終わりの予感-Konec Létavice-
続くステラソフィアとグローリアの激しい攻防。
アポストル化しているステラソフィア装騎も増え、着実に死者が増えていく一方、その驚異的な動きによってグローリア側にも被害は拡大していく。
「何とか神都カナンを守り抜くんだ――――せめて、カナンを!!」
「急いでお姫様をシャダイまで送り届けろ! それで全てが終わる!!」
守るステラソフィアと攻めるグローリア。
「モウドール――――時間が惜しいわ……護衛は、良い」
「マリア、だが」
「これ以上攻撃が遅れるとマルクト側の増援が来るかもしれない」
「そうだな……各地の味方やカラスバ・リンの工作で時間稼ぎはできるとは言え―――――そろそろ限界か」
「そう。私がトップでシャダイまで突っ切る。モウドール達は援護と足止めを」
「分かった――――マリア、お前を信じてるぞ」
「うん」
そんな中、マリアが駆る戦車一両とそれに続く3両の4両編成戦車隊が突出してステラソフィア生の中へと突っ込んできた。
「チャリオットが1両――――カナンを目指して進撃してますわ!」
「チーム・ブローウィング、追撃するぞ!」
「諒解なんですよォ!!」
「諒解!」
その戦車の追撃を始めるチーム・ブローウィング。
「オレ達はブローウィングを援護するぜ!」
「わかったわお姉ちゃん!」
「仕方ないのですよ!」
「スズメちゃん――――がんばって!」
そして、チーム・バーチャルスターはその援護に回る。
戦いは続く。
シャダイを目指し駆けるマリア戦車隊。
それを追いかけるチーム・ブローウィング。
ブローウィングの追撃を阻止したいグローリア部隊。
そんなグローリア部隊の足止めをするステラソフィア装騎。
アポストル化した装騎が戦場を暴れまわる姿もあり、その様相は混沌としていた。
「こちらツェティクス! 敵装騎、撃破した!」
「魔電霊子砲!? ヤバ――――っ」
「こちら装騎トルテ、コクヨクと交戦ちゅ――――」
「アイロニィよ――戦域内に民間車輌を発見。護衛に……くっ」
「敵の突破を許すな! 祖国を守り抜くんだ!!」
「「「フューラー!!!!」」」
「チーム・バーチャルスター、カラスバ先輩を――――コクヨクを止めるぞ!」
「「「諒解!」」」
「裏切りなんて美しくないわ――チーム・シーサイドランデブーもバーチャルスターを援護するわ」
『ツバサ――――私達も、戦いましょう』
そんな中、後方からトレーラーが数台、戦場へと走り出す。
簡易ながらも武装を施したそのトレーラーはステラソフィア技術科が保有する装騎の緊急整備用トレーラー。
「サポートチーム!?」
そう、技術科サポートチームの面々だった。
『ここを抜かれたら終わりでしょ? なら、後ろでグズグズしてる場合じゃないわ!』
『そうだな』
『戦います!』
『みんなで、守り抜くの』
サポートチーム第1班所属のスゥジィの言葉に続き他の技術科生徒もそう言う。
「ここが、ここが正念場だ!! チャイカ!!」
「ええ、魔力――――何ですの!?」
マリアの戦車を追撃するチーム・ブローウィング。
チャイカがマリア戦車隊へと魔力砲撃を放とうとしたその時、不意に、中空から流れ星のような輝きが装騎スネグーラチカへと降り注いだ。
「何だ!?」
「上、ですわ!!」
上空を見上げたツバサとチャイカは驚愕する。
そこに、1騎の機甲装騎がいたからだ。
「あれは――――操舵輪か!?」
ツバサの言う通り、その装騎は以前にも交戦したことのあるシュトイアラドだった。
「ローラ」
「助けにきたわよ!」
「助かる」
マルクトでシュトイアラドと呼ばれるその装騎――――その名は装騎スプレッド。
悪魔派組織グローリア所属のミラ・ローラが駆る魔術装騎だった。
その最大の特徴は風の魔術と火の魔術の組み合わせによる――半ば無理矢理ではあるが――魔術飛行。
「空を飛ぶ機甲装騎!? そんなの、アニメの中だけじゃ!!」
空中からの攻撃に、手をこまねくチーム・ブローウィング。
それもそうだ。
スズメの言葉が表すように空中戦など架空の出来事。
対空戦など1度も経験をしたことが――――いや、それどころか想定すらしたことなかったのだから。
「何でもいいからぶっ飛ばすんですよォォオオオオ!!」
「マッハ先輩の武装じゃどう足掻いても手も足も出ないと思うんですけど……」
そんなやり取りをしている間にも、マリアの駆る戦車は先へと進む。
一刻の猶予も無い。
そこに――――
「目には目を、歯には歯を、てにをはにはてにをはを」
「ヘレネ!!」
「ウチらもいるでー!!」
チーム・ウィリアムバトラーが到着する。
「ツバサ、アンタらは先に行くんや!!」
「ここはわたしらに任せるとよー」
「りかりかさー!!」
ロバーツ・ミカエラの装騎イニスフリー、エール・カトレーンの装騎ファーガス、モード・ヘレネの装騎マクブライド、リサデル・コン・イヴァの装騎ゴア=ブースが援護に入り、装騎スプレッドと交戦を始めた。
「アタシ達はあのチャリオット部隊の追撃続行だ!」
だが、装騎スプレッドによって稼がれた時間が痛い。
「ですが、あのチャリオットに追いつくのは難しそうですわ――」
チャイカがそう口にしたところで、1両のトレーラーが辿り着く。
『乗ってきな』
「レクス!」
遂に、マリア率いる戦車隊はカナン市街へと突入した。
一直線にシャダイコンピュータのサーバータワー目指し駆ける。
それを追いかけるチーム・ブローウィングを乗せたサポートチーム第3班のトレーラー。
「でも、トレーラーであんな軽量の――インディゴシステムまで積んだチャリオットに追いつけるのか!?」
「心配ご無用情け無用――――ケトル」
「オレは湯沸かし器じゃネーゾ! シャーネーナ、オレ達のヒミツヘーキ――ポチっとナ!」
カトレはそう言いながら、トレーラーの操縦席に取り付けられたボタンを押し込む。
瞬間、トレーラーの設備の一部が切り離され、更に蒼白い輝きを纏い始めた。
「おい、まさかこのトレーラー……」
「このカトレ様特製の加速ソーチ付きだゼェ!!」
そして、超加速したトレーラーは一気にマリア戦車隊へと距離を詰める。
「トレーラーが1両、ものすごいスピードで接近してるぞ」
「シャロット――任せられる?」
「ああ――――サクレ、そっちも任せて良いね?」
「うん」
チーム・ブローウィングを乗せたトレーラーを迎え討とうと、マリアの戦車に追従していた内の1両が転進。
「チャイカ、今度こそ!!」
「ええ、魔力砲撃ですわ!!」
トレーラーから身を乗り出すと
チャイカの魔力砲撃は先に進もうとするマリアが駆る戦車へと向けられている。
そして、その1撃が放たれた瞬間――――
「させないっ」
シャロットの駆る戦車が装騎スネグーラチカの射線を塞ぎマリア戦車の盾となった。
「緊急離脱――――まだまだこれからだ!!」
戦車は破壊されたが、砲撃が命中する瞬間に戦車から飛び降りその装騎が姿を現す。
マリア隊に所属するパラミディス・シャロットの装騎プロヴァンスだ。
「敵戦車から装騎が離脱したぞ――――ここでアタシらを足止めする気か!」
「どうします? 4騎で一気に叩きますの?」
「いや、ここはアタシが――」
「私があの装騎の相手をします!」
ツバサを制止し、スズメがそう言った。
「スズメちゃんが?」
「はい、ここはあの先頭を行く戦車の追撃を急ぐべきです。それに敵を撃破した後に合流することも考えると、高機動なスパローの方が適任だと思うんです」
「高機動ならマハのチリペッパーだってそうなんですよ!!」
「でも、私のスパローなら建物を使ってのショートカットもできますし」
スズメの言葉に、ツバサは頷く。
「分かった。ここはスズメちゃんに任せて、アタシらは他のチャリオットの追撃をする!! 頼んだぞ、スズメちゃん」
「――――はい!」
「まさか、逆付きに足止めをさせてサクレ達を追撃する気か!? させん!!」
「ツバサ先輩たちの邪魔は、させません!!」