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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
偽神の呼び声編
247/322

偽神編第2話:追撃/Mstitelka Bětka

圧倒的な力、圧倒的だという恐怖。

それを感じながらも、スズメは諦めるわけにはいかなかった。

スズメは装騎スパロー1,5を駆り、偽神装騎ダゴンの追跡を再開する。

「これは……」

先を急ぐスズメの目に、多数の機甲装騎の残骸が目に入った。

その肩にはマルクト憲兵を示す紋章が刻まれている。

「ダゴンに返り討ちにされたみたいですね……」

騎体の装甲がところどころただれ、溶かされていることからもその予想は間違いないだろう。

気付けばバーリン市を遥か背に、どんどん東へと向かっていた。

「マルクトの領土内から出るつもり、なんでしょうか……」

バーリン市から80kmほど東に行くと、ポートレヒア国の領土に入る。

出そうと思えば時速200㎞近く出せる機甲装騎の足ならば……

「不可能でも、無い――ですか」

しかし、市街地にせよ森林地帯にせよ障害物の多い場所ならば――装騎スパロー1,5の十八番だ。

辺りは市街地を抜け、次第に木々が茂ってくる。

そんな中、木々を蹴り飛ばし、加速を付けながら装騎スパロー1,5は一気に加速。

やがて、ポートレヒア国の国境付近でスズメはその目に標的を捉えた。

「いた……偽神装騎、ダゴン!」

装騎スパロー1,5の姿に偽神装騎ダゴンも気づく。

「スパロー、無限駆動インフィニットドライブ!!」

間髪入れずにスズメは無限駆動へと達し、同時にブレードエッジを展開した。

その切っ先は――突如として現れたディープワンを1体、引き裂く。

「ディープワン!? 一体どこから……ッ」

突如として現れた多数のディープワン。

その群れが一気に装騎スパロー1,5へと襲い掛かってきた。

偽神装騎ダゴンはディープワンの群れと戦う装騎スパロー1,5をしり目にその場を去っていく。

「スパロー、ハーフムーン・スラッシャー!!」

切り捨てても切り捨てても減らないディープワンの数。

偽神装騎ダゴンを逃がすため、健気にも身を盾としている。

今のスズメではその”違和感”に気付くことはできなかったのかもしれないが、ディープワンの献身的な戦いは数もあって装騎スパロー1,5を苦しめていた。

それだけではない。

「スィクルムーン……避けられた!?」

ディープワンが次第にスズメの技を学習し始めていた。

最初の内はその技自体が、次に技を出すタイミングが、そしてその技を絡めた一連の流れが………その度に戦い方を変えるスズメだが、それもまた少しずつ見切られていく。

「…………っ、熱く、なりすぎた」

偽神装騎ダゴンの姿も全く見えず、ディープワンの海に溺れる中でスズメは次第に冷静さを取り戻していった。

しかし、時はすでに遅し。

スズメは完全にドツボにハマっていた。

そんな時だ。

不意に、1体のディープワンの首が跳ね飛ばされた。

「何ですか!?」

よく見ると、ディープワンの背後に空間の揺らぎ。

スズメはその揺らぎに見覚えがあった。

「もしかして、サリエル型装騎!?」

それはサリエル型装騎が持つステルス機能で見られる現象だ。

揺らぎはそのまま一気に他のディープワンも引き裂いていく。

「強い……!」

スズメも唸る強さを持ち、ステルス装騎を扱う騎使――スズメはふと1つの名が頭に浮かんだ。

死毒鳥ピトフーイ

「ご名答!!」

ディープワン最後の1体を装騎スパロー1,5と死毒鳥ピトフーイが同時に切り裂いた後、揺らぎがはっきりとした人型を露わにした。

黒い騎体にオレンジ色のワンポイント――ピシュテツ・チェルノフラヴィー・アルジュビェタの装騎ピトフーイの姿だ。

「偽神教の情報を手に入れたから来てみたけど……まさかアンタが戦ってるなんてね」

装騎の消耗が激しく、これ以上の追撃は不可能と見たスズメとビェトカはバーリン市へと戻ってきていた。

「えっと、スパローだっけ?」

「サエズリ・スズメです」

「ワタシはアルジュビェタ。ビェトカで良いわ」

「ビェトカさん、ですか……」

スズメは死毒鳥ピトフーイ――ビェトカがディープワンを目の敵にしているという情報を思い出す。

「でもなんでスズメはディープワンと戦ってるのよ。しかもこんな外れで」

スズメはビェトカの問いには答えず、訊ね返した。

「……ビェトカさんはディープワンと戦って、いるんですよね?」

「そうだけど」

「どうして、ですか?」

スズメの問いにビェトカは少し答えるのを躊躇うような間を見せるが、口を開く。

「ディープワンは、偽神教は――両親の仇、なのよ」

ビェトカは簡単にだが、自身の過去をスズメに話した。

ある日、ビェトカの両親が奇妙な団体への入信を決め、ビェトカ自身へも勧めてきた。

それがスヴェト教偽神派と呼ばれるスヴェト教の派閥の中の悪質な一派だった。

「ディープワン達は、スヴェト教の一派なんですか」

「もちろん、本流とは全く別のだけどね」

スズメもスヴェト教の名は聞いたことがあった。

ここ近年、マルクト神国が共和国となり、シャダイという心的支柱を失った人々が多く入信しているという世界的な宗教。

マルクト共和国以外の国では数百年前から長らく支持されている宗教で、シャダイ信仰が根強かった神国時代のマルクトでも歴史の授業で名が登場するくらい世界的な宗教だ。

「偽神教は洗脳紛いのことで従順な信者を作っていてね。ワタシの両親は偽神教に入信した――その所為で死んだのよ。だからワタシは偽神教に復讐するのよ……」

ビェトカが偽神教のことを口にする度に段々と表情が険しくなっていく。

スズメはこれ以上、何も聞くことができなかった。

だが、ビェトカが偽神教に対して抱いている感情は嘘ではない――とても真っ直ぐなものだというのも感じた。

「ビェトカさん――実は、話があるんです」

スズメはビェトカに話す。

偽神教が突如としてアナヒトを誘拐したこと、ディープワンを越えた偽神装騎の存在を、そして、どうしても偽神教を倒し、アナヒトを取り戻したいということを。

「ワタシは、両親を救うことができなかった」

ビェトカが言った。

「ワタシに少しでも――ほんの少しでも人を救う手伝いができるなら――――協力するわ。スズメに」

「ビェトカさん――――!」

スズメとビェトカは握手を交わす。

ここに、2人のMstitelkyふくしゅうしゃが手を合わせた。

偽神教を倒し、さらわれたアナヒトを奪還するために。


挿絵(By みてみん)

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