝きを帯びる。
その刃は、イザナ=スパローを絡みとっていたワイヤーアンカーを引き裂いた。
「あっ! いつでも逃げれんのに、見せ場の為にさっきまで!?」
「ふっ……そういうことよ」
イザナは不敵な笑みを浮かべながら、スパローを一気に加速させる。
弾け飛んだイザナ=スパローはビェトカ=スパローPの間を一瞬で詰めた。
「止めよ……」
「諦め……ないッ!!」
ビェトカは咄嗟に無事な右腕のワイヤーアンカーを天井に向けて撃った。
天井に突き刺さるワイヤーアンカー。
閃くブレードエッジの刃。
その一撃はビェトカ=スパローPの左腕を切り落とす。
と、同時にビェトカ=スパローPは天へと舞った。
「仕留めそこねたわね」
「次は、コッチのターンよ!」
ビェトカ=スパローPは天井を思いっきり蹴ると、反転。
同時に、右足のキックバンカーが起動する。
「ニャオニック、ネコキーック!!!」
流星のようなビェトカ=スパローPの飛び蹴りを――イザナ=スパローはアズルを放出する両椀部ブレードエッジで受け止めた。
舞い散るアズルの輝きが、両者の、そして、見てる人々の目をくらませる。
「激しい戦い! その……決着は!!」
「あー、ヤメヤメなんかどうでもよくなってきちゃったわ」
アズルを放出しすぎて、オーバーディスチャージ状態となったスパローPの中でビェトカが笑った。
「そうね……なんで気付かなかったのかしら」
同じく、オーバーディスチャージ状態のスパローの中でイザナも笑う。
「なんとかサカ・イザナ、アンタなかなかやるジャン」
「ヒラサカ・イザナよ。えーっとなんとかピトフーイ」
「ピシュテツ・チェルノフラヴィー・アルジュビェタ」
「長いんだけど」
「確かに。じゃ、ビェトカでいいわよ」
戦いを経て、何か感じるものがあったらしい。
ビェトカとイザナ、2人は固い握手を交わすのだった。
悪魔装騎出現の報を聞き、出撃したスズメ達ŠÁRKAが見たのは、赤く揺らめく無数の炎だった。
「街が燃えてるぅ……?」
「いえ、違います。あの炎……」
それは街を練り歩く人型松明。
炎で形作られた使い魔だった。
「救助班と殲滅班。それにこの使い魔を操っている悪魔装騎を捜す探索班に分かれましょう」
ŠÁRKAは即席でチームを振り分け、炎に照る街へと飛び込んだ。
「フラン先生、魔力探知できそうですか?」
「やっているが……難しそうだな」
この中で唯一の魔術使であるフラン。
その能力で使い魔を生み出している張本人が探せれば……そう思ったがフランは顔をしかめる。
「トーチの数が多すぎる。それぞれの魔力反応があちらこちらでチラついて、標的を絞れない」
「どうすればいいですか?」
「そうだな……出来る限りトーチを減らしてくれれば探知がしやすくなるだろう」
「諒解です。私たちは目視での探索を続けます。フラン先生も何かわかった時は報告をお願いします」
「ああ、お前らもな」
街の中は、炎で焼かれてこそいなかったが、奇妙な熱気で歪んでいた。
その"熱"にあてられた人々が、そこいら中で倒れ伏している。
「そこの人をゆっくり運び出して。急がなくてもいいから、着実にね」
「おお、サヤカ先生がすごく先生らしいであります!」
「あ゛? なんか言った?」
「水を持ってくるであります!」
「この熱……魔術的なもの、ですね。エルジェのストリームシールドを使えば少しはマシに、なるはず」
「ああ、涼しくなってきたよ。危うくパスタが茹で上がるところだったからね」
「急ぎの人はわたしのルシフェルが運びます! 連れてきてくださいっ」
「頼むわよ、アマレロ!」
「はいっ」
不思議な炎の中での作業、戦闘は困難を極めた。
「壊して、壊して、壊しまくるわよ! フラー!」
「Sweet Dream! でもでも、建物壊しちゃダメだよ」
「わかってるわよ! いいから黙ってなさいプロスィーム!」
「頭が痛いですね……こんな面々をどう纏めれば」
「ズィズィと言ったか……すまないな。本当ならワタシが指揮を執るべきだが……」
「いえ、フランデレンさんは魔術探知に精を」
「そう。幸いこのチームは強者揃いじゃない。……私達で、十二分。ふふん」
ゴーレムトーチを叩いても叩いても、数が減ってる感じはしない。
それでも、迅速かつ正確にゴーレムトーチを撃破することが最優先だった。
「全くもう! 数が多いったらアリャしない!」
「ピトフーイ、ワイヤーであのゴーレムをこちらに寄せなさい。ぶっ放すわ」
「ほう、アルジュビェタもイザナもいいコンビワークになってきてるな」
『Gorrrr!!』
「クラリカさん、少しはストリームシールドを貸してください! 中央広場前でシールドを全力展開お願いします!」
「し、シールドをですか!? 分かりました、ストリームシールド……全力展開!」
「ムニェシーツ……」
「あ、ヤバっ。退避退避ー! 中央通りにいるメンバーは退避ィ!!」
「ズノヴドビチー!!」
瞬間、強烈なアズルの輝きとともに、中央通りを彷徨っていたゴーレムトーチが蒸発する。
その凄まじい一撃は、中央公園にそびえる噴水へ直撃する前に、装騎エルジェのストリームシールドで明後日の方向へ弾き飛ばされた。
「た、耐えきった……!」
「クラリカさん、ありがとうございます」
そして、ゴーレムトーチの数が一気に減ったことで、フランの探知にも感があった。
「サエズリ、街の北方……そこに奇妙な気配がある」
「北方ですか……」
「リーダー、時計台だ。あそこが怪しい」
「わかりました。探索班は時計台に向かいます」
「よっしゃ、やってやろージャン!」
「行くわよ、スズメ」
『Gor!』
スズメ率いる探索班は時計台を目指し、ズィズィ率いる殲滅班はさらにその外周のゴーレムトーチを攻撃する。
探索班をそこにいるであろう悪魔装騎との戦闘に集中させる為だ。
『Gurrrrr』
「フニャちん?」
スズメは装牙リグルの視線の先へと目を凝らす。
そこには、ゴーレムトーチによく似た、燃える人型。
だが、ゴーレムトーチよりもひときわ強く、大きく炎を散らしている。
「見つけた! 悪魔装騎です!」
スズメはそう直感した。
『見つかったか……』
一気に襲いかかってくるスズメ達に、悪魔装騎は構えを取る。
「悪魔装騎アミー……ささやかながら抵抗させて頂く……」
『Go!!!』
真っ先に飛びかかったのは装牙リグル。
しかし、その強烈な体当たりを悪魔装騎アミーは身体を捻り、弧を描くようにして、自らの後方へと受け流した。
「だが……二撃目だ!」
しかし、ブーステッドアーマーから光を走らる装騎クリエムヒルダの突撃も容易にかわされ、すれ違いざまに背部へと肘打ちが突き刺さる。
「なんだ……今の感覚は……?」
「行くわよ、ワタシの一撃、受けてみなって!」
「しょうがないわ。援護してあげるわよ」
装騎ピトフーイDは霊子鎖剣ドラクを構え、装士フーシーの放つバトルライフル・ソウコクの射撃を追い風にして悪魔装騎アミーへと挑む。
装騎ピトフーイDの剣打は確かに悪魔装騎アミーを捉えた……はずだったが。
「手応えがないッ!」
「何が……?」
困惑するビェトカとイザナに、今度は悪魔装騎アミーからの反撃が走った。
悪魔装騎アミーの華麗な拳撃に装騎ピトフーイDと装士フーシーは地面に叩きつけられる。
その様子を後方から様子を見ていたスズメが考え込む。
「ビェトカの攻撃は悪魔装騎アミーに避けられた。ううん、アレは避けられたっていうよりは、炎を剣で凪いだような動きというか……」
「どういうコト!?」
スズメの呟きにビェトカが叫んだ。
「私も見ていたが……そうだな。アルジュビェタの攻撃は当たらなかった。あの悪魔装騎が幻であるかのように。だが、悪魔装騎の攻撃は確かに効いた」
「は?」
「攻撃できる幻……炎の姿をした悪魔装騎……なるほどね。分かったわ、ヤツに攻撃が通用しない理由」
「ナニ? ナニナニナニ!?」
イザナに続き、スズメもゲルダも納得し始める中、ビェトカだけがついていけない。
「えっとつまり、あの悪魔装騎アミーは幻だってこと?」
「近いですね。ですけど、ただの幻とも違います」
「タダの幻じゃない……質量を持った幻?」
「あの悪魔装騎は本体の目の前に幻を出している」
「本体の目の前? 壁みたいに?」
「そうなるわね」
悪魔装騎アミーの能力は魔力的な炎。
その炎は使い魔として使役できるだけではなく、幻を映し出す能力もあるらしい。
幻は悪魔装騎アミー本体の少し前に映し出され、その距離感をごまかしていた。
「厳密には違うが、蜃気楼――逃げ水みたいなものだと思えばいい」
「なるほどね! でも、距離感がつかみづらいってのは厄介ね……どーする?」
「敵の格闘攻撃が当たるということは、実際の距離はそこまで大きく開いてはないはずです。相手の予測を超えるスピードで一気に距離を詰められる攻撃をするか、射撃武器を使うか……」
「それならアタシに任せなさい!」
「ツバメちゃん!?」
そこに颯爽と現れたのはツバメの装騎ヴラシュトフカだった。
「スズ姉、アレがあったでしょ! ブリットなんたらみたいなヤツ!」
「なるほど……ビェトカ、イザナちゃん、ゲルダさんは悪魔装騎アミーに攻撃を。できるだけ意識を逸らしてください!」
「りょ!」
「分かったわ」
「いくぞ」
悪魔装騎アミーに勇敢に向かっていく装騎ピトフーイD、装士フーシー、装騎クリエムヒルダを見送ったスズメは最後の一撃に向けて準備をする。
「敵の居場所をある程度確実にしたいです。幻に構わずできる限り前進してください」
「分かってるって! ワタシの霊子鎖剣ドラクなら広範囲攻撃だってお手の物ってね!」
「ふん、それを言うなら射撃武器を装備してる装士フーシーの方が適任でしょ」
「お前らな……」
悪魔装騎アミーが放つ炎弾も物ともせず、競い合うように進む装騎ピトフーイDと装士フーシーによって、悪魔装騎アミーの居場所が視え始めてくる。
「大体わかりました。ツバメちゃん!」
「Ano!」
スズメの号令で、装騎ヴラシュトフカはブーステッドハンマー・クシージェを構えた。
それに合わせて装騎スパローTAは跳躍。
「スパロー!」
「ヴラシュトフカ!」
ブーストを全開にし、装騎ヴラシュトフカは思いっきりブーステッドハンマー・クシージェを振りはらう。
「「ブレードブリット!!」」
その強烈なハンマーの一撃を起爆剤に、装騎スパローTAは弾丸のように弾け飛んだ。
宙を切り裂く装騎スパローTAは、一気に悪魔装騎アミーの幻を貫きながらも直進を続ける。
『速い……っ』
悪魔装騎アミーとの距離を一瞬で詰めた装騎スパローTAは、
「ヤークトイェーガー!!」
全身の刃で、一気に悪魔装騎アミーを引き裂いた。
やがて、街を包んでいた魔力の炎は蒸発するように空へと立ち上っていった。
「よーっし、撃破完了! やったジャン!」
「……まだよ」
イザナの呟きから一瞬後。
空から強烈な炎の柱が落ちてくる。
「炎!? アミー?」
「違います。この熱量は――――天使装騎、アモン!」
『覚えていてくれてお姉さんうれしいよ!』
スズメの言う通り、現れたのは天使装騎アモンと彼女率いる憲兵団だった。
「チッ、厄介な」
「知り合い?」
「というか、因縁の相手と言ったところか」
「どーする? 今まで通り退く!?」
「見たところ、数ではこちらが優勢だ。初めてのことだな」
「そうですね、可能な限り迎撃しましょう。救助班と殲滅班は憲兵の相手を。私たちが天使装騎アモンと戦います」
『諒解!』
「ŠÁRKA、2回戦です!」
「Do Boje!!」
SSSSS-第十五回-
ツグミ「スズメ、大丈夫よね……最近はツバメとも連絡が取れないし……」
シュパチェク「当然だよ。それじゃ、僕は仕事に行ってくるよ」
ツグミ「あなた」
シュパチェク「なんだい?」
ツグミ「2人を、よろしくお願いしますね」
シュパチェク「…………うん。行ってくる」
ローラ「お迎えに参りました」
シュパチェク「ミラさん直々にお出迎えとはね」
ローラ「まだまだやることは沢山ありますからね」
シュパチェク「"彼女達"の作戦に手を貸すってことかい?」
ローラ「そうなりますね。その為にも協力者達の装騎の改修も急がなくては」
シュパチェク「ロコちゃんやイェストジャーブ家の協力があってなんとかこんな感じか……」
ローラ「人数の割には上出来です。あとはあの子達の情報網さえ広がり切ってくれれば」
シュパチェク「それまでなんとか耐えてくれよスズメ……」