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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
旅立ちの日
199/322

コングラッチュグラデュエーション!

3月1日。

その日、ステラソフィア学園都市ではあるイベントが行われていた。

機甲科、技術科、士官科、教職科、進学科――――それぞれの学科の講堂に、それぞれの学科に属する生徒が集まる。

そう、この日は卒業式だった。

機甲科講堂でも、ツバサやソレイユと言った機甲科所属の4年生32人が集まっている。

そして、その卒業式を見送ろうと集まった保護者の人や、スズメたち在学生96人の姿も。

そんな中、卒業式が執り行われた。

「今年は、いろんなことがあったなぁ……」

そんな中、卒業生席に座るツバサがポツリとそんなことを口にする。

「お、もしかして卒業式だからって感傷的になってんじゃねーか?」

「そんなことないよ」

そう茶化すソレイユの頭を軽く小突きながらそう言うツバサだが、その瞳は微妙にうるんでいるように見える。

「無理すんなよ。お前、意外とこういうの弱いタイプだろ」

「そ、そんなこと……」

「4年になって、最後の最後にオレたちバーチャルスターに勝てたなぁとか、自分がいなくなって大丈夫かなぁとか色々考えてるんだろ?」

「そういうソレイユだって、最後に負けて悔しいとか思ってるんだろ」

「思ってるぜ」

「アタシも思ってたよ」

「せっかくの卒業式なのにお喋りし過ぎよ」

そんな2人に、ソレイユとツバサの間に挟まれているクイーンがそう注意した。

「クイーンの所は新チームリーダー、サツキちゃんだろ? 大丈夫なの?」

「サツキはしっかりしてるから大丈夫よ」

「確かにしっかりはしてると思うけど……」

1言も言葉を発しないサツキがチームリーダーになった暁には、いったいシーサイドランデブーはどんなチームになってしまうのか。

そう思う機甲科生は多いだろう。

「しっかし、寂しくなるなぁ……これから」

「寂しくなると言っても、卒業式が終わっても3月一杯は寮生活が可能でしょ。ツバサは実家に帰るの?」

「帰らないけど……それとこれとは話は別だって」

ステラソフィア機甲科では緊急で実地戦が入る可能性もあり、大体の機甲科生はギリギリまで寮で暮らしている生徒も多い。

それだけ、ステラソフィアに愛着を持って暮らしているというのもあるが。

モチロン、実家に帰ることも可能だが緊急の時には召集されることもあるとか。

「そういえば、ツバサって就職とか決まってたっけ?」

「卒業式の途中に話すことかそれ?」

「いや、だって、ほら……卒業式ってやっぱヒマだぜ……」

「まぁ……。アタシは大学行くよ」

「大学に? ステラソフィアでも資格は取れるんだろ?」

「でもほら、大学出れば園長になれるじゃん」

「お前、保育園経営する気かよ」

「ゆくゆくはね」

ツバサの夢は保育士になることだった。

このマルクト神国では、大学を出なければ保育園の園長にはなれない。

なので、ツバサは大学まで出るつもりだった。

「そういうソレイユは仕事とか決まってるの?」

「オレはほら、引っ張りだこだから」

「アスリートになるのか」

装騎バトルで圧倒的な実力を持つソレイユ。

彼女はもうすでに様々なプロチームからスカウトを受けている。

今年の新歓こそブローウィングに敗北したものの、やはり3年連続優勝のきっかけとなり、そして単独でも様々な大会で活躍するソレイユを逃すチームは無かった。

「お、卒業生起立だとさ」

「おっと、危な」

ソレイユの言葉でツバサは慌てて立ち上がる。

「お喋りなんてしてるからよ」

それから、卒業生の言葉や在校生代表……3年生のディアマン・ロズと今年のMVKである1年サエズリ・スズメからの挨拶などを経て卒業式は進んでいった。

「卒業装騎、授与」

それぞれに、ステラソフィア入学時に与えられたそれぞれの機甲装騎の授与が与えられる。

卒業証書を兼ねた装騎授与証を4年生の担任でもあるチューリップ・フランデレンからそれぞれ受け取っていく4年生達。

チーム・バーチャルスター、チーム・シーサイドランデブー、チーム・ブローウィング、チーム・ミステリオーソ――とチーム順に名前が呼ばれ、それぞれが前に出ていく。

「うぅ……ついに、卒業するんだなぁ……」

証書を受け取ったツバサの口から思わずそんな言葉が漏れた。

「ああ、そうだな。卒業おめでとう。……だが、人生はまだまだこれからだぞ」

「そうっすね……」

フラン先生の言葉に、思わずツバサの目から涙が零れる。

「あーあ、泣いちゃったな」

「うるせー」

戻ってきたツバサにかけられたソレイユの言葉。

その言葉に、涙を流したままツバサは笑いかける。

「はい、ハンカチ」

「お、クイーンサンキュー」

「っていうか、ずっとヒミコが静かだな」

ふと思い出したようにそうソレイユが言った。

「確かに……」

ソレイユの言葉に、ツバサが自らの右隣りに座っているヒミコの顔を覗き込む。

「ヅバザァ~」

ツバサと目があったヒミコが、その顔を涙と鼻水でグショグショにしながらそう呻いた。

「ヒミゴォ……」

その姿を見て、止まりかけていたツバサの涙が再出。

隣同士のツバサとヒミコで肩を抱き合いながら涙を流し始める。

「これはダメそうね」

呆れたように肩を竦めるクイーンに、

「……だな」

と頭をかくソレイユ。

そうこうありながらも、無事に卒業式は終わりを迎えた。


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