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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
リラフィリア:ハピネス・イン・スレイヴァリィ編
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新しい日々-Ještě jednou-

わたしは、意地悪な姉たちに虐められる灰被りシンデレラでした。

謂れのない罪で虐げられるか弱い存在。

わたしは元いた"家"を飛び出し、新たな世界へと1歩踏み出した。

そこで、わたしは出会った。

王子様よりも素敵な、魔法使いに…………。


「お、おはようっ」

何気ない日常。

変わりない日常。

それは、わたし達が3年生になっても変わらない。

教室に足を踏み入れる。

「おっはよ、レイちゃん!」

「やぁ、おはよう」

「カナールさん、レオシュさん……お、おはようございます」

そう挨拶をしながら席に着く。

鞄から教科書を取り出し、机へと仕舞う。

「お早う、諸君」

「おはよー」

「カレルおはよう」

「おはよう、ございますっ」

授業が始まるまでの他愛のない会話の時間。

「そろそろフレダ先生くるのに、遅いわね」

「……誰が、ですか?」

「誰がって……」

カナールが何か言おうとした瞬間だ。

教室のドアが思いっきり開かれ、1人の女子生徒が入ってきた。

「はぁ、はぁ、はぁ……おはようございますっ!」

「遅刻ギリギリ。珍しいわね」

「昨日の夜、ニャンニャーの第3シリーズを見てたら寝るのが遅くなっちゃって……」

気恥ずかしそうに頭を掻きながら、彼女はわたしの隣の席へと腰かける。

「す、スズメ、ちゃん……?」

「レイちゃん、おはよ~!」

「どうしたの……?」

「? 何が??」

なんだか奇妙な違和感。

思わず周りを見渡してみる。

誰も、何も変わらない。

本当に、何も――何も変わらない。

「おはようみんな~」

フレダ先生が教室へと入ってくる。

「スズメちゃん、さっき廊下を走ってるのを見たわよ。登校は余裕を持ちなさいね」

「はーい」

わたしの混乱をよそに、いつも通り授業が始まった。

フレダ先生の声に、体育をしているのだろう――外から生徒達の声が聞こえる。

不意に、わたしの肩にツンツンと僅かな刺激。

「ねぇレイちゃん……資料集を家に忘れちゃってさ、私にも見せてくれない?」

「うん。い、いいよ」

スズメの体がわたしに近づく。

わたしの鼻をスズメちゃんのいい匂いがくすぐった。

スズメちゃんが傍にいるという安心感。

(そうか、これが"普通"なんだ)

「ねえ、レイちゃん」

「なん、ですか?」

「レイちゃんってクッキングクラブに入ることにしたんだよね」

スズメちゃんの言葉にわたしは頷く。

「私も、レイちゃんと一緒に入ってみようかな。クッキングクラブ」

「ほ、本当!?」

「うん! 放課後一緒に家庭科室を覗いてみよう」

「は……はいっ」

「レオシュさんにも伝えて来ますね~」

「はい!」

スズメちゃんと一緒にクッキングクラブに……。

わたしの胸が激しく高鳴る。

最高の学校生活が始まりそうな予感。

まるで夢のようだ。

本当に、本当に……

「これは……夢?」

(いいえ、現実よ)

わたしの心の奥から声が聞こえた。

もう1つの、ワタシの声。

("これが"現実。ワタシの――ワタシ達の現実よ)

「そうだよね――――夢なんかじゃ、ない」

「そうだ! レイちゃん、今日の夕飯ウチで食べない?」

「えっ、す、スズメちゃんの家で……!?」

クラブも終わって、わたしはスズメちゃんと帰路へとつく。

周りは陽こそ沈み切ってはいないものの、仄かな闇の足音が聞こえてきていた。

そんな中で、突如言われた眩い陽光みたいなスズメちゃんの言葉。

「い、いいんですかッ!?」

「うん。今日はカレーにするつもりなんだけど……いいかな?」

「は、はい!」

わたしはスズメちゃんの後を追い、スズメちゃんが暮らしているアパートへと入る。

「ただいま~」

「お、お邪魔しますッ」

スズメちゃん達が暮らすアパートの1室。

そこへ足を踏み入れた時、わたしは奇妙な視線に気づいた。

「あ、アナヒト、ちゃん……?」

わたしの顔をじっと見つめるスズメちゃんの同居人、アナヒトちゃん。

その視線に、わたしはなぜか居たたまれない気持ちになる。

「レイちゃん、どうしたの?」

アナヒトちゃんの視線に思わず固まっていたわたしの体が、スズメちゃんの言葉で動いた。

「な、なんでも」

スズメちゃんの後について、リビングまで上がる。

わたしとアナヒトちゃんがすれ違った。

その時――

「夢は、いつか覚めるもの」

「えっ?」

まるでわたしとすれ違うタイミングに合わせたかのように発した言葉。

何故か、その言葉がわたしの胸に突き刺さる。

「よし、それじゃあ夕飯作るねー」

「お、お手伝いしますか……?」

「本当? それじゃあ、お願いしようかな」

「ズメちん、私も手伝おーか?」

「ロコちんはいいよ」

「なんで!?」

「塩と重曹間違えるし……」

ロコヴィシュカさんはかなりの料理音痴のようだった。

スズメちゃんはなれた手つきで料理を始めていく。

「す、スズメちゃんって料理上手、だよね」

「先輩に教えて貰ったんだー」

「先輩に……?」

「すごく料理が上手な先輩でね。私たちのお母さんみたいな先輩だったなぁ……」

「ステラソフィアの、時の?」

「ステラソフィア……ああ、うん、そうだよ!」

他愛のない会話もしながら、2人一緒のカレー作り。

今日1日、何度も問いかけてきた。

もしかして、夢?

そんな考えが頭をよぎるたびに、心の奥から「夢じゃない」と声がする。

と、同時に胸に刺さるのが、アナヒトちゃんの言葉。

「レイちゃん、もう遅いし今日は泊ってく?」

「い、いいんですか?」

「いいよいいよ。アナヒトちゃんもロコちんもいいよね?」

「うん」

「モチロン!」

わたしの心のせめぎ合いはスズメちゃん達と談笑して、布団に入るまで続いていた。

どうしてそんなに引っかかるのか、それも分からないまま、わたしは眠りについた。


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