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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
リラフィリア:曰く付きの編入生編
211/322

反撃のラヴィニア

「編入生、アタシと勝負しなさい」

スズメにそう言って来たのは、チーム・ハルバートのリーダー、セケラティッチュ・ラヴィニアだった。

「私と……?」

「ええ、この前苦汁を舐めさせられた――そのリベンジを申し込みたいわ!」

「ほう、リベンジとは殊勝なことだな」

ラヴィニアの言葉に、何故かカレルがそう言う。

「リベンジマッチ、実に結構! スズメくん。相手をしてやれ」

「何でアンタが勝手に決めてるのよ」

勝手なことを言うカレルの頭をカナールが叩いた。

「良いですよ――再戦。受けて立ちますよ」

その傍で、スズメがラヴィニアにそう言う。

そう言うことで、スズメとラヴィニアのリベンジマッチの幕が上がった。

場所はリラフィリア機甲学校に存在する装騎バトル用のフィールド。

先日の模擬試合もその場で行われた。

相対するのはスズメの装騎スパロー・パッチワークとラヴィニアのバルディエル型。

「では――セケラティッチュ・ラヴィニア対サエズリ・スズメの装騎バトル――開始」

ジェッシィの号令でスズメとラヴィニアのバトルが開始した。

「1対1……? それだけの自信が……?」

スズメはどこか、ラヴィニアとジェッシィの2人を同時に相手するのだとそう思っていた。

しかし今、目の前に居るのはラヴィニアのバルディエル一体のみ。

どこか不信感を感じるスズメだが、その疑念はすぐに分かる。

チェーンブレードを構えた装騎スパロー・パッチワークと斧槍シュタルケスハーツを構えたラヴィニア=バルディエルが交差するその瞬間。

「――――ッ!!」

違和感を覚えたスズメは装騎スパロー・パッチワークを後退させた。

そこに突如として放たれた弾丸の1撃。

「徹甲弾……っ!?」

「――――チッ!!」

その1撃が外れたことに、明らかな舌打ちを打つラヴィニア。

「やっぱり、伏兵を……!!」

そう、スズメの言う通りラヴィニアは伏兵を置いていた。

それも――――

「もう良いわ! 全員出て来なさいッ!」

ラヴィニアの言葉に応えて、総勢12騎の機甲装騎――ラヴィニア騎を合わせて総数13騎の機甲装騎が現れる。

「こんな数……ッ!!」

「他のクラスからも頑張って集めました」

今回は戦闘には出てないながら、冷静な表情でジェッシィがそう言った。

「ほう、すごい数だな」

「……そこまでしてサエズリさんに勝ちたいっていうの!?」

「本当だよ。ボクたちも出る?」

「――――いや、ここは少し様子を見よう。スズメくんはやる気だぞ。1人でな」

カレルの言葉は事実。

数の多さに驚きこそしたものの、スズメの表情はただ真っ直ぐ敵の姿を見つめている。

撃てェホジー!!」

ラヴィニアの号令に、それぞれの装騎がそれぞれ手にした銃器を構え、装騎スパロー・パッチワークへと撃ち放った。

「ワイヤーアンカー!!」

そんな集中砲火に、スズメは装騎スパロー・パッチワークのワイヤーアンカーを使い一番手近に居た2騎の機甲装騎を捉え、引っ張る。

「キャアッ!?」

「何、何……!?」

騎使の悲鳴が響く中、その2騎の機甲装騎は装騎スパロー・パッチワークの盾となり機能を停止した。

一斉に攻撃を始めた敵装騎の銃撃が止んだ一瞬。

盾にしていた装騎を投げ捨てると、装騎スパロー・パッチワークは一気に駆ける。

先ず手始めに、銃撃で怯んだ装騎スパロー・パッチワークを攻撃するつもりだったのか、ウェーブソードを構えた2騎の機甲装騎をチェーンブレードで連続撃破。

その流れで、腰にストックされていたバーストライフルを左手で構え、更に1騎を銃撃で撃破。

「クソッ、使えない! クソッ、クソクソッ!! 再銃撃は!!??」

「いっ、行けます!」

悲鳴にも似たラヴィニアの言葉に、1人の女子生徒がそう答えた。

その言葉通り、アズルの充填が終わり再び銃撃が始まる。

だが、そんな彼女たちの視界から装騎スパロー・パッチワークの姿が消えた。

「スパローは!?」

「え、消えた!」

「どこどこ!?」

「ッ!! 上よ上!!!!」

装騎スパロー・パッチワークの姿を探す女子生徒たちに、ラヴィニアが言った。

「ムーンサルト……」

そう、装騎スパロー・パッチワークは空中へと跳躍。

跳躍した装騎スパローは、一番後方で控えていた先ほどの初撃を放ったと思われる徹甲弾砲を構えた装騎の頭上に。

「キックバンカー!!」

そして、右足から飛び出したキックバンカーを、徹甲弾砲を持つ装騎に突き刺し、撃破する。

その勢いを利用したまま装騎スパロー・パッチワークは最跳躍。

宙を舞い、1騎の装騎の上空を飛びながらその1騎にバーストライフルの雨を降らせて破壊した。

今度は撃破した装騎の隣で慌てたように周囲を見回す敵装騎の両肩へと着地。

「これで3騎ッ」

計上して8騎目の装騎にチェーンブレードを突き立て機能停止にさせる。

「残りは5騎……ッ!」

機能停止した装騎を即座に蹴り、後ろに跳びながらバーストライフルで更に1騎。

両足を開き、上体を屈めながら激しい火花を散らし、地面に痕を付けて急停止した装騎スパロー・パッチワーク。

「隙を見せたなァ!!」

そんな装騎スパロー・パッチワークの背後――ウェーブナギナタを構えた装騎がその斬撃を装騎スパロー・パッチワークの背中へと振り下ろさんとした。

だが、その1撃が装騎スパロー・パッチワークを切り裂くことはない。

両足を開いた装騎スパロー・パッチワークは地面に手を突き両足を低く旋回。

「破か――うわぁああああ!!??」

その脚払いでウェーブナギナタを持つ装騎のバランスを崩し、そのままで脛部レーザーキックブレードによる回し蹴りで敵装騎を撃破した。

「これで――――2騎を撃破です!!」

さらにそう叫びながら、装騎スパロー・パッチワークの両腕のワイヤーアンカーは残った3騎の内、ラヴィニア以外の2人の装騎をつかみ取り、手繰り寄せる。

「反撃しなさいッ!!」

「そ、そう言われてもッ!」

「助け――――」

手繰り寄せられた2騎は、片や左手に持ったバーストライフルの銃撃の雨に晒され、片や突き出された右手のチェーンブレードに突き刺され、機能を停止した。

「全滅!? 12騎の機甲装騎がたった1人に!? クソ――――サエズリ・スズメェ!!!!」

最後の1人となったラヴィニアは斧槍シュタルケスハーツを構え、装騎スパロー・パッチワークのすぐ目前へと接近していた。

思い切り振り上げられた斧槍シュタルケスハーツは、すぐに装騎スパロー・パッチワークへと振り下ろされる。

ガツァアン!!

激しく響き渡ったその音は、斧槍シュテルケスハーツが装騎スパロー・パッチワークを叩き割った音――ではない。

正面へと踏み込んだ装騎スパロー・パッチワークのその体がラヴィニア=バルディエルへと激しくぶつかった音だ。

「ハウリング・ムーン!!」

更に至近距離で放たれたアズルの衝撃ハウリング・ムーン。

「ヒッ!? キャァァアアアア!!!!」

騎体を激しい衝撃で揺さぶられ、怯むラヴィニア=バルディエル――そこに、

「スパロー・突貫斬りチャージスラッシュ!!」

チェーンブレードの1撃が放たれた。

機能を停止するラヴィニアのバルディエル型装騎。

動かなくなった機甲装騎達の中、1騎佇む装騎スパロー・パッチワークの中で、スズメは言った。

「アナタ達みたいな騎使が何人来ても、ステラソフィアの誰1人にも敵うことはないですよ」

「強い……ね」

「圧倒的じゃないの」

スズメの強さに思わずそんな言葉が口につくレオシュとカナール。

「王者のチームに相応しい力だな!」

相変わらずカレルだけはそんなことを言うが、明らかにレオシュとカナール――それ以外にも戦いを観戦していた生徒たちはスズメに対して一種の恐怖を感じている。

(ああ……なんか、嫌な視線だ)

スズメがステラソフィアに来てから忘れていたもの。

そんな視線をスズメへと向ける人々の中、1人の女子生徒がフンと鼻を鳴らした。

「あんなの、ワタクシだってできるわ」


「スズメ、おかえり」

「ただいま。アナヒトちゃん」

帰宅したスズメを笑顔で迎えるアナヒト。

スズメはアナヒトの笑顔を見ると、重かった心が軽くなったような気がした。

「お買い物行こうか?」

「うん」

スズメの言葉にアナヒトは静かに頷く。

そんなアナヒトにスズメが尋ねた。

「今日の夕飯何にする?」

「…………ボルシチ」

アナヒトの言葉にスズメは少し難しい表情を浮かべながら、テーブルの上に置かれた1冊のノートを手に取る。

その表紙にはマジックでどこか可愛らしいく描かれた女性のイラストに、チャイカノートとタイトルが銘打たれていた。

難しい顔をしながらそのノートのページを捲るスズメだが、パッとその表情が明るくなる。

「分かった。作ってみるね」

「……うん」

スズメの答えを同じように難しい顔をしながら待っていたアナヒトの表情もパッと明るくなった。

「おやつはもちろん」

「……ひのきの林」

互いに親指をグッと立てたその拳をぶつけ合うと、手をつなぎ買い物へと出掛けるのだった。


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