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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
リラフィリア:曰く付きの編入生編
223/322

(ネタに困ったら)遊園地に行こう!

気づけば7月も半ばに入り、多くの学生が待ちかねるあの日がやってくる。

それは、そう――夏休み!

浮かれた空気の中、カレルが言った。

「チャペクランドって知ってるか?」

「確か、来週オープンするテーマパークだよね」

「アンタん家が作った遊園地でしょ? 知ってるわよ」

「そう言えば、テレビでコマーシャルをやってたのを見ましたね」

それぞれの言葉にカレルは頷くと、鞄から何やらチケットのようなものを取り出す。

「実はだな、明後日と明々後日にチャペクランドのプレオープンがあるんだが、どうだ?」

「プレオープンですか!」

「ああ、身内を呼んでという規模の小さなヤツだがウレテットは俺の家族ロディナだからな」

「お金とかかかるの?」

「レオシュ、現金なことは言うな。もちろんタダだ!」

「おお!」

「まぁ、行けるなら行ってあげても良いわよ」

「そうだね」

にわかに盛り上がるカナールとレオシュ。

だがふと、スズメの頭にあることが過って気分が乗り切れない。

「どうしたスズメくん」

それに気づいたカレルがスズメに尋ねる。

「いえ、ちょっとアナヒトちゃん――私と同居してる人たちが気になって……」

「確か特技科のフニーズドさんと、バーリンの中学に通ってるって言う」

「うん。アナヒトちゃんが一番、ね。それとフニャちんも」

「ふむ……良いだろう! スズメくんの家族は俺の家族だ。全員連れてくるがよい」

そう言うとカレルはご丁寧にスズメの分に加え、3枚のチケットをスズメに手渡した。

「フニャちんも?」

「ああ、王者クラールもな!」

「っていうか猫が入れんの……?」

「大丈夫だ! 俺が言うんだから大丈夫だ!!」

と、言うことでスズメたちは大型テーマパーク・チャペクランドに行くこととなったのだ。

「わぁ、ズメちん、すごいね!」

「遊園地……」

「にゃあ」

チーム・ウレテットのメンバーに加え、ロコヴィシュカ、アナヒト、フニャトを加えた6人と1匹はチャペクランドへと来ていた。

「何からいく?」

「わぁ、色んなアトラクションがあるんですねぇ」

カナールが広げた地図を見てスズメが感嘆の声を上げる。

チャペクランドは大きく分けて5つのエリアで構成されており、それぞれのエリアにはテーマが設定されている。

そのテーマに沿ったアトラクションを楽しむことができるというのだ。

南にある入口から見て正面――巨大に聳えるチャペク城が目印のチャペクアイランドエリアを中心に、北西:神秘と冒険のアースガルトエリア、北東:未知と恐怖のノチュニームーラエリア、南西:夢と希望のポハートゥカエリア、南東:未来と発見のウースタフエリアの5つがそう。

6人と1匹は一先ず、南西の夢と希望のポハートゥカエリアから時計回りに見て回ることにした。


:夢と希望のポハートゥカエリア:

ここは各地にあるおとぎ話をモチーフに、明るく楽しい雰囲気を持つエリア。

「特に家族連れやカップルにオススメだな」

「へぇ……目玉アトラクションは?」

「船に乗って妖精の国を旅するほのぼのアトラクション……ナーサリィテイル・ワールドだな」

「微妙に聞いたことあるようなアトラクションね」

「気のせいだ」

スズメたち6人と1匹はスタッフに案内されて、白やピンクで彩られた1隻の船へと案内された。

「この船に乗って行くんですね!」

「なんかファンタジーって感じだね!」

「ふぁんたじぃ?」

どこかほんわかとしたメロディーと共に、船は出港する。

花々や木々に覆われた世界を進み、動物たちや妖精たちが観客をお出迎え。

更には霊子ホログラムを利用した立体映像で投映された妖精たちや、雪のような輝く光が船上を吹き抜けていく。

「……きれい」

「本当ね」

どうやら気に入った様子のアナヒトに、カナールが相槌を打った。

「ここはロマン焦がれる女の子も対象にしてるからな……カナールがハマるのは意外だが」

「1言多いわよ莫迦」

空気の読めないカレルの1言に、カナールの手がカレルを叩く。

暫く、妖精の住む森を抜けると、巨大なトンネルへと差し掛かった。

そこはホタルの輝きのような光で溢れるトンネル――そして、抜けた先では全てが巨大になる。

草花が巨木となり、草むらがジャングルとなる中を船はすすんでいった。

「綺麗で可愛いけど、それだけですか……」

「これは小さいお子様でも楽しむ為の全年齢のアトラクションだからな。スズメくんみたいなアクション好きにはやや物足りないだろうが」

「うー、綺麗ですし、霊子ホログラムも目を見張るものがあるんですけどねぇ」

「そうそう! この霊子ホログラムってどんなの使ってるのか気になるよねズメちん!」

「ね、ロコちん!」

「…………この2人は」

違った方向への盛り上がりを見せるスズメとロコヴィシュカを見てカナールはため息を吐く。

やがて、スケールが元に戻るとお城の中のエリアへと移る。

妖精たちの舞踏会を進むと、終点へと辿り着いた。

「意外と良いアトラクションだったわね」

カナールの言葉にアナヒトが首を縦に振る。

「デートとかで良さそうだよね。相手いないけど」

にこやかに言ったレオシュの言葉によって、スズメたちの間に一瞬の沈黙が流れた。


:神秘と冒険のアースガルトエリア:

「わー、ここは冒険の匂いがしますねぇ」

「冒険の匂いって何なの……?」

ポハートゥカエリアと同じくファンタジー調の世界ではあるが男の子などの活発な人向けになっているアースガルトエリア。

ここでは体感型アトラクションや、実際に体を動かして楽しむアトラクションが楽しめる。

「ここのオススメは何なんですか!?」

すでに雰囲気だけで興奮しているようなスズメがカレルに尋ねた。

「そうだな……ここならライジング・ビフレストが一番だろうが……」

「あ、アレだね! ジェットコースターみたいな乗り物なんだ!」

「ジェットコースターというか、なんとかザ・ライド?」

「ああ、そうだ。だから子どもと――猫も無理だな」

「にゃあ……」

そう言ったのはフニャトではなくスズメだ。

「身長制限にかかるヤツは居ないと思うが……さすがに猫は無理だな」

「にゃあ……」

と、言うことで乗れないフニャトは乗るのを拒否したカナールとロコヴィシュカと共にスズメたちの帰りを待つことに。

「アイスクリームでも食べましょうか」

「そうですねぇ」

「にゃあ」

ライジング・ビフレストは屋内型のジェットコースターの一種であり、それに様々なホログラム映像などによる演出効果を加えたアトラクションだ。

このアトラクションにはストーリーがあり、アースガルトの戦士の一員となりラグナレクを戦い抜くという物語を追っていく。

安全装置でしっかりと身を守り、スズメたちが乗るコースターが発車した。

「うお、うおお!? うおおおおおお!!!」

虹の光を放つレールを走りながら、非常に楽しそうな叫び声を上げるスズメ。

「ぎゃぁあぁああぁああああああああああ!!!!!!?????」

明らかな悲鳴を上げるのはカレル……。

ニコニコと笑顔を浮かべながらホログラム映像を眺めるレオシュに、真顔で周りを見回すアナヒト。

アナヒトは意外と平気なようだった。

疾走するコースターに合わせるように、世界が滅び、闇が到来し、戦いの時がくる。

死者の軍勢を駆け抜け、巨大な蛇や狼の脇を抜け、神々の戦いが駆け巡る。

やがて炎が世界を包み込んだ後――光と共に巨木が姿を見せ、その中へ吸い込まれ――アトラクションは終点へと辿り着いた。

「うおおおおおお、なんか凄かったですね! すごかったですね!」

「そうだね」

興奮するスズメに微笑むレオシュ。

そして、首を縦に振り続けるアナヒト。

「ロコちんたちにも伝えたい! この興奮を!!」

ダッと駆け出すスズメの背後で、ズサン! と何かが倒れる音がした。

「結構美味しかったねぇ、アイスカリバー」

「莫迦みたいに高かったけどね……」

アイスを食べ終わり、スズメたちを待つロコヴィシュカとカナールの元へスズメが駆け寄ってくる。

「どうだ――とか聞く必要なさそうね」

興奮覚めやまぬスズメの表情を見ると、尋ねるまでもなくスズメのお気に召したということが2人には分かった。

スズメの話を頷きながら聞くロコヴィシュカの隣で、カナールがふと気づく。

「何か1人キョンシーみたいなのが居るけど」

それはこのアトラクションで完全に放心状態となったカレルの姿だった。

「キョンシーってよく分からない例えだね」

「よく分からないって何よ!」

「カレルって意外とこういうのダメなんだね」

カナールの言葉も軽く流すマイペースなレオシュ。

そんなレオシュにはカナールも何だかんだと言う気力も無くなる。

「とりあえず、どうするのよこの死体」

「死体は、埋葬……」

アナヒトの言葉通り(?)スズメたちは次のエリア――未知と恐怖のノチュニームーラエリアへと向かうことにした。


:未知と恐怖のノチュニームーラエリア:

今度のエリアは廃墟となった街のような建物たちが聳えるホラー系アトラクション中心のエリアだ。

「このエリアのオススメは最恐を目指したお化け屋敷……退廃病棟だ!」

「なんかいろんな意味でありきたりなんだけど……」

「カナールは相変わらずツッコミが厳しいな」

「っていうかアンタいつの間に復活したのよ」

「埋葬はされたくないからな」

退廃病棟の入口で、ふとカレルがこんなことを言った。

「さすがにお化け屋敷にこの人数で入るのはどうかと思う。ここはグループを2つに分けてみたらどうだろう?」

「いいね、それ」

カレルの言葉にレオシュは乗り気。

残りの面々も頷いた。

「それなら、男どもは2つに分かれましょうか」

「やったね」

「そうか?」

即席のくじ引きの結果、出来たグループは以下の通りだ。

「アナヒトちゃんを、アナヒトちゃんをよろしくねェ!!」

「ズメちん、大丈夫だって……」

「あはは、猫と一緒にお化け屋敷なんて新鮮だね」

「にゃあ」

スズメ、ロコヴィシュカ、レオシュ、フニャトの3人と1匹のグループ。

「さぁ、俺様について来い!」

「アンタお化け屋敷大丈夫なの……?」

「……楽しみ」

カレル、カナール、アナヒトの3人グループ。

スズメグループが先に入り、次にカレルグループが入ることが決まると、早速スズメたちは退廃病棟へと足を踏み入れた。

独特の雰囲気に入口の時点で胸が騒ぐ。

「うわぁ、すごいね……」

「本当だね。すごい技術だよズメちん!」

「……ソッチ?」

どうしても技術的な部分に目が行ってしまうロコヴィシュカに、思わずレオシュがつっこむ。

ところどころ、謎解きにも似た要素も加わり、参加しながら進んでいくこの退廃病棟。

突然の物音や、スタッフふんするお化け。

更にはホログラム機能や様々な仕掛けを使った心霊現象が参加者を襲っていく。

「ぎゃぁぁあああああああああぁぁああああああああ!!!!????」

「うわっ、ビックリした!?」

「何、演出?」

「……えっと、今のは多分」

突然響き渡った悲鳴が、スズメたちを驚かせた。

演出?

いや、そうではなかった。

「うっわ!!?? ビックリさせないでよ!!!!」

「すごく、ビビってる……」

「ビビ、ビビビビビビビビビビ!!!」

カナールに盾代わりにされるカレルの口からは言葉にならない言葉が漏れる。

そう、先ほどスズメたちを驚かせたあの声はカレルの悲鳴だった。

「ほら、ほらほら、さっさと行くわよ!」

「俺様を盾にしながらそんな威勢の良いこと言うではない!」

そう言いながら、カレルもカナールも前に進もうとはしない。

「れっつごー」

そんな2人の背中をアナヒトが更に押しながら前へと進んでいく。

意外と良い組み合わせだ。

「スズメちゃんたちは結構こういうの強いんだね」

「霊子ホログラム、霊子ホログラム……」

「すっごい怖いですけどね! そう言うレオシュさんも平気そうじゃないですか」

「最新技術……最新技術……っ!」

「まあね……ある意味フニーズドさんが一番ホラーなんだけど」

「ここね……ここだ、ここ! 反発力のある霊子ホログラムが使われてるっ!」

「そ、そうですね……」

「にゃあ」

お化けや仕掛けには見向きもせずにあっちこっちをベタベタと触るロコヴィシュカの姿に、スズメもレオシュも苦い笑みを浮かべた。

「ぎゃぁぁああああああああああああああああ!!!!????」

「ひゃぁぁああああああああああああああああ!!!!????」

「……うるさい」

そしてそんな3人と1匹の後から続くカレルグループでは絶えず悲鳴が響いていた。

「うぎゃぁあぁああああ!!!???」

「ひぇぁああああああ!!!???」

「……軟弱」

2人の様子など意にも介さずアナヒトはグイグイ押す。

グイグイ押す。

「あー、楽しかったね」

「ハイテク、ハイテク、ハイテック……!」

「そうだね」

「にゃあ」

先に退廃病棟から出たスズメたちは、カレルたち3人が出てくるのを待つ。

それから暫く、

「あ、出てきたよ」

「アナヒトちゃん、大丈夫!?」

「どう見てもカレルとカナールの方が大丈夫じゃなさそうだよ」

レオシュの言葉通り、楽しかったのか瞳を輝かせるアナヒトに押されて、カレルとカナールが放心状態になっていた。

「楽しかった」

ほくほくした表情のアナヒトにスズメも一安心。

「良かったぁ……でも、このリビングデッド……どうしましょうか」

「埋葬してく?」

「埋葬埋葬」


:未来と発見のウースタフエリア:

「このエリアは様々な技術のギャラリーや、体験ができます――だってロコちん!」

「最・新・技・術!!」

最早ついて来れそうにないカレルとカナールは近くのベンチに座らせ、スズメたちは未来と発見のウースタフエリアの目玉施設フューチャーミュージアムに来ていた。

そこには、今まで使われていた技術から今も使われている技術――そしてこれから実用化されていくであろう技術についての簡単な説明と展示、そして体験ができるスペース。

それ以外にも、トリックアートだったり科学を利用したアトラクション、魔術を利用したアトラクションなどもあり、子どもから大人まで楽しめるようになっている。

「霊子ホログラムを利用したゲームだね」

そんな中、ゲーム好きのレオシュの目に映ったのは霊子ホログラムを利用して室内に居ながら異世界を冒険しているように遊べるゲームの展示。

「霊子ホログラムと言えば、ステラソフィアにもソレを利用したシミュレーターがありましたねぇ」

「へぇ、実際のGがかかったりするような?」

「はい、そうです!」

「すごいね! でも、そういうシミュレーターってまだ実用段階じゃないんじゃ」

「私の先輩が独自に作ってたんですよね」

それはスズメが所属していたチーム・ブローウィング――そのサポート班の1人だったステラソフィア機甲科生ケツァール・カトレが作ったシミュレーターのことだった。

「そうそう、あったねあった! わたしも触らせて貰ったよ!」

ロコヴィシュカも学園祭でステラソフィアを訪問した際、そのシミュレーターを触らせてもらったらしい。

「ボクも1度くらいは触ってみたいなぁ」

「いつか見せますね! 今でもステラソフィアにあると思うので」

「でも、勝手に使ってもいいの?」

「大丈夫ですよ。カトレ先輩だってサンプルが増えて喜ぶはずです」

「……わたしも、そう思うな」


:中央チャペクアイランドエリア:

カレルとカナールも復活し、スズメたち6人と1匹は中央の小島へと至る大橋を渡り、チャペクアイランドエリアへと来ていた。

小島の中には様々な店が立ち並び、ここではグッズを買ったり食事をとったりできる。

「あのお城、なんかあんまり馴染みのない形してるわね」

「ああ、あの城は東洋の城塞をモチーフにして造ったんだ。洒落てるだろ?」

「東洋の城、ですかぁ。私は好きですね!」

「そうだろそうだろ! ちゃんと、敵が攻めてきても良いように工夫して作ってるんだぜ」

「……遊園地の城に誰が攻めてくるのよ」

カナールの言い分ももっともだ。

そんなチャペク城の城下町で、スズメたちは軽く間食を取ることにした。

「あー、今日は楽しかったね」

「そうだろ? また来よう」

「そうね、みんなでね」

「最新技術も最高だったなぁ!」

「あはは、フニーズドさんソレばっかりだね」

「最高デイ」

「にゃあ」

その後、お土産屋さんをみんなで物色。

「そういえば、これってマスコット?」

カナールが手にしたのは、どこかロボットのようにも見える独特の雰囲気を持ったゆるキャラ。

言うなれば、某星大戦に出てくる2大ドロイドを2つにしたようなキャラだ。

「ああ、チャペくんだ」

「このマスコットの着ぐるみがどこかに居たりすんの?」

「ああ、今は居ないがな」

「え?」

「中の人を絶賛募集中だ。どうだ、応募してみるか?」

「遠慮しとくわ」


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