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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
リラフィリア:ワケアリの転入生編
238/322

スズメちゃんのお別れ会-Děkuju do teď, Lyraphilia!-

「えー、本日はお日柄もよく、俺様イェストジャーブ・カレルがサエズリ・スズメくんのお別れ会を執り行うことになり――」

卒業式も終わり、終業式も間近に迫った3月の中ほど。

装騎中央公園の屋外大演習場で各自、装騎に乗り込みリラフィリア機甲学校生が数十人集まっていた。

その理由はカレルの言った通り、来年度にはステラソフィア女学園に戻るスズメのお別れ会だ。

お別れ会なのに何故機甲装騎に乗っているのか……それは、言うまでもないだろう。

「そんな挨拶は良いから、さっさと始めなさいよ」

カナールの装騎ニェムツォヴァーが矢先をカレルの装騎イェストジャーブに向け、威嚇しながら言った。

カレルの長話にうんざりしているのだろう、その声には苛立ちが含まれている。

「オーケイオーケイ、では始めようじゃないか! 俺達流のお別れを!! バトル、スタートだ!!」

「サエズリ・スズメ、スパロー。行きます!!」

「頼んだぜヤーラ!」

「よっしゃー、いっくぜ~!!」

先手を打ったのはヤンとヤロミールのペアだ。

ヤロミールが駆るシャムシエル型装騎の胸部拡散霊子砲に光が灯る。

「そこです!」

それに先んじて、装騎スパロー・パッチワークがバーストライフルをヤロミールへと向け、発砲。

「なっ、ヤーラ!?」

「そして、2つ目!」

そのまま左手のワイヤーアンカーでヤンのシェムハザ型装騎を掴み取ると手繰り寄せ――チェーンブレードで切り裂いた。

「うわー、ソッコーで負けたよぉ!!」

「俺達の出番ってこれで終わりッ!?」

これからも、襲い掛かってくるリラフィリア機甲科生の装騎を撃破していく。

「ハルバート――いっくわよ!!」

「「「諒解!」」」

そこで出てきたのは、ラヴィニア率いるチーム・ハルバートだ。

まず攻撃したのはシノリアの駆るラジエル型装騎――バックパックから落下機雷シュートボンブを放出する。

機雷の雨で動きを制限されたスズメの前へと高速で抜けてくるのは風のようなヴェトルナーヴァープノ。

ナックルスラッシャーを両手に構え、装騎スパロー・パッチワークの前でその身を一気に屈めようとしたところを、チェーンブレードの1撃で撃破された。

「っ! ヴァープノさんは囮っ!!」

しかし、それは囮。

ヴァープノの背後から追いかけてきていた、ラヴィニアの斧槍シュタルケスハーツがスズメの目に入る。

それをスズメは咄嗟に右手のチェーンブレードで弾き飛ばした。

「残念、それも囮」

だが、更にその背後――ジェッシィのシェテル型が射た器械弓ラ・オリゾンの霊子矢が控えていた。

「そうだ、イザナちゃんみたいに……っ」

咄嗟にスズメはバーストライフルを霊子矢に向かって連射する。

その銃弾は偶然にも霊子矢を弾き飛ばし、スズメは難を逃れた。

「運が良い……」

「運も実力の内、ね」

ジェッシィの呟きにラヴィニアは言う。

その間にもスズメはシノリアを撃破し、ラヴィニアとジェッシィへ近づいてきた。

「ジェッシィ!」

ラヴィニアはジェッシィから斧槍シュタルケスハーツの予備を受け取ると構える。

斧槍を手渡したジェッシィは器械弓ラ・オリゾンをスズメへと向けた。

「射る」

「ここまで近づけば、連射できるコッチの方が!」

器械弓ラ・オリゾンが放たれるより先に、スズメのバーストライフルがジェッシィ騎の機能を停止させる。

そのまま、一気にラヴィニアへと接近。

スズメのチェーンブレードとラヴィニアの斧槍シュタルケスハーツがぶつかり合った。

「思えば、いろんなことがありましたね」

「…………今となっては、その、悪かったとは――思ってるわよ」

「私は、ラヴィニアに感謝もしてるんですよ。今だから言えることですけど」

「アナタって言葉に一々トゲがあるところ、むかつくわね」

「カヲリにも言われる。言われるついでにラヴィニア――」

「あによ?」

Díkyいままで doteďありがとう!」

刹那、ラヴィニアのバルディエル型は機能を停止した。

「よっしゃあ、行ったるかァ!」

「ファイアワークスのヒバナ!」

「アリゲーターのシュヴェイク!」

「チェーンソーのハヅキ! そして……」

「わーい、チャンプぅー!!」

チャンプことリーガルの名乗りを遮るようにスズメが叫ぶ。

「えーい一々オレの名乗りを邪魔ァしやがって! ヒバナ!」

「オフニョストロイ――撃つよ」

ヒバナの装騎オフニョストロイが例によってファイアフライ兵装での砲撃を放った。

その後を追いかけてシュヴェイクの装騎ジュヴィーカト、ハヅキのソウキが駆ける。

そして、チャンプの装騎イリーガルはテインライフルを構えると静かにスズメの装騎スパロー・パッチワークに狙いを定めた。

「派手な花火オフニョストロイですね!」

「あっさりと倒すのは趣味じゃねーからのォ!」

スズメは弾幕を乗り越えると装騎ジュヴィーカト、ハヅキのソウキと遭遇する。

圧潰式咬拳ナックルバイトを構えたシュヴェイクとチェーンソーを構えたハヅキの挟撃をスズメは回避。

そのまま一気に駆け寄ったのは、ヒバナの元だ。

「こっち……?」

「1撃!」

装騎スパロー・パッチワークの足裏から伸びたパイルを突きさすと装騎オフニョストロイを破壊。

蹴った衝撃で、スズメを追いかけていたシュヴェイクとハヅキの装騎――その背後へと着地した。

「これ以上やらせっかよォ!」

チャンプがテインライフルを装騎スパロー・パッチワークに向けて撃つが、少し遅い。

スズメはシュヴェイクとハヅキの装騎をワイヤーアンカーで掴み取り、手繰り寄せると右手側にいたハヅキをチェーンブレードに突き刺して撃破。

そして、左手で捕まえたシュヴェイクを盾にするというお決まりの手でテインライフルの銃撃を防いだ。

「さぁ、行きますよチャンプ!」

機能停止した2騎を捨て去ると、一気にチャンプへと駆け寄る。

チャンプの装騎イリーガルが放つ関節部の小型マシンガンの銃撃、テインライフルの銃撃を巧みに組み合わせ、スズメの進撃を阻もうとする。

「流石じゃな……サエズリ・スズメ!」

「チャンプも、すごいです!」

スズメのチェーンブレードと、チャンプのテインライフルに取り付けられた銃剣が火花を散らした。

「オレにだって近接技はあるんじゃ!!」

チャンプは一旦スズメとの距離を開けると、身をかがませ、テインライフルを持つ右手を伸ばす。

「見せてください!」

「サイドワインダー!!」

横に波打つような刃の煌めきと共に、スズメに銃剣の1撃が襲い掛かった。

剣でありながらも、まるで鞭のようにも見える柔軟な1撃。

その剣筋を見極めようと意識を凝らすスズメの体を青白い光が包む。

「そこです! スィクルムーン・ストライク!!」

アズルの輝きを纏った装騎スパロー・パッチワークはチャンプの1撃をすり抜けた。

そして、チェーンブレードで一閃する。

「チィ、全く……強すぎんぜアイツはよォ!」

限界駆動クリティカルドライブ状態に入ったスズメは撃破のペースをさらに上げた。

「スズメさん、お相手、お願いします!」

「アサギさん! アサギさんも来てくれたんだ!」

「邪魔、じゃなかったですか……? 私は隣のクラス、ですし」

「そんなことないよ。嬉しい! でも、バトルは別だからね!」

パジチュカのラファエル型も容易く撃破し、駆け抜ける蒼い閃光。

他の装騎から放たれる銃撃を、限界駆動に突入したことで手のひらから放出する魔電霊子アズルで防いでいく。

「フルムーンバースト!」

続けて、全身からアズルを放出――その衝撃は一気に周囲の大地をめくり上げた。

巻き起こった土埃を目くらましに、更に他のリラフィリア生へと近づき、撃破する。

「やれやれ、ますます手が付けられなくなってるじゃないの」

笑みを浮かべてそういうのはカヲリ。

そして、それに続くナオ、ミカコ、スミレの装騎の姿――ついにチーム・カヲリのお出ましとなった。

「さぁ、全力でいかせてもらうのだわ!」

「チーム・カヲリ……! これは本気以上を出さないといけなさそうですね……」

カヲリ達の姿にスズメはますますやる気を出す。

その意気込みに応えるように、装騎スパロー・パッチワークの体を包むアズルの濃度が更に深くなっていく。

「カヲリ様、いかせてもらいます!」

「ぃよっしゃぁ~、グレネードだぁ!!」

ナオの撃ったペロミサイルとミカコの撃ったボロヴィチュカのアンダーバレル・グレネード。

その爆風が装騎スパロー・パッチワークを包み込んだ。

「ちょ、直撃!」

「どうだぁ?」

漂う黒煙。

だがそれはすぐに掻き消され、装騎スパロー・パッチワークが飛び出してくる。

「無傷……!?」

「スパローがアズルを纏っている……アレが障壁代わりになってるのね」

「スパロー・無限駆動インフィニットドライブです!!」

そう叫ぶと、スズメはチェーンブレードを素早く投げ放った。

アズルを纏ったチェーンブレードは激しく回転しながら、的確にナオへと突き刺さり機能を停止させる。

その後を追うように駆けていたスズメがチェーンブレードに近づいたその時、チェーンブレードがひとりでにスズメの手元へと戻ってきた。

「ここまでくると一種の魔術ね」

そうつぶやくカヲリの額に僅かだが汗が滲んでいることに本人は気づいていない。

それを知る由もないスズメは、チェーンブレードを握ると同時に、左手に持ったバーストライフルでミカコ騎を撃破。

その隙を突いて、背後から襲い掛かってきたスミレ騎を――

「スパロー・ブレードシザーズ!」

背後に装備されたブレードウィングにアズルを纏い、ブレードウィングでスミレ騎を挟み込むように閉じる。

霊力の鋏はスミレ騎を挟み込み、その機能を停止させた。

そして、装騎スパロー・パッチワークと装騎ヴォドチュカがぶつかり合う。

「スパロー・突貫斬りチャージスラッシュ!!」

「ティラニカル・リベンジ!!」

アズルと魔力がぶつかり合い、空間が風を巻き起こした。

「スズメ――!!」

「カヲリ――!!」

スズメとカヲリの1撃1撃が交差するたび、周囲に衝撃が走り、大地を削る。

2人の間に会話はいらなかった。

全力で戦う――――それが2人の"会話"だった。

「シャープムーン・オービット!!」

「ティラニカル・タスク!!」

鋭い回転をしながら斬りつける装騎スパロー・パッチワークに、それを魔力の爪で迎え撃つ装騎ヴォドチュカ。

「勝ちますっ!」

「勝つわよ……っ!」

「うおっらぁぁあああああああ! 鳴り響け!! 俺のサウンドォ!!!!」

「何ですか!?」

「何よ!?」

突如激しく瞬いたアズルの閃光。

それと同時に、カヲリの装騎ヴォドチュカに強烈な弾丸が叩きつけられる。

その攻撃で止めを刺されるカヲリではないが、その間にスズメの1撃が命中。

カヲリ騎は機能を停止した。

「あれは……」

突如の乱入者――だが、その装騎にスズメは見覚えがある。

「コス!? ボウジット・コスか!!」

そう叫んだのはスズメではなく、カレルだった。

「ちょっとカレル! もしかして、あのバカを呼んだの!?」

「呼ぶわけないだろうが! ……スズメくんのお別れ会をするという話はしたが」

「えっ、あの――カレルさんたちとロッカーさんは知り合いなんですか!?」

カレルやカナールの言葉に、スズメと――そしてレイは驚きの表情。

「もしかして、スズメもコスと知り合いなの……!?」

「なるほどね。だからカレルの話を聞いて来たんだ」

スズメの言葉にカナールが驚き、レオシュは納得の声を上げる。

「ボウジット・コスはオレ達チーム・ウレテットの元メンバーだ」

「ウレテットの? それじゃあ、ウレテットを抜けた1人っていうのが……」

「ああ、コスだ」

「まさか、俺の次にロックなヤツらが新しいウレテットだなんて知らなかったぜ!! さすがチーム・ウレテット――ロックだぜ!! そんなお前に俺からロックなプレゼントを――」

「話はまた後で聞かせてもらいますね!」

いろんな意味で話が長くなりそうだと思ったスズメは、容赦なくコスの装騎を撃破した。

そこに霊子砲が数撃、スズメの元へと撃ち込まれる。

「ついに――お出ましですね!」

「行くぞウレテット諸君!!」

葬送行進曲スムテチュニー・ポホト!」

レオシュの霊子杖ムソウスイゲツが流星のように閃き、スズメを襲った。

「やぁ、スズメちゃん――思えば、スズメちゃんには色々と世話になったね」

「レオシュさん! こちらこそですよ」

「スズメちゃんが居なければボクは……ウレテットは変われなかったかもしれない。そう思うと、スズメちゃんには――」

「私だってレオシュさんたちのお陰でいろいろ分かったことがあります。私もレオシュさんたちに変えてもらえたんです」

「お互い様――ってことかな?」

「それがチーム、なんですよね? ウレテットから教えてもらった、すごく大切なことです」

「あははは、ボクもカレルからの受け売りだから――そこはカレルにお礼を言ってあげてね」

「はい! スィクルムーン・ストライク!」

「俺様も出るぞ!!」

そこに駆け込んできたのはカレルの装騎イェストジャーブ。

今回はあくまでお祭りバトルということで、ここぞとばかりにオリエンタルブレードを両手に構え、全力で前に出て来る。

「カレルさん! カレルさんの指示、結構いい感じになってきてますよ!」

「当然だ! 何せ、生まれつきの王者キングである俺様なのだからな!!」

「ですけど、前に出たくて大変じゃないんですか……?」

「まぁな。だが最近は俺様の指示でバトルを動かす――それがたまらなく癖になってきてるさ」

「それなら、よかったです! カレルさん――いろいろと、ありがとうございました!」

「終わらせんぞ! 俺様の華麗なる必殺技をくら――うわぁああああああ!!」

オリエンタルブレードを構え、カッコつける間にスズメはあっさりとカレルを撃破。

「バトルの腕はなかなか上がらないわよねアイツ……」

「ですね~!」

そこに飛んできた矢と通信。

スズメは同意しながら、矢を叩き落としカナールへと近づく。

そして、スズメのチェーンブレードとカナールのエッジボウのエッジがぶつかった。

「正直、スズメは結構無茶苦茶するから大変だったわよ。スズメがチームに来てからね」

「申し訳ないです。元から苦労してそうなのに、余計に増やしちゃいましたよねぇ」

「まぁね――でも、だから楽しかったのかもしれないわ。チーム・ウレテットの一員になるってことはね」

「苦労するから楽しい、ですか――ちょっと分かるかもしれませんね。カレルさんをどうするか、本当に大変でしたよ」

「結果オーライってね」

「そうですね。これからウレテットをしっかり引っ張っていってください! 影のリーダー!」

「裏番みたいに言うなってーの!」

ムーンサルト・ストライクの一撃でカナールの装騎ニェムツォヴァーも機能を停止する。

そして――

「最後がレイちゃん?」

「は、はいっ。よ、よろしくおねがいします!」

「思えば、レイちゃんとまともに戦ったことってないね」

「た、たしかに、そうですね」

レイの装騎バイヴ・カハがFINを走らせる。

あらゆる方向、角度から攻めてくるFINの攻撃を掻い潜り、スズメは装騎バイヴ・カハへとチェーンブレードを閃かせた。

「レイちゃん――私はレイちゃんにすごく期待してるんだよ」

「わ、わたしに……ですか? その、やっぱ、FINとか……」

「そうじゃなくて、レイちゃんはもっと強くなれるし――行く行くは……ウレテットを引っ張るようにだってなれるって、なんか思うんだ」

「そ、そう、ですかね……」

「そうだよ! 確かにFINもすごい便利な武装だけどね! でも、それ抜きにしてもレイちゃんの戦闘技術はすごいと思うよ。さすがはカラスバ先輩仕込みなだけありますよ!」

「そう、言われたのは――はじめてかもしれません。いつも、怖がられたり、なんか、疑われたり」

実際、スズメのいう通りレイは的確にスズメの攻撃を受け流し、受け止め、反撃を行っている。

大柄でやや扱い辛い超振動断頭剣エグゼキューショナーズを巧みに操るその姿に、圧倒的な強さを誇るチーム・ブローウィング1期生カラスバ・リンの姿がどこか重なった。

「私も同じです――私はステラソフィアで初めてみんなに心から認められて……嬉しかった――だから、それを返すことができたのなら……よかった」

「スズメちゃん……やっぱり、ステラソフィアに、戻っちゃうんですよね」

「……うん」

「…………スズメちゃんと、ずっと一緒に居たいな」

ポツりとつぶやいたレイの声は、だがスズメには届かない。

「レイちゃん――私がいなくなった後を、よろしくね!」

(嫌だ――スズメちゃんと別れるのは、嫌だ)

「ハーフムーン……スラッシャー!!」

(嫌だ――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!)

「受け止めた!? …………ですけど、このまま――――」

(どうせなら、ずっと――ずっとずっと戦っていたい!)

「ムーンサルト――――ストライク!!!!」

スズメの一撃で、レイの装騎バイヴ・カハはその機能を停止した。

「バトル終了! まさか全員倒してしまうとは思わなかったぞ」

「ふん、手加減した上に、変な乱入者まで来たんですもの。勝ってもらわないとこまるわ」

そういうカヲリの言葉は事実半分、負け惜しみ半分と言ったところか。

「これから後は俺様が手配した超絶美味なオードブルの時間だ。諸君、楽しみ給え」

「どうせなら写真も撮りましょ。思い出に1枚ね」

「いいね、写真」

「は、はいっ」

スズメとのお別れ会も終わり、そして時はめぐる。

バーリン駅にステラソフィアへと帰るスズメを見送ろうと、チーム・ウレテットをはじめとしたリラフィリアの仲間たちが集まっていた。

「もうステラソフィアに帰るの?」

「うん。荷物の整理とかもしないといけないしね。ちょっと早めに帰っとかないと」

嫌だ――帰らせたくない。

「まだ春休みは終わらないだろう? 遊びに来るがいい」

「うん。どうせボクたちもヒマだからね」

「別にスズメがステラソフィアに帰ったからって、チーム・ウレテットのメンバーだった事実は変わらないしね。そうでしょレイちゃん!」

レイの表情がどこか暗いことに気づいたカナールは、そう笑いながらレイの肩を叩く。

その衝撃に体を震わせながらも、必死に笑顔を浮かべてレイは言った。

「そう、です……また、いつでも会えます、よね」

嘘だ。

レイのその言葉は嘘だった。

レイは内心思っていた。

もう、2度と会えないんじゃないか――スズメがいなくなると自分にかかった"魔法"が解けてしまうのではないか。

スズメが行くことを止める――それは無理でも、せめて1言。

1言だけでも言わなければ。

(わたしの気持ちを――本当の気持ちを、言わないと!)

「すっ、スズメちゃん……!」

「何? レイちゃん」

お願い。

(お願い、スズメちゃん……)

「さよなら……っ!」

「うん、レイちゃん。またね!!」

そして、スズメを乗せた機関車は遠く小さくなっていった。

行ってしまった。

(スズメちゃんは、行ってしまった……)

遠くなる機関車――スズメとの絆が薄れていくような、チーム・ウレテットとの絆が薄れていくような……そんな錯覚。

(本当に、見送ってしまってよかったの?)

心の中のわたしがそう問いかける。

「でも、仕方ない、ことだから」

(そんなことで納得できるの? 貴女は、自分の本当の気持ちをただの1つも伝えられていないでしょ?)

「そう……だけど、でも、もう、やり直すことなんて……できないっ」

(いいえ、できるわ。貴女なら――やり直すだけじゃない――――永遠に幸せの中にいることだって)

「幸せ…………?」

気づけば、ワタシは涙を流していた。

黒い、黒い涙を……。

「…………"またね"、スズメ」


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