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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィア編最終章:星が墜ちる日
204/322

緊急招集-Začátek Létavice-

3月31日午前0時30分。

突如としてステラソフィア女学園に警報音が鳴り響いた。

「緊急招集!? こんな時間にかっ!!」

思わずそう叫ばずには居られない。

ツバサをはじめ、大富豪をしていたチーム・ブローウィングの4人は急いで機甲科制服に身を包むと寮室を飛び出す。

寮の廊下には他の機甲科生たちの姿もあった。

「クイーン、何があったのか分かるか?」

「さっぱり。だけど、全チーム一斉召集だなんて……」

「余程の事態だな」

寮の階段を駆け下りながら、会話をするツバサとクイーンの間に、ソレイユが入ってくる。

「っていうか、こういう時はどーするんだっけか?」

「ステラソフィア機甲科緊急マニュアル――全機甲科生に一斉召集があった場合は、機甲科寮前の広場に集合、よ」

「あんがとクイーン!」

クイーンの言葉に、ソレイユがそう礼を言う。

そして、機甲科寮前の広場にツバサたちが辿り着いた。

チームごとに整列しはじめ、すぐにステラソフィア機甲科32チーム、128人全員が集合した。

『迅速な対応に感謝する』

そこにマイクを通し、フラン先生の声が響き渡る。

「何があったんですか!?」

『本日0時。マルクト神国東部の国境警備隊との連絡が途絶えた』

フラン先生の言葉に、機甲科生は騒然となった。

つまり――――敵襲。

『国は迎撃部隊を派遣したのだが――』

「突破されたんですか?」

誰かの言葉に、フラン先生はだが首を横に振る。

『未だ交戦中だ』

「と、言うことはその部隊の支援――――ですか? この大人数で」

『違う。どうやら国境を襲撃した一派は陽動だったようだ。敵の別動隊の姿をレーダーが捕捉した』

フラン先生はそう言うと、霊子ホログラムにより地図を機甲科生たちの前へと表示する。

そこにはリアルタイムで中継されていると思しき、敵別動隊の位置が光点として表示されていた。

「ここは――ドレスデンか! いや、今のマルクトの国境ってかなり広いはずだろ!? なのに、こんな懐に……!」

『恐らくは、マルクト国内の反乱軍――――つまり、悪魔派の襲撃だと思われる』

悪魔派――――マルクト神国の体制に不満を持ち、その変革を目指す者たちの名称だ。

今までも何度か交戦したこともあるのは知っての通りだろう。

『懐に潜りこまれただけではなく、敵のスピードが奇妙だ』

「奇妙、ですか?」

『通常の機甲装騎ではありえない速度で神都を目指して進撃している。従って、一刻の猶予も無い。ステラソフィア機甲科32チームは直ちにライプツィヒで陣を敷け』

「敵の映像とか無いんですか?」

『ジャミングがかかっている。恐らく、魔術的な――――』

「と言うことは、優秀な魔術使が……」

『いるな。複数だ』

正直、今回の実地戦は今まで以上に敵の力も、詳細も、何もかも不透明。

それでいて、神都カナンを目指し進撃してくる何かしらの“勝機”を持っているであろう相手。

だが、彼女らは行くのだろう。

『細かい話は後で聞く。各員、装騎に搭乗。第1班――バーチャルスターから順にダーウィーズで緊急射出だ』

「諒解!!」

決して、負けるはずのない戦いへと。


「来ましたわ」

ドレスデンで陣を敷くステラソフィア生。

そんな中でチャイカが敵接近の報を知らせた。

次第に闇の底から蒼白い輝きが大きくなっていく。

「あれは――――魔電霊子アズルの、光?」

「……そうみたいですね」

ツバサの言葉に頷くスズメ。

スズメはその光に奇妙な胸騒ぎを覚えた。

「まるでインディゴシステムの光ですわね」

「……っ、来るぞ!!」

チャイカがそう呟いた瞬間、砲撃が始まった。

「きゃあぁ!?」

通信からチーム・奏でNight所属ミラビレス・リートの悲鳴が聞こえてくる。

敵の砲撃に被弾したのだろう。

「無事か!?」

咄嗟にそう叫んだのはチーム・バーチャルスターのソレイユ。

「大丈夫っ! でも、気を付けて。敵は榴弾を使ってるよ」

突然の被弾でも、慌てずに相手の手を解析するリート。

「榴弾か――オレ達の体力を削って突破する気か」

「と、いうことは敵にはウチの装騎を撃破する手は無い、のか?」

「いや、まだ分からないぜ……」

「ツバサ、ソレイユ。そんな話をしていても仕方ないわ」

「お、そうだなクイーン。今は敵を倒すのが先決ってね」

「まずは交戦可能距離まで近づくぜ!!」

ソレイユの言葉に頷くと、それぞれが前進する。

「初撃を見る感じですと、お相手は駆逐装騎での遠距離砲撃戦がお望みなのでしょうか?」

「かもね。ここはいつも通りインディゴドライブを発動してのアズル防御を利用しての敵陣突破が妥当かな」

チャイカの言葉にツバサが頷き、そう言った。

「……本当に、そうなんでしょうか」

「スズメちゃん?」

「いえ、なんか変な感じがして……よく、分からないんですけど」

「だぁーもう、良いんですよォ!! このまま突っ込んで、ぶっ飛ばして、バッラバラにしてヤればイーんですよォォオオオ!!!」

そう叫ぶと、マッハの装騎ジェイペッパーがインディゴドライブを発動する。

「そう、ですね。他に手もありませんし」

「各自、注意は絶対に怠るなよ。インディゴドライブ!」

「スパロー・インディゴドライブ!」

「インディゴドライブですわ!」

チーム・ブローウィングをはじめ、ステラソフィア生の装騎それぞれからアズルの輝きが放たれ、インディゴシステムが起動したことを知らせた。

その時だった。

「――――!! 敵騎、急速接近、ですわ!」

「何だと!?」

突如として、敵の動きが急加速。

機甲装騎ではありえない程の超加速、超スピードで一気にステラソフィア装騎との距離を詰める。

そしてその時、スズメ達ステラソフィア生は見た。

敵の姿を。

「あれは、何だ……トレーラー? いや、チャリオット!!」

「機甲装騎サイズの、チャリオットですわ!!」

高速で駆けてくるソレは、戦車チャリオットだった。

授業でも乗ったことのある人間サイズの戦車ではなく、機甲装騎サイズにまで巨大化させられた戦車だ。

その戦車にはもちろん機甲装騎が乗り、操っている。

「それにこの輝き――――」

『ツバサ――データを確認した。アレは……インディゴシステムだ』

そう言ったのはサポートチーム第3班のシュービル・レクス。

彼女が言うにはこうだ。

あの戦車チャリオットには不足したアズルを補うためにインディゴシステムと似たようなシステムを搭載している、と。

アズルリアクターは基本的に非人型兵器に搭載してもエネルギーを効率的に使用できず燃費が異常に悪いという欠点がある。

理由は不明だが、人間の霊力を基礎としてエネルギーを生成するからと言う説が一般的だ。

そしてインディゴシステムは人間の霊力ではなく、大気中に含まれる霊力セジや霊脈から放たれる気を取り込みアズルを無限に生み出し続けるという技術。

つまり、燃費が最悪の非人型兵器であっても機甲装騎と全く変わらないアズルを出力できるのだ。

「でも、インディゴシステムを使ってるなら、魔電霊子砲だって問題なく使えるはずだろ? ヤツらは何で――――」

ツバサの疑問はすぐに解消されることとなる。

敵の戦車は砲撃を繰り返しながらも、ステラソフィア装騎を無視するかのように一気にその横を通り過ぎていった。

「スルー!?」

だが、ただ見逃されただけではない。

「――――違う。コレ……」

「ええ、マズイですわ!」

最初に気づいたのはチーム・ウィリアムバトラー所属のモード・ヘレネとチャイカ。

彼女たちが異変に気づいたのは2人が“魔術使”だったからだ。

「マズイって――」

「――――魔法陣」

ヘレネの言う通り、その戦車の動きは何か統一されたものがあった。

ステラソフィア装騎を取り囲むように配置され、陣を描く。

不意にそれぞれのチャリオット間を光の線が結び付けた。

それは、空から見れば1つの巨大な魔法陣を描いていたに違いない。

そして次の瞬間。

「うおっ!?」

「何ですか!?」

「ウガァ!!??」

「うっ――――これは……インディゴシステムが、オーバーヒートしてますわ」

「何だって!?」

突如として機甲装騎を襲った衝撃。

その衝撃は敵の魔術によりインディゴシステムが暴走。

アズルの負荷に耐えられなくなり装騎が大破した衝撃だった。

動けなくなったステラソフィア装騎に、敵は止めを刺すわけでもなく、そのまま神都カナンを目指して駆けていく。

その後ろ姿を、ステラソフィア生はただ見送るしかできなかった。

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