目指せ個性派5G's
「ねえ、みんなはコーンドッグに何をかけて食べる?」
ある日、イザナがそんな言葉をいつもの4人に言い放った。
「何って……ケチャップに決まってるじゃない」
「私はケチャップとマスタードかけるよ?」
「イヴァは何もつけないさー」
「わたしは固い部分だけ食べていたいです!」
サリナ、スズメ、イヴァ、ユウレイと口々に述べるが、そんな彼女たちに対してイザナがハァとため息を吐く。
「ヒラサカさん、どうしたのよ……」
「全く、アナタ達全然個性が無いじゃない」
「「「「個性?」」」」
イザナの言葉に、4人が揃って声を上げた。
「これだけの人がいるクラス、学校、学園都市、世界――――そんな中で、そんな没個性じゃ埋もれてしまうじゃない。何か個性を見つけないと」
「……ヒラサカさん、頭でも打った?」
「イザナちゃん、変なの食べたの?」
「そうじゃないわよ!」
心配そうな表情を浮かべるサリナとスズメの言葉に、イザナは首を横に振る。
「たった1つのコーンドッグ――――たかがコーンドッグ、されどコーンドッグ。でもその食べ方にも個性を見せるのが超個性なんじゃないのかしら!?」
「超個性ってなんだば……?」
「えっと、あの……そんなの目指しちゃったりしてないですよ?」
イヴァとユウレイの冷たい視線にも負けず、イザナは言葉を続ける。
「コーンドッグにタバスコかけるとか、チーズ入りが好きだとか、ラー油とか酢とか醤油をかけるとか! そんな超個性を見せるのが居ないなんて……」
「あの、それってドラ――」
「居ないなんて!」
何か言いたげに虚空へ手を引っ掛けるサリナを遮り、イザナは叫ぶように言った。
「そういうイザナちゃんは、何をかけちゃうんですかー?」
「ケチャップとマスタードに決まってるじゃない」
ユウレイの問い掛けに、イザナはあっけらかんと言う。
「イザナちゃんも一緒じゃないですか!」
「私が普通でも、他が変なのなればそれが個性になるじゃない」
「それはちょっとズルいと思っちゃいますけど……」
「イザナちゃんのそういう所でーじむかつくさー」
イヴァにもそう言われるイザナ。
そんな中、ふとスズメが言った。
「でも、ユウレイちゃんは幽霊ってだけですごい個性だよね」
スズメの言葉にイザナがハッとする。
「そうだわ。アンタ幽霊じゃん……その超個性、忌々しい」
「確かにわたしは幽霊でしたね。すっかり忘れてました! ユウレイだけに!」
「いや、何もかかって無いじゃん」
思わぬ個性を持つユウレイの存在を思い出し、どこか面白くなさそうなイザナ。
「ヒラサカさんは個性を出してほしいのか出してほしくないのかどっちなのよ……」
そんなイザナに、サリナがそう言った。
「個性を出してほしい、と思ってるけど、さすがに幽霊なんて個性は――――突飛すぎてムカツクわ」
「言ってることはともかく、素直なのは良いことね」
サリナは若干呆れながら呟いた。
「幽霊以外になにか個性があるのはいないの!?」
「個性は無理して出すものじゃないさー」
「ステラソフィアの中だと訛りっていう個性があるくせに! ステラソフィアの中だとだけどね!」
「イヴァに何の恨みがあるばぁ!?」
「本当、結局ヒラサカさんはどうして欲しいのよ!!」
「どうって……」
「自分に個性が無いからって人の個性を羨ましがっちゃったりしてるんでしょうね!」
ユウレイが放った一言。
その一言で、イザナが動きを止める。
どうやら、図星だったらしい。
「ヒラサカさん、自分に個性が無いと思ってるの?」
「……そうね」
「それを気にしてるの?」
「気にしてる、と言うよりは――――没個性だとその内、出番とか削られそうじゃない」
「誰に!?」
「気持ちね」
「気持ちって何!?」
ここで、今まであまり会話に入ってこなかったスズメが口を開いた。
「でも、私はイザナちゃんってすっごい個性的で憧れるなぁ」
「そう!?」
スズメの言葉に即行で食いつくイザナ。
その表情は明らかに嬉しそうで頬が緩んでいる。
「確かにヒラサカさんの個性はこの中でもすごいとは思うけど……」
サリナの言葉に、イヴァやユウレイも頷いた。
「でもアレさ……あまり欲しくない個性さ……」
「ですねー」
頷きながらも、イヴァとユウレイの2人は小声でそんな会話を交わすがイザナの耳には入っていない。
「やっぱり、個性っていうのは誰にでもあるし、普通にしてたら出ちゃうものなんだよ。イザナちゃんみたいに」
スズメは言う。
「だから、無理して個性を出そうなんてしなくていいんじゃないかな。やっぱり、そのままのイザナちゃんが、サリナちゃんが、イヴァちゃんが、ユウレイちゃんが私は好きだな」
「スズメ…………」
スズメの言葉に何やら心を打たれたようなイザナ。
「そうね……私が莫迦だったわ……個性は出すモノじゃない、出るモノ――――。分かったわ。私は、今のままの私でいる!」
「できれば少し自重して欲しいさー」
「ですねー」
「こらこら2人とも。言いたいことも分かるけど」
何にせよ、この事態を収拾できたことにサリナは安堵する。
「最近のイザナちゃん面倒くさいよね」
「しー!!」
ついにはスズメまでそんなことを言いだしたが、やはり聞こえていないのかイザナは元気一杯で、
「ちょっとお菓子買ってくるわ」
と走り出して行ってしまった。
「まぁ、お菓子もらえるならいっか……」
「だからよー」
「ですねー」
「……あなた達ねぇ」
今日も5人は仲良しです。