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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィア編最終章:星が墜ちる日
207/322

追い風を受けて-Jet po Větru-

「あのシェテル型装騎の武装――コルタナですか」

逆付きスパロー――――ステラソフィアのMVK、か……」

相対する装騎スパローと装騎プロヴァンス。

一瞬の沈黙の後――2騎は同時に動き出した。

装騎スパローのウェーブナイフと装騎プロヴァンスの超振動コルタナがぶつかり合う。

その隙に、装騎スパローは左手に持ったもう1本のナイフを閃かせた。

だが、装騎プロヴァンスはその1撃を紙一重でかわすと右手を柔軟に捻りながら、装騎スパローの胴体を狙い横一閃。

その1撃を回避する装騎スパローだがそこで互いの距離が開き、一旦の仕切り直しとなる。

「この騎使――強いっ」

「さすがは逆付き――――だが……私は、負けられない!!」

不意に、装騎プロヴァンスから蒼白い輝きが放たれる。

「インディゴシステム――――っ!?」

相手がインディゴシステムを搭載するX装騎を鹵獲、研究したというのなら、このことは想定の範囲内だった。

しかし、その驚異的なアズルの輝きを目にするとなると、さすがのスズメも目を見開く。

「ですが、負けることは――――できないんです!!」

それに対抗するように、装騎スパローからも蒼白い輝きが放たれた。

「アレが――無限駆動インフィニットドライブ……」

対するシャロットも、X装騎ではない装騎スパローが放つインディゴドライブの輝きにも似た光に口元を歪める。

「スパロー・レイ・エッジソード!!」

「コルタナ――アズルブレイドモード!!」

装騎スパローの腕部ブレードエッジにアズルが固定化され、霊子剣が生成される。

対する装騎プロヴァンスも超振動剣コルタナにスリットが入り展開、アズルを纏い霊子剣へと変化した。

「ムーンエッジ・レイライト!!」

「トリストラムワルツ!!」

装騎スパローがレイ・エッジソードを横薙ぎに払い、その刃が装騎プロヴァンスのコルタナ・アズルブレイドと交差する。

アズルの輝きが跳ね散り、火の粉のように舞い踊る。

「フラッシング・スピアー!!」

装騎プロヴァンスはその剣先を装騎スパローに向けると、そこから魔電霊子の刃が輝きと共に装騎スパローへと伸びた。

「ホープムーン・バリア!! ――――くっ」

その霊子刺突を装騎スパローはレイ・エッジを利用したアズルバリアで防ぐ。

装騎プロヴァンスはかなりのアズルをその1撃に込めているのか、その衝撃に耐えようとスズメの口元が歪んだ。

アズルブレイドとアズルバリアがぶつかり閃光が放たれたその一瞬、両者の視界が翳る。

「そこだぁ!!」

その瞬間を狙い、シャロットは装騎プロヴァンスを一気に装騎スパローへと肉薄させた。

アズルブレイドの1撃の衝撃で、一瞬動きが止まっていた装騎スパロー――――シャロットはそこを狙ったのだ。

「させ――――ません!」

装騎スパローは背後にあるブレードウィングに霊子剣を纏うと、その身を屈めながら捻る。

装騎プロヴァンスの一撃は装騎スパローの胴体を捉えることはできず、その左腕に傷をつけた。

そして、装騎スパローのアズルブレードウィングの一閃は、装騎プロヴァンスの両足を切り裂く。

「手が――ッ!」

「あの状態で回避を――!?」

両足を切り裂かれ、地面へと倒れ伏す装騎プロヴァンス。

「これで私の追撃は無理――――ですね」

装騎に取って足とは重要なパーツ。

それを破壊されたとあればこれ以上の戦闘も、追撃も無理だ――――そう判断したスズメがその場を離脱しようとした――――その時だった。

「まだだ! まだ、お前をサクレの所には行かせない――――逆付きィ!!」

「っ!! なっ、あのシェテル型、まだ――――!!」

不意に、装騎プロヴァンスがコルタナ・アズルブレイドの出力を全開――――その一撃を装騎スパローに、ではなく、地面に突き刺すように撃ち放つ。

アズルが射出された勢いで、思いっきり跳び上がる装騎プロヴァンスは、そのまま装騎スパローに組み付いた。

「マズい――――!!」

スズメの額に汗がにじむ。

「スパロー・フルムーン――――」

「ごめん、ランツ、ツェロット……サクレ――革命を――――」

瞬間、装騎プロヴァンスはアズルの輝きと共に――――自爆した。

爆炎が晴れた後――――そこには何とか無事に立っている装騎スパローの姿があった。

装騎プロヴァンスが自爆する瞬間、全身からアズルを放出――――その爆発のダメージをなんとか抑えていたのだ。

「く――――中々痛かった、ですね」

だが、無傷とはいかない。

装騎スパローは全身にダメージを受け、コックピット内のディスプレイには多数の警告表示がされている。

「でも――撤退するわけには、いかないっ」

スズメはそう呟くと、シャダイコンピュータのサーバータワーに向かって駆け出した。

神都カナンの建物を蹴り渡りながら、中央にそびえるタワーに近づいていく。

破壊された迎撃装置の残骸など、マリア隊とチーム・ブローウィングの戦いの跡があちらこちらに残されていた。

ふと、スズメの瞳にうずくまるように背を丸める2騎の機甲装騎の姿が目に映る。

片や装甲が外れたバルディエル型装騎――恐らくマリア隊所属の機甲装騎。

そして、もう一方は白く細身のスズメもよく見知った機甲装騎。

「スネグーラチカ……チャイカ先輩!?」

装騎スパローは動かなくなっている装騎スネグーラチカの傍へと降り立つ。

「チャイカ先輩! チャイカ先輩!!」

呼びかけるが反応が無い――――装騎スパローは先ほどのダメージでメインカメラが破損しており、装騎スネグーラチカの様子もよく見えなかった。

スズメは装騎スパローのハッチを開放すると、身を乗り出す。

「これは……スネグーラチカの装甲が…………」

スズメの瞳に映ったのは、胸部の装甲が内側に捻じ込まれるようにしてひしゃげたスネグーラチカの姿。

いや、対するバルディエル型装騎の胸部も同じようにひしゃげている。

二騎の中央で何らかの衝撃が放たれ、両者共にコックピットを潰されたのだろう。

「…………チャイカ先輩」

スズメはただそれだけ呟き、装騎スパローのコックピットへと戻る。

「そうだ……チャイカ先輩――少し、お借りします」

スズメは静かに装騎スネグーラチカへと近づくと、その頭部を切除。

装騎スパローの頭部も切り離すと、装騎スネグーラチカの頭部を装騎スパローへと接続した。

そして再び駆け出す。

装騎スネグーラチカの残骸を後にして。

スズメの瞳に涙が浮かぶ。

そして、嫌な胸騒ぎが胸を締め付ける。

スズメの胸騒ぎが――現実のものだということを知るのは遅くない。

不意に、装騎スパローが転倒した。

装騎プロヴァンスの自爆によりダメージを受けていた装騎スパロー。

その両足がついに限界でバランスを崩したのだ。

「グッ――――そろそろ、マズいですね」

なんとか歩行することは出来るが、戦闘はおろか、走ることも難しい。

そんなスズメの目の前に、横たわる1騎の機甲装騎の姿が目に入る。

「マッハ先輩……」

それは黒く染まった機甲装騎――カスアリウス・マッハの装騎チリペッパー。

コックピットを小さい槍のようなもので貫かれ、その機能を停止していた。

「マッハ先輩――――お借り、しますね」

装騎チリペッパーの脚部は、多少の破損はあるが無事。

スズメは装騎チリペッパーの両足を、装騎スパローへと接続する。

そして、駆け出す。

先へ、先へと。

やがて、立ち上る黒煙がスズメの目に入った。

炎を上げていたのはサポートチーム第3班が使用していたトレーラー。

戦車の残骸のほか、チェーンブレードが地面に突き刺さっている。

「これは――――ツバサ先輩の……!」

チェーンブレードを地面から抜き、先に進む装騎スパロー。

そして、暫く行った所でその姿が目に入った。

コックピットに穴が穿たれた装騎スーパーセルの姿。

覚悟していたとはいえ、やはり実際に目の当たりにしては――――。

周囲には装騎スーパーセル以外の装騎の残骸は見えない。

と、言うことは――――

「ツバサ先輩――――力を、私に力を貸してください……」

装騎スーパーセルの両腕を装騎スパローに取り付け、そう祈る。

両腕のワイヤーアンカーを使った立体機動でさらに先を急いだ。

仲間たちを後にして……。



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