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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
旅立ちの日
201/322

ユウレイちゃんの卒業式

トラブルもあったが修了式も終わり、その後――――

「卒業式か。面白い。存分にやるといい」

4年生カスカ・ヨミズの承諾も得、ユウレイの素性を知っているチーム・アヤカシの寮室でユウレイちゃんの卒業式が行われた。

「あの、実はもう一方、参加希望者がいるんだけど……」

ふと、スズメの言葉にイザナ達は首を傾げる。

ユウレイちゃんが幽霊だと言うことを知っているのは、いつもの4人に加え、このアヤカシのメンバー――それ以外だとトーコくらいなのだが。

「邪魔するぞ」

そう言いながらチーム・アヤカシの寮室を訪ねてきた人物の姿を見て、一同は驚愕の表情を浮かべる。

そこに姿を見せたのは――

「フランデレン先生!?」

「フーチン!?」

チューリップ・フランデレンの姿だった。

「どうしてフランデレン先生が!?」

驚くサリナの言葉に、スズメが口を開く。

「実はさっき、ユウレイちゃんが装騎を出した時なんだけど……」

それは、先ほど機甲科生たちがグラウンドでユウレイの装騎セヴンワンダーズの姿を見たときのことだった。

「セヴンワンダーズ…………ユウレイの装騎か」

「えっ?」

グラウンドでユウレイの装騎を見ていたスズメの耳に届いたそんな呟き。

その言葉をたまたま聞いたスズメは思わずその声の主へと振り返る。

スズメの目に入ったのは修了式にも参加していたことから、今、この場にも姿を見せていたフラン先生の姿。

そんなスズメの姿がフラン先生の目にも映っていた。

その後、フラン先生に呼び出されたスズメが事情の説明をした結果、いまの流れとなったのだった。

「話しを聞いた時は信じられなかったが……本当、みたいだな……」

そういうフラン先生の声音はどこか懐かしさを含んでいる。

聞けば、ステラソフィア在学時、ユウレイとフラン先生は親友同士であったという。

「ユウレイというあだ名を付けたのも私だからな」

「わたしはフーチンって呼んでました!」

そういう2人の会話と雰囲気から、本当に親しい仲だということが知れる。

その期間は非常に――非常に短いものだったのかもしれないが。

「それじゃ、さっさと始めるぞ」

フラン先生の言葉に、一同は首を傾げた。

「何だ。卒業式、やるんじゃないのか?」

「やっちゃいますよー!」

意外に乗り気なフラン先生の言葉で、ユウレイの卒業式がいよいよ始まる。

「ユウヤミ・レイミ」

「はい!」

フラン先生が名前を呼ぶと、ユウレイは元気に声を上げた。

スズメ、イザナ、サリナにイヴァ――そして、ヨミズ、ツゲグシ、メウ、イクサが見守る中、フラン先生の前にユウレイが直立する。

「ステラソフィア女学園に於ける14年間の幽霊生活を終了することを証する」

「卒業証書――――ありがとうございます!」

いつの間に用意したのか、フラン先生の手から渡された1枚の卒業証書。

それを受け取ったユウレイは、どこか感動したようにその手を震わせた。

そして、礼をすると席へと着く。

そんな感じで簡単にではあるが、ユウレイの卒業式は終わりを迎えた。

「ユウレイちゃん、本当に行くの?」

そして、全員が見守る中、4人とユウレイの別れの時は来た。

「はい! もう、決めちゃったことですから!」

「ちょっと淋しくなるさー」

「そうね……最初会った時は、幽霊だなんて信じられなかったし、ちょっと怖いと思ったけど……いなくなっちゃうと」

「また、いつか会う時だってありますよ!」

別れを惜しむスズメ、イヴァ、サリナに対して、イザナはユウレイから視線を逸らし、ただ真顔で立っている。

「これでやっとアンタとオサラバできるのね」

そんなイザナが、ふとそう口にした。

「そうですよ! わたしはイザナちゃんと別れるの――辛いですけど」

「私は全然そんなこと無いけどね」

「そーいうと思ってました!」

何だかんだで、他の3人以上に関わることも多かったユウレイとイザナ。

その割には淡泊なイザナの対応。

だが、イザナの本心を感じ取っている一同は何も言葉を発さない。

暫くの沈黙。

その沈黙は、どちらかと言うと全員がイザナに本心を吐き出せと、そう言っているかのようだった。

「…………」

「…………」

「…………あー、もう!!」

その沈黙に耐えられるイザナが叫び声を上げる。

そして、こんなことを言った。

「アンタと出会ってから今まで、すっごい面倒だったわ。本当にクソ面倒だったわ」

「わたしは楽しかったですよ! 何だかんだでイザナちゃんには沢山助けられましたし!」

「本当、いっつもアンタは厄介ごとばっか持ってきたわよね。でも――――」

イザナは最後、ユウレイへと背を向けると口を開く。

「少し、楽しかったわよ」

「えー、少しー?」

「少し!」

「最高に楽しかったって言っちゃってくださいよー!」

「調子に乗らない。殴るわよ」

「それなら透けて避けちゃいます!」

「透ける前に殴る!!」

「殴る前に透けます!!」

そう言いあった後――――イザナとユウレイはお互いに静かな笑みを浮かべた。

「それでは――――わたしはそろそろ行っちゃいます」

ユウレイを止めたいと、そう思う気持ちはある。

だが、彼女たちは言った。

「うん。またねユウレイちゃん」

「ユウレイ、困ったことがあったら――まぁ、当てにしてもいいわよ」

「また、会えるわよね……?」

「またみんなで一緒に遊ぶさー!!」

「モチロンです!! それじゃあみなさん!! また会いましょう!!!!」

そして最後――――ユウレイはそんな言葉を残し、その日以来、姿を消した。


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