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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:溢れ出る個性編
196/322

うぇるかむ・ちるどれん!

「あれ? 何でしょう……?」

とある平日。

午前中ではあるが、たまたま授業の入っていなかったスズメが校内をブラついているとき、それはスズメの目に入った。

それはたくさんの親子連れの姿。

子どもは3歳から5歳くらいだろうか……その傍には母親が付き添っている。

そして、その親子連れはズラズラとステラソフィア機甲科校舎――その内の体操室――――チームワーク実践演習などでよく使う部屋だ――――へと向かっていた。

スズメはそっと体操室の中を覗き込む。

「あ、ツバサ先輩!」

その体操室の中にはワシミヤ・ツバサの姿があった。

「お、スズメちゃん!」

スズメの姿に気づいたツバサが体操室を出てスズメの元へと駆け寄ってきた。

「ツバサ先輩、何してるんですか?」

「これはチーム・アララト主催のアララト会だ」

「アララト会?」

「ステラソフィア学園都市にいる小さい子――大体5歳以下の子たちなんだけど、その親子を招いてちょっとした遊びをするっていう会だよ」

「ええ。わたくしたちチーム・アララトは地域の子ども達同士の繋がりを作る――と言うことを考えて、昔からこのアララト会を行っています」

そう言いながら現れた女子生徒は、その口ぶりからチーム・アララトのメンバーなのだろう。

「わたくしはチーム・アララトのチームリーダー、ゴールドバッハ・リズです」

チームリーダーということは4年生だ。

リズは言った。

「サエズリさんも興味がありましたら、アララト会に参加してみませんか?」

「私もですか!?」

リズの突然の申し出に戸惑うスズメ。

「他の子ども達と同じように参加してくれればよろしいです。丁度、もう少しスタッフが欲しいところでしたし……」

「難しいことはアタシらがやるしさ、スズメちゃんもどうだ?」

ツバサまでそんなことを言ってくる。

スズメは少し悩んだが、こう言った。

「分かりました。私も参加させてください!」

と、言うことでスズメもアララト会に参加することになったのだった。

参加した子ども達は総勢20人ほど。

「それで、何をするんですか?」

「今回のアララト会は製作活動だよ」

そう言ったのはチーム・アララト所属の3年生ゲッティネン・アプフェル。

「牛乳パックを使ってトンボを作るんです~」

そう言ったのは2年生タマアヒ・ウタ。

「トンボ、ですか?」

ウタの言葉に首を傾げるスズメの前に、1枚の紙が差し出された。

その紙には、今回のアララト会で製作する“トンボ”の作り方が図で描かれている。

無言でその用紙を差し出したのは、チーム・アララト1年のラキネス・クローバー。

トンボの作り方に目を通すスズメ。

「へぇ、意外と簡単なんですね」

スズメの言う通り、その作り方は意外と簡単。

2cm幅程度に切り真ん中で折った牛乳パックを、先を切ったストローに貼り付け、羽に少し角度を付けて広げるというだけ。

今回、牛乳パックは予め切り分けられているので、その牛乳パックに色や絵を描いてトンボを完成させるというだけだ。

「それでは、サエズリさんもお願いいたします」

「はい!」

と、言うことでアララト会が始まりを迎えたのだった。

「わぁ、スズメさんも参加するんですか?」

「うん。エーリカさんも参加してるんだ!」

「はい。少し、楽しそうだなって」

そうスズメに声を掛けてきたのは、どこか地味な女子生徒。

チーム・マイナーコード所属の1年生シュミット・エーリカ。

スズメも授業でたまに関わることがある。

「エーリカさん、一緒に頑張ろうね!」

「うん!」

基本的な説明はなれているチーム・アララトのメンバーやツバサが行う。

スズメやエーリカと言ったボランティア組は子どもたちを見守りながら、簡単にお手伝いをしたり遊んだりするだけだ。

そんな子ども達の中に、スズメは見知った姿を見つけた。

「あ、ゲッコーくん! ゲッコーくんも来てたの?」

それはスズメと何度か遊んだこともある少年ヒノキ・ゲッコウ。

彼は母親と共に、このアララト会へと参加していた。

「はい、たまたまチラシを目にして。もしかしたらスズメさんにも会えるかもしれないからって来たんですけど」

「スズメしゃん!」

「はゎー、ゲッコーくんかわいいィ!!」

ゲッコーを抱きしめながら頭を撫でるスズメ。

だが、ふと我に返って、

「そうだ、ゲッコーくんもトンボを作ってみよう!」

と声をかけ、スズメとゲッコーはトンボ作りを始めた。

マジックを手に、豪快にトンボの羽に模様を付けていく。

まだ幼いゲッコーは自分1人で作ることは難しいが、スズメとゲッコーの母2人の手助けによって、なんとかトンボを作り上げた。

他の子たちも、続々とトンボを作り上げていき、一通り完成した頃、リズが口を開く。

「そろそろ皆さん、トンボが完成したと思います。それでは、これからお外に出て、皆でトンボを飛ばしてみようと思います」

「ミンナで一緒に外に出るよ。ウチらに着いてきて!」

アプフェルの先導で、スズメたちを含め、アララト会に参加した親子は続々と外へと出た。

そして、外で作ったトンボを飛ばし始める。

「わぁ、結構飛ぶね!!」

「とんだー!」

スズメが初めに、自分も作っていたトンボを思いっきり飛ばしてみると、トンボはクルクルと軽快に宙を舞った。

それを見て、ゲッコーも飛ばそうとするが、上手に飛ばすことができず、トンボは錐揉みしながらすぐに地面へと落ちる。

「ゲッコーくん頑張って! せーの!」

スズメはゲッコーに何度も声を掛けながら、トンボを飛ばす手伝いをする。

そんな様子をゲッコーの母は微笑ましそうに眺めていた。

4歳、5歳くらいの子ども達は結構上手に飛ばせる子も多く、あちらこちらで歓声が上がる。

ゲッコーもコツをつかめたのか、少しだけ飛ばせるようになり、楽しそうに笑顔を浮かべた。

作ったトンボはそれぞれが持ち帰り、子ども達が楽しそうにはしゃぐ中、アララト会は終わりを迎える。

そして、アララト会が終わり片付けをしているとき、ズが言った。

「サエズリさん、今日は助かりました」

「助かっただなんて、私はずっと遊んでただけでしたし」

「サエズリさんが笑えば、子ども達も笑う――――それが一番のお仕事ですよ」

「そう言ってもらえると、良かったです」

「また機会があったらまた参加してくれよな。エーリカちゃんも!」

ツバサにそう言われたスズメとエーリカは静かに頷く。

「またのごさんかを、お待ちしてます~」

「ああ」

ウタとクローバーもそう言った。

「あとの片付けはわたくし達で行います。サエズリさんとシュミットさんはお菓子でも如何ですか?」

「!! こ、これは――――是非、頂きます!」

そう言いながら差し出されたお菓子の中に、ひのきの林を見つけたスズメの瞳が輝く。

「スズメちゃんはひのきの林に目が無いからな……」

「それでは、紅茶もいれてきます~」

それから、片付け作業のしばしの休息も兼ねて、7人は楽しくお菓子を食べたのだった。


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