第22話:Hanba Všem, kdo Uctívají Bůžky
-Hanba Všem, kdo Uctívají Bůžky-
むなしい神々を誇りとする者は恥を受ける
『あのステルス機能でここまで潜入してきたんですね』
『逃げ、るよ!』
『パイモン、ベバルとアバラムを!』
天使装騎アスタロスの指示に、天使装騎パイモンの下半身――その両脇が分離する。
地面を滑るように走る天使装騎パイモンの遠隔攻撃用子機ベバルとアバラム。
ベバルは右腕、アバラムは左腕から爪を伸ばし逃げ出す装騎ピトフーイDと装騎クリエムヒルダを追いかけんとした。
「させません!」
装騎スパローTAはビェトカ達への追撃を防ぐ為、ベバルとアバラムと対峙。
パージしたNINDŽA兵装をベバルとアバラムへ叩きつけ、更にアズルを灯した両使短剣サモロストを一気に振り払う。
両使短剣サモロストの一撃で、小爆発を起こしながら燃え上がるNINDŽA兵装に、ベバルとアバラムが怯んだ。
『くぅ……だめ、みたいっ』
『ならば、あの2騎だけでも!』
天使装騎アスタロスは右腕の"蛇"を装騎スパローTAに向かって解き放つ。
『Gurrrrrr!!』
その蛇に装牙リグルが喰らいつき、攻撃を防いだ。
『数はこっちの方が上なんです!』
『うっ、うん!』
装騎スパローTAと装牙リグルを取り囲むように天使装騎アスタロス、天使装騎パイモン、そしてベバルとアバラムがにじり寄ってくる。
「フニャちん、水切り!」
『Gorrr!!』
装騎スパローTAがその場にしゃがみこんだ瞬間、装牙リグルは思いっきり身を震わせた。
『くっ』
『うわ』
それと同時に、装牙リグルの装備していたNINDŽA兵装が飛び散る。
「乗せて! ムニェシーツ・プルステンツォヴィー!」
装騎スパローTAは装牙リグルに飛び乗ると、装牙リグルが体を身体を捻り天使装騎アスタロスとパイモンに背を向けた。
その動きに引っ張られ、装騎スパローTAの払った両使短剣サモロストのアズルソードが環のような光を放つ。
逃走の為の威嚇と、NINDŽA兵装の破壊を兼ねた装騎スパローTAの一撃は効果的だった。
「急速離脱!」
『Gurrrrr!!』
一気にトップスピードへと達した装牙リグルは嵐のように天使装騎アスタロスとパイモンを振り切った。
「全く、アルジュビェタがクソ――もとい、ヘマをしなければ穏やかにいけたのだが」
「まぁまぁゲルダさん。こうやってズィズィさんもクラリカさんも助けることができたんですから」
ŠÁRKAの基地へと無事帰還できたスズメ達はピピの淹れたコーヒーを前に反省会をしていた。
「そーそー、終わり良ければすべて良しってね!」
「はい、とりあえず明日からビェトカのあだ名はうんこうーまんですね」
スズメの表情は穏やかだが、奇妙な迫力にビェトカの背筋が凍る。
「申し訳ございません。ワタシが悪かったです。本当。本当、ごめんなさい」
「土下座で」
「土下座で!?」
「スズメちゃんって意外とスパルタ?」
「サエズリ・スズメ……私達も謝ります。まさか敵に捕まるなんて――そんなヘマをするとは」
そう言いながら頭を下げたのはズィズィだった。
「ズィズィは悪くないよ! 捕まったのは、わたしが……わたしが悪いんだからっ」
「しかしクラリカ」
「そういう誰に責任がだとかは無しですよ。無事戻って来れたんですから、失敗した分をこれから取り戻していきましょうよ」
「サエズリ・スズメ……」
「ありがとう、スズメちゃん」
「と、言うことでこれからアンタ達はワタシ達ŠÁRKAに入ってもらうわ! 一緒に汚名返上と行くわよ!」
「確かに、アルジュビェタの場合は文字通り汚名だな」
「余計なコト言うな!」
ビェトカとゲルダの冗談に、ズィズィとクラリカの緊張が解ける。
「それでは、これからもよろしくお願いします」
スズメの差し出した手に、ズィズィとクラリカも手を重ねた。
「にゃあ」
「チー!」
何故かその足元で、フニャトとアッチラ、レーカも手を重ねていた。
「悪魔装騎出現です! 場所は夏休みで賑わう遊園地です」
「もしかして、悪魔装騎も夏休み?」
「そんな楽しいものではなさそうだな」
「ŠÁRKA、行きますよ!」
「Do Boje!」
それぞれが装騎に乗り込むスズメ達ŠÁRKAメンバー。
「ええ!? アッチラさんとレーカさんも来るの?」
「チー!」
装騎に乗り込もうとするクラリカの肩には2匹のネズミ。
「まだちょっと慣れてないから危ないよ……?」
「チー」
大丈夫だと言うようにアッチラとレーカがクラリカへと頬を擦り付けた。
「クラリカ! ワタシと同じ名前の装騎、大事にしなさいよー!」
「わ、分かってます! 何度も聞いてますよ! 頑張ろう、エルジェ」
クラリカが乗るのは装騎アルジュビェタ改め装騎エルジェ。
「私も大事に使わせてもらいましょう」
ズィズィも装騎ボウヂッツァに乗り込みながら言う。
「マスドライヴァーの起動、お願いします!」
そして、スズメ達ŠÁRKAの6騎はケルン市に存在する遊園地に向け、空へと放たれた。
「あれが今回の敵ね!」
スズメ達の目に映ったのはどこか牛のようにも見える頭に、翼のような装飾のある2体の悪魔装騎。
似た印象の2騎だが、片方は細身でその手に鋭い爪が、もう片方は逞しい大柄の体でその手にはメイスを握っている。
「どっちも牛ですね」
「区別が面倒だな。名を名乗れ!」
『私は悪魔装騎ザガン』
そう名乗ったのは細身の方。
次いで、大柄の方も名乗る。
『我は悪魔装騎ハアゲンティ』
「オッケー、ガリとデブね!」
「最近、ビェトカの口の悪さをどうにかするべきだと思うんですよね」
「帰ったら説教だな」
「ご無体な!」
『ふざけおって』
『行くとする!』
悪魔装騎ザガンは駆けながら姿勢を低くすると、その右腕で地面を抉る。
『私の華麗なる術――見ていただこう』
魔力がその手のひらから溢れ出し、抉り取った土やコンクリートと交じり合った。
瞬間、土やコンクリートはその硬度を高め、魔力を纏った金属粒としてŠÁRKAの装騎へと振りかけられる。
「クラリカ――がんばりますっ!」
悪魔装騎ザガンの放った一撃に対し、壁となったのはクラリカの駆る装騎エルジェ。
「お願い――みんなを守って!」
装騎エルジェが両手を胸の前で組むと、両肩のシールドが正面を向きアズルの輝きと共に広がった。
そして、渦巻くように迸ったアズルが悪魔装騎ザガンの放った金属流を両脇へと逸らす。
『ハアゲンティ!』
『うむ……!』
悪魔装騎ザガンに応え、悪魔装騎ハアゲンティがその手に持ったメイスを地面に突き立てると、仄かな光が溢れ出した。
その光は悪魔装騎ザガンの放った金属流を包み込むと、
『捻れ』
悪魔装騎ハアゲンティのメイスに導かれるようにその軌道を変える。
「わわっ、戻ってきた!?」
「あの槌を持った悪魔装騎が操っているのですね……ならば!」
そう言い飛び出したのはズィズィの装騎ボウヂッツァ。
「援護するよ。狙撃騎だからね」
『Gour!』
ピピの装騎ネフェルタリはスナイパーカノン・メリエンムトを構え、装牙リグルが飛び出した。
「弾け飛ぶ!」
ズィズィは装騎ボウヂッツァの足裏に装備されたキックバスターを地面に向けて起動。
これは本来、蹴りつけた敵騎へ爆発的なアズルを送り込み破壊する武装――なのだが、それを地面に向けたことで驚異的な瞬発力を発揮する。
同時に腕部クローを展開し、その爪にアズルを灯した。
『我を守り給え!』
悪魔装騎ハアゲンティに従い、金属流の一部が装騎ボウヂッツァへとその首を向ける。
『Grrrrrr!!』
金属流が装騎ボウヂッツァを捉えんとする刹那、装牙リグルが全身のブレードにアズルを纏わせ壁となった。
「助かります。フニャト」
『Gor!』
ズィズィは礼を言いながら、その瞳を真っ直ぐ悪魔装騎ハアゲンティへ向け――
「一撃を!」
その爪を閃かせた。
悪魔装騎ハアゲンティが怯んだことで、金属流のコントロールが失われる。
「魔力で攻撃を操る…………もしかしたら」
今度は金属流をクラリカの装騎エルジェのアズルが侵しはじめた。
「お、なるほどね。やっちゃえクラリカー。やっちゃえアルジュビェター!」
クラリカは悪魔装騎ハアゲンティが行ったように、金属流をコントロール出来ないかと考えたのだ。
そしてその考えは、見事に成功する。
『まさか!』
自らが放った金属流がそのまま返され、悪魔装騎ザガンは驚きに叫んだ。
「Sweet Dream! 私もいっちゃうよー!!」
その"波"に乗るように、ミス・ムーンライトの装騎アントイネッタが両手に持ったソードサブマシンガン・マリアとマリーを斉射しながら文字通り躍り出る。
「勢いに乗るのだな!」
ゲルダの装騎クリエムヒルダもブーステッドアーマーに火を灯し、突撃槍ウィンを正面に構えた。
「いい感じですね。私はハアゲンティに奇襲します。ビェトカはザガンに!」
「りょーかい! さっさと倒すわよ!」
装騎スパローTAは跳躍、装騎ピトフーイDはステルスで姿を消すと二手に分かれる。
『4対1とは、卑怯だと思わないのか?』
「傭兵がそんな騎士道精神持ってるわけないっしょ! チーム・ピトフーイ、DO BOJE!」
「アルジュビェタのもとに下った覚えはない」
「いちいち可愛くないわねゲルダは!」
『ぬう、厄介なやつらよ……』
「厄介ついでに決着つけますよ!」
『Gooooohhhhr!!!』
「フニャちん、連携攻撃!!」
ビェトカ達が悪魔装騎ザガンを、スズメ達が悪魔装騎ハアゲンティを仕留めようとしたその時――――不意に響いた強烈な地鳴りのような音。
「なんですか!?」
音と共に2つの輝きが、スズメ達へ向かって放たれた。
「チィ、敵の増援みたいねッ!」
ビェトカの言う通り、それは新たな敵。
光の輝きを身に纏い、まさに天使と言った姿を見せる2騎の"悪魔装騎"。
『余の名は悪魔装騎クローセル』
『ボクはヴォラク。悪魔装騎、ヴォラク!』
すらりとした長身でその手に弓を構える悪魔装騎クローセルと、小柄で両手が龍頭のような意匠の悪魔装騎ヴォラク。
悪魔装騎クローセルは悪魔装騎ザガンに、悪魔装騎ヴォラクは悪魔装騎ハアゲンティに合流した。
『余も助けに入ろう』
『仕方あるまい』
悪魔装騎ザガンとクローセルは装騎ピトフーイD、クリエムヒルダ、エルジェ、アントイネッタと対峙する。
『ボクも、頑張るよ!』
『我と征くか……よろしい』
そして、悪魔装騎ハアゲンティとヴォラクは装騎スパローTA、ネフェルタリ、ボウヂッツァ、装牙リグルと対峙する。
『吹き荒れろ!』
悪魔装騎ザガンがその手で地面を抉り取り、金属流を弾き飛ばした。
「その攻撃は……ききませぇーんっ!!」
その一撃に、装騎エルジェのストリームシールドが再びアズルの流れを作り出し、悪魔装騎ザガンの金属流を大きく迂回させ跳ね返す。
このままでは金属流が悪魔装騎ザガンとクローセルを襲う筈だが、それでも悪魔装騎ザガンはその他を止めない。
なぜならば……
「きゃっ!?」
不意に響いたクラリカの悲鳴。
それと同時に、装騎エルジェのストリームシールドに魔力の爆発が走った。
『余が一矢、受けてみよ』
それは悪魔装騎クローセルの放った魔力矢による一撃。
悪魔装騎ザガンの金属流の陰に隠れ、その矢を射たのだ。
「まっず!」
それに気付いたビェトカは、装騎ピトフーイDの霊子鎖剣ドラクで装騎エルジェを引っ張る。
悪魔装騎ザガンの金属流は装騎エルジェの右肩を抉り取ったがなんとか無事だった。
「ゲルダ、ムラムラ、頼むわ!」
「仕方ないな」
「ムラムラってなに!?」
「名前長いんだもん!!」
ブーステッドアーマーで急加速する装騎クリエムヒルダと、軽やかな身のこなしで一気に距離を詰める装騎アントイネッタ。
「クラリカ、ダイジョブ!?」
「は、はい!」
「しっかし……ヤッカイね。ストリームシールドが使えてたからザガンの攻撃を無視できてたのに……」
装騎クリエムヒルダとアントイネッタが必死で応戦しているが、状況はどこか膠着している。
ビェトカはこの状況を切り抜ける手段が欲しかった。
「きっと正面から行っても……ステルスで後ろに回ってもあまり効果的な一撃は……期待できそうにないよね」
「そーね……クラリカ、なんかある?」
「…………有効かはわからないですけど、一つ試してみたいことが」
『いっくよぉー!!』
まるで戦車のような勢いで大地を駆ける悪魔装騎ヴァラク。
「動きが早くて……厄介ですねっ」
猛烈な速度と威力にスズメ達は手を出さない。
『ついてこれないでしょー!』
『Grrrrrr……』
得意げな様子の悪魔装騎ヴァラクに、どこか気が立ってるような様子の装牙リグル。
「フニャちんが負けるわけないよね!」
『Gor!』
スズメの言葉に装牙リグルは大きく頷く。
「よし、私とフニャちんはヴァラクを。ピピさんとズィズィさんはハアゲンティをお願いします!」
スズメがそう言うと、装騎スパローTAが装牙リグルに飛び乗った。
「諒解だ隊長」
「私が前に出る。ピピ、援護を頼みます」
「おうとも」
親指をグッと立てると、装騎ネフェルタリはスナイパーカノン・メリエンムトの銃口を悪魔装騎ハアゲンティへと向ける。
それと同時に、装騎ボウヂッツァが悪魔装騎ハアゲンティ目掛けて駆け出した。
「私の援護は大切ですけど、それ以上に周りを走ってるスズメ隊長への誤射は気をつけるように」
「私はそんなヘマはしないよ。アルバだからね」
「信じましょう」
まるでレースでも行うかのように走り回りながら競り合う装牙リグルと悪魔装騎ヴァラク。
『こんな戦いは初めてだよ! たーのしー!』
「能天気ですね……行きます!」
装牙リグルに乗った装騎スパローが両使短剣サモロストを振りかぶる。
悪魔装騎ヴァラクは、一撃を片手の龍の籠手で受けながら、もう片手から炎のような魔力を放った。
「あの槌……重そうに見えて、意外と」
悪魔装騎ハアゲンティの懐に飛び込んだ装騎ボウヂッツァだったが、悪魔装騎ハアゲンティは巨大な槌を軽々と振り回し、装騎ボウヂッツァに応戦する。
「フォーコ!」
『その程度の一撃、我には届かぬよ』
装騎ネフェルタリの援護射撃も槌を振り払い弾き飛ばした。
「効かない……かな?」
「ピピさん、まだ手はあります」
「聞かせてもらうよ」
「何度も撃ち込んでください。何度も、何度でも、きっと勝機ができるはずです」
ズィズィの言葉にピピは少し考えるような間。
それも一瞬、
「わかった」
ピピは頷いた。
「ビェトカさん、わたしがストリームシールドを構えます。それに合わせてシールドの上に飛び乗ってください」
「盾をカタパルト代わりにするってワケね。でも、ワタシのピトフーイじゃあスパローほどの跳躍力は期待できないわよ」
「そこはなんとかこちらで調整してみます」
「わかった! 頼りにしてるわよ!」
ビェトカの答えを聞いたクラリカは、装騎エルジェの残った左肩のストリームシールドを構える。
そこにアズルの奔流が走った瞬間、装騎ピトフーイDが盾の上に飛び乗った。
「せー……」
「のッ!!」
アズルストリームに乗せ、勢いよく飛び出す装騎ピトフーイD。
だったのだが……。
「キャッ!?」
クラリカの悲鳴とともに装騎エルジェ左肩のストリームシールドが爆炎を上げる。
悪魔装騎クローセルの一撃で、ダメージを負っていたストリームシールドが負荷に耐えきれず爆発したのだ。
「ちょっ!? 待って待って変なとこ飛んでる!」
爆発の影響で装騎ピトフーイDは明後日の方向へと飛んでいく。
『うん? どこにいくのだ?』
『面白そうなことをしていると期待していてたが……余の思い過ごしか』
装騎アントイネッタ、クリエムヒルダと戦う悪魔装騎ザガンとクローセルは呆れたように言った。
「作戦シッパイ!?」
「ま、まだです! きっと合わせてくれると……信じてますから!」
「合わせるってナニ!」
宙を舞う装騎ピトフーイD……そこに突如、強烈な暴風が近づいて来る。
『Grrrrrrrrr!』
「この唸り声……もしかして!」
「うぉらぁッ、邪魔ァ!!!!」
『Gohrr!!!!』
「邪魔ってチョー傷付くんですけどー!!!???」
装騎スパローを乗せた装牙リグルに弾き飛ばされ、装騎ピトフーイDは軌道を変えた。
その先にはバッチリ悪魔装騎ザガンとクローセルの姿。
「やった……! 荒れ狂う毒蛇ェ!!」
装騎ピトフーイDは霊子鎖剣ドラクにアズルを込める。
「アルジュビェタに合わせるぞ!」
「Sweet Dream! わかったー!」
装騎クリエムヒルダは突撃槍ウィンへ、装騎アントイネッタはソードサブマシンガン・マリア&マリーへアズルを灯し……
「ヴァルキューレク・ローヴァグラーシャ!」
「スウィーテスト・ライトフェス!」
悪魔装騎ザガンとクローセルを挟み撃ち。
2騎の悪魔装騎がぶつかった瞬間……装騎ピトフーイDの一撃が悪魔装騎ザガンとクローセルへ叩きつけられ、2騎の悪魔装騎は消滅した。
そして、悪魔装騎ハアゲンティ、ヴァラクと戦うスズメたちも決着がつこうとしていた。
「くっ、なかなか近づけないですね……ですが」
嵐のように振り回す、悪魔装騎ハアゲンティのメイスによってなかなか近づくことのできない装騎ボウヂッツァ。
しかし、ズィズィの瞳は確実に勝利を見据えていた。
「恐らくこれが最後の一撃だね。ホールインワンで決めよう」
ピピの言葉と共に、装騎ネフェルタリがスナイパーカノン・メリエンムトからアズルの乗った弾丸を放つ。
その弾丸は、今までの一撃と同じように……悪魔装騎ハアゲンティのメイスに弾き飛ばされた。
『全く、学がない。我はそろそろ飽きてきたぞ』
嘲笑する悪魔装騎ハアゲンティだったが、その一瞬後、驚きの声が上がる。
『なっ!?』
それは何故か……悪魔装騎ハアゲンティの持つ巨大なメイスがひび入り、割れ落ち、そして、砕けたからだ。
「何度も撃ったかいがあったよ」
「ええ! 私も……行かせてもらいます!」
武器が破壊され丸腰になった悪魔装騎ハアゲンティの懐に装騎ボウヂッツァが飛び込む。
「これがボウヂッツァの、キックバーストです!」
放たれた装騎ボウヂッツァの強烈な蹴り。
アズルの爆発力を注ぎ込まれた悪魔装騎ハアゲンティは思いっきり吹っ飛ぶ。
そして……飛んだ先には…………。
『うわっ!? うわわわわハアゲンティ!!??』
装牙リグルとの競争に夢中になっていた悪魔装騎ヴァラクの姿。
「よし、行くよフニャちん!」
『Gooorrrrrr』
「ストジェット・メテオル!」
そのまま、装牙リグルと装騎スパローTAは、アズルの塊と化し、悪魔装騎ハアゲンティとヴァラクを轢き砕いた。
SSSSS-第十一回-
ピトフーイ一派、天使殺し!?
昨日、ケルンの遊園地に出現した悪魔装騎を撃退するために向かった天使装騎2騎がピトフーイ率いる一派に撃破されていたことが分かりました。
ネット上では、天使の姿をした機甲装騎をピトフーイ一派の機甲装騎が攻撃をくわえている場面の画像が多数掲載されており、ピトフーイ一派への不信感が高まっています。
国家反逆容疑で指名手配されているピトフーイことピシュテツ・チェルノフラヴィー・アルジュビェタと、その重要参考人であるサエズリ・スズメらが所属するとみられるその一派は、以前より悪魔装騎から人々を救出する姿が見られ、一部では擁護の声もありました。
しかし今回の事件で、悪魔装騎と敵対するスヴェト教団の天使装騎を撃破したことから巷では批判の声があがっています。
憲兵団に協力しているスヴェト教団とピトフーイ一派は、以前より戦闘状態に入ることは多数あったということですが、今回のようなことは初めてだということです。
ピトフーイ一派の思惑は一体何なのか、続報を待て。