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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィア編最終章:星が墜ちる日
208/322

風の辿り着く場所-To pojmenuji "Začátek"-

シャダイコンピュータのサーバータワーのふもと。

そこには巨大な穴が穿たれている。

「居た――敵の、装騎……」

突撃槍をその手にし、どこか人形のような姿の装騎――通称パネンカ。

その名は騎使であるサクレ・マリアからその名を取られ装騎サクレと呼ばれていた。

そう、人形パネンカを操る騎使はこのマリア隊のリーダーでもある少女――サクレ・マリアその人。

装騎サクレがその槍をシャダイコンピュータの中枢へと突き刺そうとするその時。

「させません!!」

スズメはそう叫ぶと、腕部のワイヤーアンカーを射出――――パネンカの腕を絡めとり、引き寄せる。

装騎サクレは装騎スパローの姿に気づくと、その手にした突撃槍を構えた。

「装騎、スパロー」

マリアはその名を口にする。

何度か交流もあり、そして共に戦ったこともある相手の名を。

「パネンカ――――勝負です……」

対するスズメは知らない。

戦う相手が、自分の憧れの相手であることを。

そして、装騎スパローが手にしたチェーンブレードと、装騎サクレが手にした突撃槍ロンがぶつかり合った。

閃く刃がぶつかり合う。

互いの攻撃が加速していき、舞い散る火花が戦いを演出する。

「スパロー……無限駆動インフィニットドライブ!」

「――――行く」

装騎スパローと装騎サクレが蒼白い輝きを纏い、蒼と蒼が弾け飛ぶ。

「この騎使、強い。それも、段違いに」

戦いは互角。

いや、もしかしたら相手の方が強いかもしれない――――スズメはそう思った。

それと同時に、どこか知ってる戦い方だとも。

不意に、装騎サクレがその槍を正面に構える。

「エクソダス……」

そして、鋭く――――鋭く気を集中させると、弾け飛ぶように、爆発するように装騎スパローへと突っ込んできた。

神速の一撃を――――だが、装騎スパローは回避し、装騎スパローがシャダイタワーを背にする形になる。

そして、その一撃でスズメは知った。

「今のは――――マリアさんの、技……? いや、そんな――――」

ふと頭に過ぎる信じたくない考え。

もしかしたら、同じような技を使う他人かもしれない。

そう思いたい。

だが、装騎サクレと打ち合う度にその疑念は確信に変わっていく。

「まさか本当に――――マリア、さん!? マリアさん!!!」

スズメはマリアへと呼びかけるが、反応は無い。

ただ冷酷に、ただ非常に、一撃一撃が装騎スパローを襲うのみ。

始めの内は、驚愕で額に汗を浮かべていたスズメだったが、次第にどこかこの戦いを楽しむようになってきていた。

憧れの騎使との、1対1の戦い。

「スィクルムーン・ストライク!!」

「ワイクラー……」

装騎サクレの両脇から迫るチェーンブレードの刃に、装騎サクレはその手にした突撃槍ロンを激しく回転させる。

装騎スパローの一撃を防ぎ切った装騎サクレは、今度は突撃槍ロンを構えた。

「ロンゴミニアド――――っ」

そして次は装騎サクレの手にした突撃槍ロンが展開――――内部から魔電霊子砲ロンゴミニアドが放たれる。

「マズイっ、ハウリング・ムーン……ッ!!」

その一撃を前にして、装騎スパローは全身からアズルを放出する。

まるで層のように放たれたアズルの衝撃がロンゴミニアドの輝きにぶつかった。

避けることは出来たかもしれない1撃――――だが、スズメの背後にはシャダイコンピュータの中枢がそびえたっている。

それを守り切れなければ――――意味が無い。

「ぐうっ――――っ!!」

全身をアズルで焼かれる装騎スパロー。

ハウリング・ムーンによりそのダメージを抑えることは出来たが、それでも痛い1撃となってしまった。

そんな装騎スパローの正面から、装騎サクレが魔電霊子砲状態を解除した突撃槍ロンを構えたまま突っ込んでくる。

「キックブレード……ッ!!」

真正面から迫りくる装騎サクレに対して、装騎スパローはその膝を上げた。

そして、脛の部分に光が灯る――――装騎チリペッパーから譲り受けた脛部レーザーキックブレードの光。

「――――っ!!」

その輝きがレーザーのモノだと理解したマリアは、突撃槍ロンの刃先がキックブレードに触れるより先に、後退する。

「そこですっ!!」

その隙を狙い、装騎スパローは左腕のワイヤーアンカーを装騎サクレの足元へと射出。

装騎サクレの左足を絡めとり、一気に引き寄せる。

バランスを崩し、円を描く装騎サクレの体。

引き寄せた装騎サクレに、装騎スパローは右手に構えたチェーンブレードで引き裂かんとする。

装騎スパローの1撃は――

「……っ!!」

――装騎サクレの左腕を切り裂いた。

だが――――

「凄い……っ」

体勢を崩しながらも右手に持った突撃槍ロンを巧みに操り、装騎サクレも装騎スパローの左腕を串刺しにしていた。

互いに左腕にダメージを負った装騎スパローと装騎サクレは、示したかのように距離を取る。

装騎サクレに絡まるワイヤーアンカーに引かれ、装騎スパローの――もともとは装騎スーパーセルのモノだった左腕が装騎サクレへと引き寄せられた。

そのワイヤーアンカーをマリアは突撃槍ロンで突き刺し、切り離す。

「さすがです、さすがマリアさん――――さすが……」

「これが……サエズリ・スズメ…………」

思わず感嘆の声を漏らす両者。

だが、これ以上戦いを長引かせるわけにもいかない。

そう思う両者の間に流れた一瞬の沈黙。

その後、装騎スパローと装騎サクレのアズルの輝きが一層大きく光り輝く。

「やはり――ここで決めるつもり、ですか」

「この一撃が――――最後」

2人が感じるのはそんな予感。

この1撃が、最後になるという予感。

スズメは、マリアは、集中力を高める。

アズルを感じる。

装騎を感じる。

敵の動きを、敵の息遣いを感じる。

自分の鼓動が装騎の駆動音と重なる。

自分と、装騎が、重なる。

そして、静寂。

音が――聞こえなくなる。

気力を最高潮にまで高めた最高の1撃を。

望むのは、その1撃。

「サエズリ・スズメ、スパロー。征きます!!」

「良いわね――サクレ・マリア」

そして、装騎スパローが、装騎サクレが――――スズメとマリアが駆け出す。

目の前の“敵”を倒す為に。

異様な高揚感。

不謹慎な程にまで心から沸き上がる灼熱。

それは、アズルの蒼い炎となって、装騎を、騎使を、戦場を焦がす。

「勝った!」

スズメは何故か、そう確信した。

「勝った……」

マリアもそう、確信した。

そして、装騎スパローのチェーンブレードと装騎サクレの突撃槍ロンが交差する。

装騎スパローのチェーンブレードの一撃は――――装騎サクレの胸を貫いた。

一方、装騎サクレの放った突撃槍ロンは、装騎スパローの横を過ぎ去っていく。

決着が――――着いた。

「――――負けた」

そう茫然と呟くスズメの背後では、突撃槍ロンの1撃により爆発が広がっていくシャダイコンピュータの姿があった。

どんどん広がっていく炎と爆発――装騎スパローのその体を、降り注ぐ瓦礫が叩く。

だが、装騎スパローは――――スズメはその体を動かせないでいた。

ただただ天から降り注ぐ瓦礫と共に、様々な思いが胸に降り注ぐ。

そんなスズメに向かって、瓦礫が1つ。

その瓦礫は、どんどん巨体を露わにしてくる。

あまりにも巨大なその瓦礫が装騎スパローを押しつぶさんとしたその瞬間――――激しい衝撃がスズメの体を襲った。

「ぁっ――――!!」

突然の衝撃にスズメは思わず声を上げる。

スズメが感じた衝撃は、辛うじて騎使が生きていたのだろう、装騎サクレが装騎スパローを押し倒した衝撃。

「マリア――――さんっ!? マリアさん!!」

装騎スパローの上に乗り、盾になる装騎サクレ。

スズメは必死にもがくが、どうにもならない。

やがて、激しい衝撃でスズメは気を失った。


「生きてる……コンラッド! 生存者を見つけたわ!」

「サクレの下敷きに――マリアが庇ったのか」

光の眩しさにスズメは目を覚ます。

2つの人影がスズメの顔を覗き込んでいる。

「大丈夫?」

そう差し出された手を、スズメは思わず握り返した。

自分を引っ張り、起こしてくれたその女性の顔にスズメは見覚えがあった。

そう、以前、マリアが待ち合わせをしていた女性――ローラと呼ばれていた女性だ。

「っ! マリアさんは!!」

スズメはハッとして、周囲を見回す。

そう探す必要も無かった――――グチャグチャに潰れた装騎サクレが、装騎スパローのすぐそばに眠っていたから。

「マリア、さん……」

スズメはチラりとローラの顔を見る。

ローラはただ静かに首を横に振るだけ。

「ツバサ先輩、チャイカ先輩、マッハ先輩……ステラソフィアのみんなは――――」

「済まないが……」

そう答えたのは男の声。

ローラと一緒にいたコンラッド・モウドールの声。

「ステラソフィア機甲科127人。そして、技術科49人の死亡を確認した」

スズメの背中に悪寒が走った。

「それじゃあ、機甲科は――――生きてるのは」

「ああ、お前だけだ。サエズリ・スズメ」

モウドールの言葉に、ただただ、スズメは目を見開くしかできない。

怒りを覚えることも、泣き崩れることもできない。

仲間が死んだ。

大勢死んだ。

「でも、私も――――殺した」

その呟きは声にはならなかった。

「モウドール!!」

その時、場違いなまでに威勢のいい声が響く。

「レイか――奴隷達は?」

「ちゃんと連れだしたぜ!!」

そう明るく言うヴェニム・レイボルトの背後から、テレミス・ロイに誘導され大勢の人々が姿を見せた。

ボロボロ人々――――そう、地下のアズルリアクター街に幽閉されていた人々だった。

「あっ」

そんな人々の中にスズメは見知った少女の姿を見つける。

その少女――――アナヒトもスズメの姿を見つけ、駆け出してきた。

「スズメ……っ」

アナヒトがスズメに抱き着く。

スズメも、アナヒトを優しくその手で包み込む。

「知り合い?」

ローラの言葉にスズメは頷く。

「はい、大事な――――とても大事な人です」

この戦いで色々なものを失ったスズメにとって、今はこの温もりだけが全てだった。

挿絵(By みてみん)

次回予告

「ねえ、聞いた? 編入生の話……」

「死神が、うちの学校に来るなんて」

「編入生、アタシと勝負しなさい」

「アンタみたいな下衆に、サエズリ・スズメが負けるわけないじゃない」

「だから名前で呼べっつってんだろ!!」

「来たよ、ズメちん!」

「ようこそ、チーム・ウレテットへ。俺達は君を歓迎する!」

次回、機甲女学園ステラソフィア第2部リラフィリア機甲学校編。

「曰く付きの編入生」

お楽しみに――



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