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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
リラフィリア:ワケアリの転入生編
224/322

ワケアリの転入生

「夏休み、楽しかったねー!」

「そうね。こんなにワイワイしたのは初めてよ」

夏休みが明け、授業が始まるその日。

スズメたちチーム・ウレテットは何気ない雑談に花を咲かせていた。

「そういえば、皆でバラトンに言っただろう? あの時、どうしてスズメくんはカウガールの恰好をしてたんだ?」

「あ、確かに。わたしも気になってたわソレ」

「あれはちょっとバイトしてたんですよね。保安官の」

「保安官て……」

「それよりも、私としてはカノンちゃんのライブに言った時にカレルさんが白タキシードだった方が……」

「家のパーティーを抜けてきたんだ。仕方なかろう」

「わたしはてっきり、気合いの入れ方間違えたのかと思ってたわ」

「私もそうですよ」

「俺はそんな痛いヤツじゃない」

「いやいや、痛いヤツだから!」

「ところでさ」

そんな雑談を繰り広げる中、レオシュが言った。

「ボクとスズメちゃんの席の間に机が1個増えてるんだけど、コレ何かな」

「うわぁぁああああ、本当です! いつの間にか隣に席が増えてます!?」

「わっ、本当! 全然気づかなかったわ……」

「ほう、なかなかの洞察力だなレオシュ」

それは、隣り合わせになっているスズメとレオシュの机の間で橋を渡している新たに増えた1つの机。

机の中には何も入っておらず誰も使用していない様子。

教室を見回してみるが、他の机や椅子は足りているので、誰かが机を移動したまま忘れたものではなさそうだ。

と、言うことは……

「もしかして、転校生!?」

「そうみたいだわ」

スズメの言葉に答えたのは、カヲリだった。

「スミレの情報で、見知らぬ女子生徒の姿を見た、と。きっと彼女が転入生ね」

「へぇ、転入生が来るの。その机の位置だと、その子もウレテットかしら」

今度そう言ったのはラヴィニアだ。

「だからって、私とレオシュさんの間に机を入れるって無理矢理ですね」

「そうだよね。カレルとカナールの間でもいいのにね」

「いや――転入生にカレルの横はやめた方が良いと思うわ」

「それも確かに」

そんなこんなしている間に、チャイムが鳴り、クラス担任のマーキュリアス・フレダが姿を現した。

「今日はビッグニュースがあるわよ。なんと、このクラスに新たな仲間が増えます!!」

クラスはすでにその噂で持ち切りだったとは言え、改めて言われ一気に盛り上がる。

そして、フレダに促され1人の生徒が教室へと入ってきた。

ボリューミーな黒髪の色白な女子生徒だ。

赤縁眼鏡のその向こうで伏せる目と、慌ただしく右往左往する瞳から注目されるのは苦手なタイプだということが分かる。

「それじゃあ、自己紹介をお願いしてもいいかしら?」

「カッ……カラスバ・レイです…………よ、よろしく、おねがいします」

「カァ――――!!」

それに合わせるように、彼女の肩に乗った烏が1声啼いた。

「何か質問とかあるかな?」

「はいはい!」

フレダの言葉に、早速手を上げたのはカナールだ。

「すっごく気になるんですけど、カラスバさんの――所属チームってウレテットですか?」

「それは後で言おうと思ってたんだけど、そうよ。レイちゃんはチーム・ウレテットに所属することになるわ」

「でも、わたし達4人いますし、カラスバさん入れたら5人になっちゃうじゃないですか」

「スズメちゃんは今年度一杯だから、そのことも見越しての決定よ」

「あ……そうか」

そう、スズメはあくまで1年間この学校に編入という特殊な形で在学している。

予定では次の学年ではスズメはステラソフィアに戻る予定だ。

「それじゃあ、他にレイちゃんへの質問はありますか?」

「はい! レイちゃんはどんな機甲装騎が好きですか?」

「え、えっと、ル、ルシフェル……」

「好きな食べ物は?」

「さ、サムゲタン」

「趣味って?」

「に、日記」

「ひのき派? ひいらぎ派?」

「の、ノーコメントで……」

「資産総額は?」

「な、なんですか……?」

「セーラーとブレザーどっちが好き!?」

「じゃ、ジャージ」

「ストップストーップ! 質問終了! っていうか変な質問しない!」

フレダの言葉に、安心したようにため息を吐くレイ。

「それじゃあレイちゃん。レイちゃんの席は向こうよ」

「は、はい」

「スズメちゃん、編入生ってことで立場も似てるし、レイちゃんを頼んだわよ」

「私がですか!?」

「ああ、任せろ! チーム・ウレテットは王者のチームだからな」

「何でアンタが答えんのよ」

「キングだからな」

もはやいつも通りのやり取りだが、それを始めて目にしたレイは少し戸惑っている。

そんな彼女にスズメは手を伸ばした。

「レイちゃん、これからよろしくね」

不意にレイの頬が染まり、瞳が大きく開かれる。

レイは緊張気味に差し出されたスズメの手を握り返し、頷いた。

「ところで、レイちゃんのカラスバって名字は……」

スズメはその名に聞き覚えがあった。

それはスズメの大先輩であるカラスバ・リン。

ステラソフィア女学園チーム・ブローウィングの1期生であり、先の戦いでは敵としてその前に立ちはだかった因縁浅からぬ相手だ。

「リンさんはわたしの伯母、です」

「ってことはカラスバ先輩の親戚なんだねー」

「は、はい……」

「ふーん」

「そ、それだけ……ですか?」

「え、何が?」

レイの言葉にスズメは戸惑う。

くだらないことを聞いて怒らせたのか?

相槌がテキトーに聞こえたのか?

色んな考えがスズメの頭を駆け巡る。

「だ、だって、カラスバ・リン、ですよ……? 防衛戦でマルクトを……ステラソフィアを…………」

その言葉で、スズメは合点がいった。

彼女はこう言っているのだ。

裏切り者の親族を責めなくてもいいのか、と。

「レイちゃんはレイちゃんだからね」

「おい、何勝手に親睦を深めようとしてるんだ!」

それとなくいい空気だった2人の間に、突如として、カレルが割って入る。

「俺様はイェストジャーブ・カレル。キミが所属するチーム・ウレテットのリーダー――つまり、キングだ!」

「あの、カレルさ――」

「まてまてスズメくん。キングにビシっと決めさせてくれ」

小声で何か言いたげなスズメを制して、カレルはレイと対面すると言った。

「カラスバ・レイくん。ようこそ、チーム・ウレテットへ! 俺達は君を歓迎す――――ぐあっ!?」

「カレルくん、授業をはじめましょう?」

カレルの目の前には、物差しを鞭のように構えながら満面の笑みを浮かべるフレダの姿。

その物差しの1撃で、カレルの額には四角い後が残っている。

「だから言おうとしたのに……」

そんなカレルの姿を見て、スズメは呟いた。


「さて、レイくんがチームに入るにあたって、どうしても確認しておかなければいけないことがある」

「レイちゃんの使用装騎と戦闘スタイルですね」

「…………ああ、そうだ!」

「何今の間」

「レイちゃんの機甲装騎を見せてくれないかな?」

「やっぱり、見せないといけない……ですよね」

スズメの言葉にどこか気乗りしなさそうなレイ。

「恥ずかしがる必要は無い! ホラ、パーッと見せてくれたまえ」

「アンタね、少しはデリカシー無いの!? って言いたいけれど、装騎は遅かれ早かれ見せてもらわないといけないものだし……」

「そ、そうですよね」

カレルとカナールの言葉に静かに頷くと、レイは自らの装騎を呼び出した。

暫くして、地下ハッチが開くとそこに一騎の機甲装騎が姿を現す。

夜を思わせる黒を基調とし、ところどころにくすんだ山吹色のポイントが入れられている機甲装騎。

背中にはフィン状の物体が複数背負われ、まるで羽毛のようにも見える。

そしてその機甲装騎は、その場の誰もが目にしたことのない装騎だった。

「こ、これがわたしの装騎……バイヴ・カハ、です」

「すっごぉぉおおおい、新型!? 新型ですか!!??」

スズメは興奮したように装騎へと駆け寄る。

「型番は? スペックは? 武装は? 特徴は?」

「え、えっと……正式な名前はNPS-L1ライラ、武装は、その、背中についてる6つのフィンみたいなヤツが、そう、です」

スズメはレイからこの機甲装騎の情報を見せてもらう。

懐妊の天使、夜の天使の名を持つ装騎ライラは次世代の機甲装騎を開発しようという計画、新装騎開発(NPS)プロジェクトによって開発された装騎の内の1騎。

その最大の特徴は、背部に取り付けられた大小6つのフィンなのだが……

「なるほど……それじゃあ、レイちゃん! ここは――」

「俺様とバトルだ!!」


屋内練習場で2騎の機甲装騎が相対する。

方や装騎イェストジャーブ。

久々のオリエンタルブレード二刀流の特攻仕様。

対する装騎バイヴ・カハ。

小型軽量で取り回しがいいレイヴンズサブマシンガンを装備している。

「ふっ、レイくん。全力で来るがいい!」

「は、はい……やれるよね」

レイの言葉に、コックピットに増設された補助席に止まる烏が「カァー!」と啼いた。

「盛者必衰!」

「それを言うなら先手必勝!!」

カナールのつっこみを背に受けて、装騎バイヴ・カハ目掛けブースト駆動。

装騎イェストジャーブは一気に距離を詰める。

「きゃ!」

強烈なスピードでの接近に、一瞬驚きの声を上げながらもレイは装騎バイヴ・カハのフィンへとアズルを回す。

そして……フィンから放たれたアズルブーストによって装騎イェストジャーブの攻撃を緊急回避した。

「ライラ型の特徴はあのブースト機動なのかな? ジェレミエル型よりはルシフェル型に近い感じだけど」

そういうレオシュにスズメは首を横に振る。

「あの装騎はもっとすごいですよ」

装騎バイヴ・カハは装騎イェストジャーブから距離をとりながらその手に持つレイヴンズサブマシンガンをばら撒く。

「接近させたら、だめ……だから」

レイは意識を集中させる。

まるで気力を身体中に駆け巡らせるように、心を落ち着かせる。

「お願い、モリガン!」

レイの言葉で、装騎バイヴ・カハの背中に背負われたフィンの1つが反応した。

そのフィンは装騎バイヴ・カハの背を離れ、地面に落下するかと思われたその時、空中でピタリと静止。

瞬間、その尾からアズルの輝きを放ちながら装騎イェストジャーブ目掛けて飛翔する。

「遠隔攻撃用の子機だと!?」

「モリガンに続いて、マトロナエを射出……マーハ、ヴァハ、マカは威嚇。本命はモリガン、あなた!」

先に放たれたモリガンと名付けられた大型のフィンに続き、それよりは1回り小さい3機のフィンが放たれ、装騎バイヴ・カハの背後で三角形を描いた。

3機の小型フィンによる霊子砲の雨を必死で避けようとするカレルだが、その攻撃に気を取られすぎた。

「モリガン、フィニッシュ!」

その隙を狙われ、大型フィン・モリガンの霊子砲に焼かれ装騎イェストジャーブはその機能を停止した。

挿絵(By みてみん)

カラスバ・レイ


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