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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
リラフィリア:曰く付きの編入生編
222/322

再戦のラヴィニア

「長く険しい苦難の道、厳しい日々の猛特訓……」

「そんな中で、私たちは生まれ変わった! 隊長、今こそ!!」

「ええ、編入生! そして、チーム・ウレテット! チーム・ハルバートと――試合ヴァールチュカをしなさい!!」

真剣で熱い眼差し。

溢れ出る威勢を身に纏い、セケラティッチュ・ラヴィニア率いるチーム・ハルバートが声を上げた。

無言ではあるがやる気を見せるストロイルク・ジェッシィに、なにより変化が見られたのはヴィトリーシェク・ヴァープノとチューリングラット・シノリアの2人。

“チーム”としての結束を強めていたのは、ウレテットだけではないと言うことが感じられる。

そんな火花が散らんと言う状況で、カレルが口を開いた。

「おい、その言い方だとスズメくんがリーダーみたいじゃないか。いいか、チーム・ウレテットのリーダーは――」

「ここでそーいう言葉は要らない!」

不満を口にするカレルの頭をカナールが手で押し付ける。

その様子を見てスズメは苦笑しながら、そして、カレルの気持ちを晴らす為に言った。

「チーム・ハルバートがウレテットと戦いたいみたいですよ。どうしますカレルさん?」

スズメにそう話を振られただけで、一気に表情が明るくなるカレル。

ふん、と陽気に鼻を鳴らしながら、

「良いだろう。俺様の最高のチームが相手をしてやろうではないか」

と胸を張った。

「本当、単純だよね」

レオシュも苦笑しながら肩をすくませる。

「ラヴィニアさん。聞いての通りです。ヴァールチュカ、受けて立ちます!」

「さぁ、これが“本当の”リベンジマッチよ」

斯くして、チーム・ウレテットとチーム・ハルバートの戦いが幕を上げたのだった。

「では、行くぞウレテット! スズメくんたちに続け!!」

「「「諒解!」」」

「スズメとレオシュのツートップ……フォーメーションが変わってる」

「噂に聞いた通りね。“ルニャーク”が後ろに下がるなんてね」

「これは銃弾がりますね」

「でも、ハルバートだって変わったってことを見せておやり!」

「ヴァープノ、先陣を切る」

静かな声とは裏腹に、威勢よく飛び出したのはヴァープノが操るヘルメシエル型装騎。

その快速装騎に武装は超振動の刃を備えたナックルカバー――ナックルスラッシャーのみということから驚くべき機動性を発揮する。

「士気は十分。ですが――」

「ええ。シノリア!」

「雨よ、降れぇ!!」

シノリアのラジエル型装騎が、シノリアの言葉に従うようにバックパックから何かを放出した。

「レオシュさん、落下機雷シュートボンブです!」

「シュートボンブ!?」

シノリア=ラジエルが射出したそれは空中で傘を開き、中空を漂うように装騎スパロー・パッチワークと、レオシュ=バルディエル目がけて落下してくる。

機雷ボンブの名の通り、その先には触発式爆弾が取り付けられているのは言うまでもない。

「サエズリ・スズメ、スパロー。行きます!」

「行くの!?」

「行っちまえ!!」

驚愕するカナールの後ろで、カレルのGOサイン。

舞い散るシュートボンブの中、装騎スパロー・パッチワークは一気に駆け抜け、ヴァープノ=ヘルメシエルへと肉薄する。

「チェーンブレード!」

そしてチェーンブレードを構え、一気に振り払った。

「負けまないっ」

その1撃を、ナックルスラッシャーが受け止める。

ギィィギギギギギィイイィィィイイイイイ

激しい音と火花を散らし、両者の1撃が交差した。

「曲射……」

動きが止まった装騎スパロー・パッチワークに向かって、空からジェッシィ=シェテルが放った霊子矢が降り注ぐ。

装騎スパロー・パッチワークを狙う為に壁となったヴァープノ=ヘルメシエルを避けるように、弓なりの軌道で装騎スパロー・パッチワークを狙ったのだ。

「良い、射撃ですね。ですけど」

「任せて」

その霊子矢の攻撃を――打ち払ったのはレオシュ=バルディエルの持つ霊子杖ムソウスイゲツ。

「思ったよりも早く抜けてきたわね……」

「ふっ、俺様の完璧な指揮があれば造作もないことだ」

シュートボンブによって進行を阻まれたレオシュ=バルディエルだったが、カレルの指揮とカナールが操る装騎ニェムツォヴァーによる援護射撃を受け、一気に機雷原を突っ切ってきていたのだ。

「ならば、アタシも前に出るとするわ。シノリアも」

「うんっ」

そこでやや後方に配置していたラヴィニア=バルディエルとシノリア=ラジエルが前に出る。

「アタシはヴァープノとスパローを叩くわ。シノリアはバルディエルを」

「諒解ですっ」

「カナールは任せて。ルニャークは無視して良い」

「ラヴィニアとヴァープノくんの2騎でスズメくんを叩く気か。シノリアくんがレオシュを――ジェッシィは…………おい、誰も俺様のことを見てないんじゃないか!?」

「アンタ弱いから……ッ」

「目に物言わしてやるぜ!!」

カレルの装騎イェストジャーブは、その手に持った突撃銃M64を撃ち放つが、その銃撃は見事に明後日の方向へと流れていく。

「あそこまでセンスないと逆に才能ですよ……」

「本当そうよね」

「2人とも、聞こえるよ……」

「俺様の銃撃を受けろぉぉおおおおおおおおおおお」

「聞こえてないようですね」

「セーフセーフ」

「ヴァープノ、連携攻撃行くわよ!」

そこにラヴィニア=バルディエルが斧槍シュタルケスハーツを装騎スパロー・パッチワーク狙い、一気に振り払う。

斧槍系ハルバードは動きが単調になりやすいんですよね」

その一撃を、装騎スパロー・パッチワークは身を沈みこませて回避。

だが、そこに――

「スパロー、勝負」

ヴァープノ=ヘルメシエルが一気に踏み込んできた。

「ヴァープノは風のようヴィェトルナーよ」

「それは俺に視えている! カナール!」

「弓は引かれたわ――後は、」

「おっ」

ジェッシィ=シェテルが撃ち放つ霊子矢の隙を突き、装騎スパロー・パッチワークを援護するために弓を引き絞った装騎ニェムツォヴァー。

その集中を打ち消すように、通信から聞こえたカレルの間抜けな声。

カレルの声の理由はすぐにわかった。

「って、ちょっと莫迦カレル! なにしてくれてるのよ!!」

突如としてカナールの視界を奪った爆炎と閃光。

それは、カレルの装騎イェストジャーブが撃ちまくっていた突撃銃M64の弾丸が、偶然にもシュートボンブの1個に命中したことがきっかけだった。

カレルの誤射が巻き起こした1つの爆発から、誘爆に次ぐ誘爆――――その結果起きた、カナールの視界を遮る大爆発。

「これじゃあ、援護射撃が――――」

できない。

そう言おうとしたカナールは何かを感じる。

胸の高鳴りと奇妙な予感。

(この1射は――――中てられる)

カナールは爆炎の向こうに装騎スパロー・パッチワークと、そこに1撃をくわえようとしているヴァープノ=ヘルメシエルの姿を見た、気がした。

「ああもうっ、どうにでもなりなさい!!」

装騎ニェムツォヴァーはその手を放す。

解放された1本の矢は、爆炎に吸い込まれ姿を消した。

風を纏い、空間を斬り、爆炎を突っ切ったその矢は――――

「さすがカナールです!」

ヴァープノ=ヘルメシエルを的確に貫き、その機能を停止させた。

一気に身を退いた装騎スパロー・パッチワークが居たその場所に、ラヴィニア=バルディエルの斧槍シュタルケスハーツが叩き付けられる。

「まさか、狙撃を成功させるなんてね! ジェッシィ!!」

「…………ッ、弾幕が、薄かった」

スズメが一安心したのも束の間。

突如として、また違う爆音が響き渡った。

「!! レオシュさん!?」

それは、レオシュ=バルディエルがシノリア=ラジエルの攻撃によって爆発に飲み込まれた音だ。

シノリア=ラジエルが手に持つ武装は、複数の爆弾を繋げ鎖のようにした連鎖爆弾チェーンマイン

チェーンマインがレオシュ=バルディエルに張り付き、そして起爆。

その結果、響き渡った爆音だった。

レオシュの安否を気遣う中、1つの通信がスズメたちの耳に届く。

「大丈夫――――ここで、決めるよ」

「ああ、頼んだぜレオシュ!」

それは無事だったレオシュの声。

そして、爆風を引き裂くように1騎の機甲装騎がその中から飛び出してきた。

「そんな、無事なの!?」

「なるほど――パージ機能を使ってダメージを軽減したのね」

驚くシノリアと、自らも同じ装騎を使っているということから冷静な言葉を見せるラヴィニア。

そう、レオシュやラヴィニアが操るバルディエル型装騎には外部装甲をパージすることで1種の快速装騎化するという特殊機能が備わっていたのだ。

ただ、防御力の圧倒的低下と、ただでさえ脆い駆動部分の補助が失われることから少しでも無茶な機動をしようものならば自らの動きによって関節を自壊させてしまうという欠点もある。

実際問題、今のレオシュ=バルディエルも爆発のダメージから生き残れたとは言え爆発の衝撃で関節もガタガタ。

あと1撃でも喰らえばコンピュータが戦闘続行不可能と判断しかねない。

「これだけ動けば、十分だよね」

だがレオシュはそう微笑んで見せる。

そして、

運命オスト

霊子杖ムソウスイゲツの1突きで、シノリア=ラジエルの機能を停止させた。

「後はラヴィニアとジェッシィの2人だぜ。さてここで、俺様のスペシャルな作戦を披露してやる」

「はい、お願いします」

「スズメくんはそのままラヴィニアと戦闘。俺様とカナールはジェッシィを狙う。レオシュもだ」

「「諒解!」」

「ちょっとカレル。レオシュを誤射して機能停止に……なんてさせないわよね?」

「そうだな……良いだろう。俺様も上がるぞ!」

「って何でそうなるの!? ちょっと、スズメ!」

「良いんじゃないですか? 誤射されるよりは!」

「さぁ、行くぜ。俺様に続け!!」

カレルはそう叫ぶと、装騎イェストジャーブを全開ブースト。

急加速すると、一気にジェッシィ=シェテルへと接近する。

「カナール、援護頼むぞ!」

「判ってるわよ!」

「……圧倒的不利」

「やれやれ……ウレテット、思ったより強くなってるわね」

「本当に。だけど、ウチらもまだ負けてない」

「そうね。さぁ、勝負よスズメ!!」

「行きます! 電撃、稲妻、熱風!!」

「レオシュ、俺様を蹴れ!」

「あはは、ブレードブリットをボクにやれって?」

「レオシュ、声震えてるわよ」

「いや、やるよ」

「まさかアタシが銀風交叉アージェントガスト・クロスを受ける日が来るなんて、ね」

「装騎弾丸……っ。無茶する、のね」

「次は、絶対勝ってやるわ。チーム・ウレテット……!」

どこか清々しい表情をしたラヴィニアの1言と共に、戦いはチーム・ウレテットの勝利で幕を下ろした。


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