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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
偽神の呼び声編
250/322

偽神編第5話:新たなる力/Každý různý úmysl

翌朝。

スズメの元にビェトカが迎えに現れた。

「で、装騎はどう?」

「……その、やっぱり昨日の今日では」

「そりゃそうか。まぁ、良いわ。手早く準備するわよ」

「はい」

ビェトカに促され、スズメがSIDパッドを覗き込んだ時、一通のメールが届いていることに気付く。

そのメールに件名はない。

しかし、その差出人にスズメは目を見開いた。

「どしたの?」

「あの、これ」

スズメはそのメールをビェトカへと見せる。

「無題のメール……送り主は、コレってシャダイコンピュータ!? シャダイって壊されたはずじゃ」

そのメールの送り主はシャダイコンピュータからだった。

ステラソフィア生の多くが死んだ最終防衛戦――その戦いでシャダイコンピュータのメインサーバーは破壊された。

その結果、シャダイコンピュータによる統治が行えなくなりマルクト神国が崩壊。

人の手によって政治を進めるマルクト共和国へと変わったのだが……。

「どうしてシャダイコンピュータからメールが……それにこの内容…………」

そのメール本文にはこう書かれていた。

"サエズリ・スズメ氏へのPS-R-H2の引き渡しがシャダイによって正式に承認されました"

「PS-R-H2……ハラリエルのバージョン2?」

それは、スズメが以前使っていた機甲装騎スパローのベースとなった機甲装騎PS-R-H1ハラリエルの後継騎がスズメの元へと届いたという旨のメールだった。

だがスズメはその文面に混乱を覚える。

何故なら、PS-R-H2と言う型式番号の機甲装騎は存在しないからだ。

ハラリエル型装騎は、スズメが使っていた装騎スパローとそれを一部改修した装騎スパロー1,5。

それに、本来はハラリエル2となるはずだったが、欠陥が発見され、マルクト神国が崩壊したことで正式採用が見送られたXハラリエル――装騎スパロー2Rセカンドレイドまでしか開発されていないはず。

「イタズラ、でしょうか……?」

怪訝に思うスズメだが、イタズラにしては手が込み過ぎているような気もする。

「考えてる時間が惜しいじゃん? 腹をくくりなさいスズメ」

「……はい」

スズメはもう一度メールを見直した。

そして、SIDパッドで自分のガレージを確認する。

確かに、ガレージには機甲装騎が1騎――PS-R-H2という名前で送り届けられていた。

機甲装騎のスペックなどもズラリと表示され、それらも全くのデタラメで書かれているような感じもしない。

スズメは決意した。

「アナヒトちゃんを――救える、力を」

暫くした後――その機甲装騎が姿を見せる。

逆に折れ曲がった関節が特徴的なハラリエル型の姿が。

装騎スパローと同じスズメのパーソナルカラーで彩られ、全身にブレードエッジを装備している。

"シャダイコンピュータに"正式認可されたセラドニウム製の軍用騎がそこに居た。

"Daruji Mstitelkě"

「"復讐者に捧ぐ"……」

装騎ハラリエル2のモニターにそんなメッセージが表示された後、正常に騎使認証が済み、装騎ハラリエル2の起動が終了する。

「イケそう?」

「はい、大丈夫そうです」

スズメは軽く手足を動かしてみる。

ふと、初めて装騎スパローに乗ったときを思い出した。

まるで、自分の為に作られたかのようなフィット感――装騎が自分の手足となる感覚。

イケる――スズメはそう感じた。

「それじゃあ、行きましょう! スパロー、えっと……3Aトライアゲイン!」

スズメの思いを乗せて、装騎スパロー3Aは大地を駆けた。


再び潜入したドレスデンの偽神教施設――しかし案の定、アナヒトの姿を見つけることはできない。

僅かでも手がかりを見つけようと施設内を探索するが、やはり重要な物は全て持ち出されてしまっている。

やがて、偽神装騎ダゴンと矛を交えた施設最奥へと到達した。

「やっぱりもぬけの殻っぽいね」

もちろん、最奥まで来てもディープワン一体の気配もない。

「スズメ、ここは一旦引くよ」

「ところがやっほい!」

その場から去ろうとするスズメとビェトカの二人に、どこかで聞いた声が投げかけられる。

「アナタ達は――タルウィ&ザリク!」

装騎スパロー3Aと装騎ピトフーイの前に立ちふさがるように、暑熱の悪魔タルウィ、渇死の悪魔ザリクのコンビが立っていた。

「人っ子一人いないこの施設――人はいないけど悪魔はいる! 待ってたわよ、偽神教を嗅ぎまわる悪党ども!」

「悪魔に言われたくないってーの!」

「それは確かに!」

ビェトカのつっこみにタルウィが人差し指をビッと立てる。

「で、何の用ですか……?」

「ナンの用もカレーの用もないわ! アタシはここを再襲撃する輩を――アレする任務を受けたのよ!」

「足止め」

「そう足止め!」

「足止め……?」

タルウィとザリクの言葉に、スズメもビェトカも違和感を抱いた。

「と、いうことで勝負だ!」

瞬間、タルウィ&ザリクの周囲に霊力が急激に流れ込む。

目を眩ますような闇が一瞬迸った後、二騎の機甲装騎の姿があった。

「機甲装騎? ノンノン。魔神装騎と呼びなさい!」

赤褐色の装甲で2対のファンがついた機翼を背負う魔神装騎タルウィ。

「お覚悟を」

黄褐色の装甲で円形の照射機を背負った魔神装騎ザリク。

2対の魔神装騎が臨戦態勢を取る。

「やるしかないみたいですね……」

「そりゃそうよ。傭兵ってのはそう言うもんさ」

対する装騎スパロー3Aは両使短剣サモロストを、装騎ピトフーイは超振動鞭クミタヴィー・ビッチュを構えた。

一瞬の沈黙――――

「サエズリ・スズメ、スパロー。行きます」

「お楽しみの時間さァ!」

その後、装騎スパロー3Aと魔神装騎タルウィが同時に駆ける。

火災竜巻オフニヴェー・トルナード!!」

最初に攻撃を仕掛けたのは魔神装騎タルウィ。

背負った機翼のフィン――それが急速回転をするとともに強烈な熱の竜巻が放たれた。

「ムーンサルト――」

だが、熱量の暴風を装騎スパロー3Aは跳躍し回避する。

「ストライク!!」

閃いた装騎スパロー3Aの両使短剣サモロスト――その一撃を魔神装騎ザリクが受け止めた。

「でかしたザリク! 取ったァ!」

魔神装騎タルウィはここぞとばかりにその身を反転。

両手を交差させ攻撃の構えを取る。

「バカ」

ザリクがそう言った瞬間、魔神装騎タルウィは装騎ピトフーイのビッチュにしばき倒された。

「勝負の最中に敵に背を向けるなんてね」

「アテテ、ごもっともで……」

超振動鞭ビッチュが直撃した魔神装騎タルウィだが、どうやら通常の装騎程大きなダメージはない模様。

「魔神装騎は霊力の塊! 超振動だろうが超高熱だろうがそんなに痛くない!」

「……そんなに?」

「ならば魔電霊子アズルです!!」

スズメが叫び、装騎スパロー3Aが無限駆動の域に達する。

それと同時にアズルが一気に両使短剣サモロストへと伝い、アズルエッジを形成した。

無限駆動によってかき集めた質量を持つほどのアズルと、両使短剣サモロストの洗練されたシステムによってその刃は強力となる。

「スィクルムーン・レイ・スラッシャー!!」

死に至る光スムルチーツィー・ザーシュ

装騎スパロー3Aの両使短剣サモロストの刃が、魔神装騎ザリクが手から放った光線の錫杖とぶつかり合い、光を散らした。

甘き毒をスラドキー・イェット……」

灼熱地獄ヴェドロペクロ!」

限界駆動に達した装騎ピトフーイはアズルを纏ったビッチュを巧みに操る。

九頭竜ヒュドラのように魔神装騎タルウィに襲い掛かる装騎ピトフーイのビッチュ

それを魔神装騎タルウィの熱波が弾き飛ばすが、それを物ともせずにビッチュの一撃はとどまることを知らない。

「コイツ……人間のくせに割とやる! ザリク!」

「…………ッ」

一方のザリクの表情も、どこか浮かない。

装騎スパロー3Aのサモロストと魔神装騎ザリクのザーシュがが競り合うなかで、どんどん装騎スパローの輝きが増していっていたからだ。

「私は――――絶対に、負けられないんです!」

"AKVAMARÍN SYSTÉM"

画面にその表示が出た瞬間、装騎スパロー3Aを取り巻くアズルの力がより一層大きくなる。

「アクアマリン、システム……?」

後で確かになったことだが、このアクアマリン・システムというのは言うなればインディゴシステムの改良型だった。

周囲から霊力を際限なく取り込むために、取り込んだ霊力の質が悪かったり量が過剰だと自壊してしまうという欠点を持っていたインディゴシステム。

それにフィルターや制御装置を取り付け、インディゴシステム程の強烈な出力は出せないが、安定性を増したのがこのアクアマリン・システムだ。

「これなら!」

そのアズルを強く、強く強く両使短剣サモロストの刃へと重ねた。

ただ巨大にするのではない――濃く、濃くアズルを重ねていくイメージ。

「スパロー……! ムニェシーツ……」

スズメの右腕に蒼白い光の筋が浮かび上がる。

装騎スパロー3Aの体と、自分の体が重なり合う。

「ジェザチュカ!!」

横なぎに払った鋭い、あまりにも鋭い一撃。

その攻撃と、そしてその余波が魔神装騎ザリクと、そしてタルウィの霊力を削ぎ取った。

「やっるぅ~! ワタシも――スポウターム!」

ビェトカの掛け声と同時に放たれた超振動ワイヤーが魔神装騎タルウィ&ザリクを縛り上げる。

「一丁上がり!」

「何とかひと段落、ですか……」

「凄い能力ね、スパロー3A」

「はい、驚きました……とりあえず、今はここを脱出しましょう」

「そうしなさいそうしなさい。さっさと逃げるが吉だよ~」

そんな話をするスズメとビェトカの間に、タルウィが割って入った。

「アタシ達が何でアンタらを足止めしてたか知ってる? 知らないでしょ~」

確かにスズメとビェトカは何でこの誰もいない施設の中で、タルウィとザリクがスズメとビェトカを待ちかまえ、あまつさえ足止めなどしているのか知らない。

しかし、このタルウィの口調、今まで感じていた違和感、ふとスズメとビェトカにある最悪の答えが思い浮かんだ。

「……チッ、スズメ。とっととずらかるわよ!」

「はい! 行きましょう」

素早くその場を後にする装騎スパロー3Aと装騎ピトフーイ。

2騎が大広間を出た瞬間――――強烈な爆音と光線が2騎を追いかけてきた。

「やっぱり爆破!? くゥ~、イライラするゥ!!」

「ビェトカさん、ショートカットします!」

「ショーカぁ?」

「サモロストで天井をぶち抜きますから、そこから!」

「なるほどね。でも、間に合うかなぁ……」

「……合わない、かも」

崩れゆく施設、強烈な炎が次第に2騎に追い付いてくる。

(もうダメかも)

そう思った瞬間――――

「仕方ないから助けてあげましょう!」

「追加料金いただきや~す♪」

2騎の機甲装騎が突然現れると――強力な霊力で装騎スパロー3Aと装騎ピトフーイを爆発から守護した。


挿絵(By みてみん)

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