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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
リラフィリア:ハピネス・イン・スレイヴァリィ編
240/322

スズメちゃんとの日常

スズメちゃんちに泊まったその次の朝。

「レイちゃん、朝だよー!」

「ん、んぅ……?」

朝6時。

わたしはスズメちゃんの声で目を覚ました。

「レイちゃん朝ランに行くよ!」

「朝、ラン……?」

そうだ。

昨日の寝る前、わたしはスズメちゃんにあるお願いをしていた。

「装騎バトルの秘訣を教えてほしい?」

「は、はいっ。スズメちゃんって、その、装騎バトルも強いですし、な、何か秘訣があるのかな……と、思って」

「なるほどねぇ。秘訣、かどうかは分からないけど毎日やってることがあるし……レイちゃんも一緒にやってみる?」

「は、はい! お願いします!!」

「それじゃあ、明日の朝ランからね!」

と言うことがあったのを思い出す。

「す、すぐに準備します!」

「うんっ」

明るくなりつつある朝の町をわたしとスズメちゃんは並んで走っていた。

「はぁっ、はぁっ……はぁっ」

あまり運動は得意じゃないわたしには、軽めのランニングと言えなかなかにきつい。

「最初の内はちょっと大変だけど、慣れたらコレくらいなら楽になるよー」

「そ……そうなん、ですか?」

「うん。私もステラソフィアに入って先輩に誘われて始めたことなんだけど、毎日やってるとすっごく気持ちよくなってくるんだー」

だけど、どうしてだろう。

スズメちゃんと一緒に居るというだけで、段々と体が軽くなっていくような気がした。

「そろそろ帰ろっか」

「は、はいっ」

アパートに辿り着いたのは7時前。

それからスズメちゃんは手早くシャワーを浴びると朝ごはんの支度を始める。

その間にわたしもシャワーを浴びて、出てきたころにはズラリと朝食が用意されており、アナヒトちゃんが席についていた。

「フニーズドさんは……?」

「今、フニャちんが起こしにいってるよー」

「フニャちんが……?」

「ひぇょあぁぁぁあああああああああああ!!!???」

突如鳴り響いたフニーズドさんの悲鳴。

それにスズメちゃんもアナヒトちゃんも全く動じない。

「……いつものこと」

ボソリと言ったアナヒトちゃんの言葉通りのようだった。

「おはよ……」

その後、着崩れたパジャマを引き寄せながら片手にフニャトを抱えたフニーズドさんが姿を見せる。

みんな揃って朝食を取り、気づけば登校時間。

わたしたちは揃ってアパートを出た。

「あ、カラス!」

「……カラス?」

スズメちゃんの言葉にわたしは思わず空を見上げるが、そこにカラスの姿はない。

「なんかすごい勢いでカラスが飛んでてさ、ビックリしちゃった」

「チトセ?」

「まぁいいや、行こっレイちゃん!」

「あ、はい!」

空を見上げてぼーっとしていたわたしはスズメちゃんの声でハッとなる。

それから途中でアナヒトちゃんと別れ、リラフィリア機甲学校へと向かった。

スズメちゃん達のアパートから学校までは歩いて十数分。

8時ごろには教室に辿り着き、授業がはじまるまで30分は余裕がある。

「そしたらね、森を突っ切って装騎の部隊が出てきてね!」

「す、すごいですね……」

スズメちゃんが見たという映画の話を聞いているうちに、段々とほかの子たちも登校してきた。

「やぁ、おはよう」

チーム・ウレテットのメンバーで最初に姿を見せたのはレオシュさん。

通り掛けに近所のコンビニで買ったと思しき、雑誌の入った袋を手に提げている。

「何の話をしてるの?」

「この前見た映画の話ですよ! 1人の男が、装騎をばっさばっさとなぎ倒す……」

「ああ、面白かったよねアレ」

「わ、わたしも、見てみようかな」

「それが良いと思うよ!」

そんな話をしている間に、カナールさんも姿を見せた。

多くがこのバーリン市内で住んでいるリラフィリア機甲学校生。

しかしカナールさんは首都カナンの実家から通っているようで、移動が大変そうだ。

「本当、機関車登校とか面倒くさいわ。わたしもスズメみたいにマスドライヴァー使いたいくらい」

「蒸し返さないでよ!」

「マスドライヴァー……?」

「スズメが初めてリラフィリアに来た時ね、遅刻しそうだからってステラソフィアのマスドライヴァーを使って登校してきのよ」

「ま、マスドライヴァーでですか!?」

マスドライヴァーは遠距離――特に地下への輸送ルートが整備されてない場所へ高速で移動するための巨大電磁誘導投射砲、だったっけ。

このリラフィリア機甲学校みたいにマスキャッチャーという専用の設備がある場所になら、安全で迅速に移動することができるとかなんとか。

「あれはカラスバ先輩が使っていけっていうから!」

「おばさんがですか!?」

でも、確かにあの人ならそういう無茶なことを言いそうだ。

そして完全登校時間の8時半を目前にし、外の様子が慌ただしくなってくる。

窓から外を眺めてみると、遅刻をせまいと駆けだす生徒の姿も見えた。

そんな中、

「おはよう諸君」

やっとチーム・ウレテット最後の1人であるカレルさんが登校してきたのだった。

いつも通りの授業が終わり、いつものようにみんなと別れ、下校する。

放課後、わたしはスズメちゃんのアパートに再び訪ねていた。

スズメちゃんの部屋に足を踏み入れる。

壁には様々なナイフが飾られ、机の上にはニャオニャンニャーのフィギュアが立っていた。

「よし、レイちゃん。それじゃあ今からコレを見ましょう!」

そう言いながらスズメちゃんが取り出したのは1枚のビデオディスク。

そのパッケージには……

「ニャオニャンニャー、ですか?」

「そうだよニャオニャンニャー!! レイちゃん、これを一緒に見よう!」

「あの、装騎バトルの秘訣って」

「はい、ニャオニャンニャーです! ニャオニャンニャーは最高なんですよ。熱く激しいストーリー! 孤独の中でも諦めず、巨悪と戦う正義のヒーロー!」

目に見えてスズメちゃんのテンションが上がっているのが分かる。

よっぽどニャオニャンニャーが好きだということがビンビンと伝わった。

「明日は休みですし、明日も使ってガッツリ見ましょう!」

「そ、そんなに長いんですか!?」

「1シーズン50話で今放送中の第6シーズン40話までの240話あるんですよ! そろそろ第6シーズンが始まるんです!」

スズメちゃんの話によると、第1シーズンの放送が9年前。

そこからシーズン3まで3年間放送して、設定をリブートしたニャンコ王ニャオニャンニャーが3年前から始まっているという。

「リブートって言っても、実は今までの3シーズン……これは初代3部作トリロギエって呼ばれてるんだけど、そのストーリーの後の世界で繋がりもあってね、見る人が見れば壮大な物語が……」

「そ、そうなんですか……」

と、言うことでスズメちゃんと一緒にニャオニャンニャーのシーズン1を見ることになったのだった。

頭脳明晰な上に優秀なスポーツ選手だった猫のニャオ・ニャンは世界征服を目論む悪の組織ションマオにつかまり、サイボーグに改造されてしまう。

しかしニャンはションマオに協力させられていた科学者の手助けもあり、施設を脱走。

正義のためにションマオと戦う決意を固めた。

1人でサイボーグ猫ニャンニャーへと変身して多数の敵と戦うニャン。

後半は自らが作り上げたという巨大ガジェットとドッキングして巨大ロボ・ニャオニャンニャーとなり悪を討つ。

「そういえば、ニャンニャーって飛び跳ねるような戦いが多い、ですね」

「そこに気付くなんてさすがレイちゃん! そうなんだよね、ニャンニャーの戦い方に憧れて、まねしてたんだよね!」

なるほど、だからスズメちゃんにとってニャオニャンニャーは"装騎バトルの秘訣"になるんだ。

「スズメちゃんは、どうしてニャオニャンニャーが好きに、なったの?」

「私ん家の近所にプラモ屋があってね、そこのお姉さんが見せてくれたんだ!」

「プラモ屋の、お姉さんですか」

「うん! 装騎の動かしたかを教えてくれたり、いろいろ特訓してくれたのもお姉さんなんだぁ!」

「ということは、スズメちゃんの――その、師匠、みたいな人なんですね」

「うん! お姉さんにいろんなことを教わったなぁ……レイちゃんに――ウレテットのみんなにも合わせてあげたいな!」

「スズメちゃんの師匠……会って、みたいです」

「カレルさんが夏休みに合宿をしたいって言ってたから、その時にでもお願いしてみようかな」

「そ、それはとても、とてもたのしみですっ!」

「そろそろ夕飯の準備しなくちゃ」

「わ、わたしも手伝います!」

「うん!」

夕飯の支度をして、夕飯を食べ終わった後には今度はアナヒトちゃんやフニーズドさん、それにフニャトまで集まってきてみんなでニャオニャンニャーの続きを見る。

「な、なんかすごい一家ですね……」

「今日はこのまま徹夜しましょう!」

結局、わたし達4人と1匹は夜が明けるまでニャオニャンニャーを見ていたのだった。


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