実用!? 人生の将軍講座
「人生には3つの将軍があります。何かわかりますか?」
そう口にするにはチーム・ギフト所属の4年生ヴァイス・セイリング。
優しい笑顔でそう語りかけるが、その場にいる人たちは首を傾げる。
「1つ目は冬将軍。2つ目は暴れん坊将軍。そして3つめがインフル将軍です」
「っていうか……これは何なんですか?」
チーム・ブローウィングの寮室内。
ソファに腰かけるスズメ、ツバサ、チャイカ、マッハの目の前にセイリング他4人の女子生徒が立ち、何かを説明していた。
「風邪などが増えてきているので、その対策講座ですわ」
そう、どういう訳か今日はチーム・ギフトの4人がチーム・ブローウィングの部屋へ足を運び、風邪対策などについての話をするという日だった。
「はい、そうです。風邪だけではなくインフルエンザも増えてきている昨今、きちんと対策しないと大変なことになりますよ」
そう言ったセイリングの言葉に、隣にいた身長の低い生徒が口を開く。
「若干、遅いけどね」
彼女はチーム・ギフトの1年生リトル・リドル
「何か?」
「なんでも」
二コリと向けられたセイリングの笑みからリドルは顔をそらした。
「風邪というものは、罹ったあとにどうする――というより先に予防をすることが何よりも大切です」
「病気になってからどうにかしようなど愚劣な考え方は捨てろということだ」
「あの、リドルちゃん……その言い方はどうかと思うんだけど」
ズバリと言ったリドルの言葉に、そう返したのは3年生のナーサリー・テイル。
何やら、いろいろと対策方法をイラスト付きで分かりやすくした紙を持っている。
腕がプルプルしてるのはあまりつっこまない方がいいのだろうか。
「SIDパッドのプロジェクター機能使えばいいのにな……」
ツバサは彼女たちが紙に書くことを好んでいることを知っているが、そう呟きたくなる。
「風邪はちょっと風邪っぽいと思ったらもう手遅れだとも言いますからね。そうなる前からの対策が大切です」
「と、いうことでだな。今回は予防ということに重点を置いていきますよ」
そう言った眼鏡の生徒は2年生デイジー・ケードル。
ケードルはそのまま説明を続けた。
「風邪の予防と言うとどんなものがあるかご存知かな?」
「まぁ、アレだろ。うがい手洗いとか」
「ですわね」
ケードルの問い掛けにツバサが答える。
「そういうことだ。予防の中で1番手軽で1番効果的なもの――それがうがい手洗いだと言われています」
「そうなの?」
「そうなのだ」
そう言うと、テイルは紙を違う紙へと持ち帰た。
そこには手洗いの方法などが書かれている。
「手洗いで特に注意するべきところは、指の先や指の間、爪の間に、手の平のくぼみ辺りですね」
その紙を見ながら、今度はセイリングがそう説明した。
「手首なども気を付けると良いぞ」
そして補足をするケードル。
「ちゃんと家に帰った時は手洗いをする。それだけで手洗いをしない愚民共に1歩先んじれる」
何を先んじるのかよく分からないが、リドルが言うには先んじれるらしい。
「それだけ、手洗いっていうのは大事って、ことだよ。うん」
リドルの言い方に、テイルが申し訳程度のフォローを入れる。
「インフルエンザなどの対策も、風邪と同じでよろしいのですの?」
そこでチャイカがそう質問した。
チャイカの問いに4人は頷き、セイリングが口を開く。
「はい。インフルエンザは感染力が高かったりはしますが、基本的には風邪と同じ対策で大丈夫です」
「そういうことだな。手についた菌が口などから体の中に侵入して発症することが多いと思いますしな」
「そこはデータじゃなくて感想なのかよ」
ケードルの言葉にツバサは思わずそう突っ込んでしまう。
「うがいはさほど効果が無いとも言われるが、やるだけで愚民とは1歩差を――」
「ちゃ、ちゃんとうがいも大事ってことだよ!」
「そういうことで、うがい手洗いの大事さはご理解いただけたと思います」
「リトルさんの言葉が頭について、内容があまり頭に入ってこなかったんですけど……」
「後で、今回の内容をまとめたプリントも配布しますので、そちらに目を通して頂けるといいですよ」
スズメの言葉に、セイリングが1枚のプリントをヒラヒラとさせながら答えた。
そして、次の紙へと変えるテイル。
その紙を指さしケードルが口を開く。
「次はマスクの正しい着用方法だ。手洗いうがい以外に感染予防と言ったら、マスクもあるということだな」
「マスクには裏と表、上と下、そして正しい着用方法があります。それを守って正しく着用しましょうね」
「間違っても、マスクをしてるのに鼻を出すなんて愚劣な行為を行う劣等種に成り下がらないことだな。なんだソレは? ファッションなのか? 莫迦なのか?」
「こ、個人的な私怨を爆発させないでよ!」
「マスクをしているのに鼻を出したら意味が無いのは確かですな。なんのために付けているのか」
「マスクというのは風邪をひいたときに使う――と言うイメージもありますが、それ以前に周りから風邪をうつされないために着用するのがよろしいと思います」
1通り説明したところで、テイルがやっと紙を下ろしたことで、今回の講座が終わりを迎えたことを知った。
ずっと手を上げていて腕が疲れたのだろう。
テイルが両腕を伸ばし、体をほぐす。
「今回はこれくらいにしましょうか。他にもいくつか有名な感染症の感染方法などをプリントの方に示してありますから、目を通して元気で楽しい学園生活を送りましょうね」
「個人的にオススメなのは生姜だ。生姜は良いぞ。愚民共と1歩――」
「そ、それはもういいから!」
「そう言うことで、最近、我がチームでは生姜尽くしなんだ。それはそれでどうかと思いますがな」
そんな会話を繰り広げながらも、終わりの礼をするチーム・ギフトの4人に、チーム・ブローウィングの3人も頭を下げた。
「それでは、次の部屋に行きましょうか」
「次も頑張れよテイル」
「せ、先輩にそんな口!?」
「さっさと行くぞ」
ゾロゾロと退出する4人。
そんな4人を見送ったところで、ソファに身をうずめていたマッハがグッと伸びをした。
「あー、よく寝たんですよォ!!!」
「静かだと思ったら寝てたんですね……」
みんなも風邪には気を付けよう!